安倍晋三政権の唱える「幼保無償化」とは。

 最近、安倍晋三政権の政策をじっくり検討することをどこかで嫌がっている気がする。
 こうして、各紙の社説等を読んで始めて気づかさせられることが多い。
 今回も、高知新聞(以下、「高知」)が「【幼保無償化】急ごしらえの不備を露呈」、沖縄タイムス(以下、「タイムス」)が 「[幼保無償化]自治体の懸念に応えよ」、と2018年11月14日付けで社説で論評した。
 どういうことなのか。
 この二紙で、安倍晋三政権の幼保無償化政策を考える。


 「高知」は、まず最初に、事実経過を次のように指摘する。


(1)安倍政権が来年10月に導入を目指す幼児教育・保育の無償化が、幼保の現場や自治体に混乱や政府とのあつれきを生んでいる。
(2)消費税率10%への引き上げに伴う税収増分から財源を賄う方針の政府は、増税分が配分される地方にも負担を求める。これに自治体側が「押し付けだ」と反発している。
 全国知事会など地方6団体は政府に「国費で全額負担」を求め、特に全国市長会は与野党に直訴するなど徹底抗戦の構えだ。政府の2019年度の予算編成が本格化していく中、折り合いをつけられるか見通せていない。
(3)幼保無償化は安倍首相が昨秋、衆院解散に踏み切った際に突如、目玉公約として表明した。消費税増税分の使途を「全世代型社会保障」へ転換するとうたった。自民党内にも周知されない唐突な変更で、党内にも不満が漏れるほどだった。
(4)実際の制度設計も選挙の後に突貫工事で進められてきたのが実態だ。政府は無償化の費用総額を約8千億円と算出し、増税分の30%が配分される地方にも一部負担を求める方向を打ち出した。


 こうした安倍晋三政権の強引な手法に対し、「高知」は、「増税分の新たな歳入を想定し、その使途や活用事業を検討していた自治体が、政府の一方的な負担要請に反発するのは当然の受け止めではないか。少子化対策や子育て支援は、疲弊が進む地方にとって最重要課題だ。それを美名の看板にして振りかざし、政権方針に従わせようとする強引なやり方に映る。」、と指摘する。


 また、「無償化方針は、子どもを受け入れる現場側にも思わぬ波紋を広げている。」、と問題点の指摘を加える。


(1)共同通信の調査で、全国の私立幼稚園の約4割が来年度に保育料を値上げすることが分かった。この中には、税金で保育料が確実に得られる無償化を見越した「便乗値上げ」の可能性も指摘される。
(2)共働き世帯の増加などで子どもを保育所に入れる傾向が強まり、幼稚園の経営は厳しさが増しているという。保護者の所得を基に自治体が保育料を決める保育所などに対し、幼稚園は独自に設定できる。無償化が「保育の質の向上」を伴わない値上げを誘発しかねないという懸念がある。
(3)各地の園では既に来年度の園児の募集も始まっているが、無償化の詳細な制度設計が示されず、混乱を招いているという。そのしわ寄せは結局、入園先を決められない保護者、何より、子どもたちに向かうことになる。
(4) 保護者には現実の問題として、待機児童解消の受け皿づくりを急ぐよう求める声が根強い。無償化にもなお、高所得者ほど負担軽減が大きくなる「金持ち優遇策」といった批判も残っている。


 こうした問題点を取りあげる中で、「高知」は、「選挙の人気取りのため、急ごしらえした公約の不備が露呈したといえる。矛盾や不信を抱えたままの見切り発車は許されない。子育ての現場に寄り添い、将来も見据えた制度設計へ議論を尽くすべきだ。」、と結論づける。


 「タイムス」は、「費用負担への反発や保育の『質』への懸念は、合意形成作業を軽視し、導入を急いだひずみだ。」、と批判する。
「タイムス」も同様に、事実経過を次のように押さえる。


(1)来年10月に始まる幼児教育・保育の無償化を巡って、全国市長会が「国が費用を全額負担すべきだ」との要望書を与党に提出した。全国知事会も同様に「国の責任で必要な財源を」と政府に要請している。
(2)無償化は昨年の衆院選直前に安倍晋三首相が突如、消費税増税の使い道を変更して掲げた公約だった。3~5歳児は全世帯、0~2歳児は住民税非課税世帯を対象とするもので、必要財源は約8千億円と見込んでいる。
(3)政府は消費税が引き上げられれば地方税収も増えるとして自治体にも負担を求める考えだが、地方は政府が決めた政策なのだから「全額国費」を主張している。
(4)少子高齢化を「国難」と位置付ける安倍政権は、消費税10%への引き上げで得られる税収5兆円強のうち、約1兆7千億円を幼保無償化を含む子育て支援策に振り向ける予定だ。2012年の「社会保障と税の一体改革」では、増収分の多くを財政赤字の削減に充てる予定だった。


 「タイムス」は、まず、「すべての子どもが幼児教育を受けられる環境を整えることに異論はない。しかし振り返れば、増税分の使い道を変更し無償化に充てることは、自民党内でも国会でも議論らしい議論がなかった。自治体が『税収をあてにしていろいろな政策を準備してきた』と反発するのはもっともである。」、と批判する。
 この上で、安倍晋三政権の幼保無償化政策の問題点を端的に指摘する。


(1)保育の実務を担う自治体で無償化への賛同が広がらないのは、待機児童問題が解消されない段階での効果を疑問視しているからだ。
(2)政権の看板政策とはいえ、聞こえてくるのは、「待機児童の解消と順番が逆」「保育士の確保などに財源を使うべき」といった声である。
(3)今年9月時点の保育士の有効求人倍率は2・79倍。全体の1・64倍に比べ人手不足が目立つ。保育士が集まらず保育所を新設したのに開園できなかったり、受け入れ人数を制限したりといったケースも、ここ数年増えている。
(4)幼児教育が無償化されれば、子どもを預けて働きたいと考える親は増えるはずだ。それに見合った施設整備が進まなければ、待機児童が増え不公平感が広がる。さらに無償化による需要の掘り起こしは、現場を疲弊させ、保育の質の低下を招きかねない。
(5)国の施策の不備は、無償化を見越した「便乗値上げ」の動きとしても表れている。共同通信が先月実施した調査によると、私立幼稚園の約4割が来年度、保育料の値上げを考えている。職員の給与引き上げのためとする園が多かったものの、中には国の補助上限額まで引き上げるとした不自然なケースも。便乗値上げのツケを支払わされるのは私たち納税者である。 


 結局、「タイムス」は、「唐突に選挙公約に掲げ突貫工事で進められた無償化政策は、制度設計や効果の検証が不十分だ。誰のための施策なのか、原点に立ち返る必要がある。」、と断じるのである。


 こうして二紙の社説を読んでみると、安倍晋三政権の幼保無償化には、明らかに次のことが言える。


Ⅰ.「タイムス」の「唐突に選挙公約に掲げ突貫工事で進められた無償化政策は、制度設計や効果の検証が不十分だ。誰のための施策なのか、原点に立ち返る必要がある。」、との主張がすべてを物語る。
Ⅱ.現在の状況は、「増税分の新たな歳入を想定し、その使途や活用事業を検討していた自治体が、政府の一方的な負担要請に反発するのは当然の受け止めではないか。少子化対策や子育て支援は、疲弊が進む地方にとって最重要課題だ。それを美名の看板にして振りかざし、政権方針に従わせようとする強引なやり方に映る。」(「高知」)、との反論そのものである。




by asyagi-df-2014 | 2018-11-19 07:19 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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