禍根。国会議員に路上でいきなり暴言を浴びせた自衛官に対し、防衛省は訓戒処分で済ます。(2)

 あらためて、この国で何が起こっているのかを考えるために。
 「国会議員に路上でいきなり暴言を浴びせた自衛官に対し、防衛省は訓戒処分にしたと発表した。」、と毎日新聞が伝える問題である。。
 この問題に関して、琉球新報と佐賀新聞(共同通信・柿崎明二)は2018年5月12日、「暴言3佐訓戒処分 文民統制の不全を憂慮」「文民統制が問われている 幹部自衛官暴言問題」、とそれぞれ社説・論説を掲げた。
 この2紙の書き出しは、琉球新報は「政治が軍事に優越するというシビリアンコントロール(文民統制)が機能していないことがはっきりした。」、佐賀新聞は「文民統制に対する安倍政権の認識が問われている。」、と始まる。
 つまり、この問題は、安倍晋三政権下において、すでにシビリアンコントロールは有効な手段となっていないことを暴露するものであった。
 安倍晋三政権の進める日本国憲法改悪に何故反対しなければならないのか、まさしくその解答はこのことにある。


 ここでは、琉球新報と佐賀新聞の見解をまとめる。


Ⅰ.防衛省の処分

(琉球新報)
(1)「防衛省は、小西洋之参院議員に『国益を損なう』などと暴言を繰り返した統合幕僚監部の30代の3等空佐を、内部規定に基づく訓戒処分とした。訓戒は『軽微な違反』と規定される。」

(佐賀新聞)
(1)「小西洋之参院議員に『国益を損なう』などと暴言を吐いた統合幕僚監部の30代の3等空佐に対する処分が甘すぎるのだ。」
(2)「防衛省は8日、3佐の行為に関して品位を保つ義務を定めた自衛隊法58条に反するが、私的な立場の言動で『文民統制を否定するものではない』として懲戒処分にはせず、より軽い内部規定に基づく訓戒処分とした。」
(3)「防衛省は処分を決めた最終報告の中で国会議員について『国民の代表として国会による内閣に対する監督(自衛隊に対する文民統制を含む)の機能を担う立場にある』としている。そう位置づける国会議員への暴言は品位の問題だけなのか。3佐は調査に対して小西氏が安全保障関連法に反対していたことを動機として述べている。文民統制に対する挑戦と言わざるを得ない。」


Ⅱ.防衛省の処分への疑問

(琉球新報)
(1)「国民に選ばれた国会議員に対する暴言は、民主主義の根幹である文民統制を揺るがす。安倍政権が文民統制の重みを理解しているのか大いに疑問である。」
(2)「防衛省によると、3佐は国会議事堂周辺をジョギング中に遭遇した小西氏に、自衛官と明かした上で『あなたがやっていることは日本の国益を損なうようなことじゃないか』『国のために働け』『ばかなのか』『気持ち悪い』などの暴言を浴びせた。」
(3)「文民統制は軍が政治力を持った戦前の反省から生まれた。何が国益なのかは、実力組織を統制する側の文民が判断することであって、統制される側の自衛隊幹部が判断するものではない。3佐の発言は私的な立場のものであり『文民統制を否定するものではない』という防衛省の見解は詭弁(きべん)にすぎない。」
(4)「防衛省は、小西氏が主張した『おまえは国民の敵だ』との発言は3佐が否定したため認定しなかった。『国民の敵』という言葉は、青年将校が引き起こした五・一五事件の檄(げき)文に使われ、その後の軍の暴走を招いた。防衛省はもっと時間をかけて調査すべきだった。」

