安倍晋三政権の出入国管理法の改正は必要なの。(2)

 日本弁護士連合会(以下、日弁連)は2018年11月13日、「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律案に対する意見書」(以下、「意見書」)を法務大臣及び衆参両院議長宛てに提出した。
この「意見書」で、今回の安倍晋三政権からの改正案を考える。


 「意見書」は、第197回国会に上程された改正法案について、「深刻な人手不足を背景に、「真に必要な分野に着目し、・・・外国人材の受入れを拡大するため、新たな在留資格を創設する」「外国人が円滑に共生できるような社会の実現に向けて取り組む」、と規定されていると説明する。また、具体的には、①新たな在留資格として「特定技能1号」と「特定技能2号」を創設する、②新たに「出入国在留管理庁」を創設する、ということを内容とする、と説明している。
 この上で、この改正法案について、「外国人労働者の受入れが目的であることを正面から認め、制度構築を行っているものであり、その方向性は正しいと考える。」とする一方、改正法案についての問題点を指摘している。
 「意見書」が指摘する問題点は、第1 技能実習制度との関係、第2 職場移転の自由の保障、第3 送出し国におけるブローカーの排除、第4 受け入れた外国人に対する適切な支援、第5 家族の帯同、第6 在留基準の透明性・客観性、第7 雇用形態、第8 共生のための施策の位置付け、第9 国際人権基準に適合した出入国在留管理行政の実現、との九点である。
この九点の問題点を要約する。

1.技能実習制度との関係

(1)技能実習制度の実態は非熟練労働者の受入れのための制度となっており、技能実習という目的のために、原則として職場移転の自由が認められず、不当な処遇や権利侵害を受けた労働者であっても帰国を避けるためにはこれを受忍するほかないという構造的問題を抱えている。
(2)このような技能実習制度は 直ちに廃止した上で、非熟練労働者の受入れを前提とした在留資格を創設し、外国人を受け入れることについて、その是非、その範囲などを、外国人の人権にも配慮した上で、国会などの場で十分に検討するべきである。
(3)この改正法案は、非熟練労働者を含む外国人労働者の新たな受入れ制度を創設するものであり、なおさら 技能実習制度は直ちに廃止されるべきである(その際、既に現実に在留している 技能実習生が不利益を被らないような措置を採るべきである。)。いわんや新たな在留資格の対象職種に合わせて、技能実習制度の対象職種を拡大するような運用はすべきでない。


2.職場移転の自由の保障

(1)技能実習制度では、原則として職場移転の自由が認められていない。この点、改正法案では、入国・在留を認めた分野の中での転職を認めることとされており、一定の評価に値する。
(2)ただし、職場移転の自由を実質的に確保し、保障するためには、ハローワーク等が特定技能所属機関(以下「受入れ機関」という。)としての条件を満たす同一分野の事業者のリストを公開し、転職相談を受けるなど、公的機関による転職支援を行うことが重要である。このことは、国内における悪質な紹介業者を排除するためにも必要である。


3.送出し国におけるブローカーの排除

(1)技能実習制度では、技能実習生がブローカーに多額の渡航前費用や保証金、違約金等を支払わされることなどが横行していた。
(2)このような問題を起こさないためにも、外国人労働者の募集と送出しを日本の出先機関(例えば、新たな独立行政法 人等)又は送出し国の公的機関に担わせるべきである。公的機関による斡旋が困難な場合には、日本と送出し国の二国間協定により、高額の手数料や保証金を取ったり違約金を定めたりする民間仲介業者を排除するよう合意するべきであり、排除が不十分であるときは当該国からの受入れの停止も可能とすることを検討すべきである。


4.受け入れた外国人に対する適切な支援

(1)技能実習制度においては、「技能実習生の保護について重要な役割を果たすもの」(技能実習法5条2項)とされている監理団体が実習実施機関を監督・指導することとなっている。しかし、監理団体は、実習実施機関から費用を 受領して運営されているという構造的な問題もあって適切な監督・指導等を行えず、むしろ監理団体が技能実習生に対する人権侵害を放置する例もあった。この点も技能実習法により一定の対応がなされたが、いまだ後を絶たない。
(2)新たな在留資格制度における登録支援機関についても、同様な問題が生じないよう、その担い手は公的機関や適切な人的物的資源を持つNGO等となるような制度として、その厳格な運用を行うべきである。
(3)支援の内容についても、「一号特定技能外国人支援計画」(改正法案2条の5第6項)において、日本語教育や社会生活上の教育などについて基準を設けるべきである。
(4)このように、あらゆる支援を受入れ機関や登録支援機関に委ね丸投げするので はなく、国や自治体、NGO、弁護士会、法テラス等が連携して、支援の内容に応じて適切な仕組みを構築するべきである。


