韓国大法院(最高裁)が出した「強制徴用判決」を、ハンギョレと朝日新聞で考える。

 ハンギョレは、「あまりに遅かった13年目の強制徴用判決」、と論じる。
 一方、朝日新聞は、「徴用工裁判 蓄積を無にせぬ対応を」、と。
韓国大法院(最高裁)が出した判決を、この二社の社説で考える。
まずは、ハンギョレの主張を見てみる。


Ⅰ.判決内容


(1)日帝強制徴用被害者に日本企業が賠償しなければならないという最高裁(大法院)の最終判決が下された。最高裁の全体合議体(裁判長、キム・ミョンス最高裁長官)は30日、イ・チュンシクさんら強制徴用の被害者が日本企業の新日鉄住金(旧新日本製鉄)を相手取って訴えた損害賠償請求訴訟の再上告審で、新日鉄住金の再上告を棄却し、原告に1億ウォン(約1千万円)ずつ賠償せよとの原審判決を確定した。被害者が訴訟を提起して13年8カ月めであり、再上告審に上がってからは5年余りがたってのことだ。
(2)今回の判決は司法壟断による長い間の訴訟遅滞を解消し、日帝強制占領期(日本の植民地時代)の被害者を遅まきながら救済したという点で意味が大きい。韓日請求権協定の解釈を巡る韓日間の外交的紛争の可能性も高いだけに、政府は適切な対処をしなければならない。
(3)最高裁の合議体はこの日、原告の損害賠償請求権が1965年に韓日政府が結んだ請求権協定の適用対象に含まれないと判断した。
①「日本政府の不法な植民支配および侵略戦争の実行に直結した日本企業の反人道的不法行為」によってもたらされた慰謝料請求権という理由からだ。
②すなわち、請求権協定文や付属書のどこにも日本の植民支配の不法性に言及する内容がなく、韓日間交渉の過程でも日本政府が植民支配の不法性を認めないまま強制動員被害の法的賠償を基本的に否認した以上、不法行為に対する被害は韓日協定対象ではないという趣旨だ。                                    ③交渉の過程で12億2千万ドルを要求したのに3億ドル(無償分)しか受けられず、強制動員の慰謝料まで含まれたと見るのは難しいという判断も付け加えた。         日帝の植民支配と強制動員自体を不法に見る韓国の憲法の価値体系に照らしてみれば当然の判決だ。

Ⅱ.判決が示した課題


(1)その間に他の原告は亡くなり、94歳のイさんしか生存していない。あまりに遅かった。しかも徴用被害者の強制労働の代価を裁判官の海外派遣のポストと交換して「裁判取引」の対象としたせいで遅れたというからこの上なく恥ずかしい話だ。司法壟断の当事者らが、故人の霊の前に土下座して謝罪しても足りないだろう。
(2)「朴槿恵(パク・クネ)大統領府」が韓日関係に及ぼす影響を云々して、2012年当時の最高裁の裁判結果を覆そうとし、外交部・法務部などの政府の省庁はもちろん、最高裁の首脳部までこれに付和雷同して確定判決を引き延ばした事実は、すでに検察の捜査で天下にさらされている。この事件が司法壟断の象徴的事例になっただけに、ヤン・スンテ前最高裁長官らが主導した取引の全貌が明らかになってこそ、今回の判決の意味も生きるだろう。
(3)「朴槿恵(パク・クネ)大統領府」が韓日関係に及ぼす影響を云々して、2012年当時の最高裁の裁判結果を覆そうとし、外交部・法務部などの政府の省庁はもちろん、最高裁の首脳部までこれに付和雷同して確定判決を引き延ばした事実は、すでに検察の捜査で天下にさらされている。この事件が司法壟断の象徴的事例になっただけに、ヤン・スンテ前最高裁長官らが主導した取引の全貌が明らかになってこそ、今回の判決の意味も生きるだろう。


Ⅲ.主張


(1)2015年の韓日慰安婦合意が事実上廃棄の手続きを進んでいる状況で、今回の判決で当分は韓日関係が悪化する可能性がある。実際、日本の河野太郎外相は「韓日友好関係の法的基盤を根底からひっくり返すものだ。決して受け入れることはできない」と反発した。政府の賢明な対処が必要な局面だ。イ・ナギョン首相は「司法府の判断を尊重して政府の対応策を講じていく」と表明し、「韓日関係を未来指向的に発展させていくことを希望する」として慎重な態度を見せている。
(2)一部では「ヤン・スンテ最高裁」の裁判遅延の存在を際立たせ、国際司法裁判所提訴などの日本の強硬対応の可能性を強調する見解がある。しかし、当事国である韓国の同意なしには法廷自体が成立しない。3権分立の民主国家で司法府の独立的な判断が尊重されることは常識だ。日本もまた民主政権なら自重するのが当然だ。


 この区分にそって、朝日新聞の主張をまとめる。


Ⅰ.判決内容


(1)植民地支配の過去を抱えながらも、日本と韓国は経済協力を含め多くの友好を育んできた。だが、そんな関係の根幹を揺るがしかねない判決を、韓国大法院(最高裁)が出した。
(2)戦時中、日本に動員された元徴用工4人が新日鉄住金に損害賠償を求めた訴訟で、1人あたり約1千万円を支払うよう命じた控訴審判決が確定した。