(佐賀新聞)
(1)「小野寺五典防衛相は10日の衆院安全保障委員会で、『処分は適正』と強調したが、こんな対応で実力組織を統制することができるのか。小野寺氏は問題発覚直後、『国民の一人でもあるので、当然思うことはある』とも述べていた。自らが任される文民統制への認識が甘すぎる。政権として再考を強く求めたい。」
(2)「防衛省は全く問題視していないが、3佐が暴言の動機として小西氏が安保関連法に反対したことを挙げているのは深刻だ。この考え方を敷衍(ふえん)すれば、この法に賛成した与党議員は支持するが、反対した野党議員は非難するということになる。」
(3)「極めて政治的な動機であり、自衛隊法61条に定める『政治的行為の制限』規定に反するのではないか。安保関連法やその前提である集団的自衛権を巡る憲法解釈の変更は安倍晋三首相主導で推し進められた。」
(4)「また安倍首相は、憲法9条への自衛隊明記を目指す理由として『自衛隊員の誇りのため』を挙げている。小西氏はこれにも強く反対している。3佐が国会議員を特定政策への賛否だけではなく、自分たちの味方と敵に分けて捉えている可能性さえある。」


Ⅲ.安倍晋三政権の危うさの指摘

(琉球新報)
(1)「統制する側にも問題がある。小野寺五典防衛相は、3佐の暴言が発覚した際『若い隊員で国民の一人でもあるので、当然思うことはあるだろう』と述べた。統制する側に、その自覚がないことを示す発言であり危うい。」
(2)「安倍政権下で自衛隊が組織と権限を拡充していることを憂慮する。」
(3)「2018年度の防衛費は、前年度比1・3%増の5兆1911億円。6年連続増で過去最高となった。中国の軍拡や海洋進出、北朝鮮のミサイル発射などを理由に、他の経費が軒並みマイナスとなる中で突出している。導入を決めた3種類のミサイルの射程は約500~900キロ。沖縄にも配備されているF15戦闘機に搭載される。那覇からでも中国の上海に達する。さらに北朝鮮の制空権内に接近することなくミサイル発射台などを狙える。日本海上空から北朝鮮の弾道ミサイル発射台をたたく敵基地攻撃が可能な射程を持つ。専守防衛に反する。」
(4)「15年に成立した改正防衛省設置法によって、防衛官僚(文官)が自衛官(武官)より優位だった「文官統制」制度を全廃し、武官の政治的な発言権が強化された。自衛隊はイラク派遣部隊の日報も隠蔽(いんぺい)した。戦前のように軍が暴走する事態を繰り返してはならない。」

(佐賀新聞)
(1)「文民統制に当たって国会は党派を問わず一致団結しなければならない。幹部自衛官のこんな見方に厳しい姿勢をとらなければ、統制を完遂することはできないだろう。」
(2)「事案の内容は全く異なるが、処分の甘さでは女性記者へのセクハラ発言を報道され、辞任した福田淳一前財務次官のケースも同様だ。自社の女性記者に対するセクハラがあったとのテレビ朝日の発表、抗議を受けて財務省は4月4日夜の会食におけるセクハラを同月末に認定し、6カ月の減給20%の懲戒処分に相当すると結論付けた。しかし、女性記者は1年以上前から複数回、被害にあったとしている。本来であれば過去の事案も調査しなければならないが、財務省は調査を打ち切るという。」
(3)「財務省では学校法人『森友学園』への国有地売却問題に関する決裁文書改ざんも起きている。財務省は理財局の一部による行為としているが、そうであるならば麻生太郎財務相の官僚に対する統制がきいていないことになる。」
(4)「信じられないような官僚による不祥事が多発している。文民統制だけでなく、政権の統治そのものが崩壊しつつあるのではないか。」


 確かに、この問題は、「安倍政権下で自衛隊が組織と権限を拡充している」中で、安倍晋三政権そのものが、シビリアンコントロールという文民統制能力をすでに失っているという重大な問題を暴露するものである。
そしてそれは、安倍晋三政権が、シビリアンコントロールという文民統制能力に止まらずに、「政権の統治そのものが崩壊」(佐賀新聞)してしまっているということを示すものなのである。




by asyagi-df-2014 | 2018-05-18 05:07 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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