5.家族の帯同

 政府は、技能実習修了者が特定技能 1 号で就労する場合、最長で10年という長期にわたり日本に滞在・就労することになるにもかかわらず、家族の帯同を認めないとしている。特定技能 1号の場合でも、少なくとも一定期間以上滞在した者などについては、家族の帯同を認めるべきである。


6.在留基準の透明性・客観性

 特定技能1号の「相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務」、特定技能2号の「熟練した技能を要する業務」の認定などの具体的基準は示されていない。このような状況では、行政庁による恣意的な運用がなされるおそれがあるので、客観性・透明性のある基準を設けるべきである。


7.雇用形態

(1)改正法案に先立って政府が発表した政府基本方針(骨子案)は、雇用形態に関して、原則として直接雇用であることとしながら、分野の特性に応じて派遣形態も可能としている。
(2)しかし、派遣労働は低賃金・不安定雇用を固定化するものであり、専門職以外にはこれを認めるべきではない(当連合会の2010年(平成 22年)2月19日付け「労働者派遣法の今国会での抜本的改正を求める意見書」など)。専門職とはいえない、特定技能の在留資格の労働者についても、派遣形態 は認めるべきではない。


8.共生のための施策の位置付け

(1)外国人労働者を正面から受け入れることとなる今こそ、外国にルーツを持つ人々の権利を守り、差別を解消して社会での共生を実現する共生政策は国の責務である。
(2)しかし、改正法案においては、外国にルーツを持つ人々と共生できる社会の実現という点は触れられていない。法律において共生政策の実施を国の責務として明確に位置付け、財政的な手当てをすることが必要である。
(3)このような国や自治体の体制を整備するためには、共生政策のための基本法(仮称「多文化共生法」)を制定することが喫緊の課題となる。また、新たに設置する庁の任務として共生政策の実施、総合調整機能を明記するべきである。

9.国際人権基準に適合した出入国在留管理行政の実現

 本改正案によって新たな在留資格で外国人を受け入れるに当たっては、国際人権基準に適合した出入国管理行政を実現すべきである。


 この「意見書」を受けて、次のことが言える。


 前回の「安倍晋三政権の出入国管理法の改正は必要なの。」では、「一つの法を改正するには、「社会にいかなる影響が及ぶのか。外国人の人権をどうやって守り、安心して働いてもらうのか。幅広い観点から丁寧な検討が求められる」(「朝日」)にもかかわらず、この法改正に向けての安倍晋三政権の姿勢は、「改正法案の目的は『外国人の在留の公正な管理を図る』こととされ、共生や支援といった理念は掲げられていない。」、ということが問題である。」、と反論をまとめた。
この「意見書」では、「共生のための施策の位置付け」の中で、同様の問題の指摘と改善策が、「改正法案においては、外国にルーツを持つ人々と共生できる社会の実現という点は触れられていない。法律において共生政策の実施を国の責務として明確に位置付け、財政的な手当てをすることが必要である。」、「このような国や自治体の体制を整備するためには、共生政策のための基本法(仮称「多文化共生法」)を制定することが喫緊の課題となる。」、「新たに設置する庁の任務として共生政策の実施、総合調整機能を明記するべきである。」、と位置づけられている。
現行の技能実習制度の多くの問題点は、この「意見書」で明らかにされている。
しかし、今回の改正法案が、現行の技能実習制度を土台にしているいる上に、加えて派遣制度を適用させようとしていることは、この改正案が、何のために必要なのかということを明確にしていると言える。
 今回の法改正は、新たな収奪を可能にするために必要なのであ。
結局、この法改正は、「政府が確たるビジョンをもたぬまま法案を提出していることは明白だ。」「日本社会にとっても外国人労働者にとっても、あまりに無責任な対応」(「朝日」)であると批判したが、「意見書」によってもこのことが確認された。
やはり、ここでも、「日本語教育や社会保障のあり方など、本来、受け入れと一体のものとして議論すべき事項も不透明なままだ。今国会で法案を成立させるという考えを取り下げて出直す。政府がとる道はそれしかない。」(「朝日」)、ということを繰り返すしかない。




by asyagi-df-2014 | 2018-11-21 07:19 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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