町村議員のなり手不足対策を考える。~朝日新聞20180327愛媛新聞20180330~

 朝日新聞は2018年3月27日、町村議員のなり手不足問題に関わって、次のように報じた。


(1)「町村議員のなり手不足対策を検討してきた総務省の有識者研究会は26日、自治体職員との兼務を認めたり、定数減と報酬増をセットにしたりといった町村議会の新しい形を野田聖子総務相に提言した。」
(2)「人口減社会が進む中、小さな自治体の議員が無投票で決まる実態が多い現状から、幅広い人材確保をめざす仕組みとして、同省は早ければ来年の通常国会で地方自治法改正をめざす。だが、議会の監視機能が弱まることへの懸念や自治のあり方を政府主導で決めることへの反発も出ている。」
(3)「提言は、『町村議会のあり方に関する研究会』(座長・小田切徳美明治大教授)がまとめた。二つのタイプの制度創設を求める。」
(4)「一つは、兼業議員中心の『多数参画型』。契約や財産に関わることを議決対象から外し、公務員との兼職規制も緩和。県や別の市町村に勤める職員でも、自分が住んでいる町村の議員にはなれるようにする。選挙区は集落などの単位で設け、1から数人を選出することを想定している。」
(5)「もう一つは、少数の専業議員による『集中専門型』で、定数を3~5人程度に絞る一方、報酬を大幅に引き上げ、政策づくりなど専門性の高い活動をしてもらう。議員を減らす代わりに、多数の住民が『議会参画員』として条例や予算を議員と議論する仕組みも導入。裁判員のようなくじ引きでの選任を想定する。いずれかを選択する場合は自治体が条例で決めるとしているが、全国町村議長会は『(二つの型に)類型できるものではない』と反発している。」
(6)「『多数参画型』が想定する集落単位の選挙については、対立回避のためにかえって無投票を招くとの指摘もある。地方議会の制度に詳しい金井利之・東大院教授(自治体行政学)は『多数参画型は連合町内会のようになるだけで、実質的な議会の機能停止を招く。集中専門型で人数を減らしてもなり手不足対策の効果は乏しい』と批判。『権限を議会に与え、【やりがい】をつくることのほうが必要だ』と指摘している。」
 (平林大輔)

この問題に関して、愛媛新聞(「地方議員のなり手不足 実情踏まえ主体的な解決策探れ」-2018年3月30日)と朝日新聞(「町村議会改革 国のお仕着せが過ぎる」-2018年3月27日)の社説から考える。
二社の社説の要約は、次のものである。


Ⅰ.問題点


(愛媛新聞))
(1)「多数型は、兼業・兼職制限を緩和して現行定数より多い非専業的議員で構成。集中型は少数の専業的議員から成り、生活給を保障する水準の十分な議員報酬を支給するが、どちらも一長一短がある。地方議会には、議員の『なり手不足』の解消に向け、報告書を参考にしつつ地域の実情に合わせた主体的な取り組みを模索するよう求めたい。」
(2)「多数型では兼業・兼職の緩和により、他自治体の職員や自治体と取引のある企業役員も議員に選出できる。しかし、政策や議案によっては議員が属する他自治体や企業と、当該町村が利益相反になる可能性があり、行政の公平公正がゆがめられる危険性をはらむ。報告書は取引の公正さを保つため、契約や財産処分を議決対象から外すとするが、これでは首長の権限が強まり、首長と議会の二元代表制のバランスが崩れかねない。」
(3)「集中型では議員が少数になることで、幅広い意見の反映や首長への監視機能が弱まることが懸念される。議員になる道を極端に狭めることは、議会制民主主義の精神にも反しよう。」