Ⅱ.判決が示した課題


(1)同様の訴訟はほかにもあり、日本企業約80社を相手取り、韓国各地の裁判所で進行中だ。日本政府や企業側は、1965年の国交正常化に伴う請求権協定で元徴用工への補償問題は解決済みとし、日本の司法判断もその考えを踏襲してきた。原告側は、賠償に応じなければ資産の差し押さえを検討するという。一方の日本政府は、協定に基づいて韓国政府が補償などの手当てをしない場合、国際司法裁判所への提訴を含む対抗策も辞さない構えだ。
(2)そんなことになれば政府間の関係悪化にとどまらず、今日まで築き上げてきた隣国関係が台無しになりかねない。韓国政府は、事態の悪化を食い止めるよう適切な行動をとるべきだ。
(3)元徴用工らへの補償問題は長年の懸案であり、これまでも韓国政府が一定の見解と対応をとってきた。盧武鉉(ノムヒョン)政権は05年、請求権協定当時の経済協力金に、補償が含まれるとの見解をまとめた。文在寅(ムンジェイン)・現大統領はこの時、大統領府高官として深くかかわった当事者だ。その見解を受けて韓国政府は国内法を整え、元徴用工らに補償をした。国内の事情によって国際協定をめぐる見解を変転させれば、国の整合性が問われ、信頼性も傷つきかねない。


Ⅲ.主張


(1)韓国併合の合法性を含め、日韓は国交正常化の際、詰め切れなかった問題がいくつかある。だが、互いに知恵をしぼって歩み寄り、今や年間1千万人近くが行き来する関係になった。判決を受けて韓国政府は有識者の意見も聞き、総合的に対応を検討すると表明したが、今後に暗雲をもたらすような判断は何としても避けるべきだ。
(2)日本政府は小泉純一郎政権のとき、元徴用工らに「耐え難い苦しみと悲しみを与えた」と認め、その後も引き継がれた。
(3)政府が協定をめぐる見解を維持するのは当然としても、多くの人々に暴力的な動員や過酷な労働を強いた史実を認めることに及び腰であってはならない。負の歴史に由来する試練をどう乗り切り、未来志向の流れをつくりだすか。政治の力量が問われている。


 この判決に関して、河野太郎外務大臣の「韓日友好関係の法的基盤を根底からひっくり返すものだ。決して受け入れることはできない。」等の発言が日本中を覆い尽くしている。 しかし、やはり違和感を感じる。
 その違和感の正体は、ハンギョレの「3権分立の民主国家で司法府の独立的な判断が尊重されることは常識だ。日本もまた民主政権なら自重するのが当然だ。」との主張が示すものである。
 やはり、司法が独立している以上、こうした「請求権協定文や付属書のどこにも日本の植民支配の不法性に言及する内容がなく、韓日間交渉の過程でも日本政府が植民支配の不法性を認めないまま強制動員被害の法的賠償を基本的に否認した以上、不法行為に対する被害は韓日協定対象ではない」、との判断を、司法が政治の桎梏から独立して行うことはあり得ることではないか。      
 例えばそれは、朝日新聞の「韓国併合の合法性を含め、日韓は国交正常化の際、詰め切れなかった問題がいくつかある。だが、互いに知恵をしぼって歩み寄り、今や年間1千万人近くが行き来する関係になった。」「負の歴史に由来する試練をどう乗り切り、未来志向の流れをつくりだすか。政治の力量が問われている。」と、ハンギョレの「日帝の植民支配と強制動員自体を不法に見る韓国の憲法の価値体系に照らしてみれば当然の判決だ。」、との受け止め方の「差異」から生じる。
 逆に、この「差異」を問わざるを得ない状況を生み出してきた日本政府の政治の力量が、背景に問題として横たわっているのではないか。
 そう意味において、朝日新聞の「負の歴史に由来する試練をどう乗り切り、未来志向の流れをつくりだすか。政治の力量が問われている。」、との指摘を根本から真摯に考える必要がある。

 例えば、日本軍慰安婦問題の日韓合意(2015年12月28日)の時、次のように押さえをした。


①日本側で出版されている大日本帝国軍従軍慰安婦制度を史実否定や歴史修正や韓国ヘイトや女性蔑視の立場から扱っている歴史修正出版物について、「それらは日本政府の立場とは相いれず、日本政府はそれらの出版物を史実として認めない」と公式に表明すること。
②日本の政治家、政府高官、政府関係者から、大日本帝国軍従軍慰安婦制度について、史実否定や歴史修正や韓国ヘイトや女性蔑視の立場から蒸し返す発言が出たら、「それは日本政府の立場とは相いれない」と首相自らコメントし、そのような発言をした者の政府内での職を解くこと。
③名誉と尊厳の回復、心の傷を癒やすための事業には、被害者が何よりも求めている日本政府保有資料の全面公開、国内外でのさらなる資料調査、国内外の被害者および関係者へのヒヤリングを含む真相究明、および義務教育課程の教科書への記述を含む学校及び一般での教育を含めること。
④アジア・太平洋各地の被害者に対しても、国家の責任を認めて同様の措置をとること。


 こうしたことが、この徴用工問題でも、政治主導でどれくらい行われてきているのかという疑問がある。
 それは、朝日新聞の「徴用工裁判 蓄積を無にせぬ対応を」との主張の「蓄積」の質を問うことでもあるはずだ。




by asyagi-df-2014 | 2018-11-09 07:05 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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