[辺野古・高江裁判]-問われなけねばならないのは日本という国。(1)

 「辺野古・高江裁判」について、琉球新報は2018年3月15日、「名護市辺野古の新基地建設や東村高江の米軍北部訓練場ヘリコプター発着場建設に対する抗議活動を巡り、威力業務妨害や公務執行妨害・傷害などの罪に問われた沖縄平和運動センターの山城博治議長(65)ら3人の判決公判で、那覇地裁の柴田寿宏裁判長は14日、「米軍反対運動の中で行われたが、犯罪行為で正当化できない」として山城議長に懲役2年(求刑同2年6月)、執行猶予3年を言い渡した。山城議長らは「抗議活動の背景を見ず、行為のみに着眼して論じている。形式的な不当判決だ」と批判し、判決を不服として即日控訴した。」、と報じている。
 この裁判については、「山城議長らは辺野古新基地建設などに抵抗し、抗議活動を続けてきた。国が約500人の機動隊員を投入し、運動は激しさを増した。その過程で山城議長が逮捕、約5カ月長期勾留され、国際社会から批判が上がった。弁護側は公判で国際的な批判や注目を集めていることを訴えていた。」(琉球新報)、との国内外から大きな注目を集めていた。
 この裁判の概要について、琉球新報は同日、次のように伝えている。


(1)「山城議長と共謀し、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブの工事用ゲート前にブロックを積み資材搬入を妨害したとして、威力業務妨害に問われた稲葉博さん(67)に懲役8月(求刑同1年)、執行猶予2年の判決。北部訓練場へのヘリコプター発着場建設の抗議活動を巡って起訴された添田充啓さん(45)は懲役1年6月(求刑同2年)、執行猶予5年、一部無罪だった。稲葉さんも控訴した。」
(2)「山城議長らは辺野古新基地建設などに抵抗し、抗議活動を続けてきた。国が約500人の機動隊員を投入し、運動は激しさを増した。その過程で山城議長が逮捕、約5カ月長期勾留され、国際社会から批判が上がった。弁護側は公判で国際的な批判や注目を集めていることを訴えていた。」
(3)「判決理由で柴田裁判長はブロック積み上げ行為について『表現活動の面を有する』と正当性を認めたものの『単なる表現活動にとどまらず、憲法で保障される表現の自由の範囲を逸脱している』と判示した。」
(4)「ブロック積み上げや工事車両の前方に立ちふさがるなどの一連の行為は威力で妨害していると山城議長の罪を認定した。その上で『(行為は)正当化できない』」と非難し、『反対運動のリーダー的存在として主導的役割を果たし共犯者らの犯行をあおった』と指摘した。」
(5)「添田さんが刑事特別法違反罪に問われた事案では、立ち入りを禁じる明示がなくても立ち入れば処罰の対象なり得るとした過去にない判断を示した。」
(6)「判決によると、山城議長は2016年1月に名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ工事用ゲート前でブロック1486個を積み上げ、資材搬入の業務を妨害したなどとされる。」


 この「辺野古・高江裁判」について、琉球新報と沖縄タイムスの3月15日付けの社説で、考える。
 那覇地裁の判決について、両社は、次のように反論する。
最初に、琉球新報は、まず、次の二点を明確にする。


Ⅰ.「有罪判決は、新基地反対の民意を力で封じている政府の姿勢に裁判所がお墨付きを与えるものであり、納得できない。表現の自由、集会の自由など憲法が保障する権利を認めず、国連の人権基準にも抵触するような判決は受け入れられない。」
Ⅱ.「本来、問われるべきは山城議長らではない。政府の方である。国土面積の0・6%の沖縄に米軍専用施設の70・38%を集中させ、新基地建設を強行している。山城議長らを逮捕・長期勾留し、抗議行動の力をそごうとしたのは明らかだ。」


