「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の世界遺産推薦取り下げとは、自然と基地は相いれないという基本に戻るしかないこと。~沖縄タイムス20180603・琉球新報20180603~

 表題に関して、沖縄の二紙は、それぞれの社説で、「[世界遺産取り下げ]宿題に向き合う時間に」(沖縄タイムス)と「世界遺産取り下げ 自然と基地は相いれない」(琉球新報)と論評した。
どういうことなのか。
まずは、二紙の要旨をまとめる。


Ⅰ.やんばる地域などの世界自然遺産推薦が取り下げられたことの意味

(沖縄タイムス)
(1)「やんばる地域などの世界自然遺産推薦が取り下げられた。環境省は来年2月までに推薦書の再提出を目指す考えだが、登録を確かなものにするには、出された『重い宿題』に正面から向き合わなければならない。」
(2)「政府が『奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島』の世界遺産推薦取り下げを決定したのは、ユネスコの諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)から『登録延期』の勧告を受けたためだ。」
(3)「いったん取り下げて、再挑戦する方が早道と判断したのだろう。」


(琉球新報)
(1)「今後、推薦書を再提出する際、遺産価値に挙げていた生態系と生物多様性のうち、生物多様性に絞ることも決めた。理由はユネスコの諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)の勧告で、生態系の連続性を確保できていないと判断されたためだ。」
(2)「『資産の分断が生物学的な持続可能性に重大な懸念がある』と指摘された場所は、未返還の米軍北部訓練場を指しているはずだ。推薦地を分断する形で存在しているからだ。
 北部訓練場は2016年12月に過半の4010ヘクタールが返還された。しかし現在も3500ヘクタールが残されている。登録延期を勧告したIUCNは、返還された北部訓練場跡地を推薦地に含めるよう求めた。」
(3)「理由として推薦地の『価値と完全性を大きく追加するもの』と意義付けた。その推薦地を『世界的な絶滅危惧種の保護のために高いかけがえのなさを示す地域』と評価した。生態系を維持する上で、極めて重要な地域なのだ。それは訓練場として残された地域も同様だ。」


Ⅱ.沖縄で冷静に受けとめられた理由

(沖縄タイムス)
(1)「国内最大級の亜熱帯照葉樹林が広がり、世界でここにしかいないヤンバルクイナやノグチゲラなどが生息するやんばるの森は沖縄が誇る『宝』。にもかかわらず取り下げの決定を県民が冷静に受け止めているのは、勧告にうなずくところが多かったからである。」
(2)「IUCNが示した懸念の一つが、2016年に一部返還された米軍北部訓練場の跡地が推薦地域に含まれていないことだ。」
(3)「政府は早期に『やんばる国立公園』に編入し、推薦地に追加し、最短で20年の登録を目指すという。ただ跡地の土壌からは世界遺産のイメージを壊しかねない毒性の高い農薬が検出され、米軍が廃棄したとみられる訓練弾などが見つかっている。詳細な調査と汚染源の除去が優先されるのはいうまでもない。」
(4)「ゾーニングを巡っては、『飛び地』が複数あるなど狭い推薦地が点在する問題も指摘されている。世界遺産を包むように設けられる『緩衝地帯』も、やんばるの東側にはほとんどない。」
(5)「推薦地がいびつな形となっている要因が、返還されていない北部訓練場にあるのは明らかだ。」
(6)「危惧されるのは北部訓練場でのオスプレイ訓練に伴う排ガスや下降気流、低周波音が動植物に与える影響である。隣り合う基地に何の規制もかけずに生態系を守ることができるのか。」
(7)「やんばるを一つの大きな森としてまとまりをもった世界遺産地域とするためには、ゾーニングの見直しが求められる。」
(8)「本来なら北部訓練場の全面返還が望ましい。しかしそれが現実的でないというのなら、演習が遺産にマイナスの影響を与えないよう共同管理を米軍に要請すべきだ。」


Ⅲ.沖縄タイムス及び琉球新報の主張

(沖縄タイムス)
(1)「島という閉鎖的な環境で形成されてきた琉球諸島の生態系は思いのほかもろく弱い。」
(2)「地域経済の振興はもちろん大切だが、自然に悪影響を与えては元も子もない。登録後、観光客が一気に増えるオーバーユース(過剰利用)対策や外来種対策は、今から戦略的に取り組まなければならない課題である。」
(3)「かけがえのない自然遺産を次代へどう引き継いでいくか。登録に向けた運動の中で、県民一人一人がその価値と貴重性を深く理解していく必要がある。」


(琉球新報)


(1)「政府は訓練場跡地を国立公園に編入後、推薦地に追加し、遺産価値を生態系に絞った上で19年2月までに推薦書を再提出し、20年夏の登録を目指す。この地域を世界自然遺産として登録されることは極めて意義深い。そうであるからこそ、推薦書の遺産価値を生物多様性に絞るのではなく、当初通りに生態系も含めるべきではないか。」
(2)「そのためには北部訓練場の全面返還が欠かせない。さらに生態系の価値を認めさせるためには、推薦地を陸地だけでは不十分との指摘もある。日本自然保護協会は声明で『森川海の生態系の連続性を示すことができる流域・沿岸域・海域まで含めて推薦地へ組み込むことが重要である』と指摘した。」
(3)「本島北部の海域を推薦地に含めるならば、貴重なサンゴが群生する名護市の大浦湾を埋め立てることなどできないだろう。米軍普天間飛行場の返還に伴う名護市辺野古の新基地建設について、IUCNは陸地だけの推薦地としては『登録に与える影響に懸念があったが、一定の距離がある』としている。」
(4)「その一方で『厳格な外来種の防除対策』を求めている。環境負荷を危惧する意見が出ていたことも勧告に記された。自然遺産と米軍基地は相いれないのだ。」
(5)「世界自然遺産条約は、人類共有の価値ある自然または文化を未来に引き継ぐことを目的にしている。人類の宝ともいえるやんばるの自然を未来に残すためには、戦争を引き起こす米軍基地を残すことは許されない。」



 確かに、次のことが言える。


Ⅰ.国際自然保護連合(IUCN)は、今回日本政府が推薦した推薦地について、『世界的な絶滅危惧種の保護のために高いかけがえのなさを示す地域』と評価していること。
Ⅱ.やんばる地域などの世界自然推薦に関しては、ユネスコの諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)の勧告で、「生態系の連続性を確保できていない」、との判断が示されたこと。
Ⅲ.具体的な指摘事項である「資産の分断が生物学的な持続可能性に重大な懸念がある」とは、未返還の米軍北部訓練場が存在していることを示していること。
Ⅲ.「北部訓練場は2016年12月に過半の4010ヘクタールが返還された。しかし現在も3500ヘクタールが残されている。」というのが実態であること。また、具体的に、北部訓練場でのオスプレイ訓練に伴う排ガスや下降気流、低周波音が動植物に与える影響が存在すること。
Ⅳ.どう考えても、自然遺産と米軍基地は相いれないということ。


 結局、このことから導き出されるのは、「世界自然遺産条約は、人類共有の価値ある自然または文化を未来に引き継ぐことを目的にしている。人類の宝ともいえるやんばるの自然を未来に残すためには、戦争を引き起こす米軍基地を残すことは許されない。」(琉球新報)、ということであることは間違いない。




by asyagi-df-2014 | 2018-06-09 07:40 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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