選挙結果を考える。~沖縄タイムス・琉球新報20180910~

 一地方自治体であるのに、非常に重要な選挙が行われた。
 その選挙結果をどのように把握するのかが問われる。
 まずは、沖縄タイムス(以下、「タイムス」)と琉球新報(以下、「新報」)の社説でこのことを考える。


Ⅰ.評価


(「タイムス」)
(1)名護市議会議員選挙は、渡具知武豊市長を支える与党候補と辺野古移設に反対する野党候補が、定数26を分かち合い、与野党同数の結果となった。2月の市長選で一敗地にまみれた移設反対派は、ぎりぎりのところで踏ん張ったことになる。
(2)自民、公明の与党系候補は辺野古に触れることを意識的に避け、米軍再編交付金を活用した給食費や保育料の無償化、経済振興や子育て支援など、生活と直接かかわる身近な課題を前面に掲げた。2月の名護市長選と同じように与党側は、辺野古の「争点はずし」によって選挙戦の土俵を自分たちが有利になるように設定したといえる。市民の中に「辺野古疲れ」があるのは否定できない。ただ、公明党は、安倍政権が支援する渡具知氏に対しては支持する立場だが、辺野古移設に対しては反対の姿勢を堅持している。渡具知市長も賛否を示していない。辺野古反対の声の根強さを示した選挙だと言うべきだろう。
(3)名護市議選は、県が辺野古の埋め立て承認を撤回し、工事が止まっている中で行われた選挙だった。翁長雄志前知事の急逝や、県の埋め立て撤回が選挙結果にどう影響したかははっきりしない。投票率から言えるのは、「辺野古疲れ」だけでなく、「選挙疲れ」や「選択疲れ」が見られることだ。


(「新報」)
(1)辺野古新基地建設問題と地域振興のはざまで揺れ動く市民の思いが選挙結果に表れたと言っていい。


Ⅱ.事実


(「タイムス」)
(1)名護市議選には、公明党の2人を含む与党系17人と野党系14人、野党的立場1人の32人が立候補した。公示前の議会構成は与党13人に対し、野党14人。定数が一つ減ったことから26議席を争う選挙となった
(2)市選挙管理委員会の発表によると、投票率は前回2014年を5・36ポイント下回る65・04%で、記録のある1970年以降過去最低だった。名護市民は選挙のたびに全国のメディアから注目され、辺野古移設に賛成か反対かを問われてきた。加えて2月の市長選では、外部から支援者が大量に投入された。こうした現実に対する拒否反応が投票率に影響を与えた可能性もある。投票率は下がったものの、有権者数に占める期日前投票の割合は、逆に前回の28・0%から32・1%に上がった。


(「新報」)
(1)米軍普天間飛行場の移設先とされる名護市の市議会議員選挙(定数26)は、開票の結果、渡具知武豊市長を支える与党が半数を占め、野党を1議席上回った。現在の議会勢力は与党13人、野党14人の少数与党だ。今回の選挙から定数が1議席減り、与党13人、野党12人、中立1人となった。定数1減の中で与党は現状を維持し野党は1人減らした。全国的にも注目されたが、肝心の投票率は前回を5・36ポイント下回る65・04%にとどまり、記録のある1970年以降で最も低かった。
(2)2月に初当選した渡具知市長に対し、有権者から一定の評価が下された。だが、野党と中立を含めると与党と同数であり、渡具知市長が自身の政策を思い切って実行できる態勢とはいえない。
(3)琉球新報が実施した立候補予定者アンケートで移設反対と答えたのは17人で、このうち、与党の公明を含む15人が当選した。賛成と答えた人は7人中5人が当選している。賛成5人、反対15人、その他6人という内訳になる。


Ⅲ.主張


(「タイムス」)
(1)市長選もそうだったが、企業や業界団体、創価学会による取り組みが期日前投票を押し上げたと思われる。この日は名護市のほか、沖縄、宜野湾、南城、石垣の各市でも議会議員選挙が行われた。選挙結果は9月30日の県知事選に影響を与えることになるだろう。今年に入って「オール沖縄」勢力は名護、石垣、沖縄の3市長選で連敗した。政府対「オール沖縄」勢力という構図は知事選ではいっそうはっきりするはずだ。それ自体、異様なことである。


(「新報」)
(1)辺野古移設を巡っては、反対する議員が賛成を大きく上回り、過半数を占めている。市長はそのことを念頭に置いて市政を運営すべきだ。
(2)政府サイドは、与党が野党を上回った結果をもって移設容認の民意が示されたと喧伝したいかもしれない。それは、こじつけというものだ。与党系の候補者で新基地賛成を表明して選挙戦に臨んだのは一部にすぎなかった。大半が「推移を見守る」などと態度を保留している。市長を支持する公明の2人は反対する立場だ。示された民意の大勢は容認ではなく移設反対だった。政府は市民の意向を尊重し、新基地建設を断念すべきだ。
(2)名護市長選で渡具知市長は、新基地建設を推進する安倍政権の支援を受けた。だが選挙戦では賛否を明らかにせず、問題を解決するために国と対話する姿勢を示した。就任後は、受給の再開が決まった米軍再編交付金を財源として、給食費や保育の無償化を進めている。移設を事実上容認する立場だ。
(3)再編交付金は米軍再編推進法に基づき再編事業の進捗(しんちょく)の度合いや負担の重さなどに応じて地方自治体に支給される交付金だ。移設反対を堅持した稲嶺進前市長の在任時には打ち切られた。国策を円滑に遂行するため自治体を「基地依存症」に陥らせる仕組みと言っていい。本来、このようなよこしまな狙いがある財源に頼らない体質の確立こそ、自治体には求められる。
(4)今回選ばれた人たちは、自身に託された思いを真摯(しんし)に受け止めながら、議員の職責を深く自覚し、市民のために全力で取り組んでほしい。


 「タイムス」と「新報」から受け取ることができるのは、次の指摘である。


Ⅰ.「投票率から言えるのは、『辺野古疲れ』だけでなく、『選挙疲れ』や『選択疲れ』が見られることだ。」(沖縄タイムス)
Ⅱ.「示された民意の大勢は容認ではなく移設反対だった。政府は市民の意向を尊重し、新基地建設を断念すべきだ。」(琉球新報)
Ⅲ.「再編交付金は米軍再編推進法に基づき再編事業の進捗(しんちょく)の度合いや負担の重さなどに応じて地方自治体に支給される交付金だ。移設反対を堅持した稲嶺進前市長の在任時には打ち切られた。国策を円滑に遂行するため自治体を『基地依存症』に陥らせる仕組みと言っていい。本来、このようなよこしまな狙いがある財源に頼らない体質の確立こそ、自治体には求められる。」




by asyagi-df-2014 | 2018-09-16 06:16 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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