(朝日新聞)
(1)「きのう公表された報告書には首をかしげざるを得ない。理由は三つある。」
(2)「ひとつは議会の機能が低下しかねないことだ。報告書は、二つの類型の議会像を初めて掲げ、現状のままを含めた3パターンから、一つを選ぶよう提唱している。」
(3)「『集中専門型』は3~5人程度の専業議員でつくり、生活できる議員報酬を保障する。民意を反映させるため、有権者による議会参画員制度も設ける。『「多数参画型』は、集落単位などで兼業議員中心に選ぶ。報酬水準は下げ、夜間や休日に議会を開く。仕事量や権限を減らし、県職員ら他の自治体の公務員の兼職も認める。だが『集中専門型』では少ない議員数で、『多数参画型』では兼業議員らで、執行部への監視機能が弱まらないか。どちらも議会と首長の二元代表制を崩す恐れがある。」
(4)「二つめは、2類型について、自治体に原則としてパッケージで選ばせる姿勢が、地域の自主性を尊重する分権改革に逆行している点だ。議員の報酬や定数の増減などは、現行制度のもとで、それぞれの議会が決めればできる。それをあえて新たな2類型に盛り込み、一括採用を促すのは、お仕着せが過ぎる。まるで、自治体議会を信用していないかのようだ。」
(5)「三つめの理由は、研究会が大学教授らだけで構成され、議論が非公開ですすんだことだ。議会を改革する方策は、もっと幅広く現場の意見を聴きながら作り上げるべきだった。」


Ⅱ.評価


(愛媛新聞)
(1)「報告書には参考とすべき点もある。新しい仕組みはどちらもサラリーマンらが立候補しやすいよう、立候補で仕事を休んだ際、雇い主による不利益な取り扱いを禁じた。」(2)「集中型では、重要議案の審議に住民参加を認めており、議会への関心を深めてもらうことが期待できる。」


(朝日新聞)
(1)「3年前の統一地方選で、町村議員は定数の約2割が無投票当選だった。人口が千人未満の議会では6割強にのぼった。過疎・高齢化や議員報酬の低さが、なり手不足の主な理由だといわれている。民主主義の土台である地方議会の窮状に対して、総務省が有識者を集めた研究会で対策を練ったのは時宜を得ている。」


Ⅲ.主張


(愛媛新聞)
(1)「各議会が三つの『仕組み』のどれかを選ぶのではなく、地域の実態を踏まえ報告書の個々の部分を「いいとこ取り」して制度改正に生かすという、柔軟なやり方が望ましい。」
(2)「そもそも現行制度でも、なり手確保へできることはある。第一歩が、住民に議会を身近に感じてもらうことだ。他県では請願・陳情を提出した本人が議会で趣旨を説明したり、定例会の一般質問後に傍聴者の発言を認めたりしている。だが現状では、政務活動費の不正流用など、議会と住民の溝を深める事態が相次ぎ、議会不信に拍車を掛けている。愛媛でも、本来の趣旨に沿わない疑いの強い政活費支出が見られる。議長職については、全議会が地方自治法の定める任期4年に反して1、2年でたらい回ししている。政策論争よりポスト争いが目立つ印象は否めない。」
(3)「なり手不足の一因には、議会に関心を持ってもらう努力不足があるだろう。議員は自らの職責の重さを肝に銘じ、首長への監視や政策立案機能を十分に果たさなければならない。議会本来の役割を成し遂げることは、住民が議員を志すきっかけにもなるはずだ。」


(朝日新聞)
(1)「議員確保の試みは、すでに各地で始まっている。議会の夜間開催に踏み切った長野県喬木村(たかぎむら)、住民による政策サポーター制度を導入した同県飯綱町(いいづなまち)、50歳以下の議員報酬を高くした長崎県小値賀町(おぢかちょう)などだ。」
(2)「総務省に求められるのは、こうした事例を踏まえた具体策づくりであり、議会の類型を示すことではない。兼職禁止規定の緩和だけでなく、公営選挙の拡充、休職や復職がしやすい制度など多様な選択肢を示すことの方が、なり手不足対策に役立つに違いない。」


 この提言の問題点で考えさせらるのは、安倍晋三政権下で強要されてきた「中央集権化」の手法がそのまま多用されているということである。
 例えば、「議論が非公開ですすんだことだ。議会を改革する方策は、もっと幅広く現場の意見を聴きながら作り上げるべきだった。」(朝日新聞)や「2類型について、自治体に原則としてパッケージで選ばせる姿勢が、地域の自主性を尊重する分権改革に逆行している点だ。」(朝日新聞)、といった指摘は、まさにこのことを表している。
 やはり、この提言の「報告書には参考とすべき点もある。」(愛媛新聞)部分を含め、
「総務省に求められるのは、こうした事例を踏まえた具体策づくりであり、議会の類型を示すことではない。兼職禁止規定の緩和だけでなく、公営選挙の拡充、休職や復職がしやすい制度など多様な選択肢を示すことの方が、なり手不足対策に役立つに違いない。」、ということが言える。




by asyagi-df-2014 | 2018-04-05 07:31 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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