アイヌ新法では、歴史的経緯を正しく位置づけ、国の責任を明確にしなけねばならない。
2018年 08月 23日
京都新聞(以下、「京都」)の8月17日付けの社説-「アイヌ新法 先住民族の権利明記を」に、自らの情報不足を痛感する。
このアイヌ新報で、日本の法律で初めてアイヌを「先住民族」と明記することになる。
「京都」は、次のように指摘する。
(1)「アイヌ民族の生活や教育の向上を支援する新たな法案を、政府が来年の通常国会に提出する。日本の法律で初めてアイヌを「先住民族」と明記する方向だ。」
(2)「これまで文化振興に限ってきたアイヌ政策を修正する。先住民としての権利を認め、同化政策で生まれた経済格差の解消や民族教育を受ける権利を具体的に保障する。」
(3)「生活支援を含めた新法の必要性は2009年の有識者懇談会が政府に提言しており、それが動きだす。『ようやく』という感は否めない。確実に成立させ政策を実施する必要がある。」
(4)「同時に、国内の一部にある『日本は単一民族国家』といった認識を改め、多様性を認め合う契機にしたい。」
また、「京都」は続ける。
(1)国連では07年に『先住民族権利宣言』が採択されている。先住民族の自決権や土地、資源に対する権利を幅広く認める一方、関係各国に権利保障のための立法措置を求めている。」
(2)「宣言には日本も賛成した。これを受けて翌08年には衆参両院で『「アイヌ民族を先住民族とすることを認める決議』が採択され、政府も先住民族と認める官房長官談話を出した。」
(3)「だが、具体的な政策は1997年のアイヌ文化振興法に基づくものに限られていた。アイヌ語の教育や民族文化、技術の継承などは一定の成果を上げているが、北海道の調査では、アイヌの世帯収入や進学率の低さなど、さまざまな格差が残っているという。」
(4)「狩猟や漁業で生活していたアイヌは同化政策で農業への転換を迫られた。だが、与えられたのは多くが農業に不向きなやせた土地だった。日本語の強制は独自の文化の衰退を招いた。北海道アイヌ協会の記録には、今に続く問題の歴史的経緯が明記されている。政府がこの間、文化振興にとどまった背景には、『特別扱い』という批判を恐れたことがある。土地や資源の権利回復が具体的に浮上することも懸念された。」
「京都」は、最後に、次のように押さえる。
(1)「だが、97年まで続いた旧北海道土人保護法による同化政策が生んだ矛盾を解消し、アイヌの血を引く人の誇りと尊厳を取り戻す責任は国にある。新法では歴史的経緯にも触れるべきだ。」
(2)「国は2020年4月に北海道白老町にアイヌ文化振興の拠点施設を開設する。アイヌへの理解と民族共生のための情報発信や教育の拠点になる。新法の整備と合わせ、アイヌ政策の柱となることを期待したい。」
確かに、「だが、97年まで続いた旧北海道土人保護法による同化政策が生んだ矛盾を解消し、アイヌの血を引く人の誇りと尊厳を取り戻す責任は国にある。新法では歴史的経緯にも触れるべきだ。」との「京都」の主張は、当たり前のことである。