 判決内容については、次のように批判する。


(1)「起訴状によると、山城議長は2016年1月に名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ工事用ゲート前でブロックを積み上げ、資材搬入の業務を妨害し、同8月には米軍北部訓練場付近で沖縄防衛局職員の肩を激しく揺さぶって約2週間のけがを負わせた。同10月には同訓練場の進入防止用の有刺鉄線1本をペンチで切断したとしている。」
(2)「弁護側はブロック積み上げ行為について、威力業務妨害を適用することは『表現の自由を侵害し違憲だ』などと主張し、器物損壊を除く各事案で無罪を訴えていた。」
(3)「判決は山城議長らの行為について『表現の自由を逸脱』する『犯罪行為であって、正当化することはできない』と指摘している。山城議長が公務員に暴行を加えて傷害を負わせたのは『悪質』で、反対運動のリーダー的存在として『主導的役割を果たした』と認定した。山城議長の『言動が共犯者らの犯行をあおったという面があり、この点について強い非難を免れない』と指摘している。」


 この上で、今回の判決について、次のように厳しく断じる。


Ⅰ.  「今回の判決は、人権を巡る国際法の理念に背を向ける内容だ。16年に日本を調査した国連人権理事会の特別報告者は、山城議長の逮捕と長期勾留について「抗議行動に不釣り合いな制限が加えられている」「裁判なしに5カ月間拘束したのは不適切で、表現の自由に対する萎縮効果を懸念する」と報告している。ヘリ発着場建設や新基地建設の抗議行動に対する警備は、市民の抗議活動を政府が制限する際の国連ガイドラインを逸脱している。」
Ⅱ.「ところが那覇地裁は、弁護側が提出した国際人権法専門家の証人申請を却下し、長期勾留を批判した国連特別報告者の資料などの証拠申請も却下した。判決は国連が指摘した国連ガイドラインに沿った内容ではない。日本は国連人権理事会の理事国である。国際基準と向き合わない裁判所の姿勢は異様ですらある。


 次に、沖縄タイムスの主張を見てみる。
 沖縄タイムスは、まず最初に、この裁判の位置づけについて、「国内外の人権団体や平和運動団体からも注目された判決だった。多くの支援者が危機感をもって那覇地裁前に集まったのは、辺野古や高江を巡る政府の対応があまりにも強権的だからである。」、と指摘する。
 この裁判所の判決について、「だが、裁判所は、米軍基地を巡る沖縄の歴史や現実にはまったく触れなかった。なぜ、このような抗議行動が起きたのかという背景にも関心を示さなかった。」、と批判する沖縄タイムスの主張は、次のものである。


Ⅰ.「キャンプ・シュワブのゲート前に大量のブロックなどを積み上げ、工事用車両の搬入を阻止しようとしたことなどの事実を取り上げ、『表現の自由の範囲を逸脱している』と断じたのである。」
Ⅱ.「この判決は大きな副作用を生むおそれがある。傷害罪の成立を認めることによって憲法で保障された市民の正当な抗議行動と反対意見の表明を萎縮させかねないのである。」
Ⅲ.「『意見および表現の自由』に関する国連特別報告者のデービッド・ケイ氏が、訪日後にまとめた報告書の中で危惧したのはこの点である。」


 また、この判決内容の問題点について、沖縄タイムスは、次のように指摘する。


(1)「判決は『共謀』の認定についても、厳密さを欠いているところがある。『共謀』と認定される行為の範囲が広がれば、表現の自由に対する重大な脅威になるだろう。」
(2)「裁判所にはもともと限界があり、過剰な期待をもつのは禁物だが、『人権のとりで』としての司法がその役割を果たさず、行政と一体化すれば、三権分立は成り立たない。」
(3)「辺野古・高江裁判は、日本の民主主義を、根っこから問う裁判といっても過言ではない。」


 あわせて、沖縄タイムスは、この「辺野古・高江裁判」が根本的に抱えている問題について、次のように指摘する。
 それは、那覇地裁が一顧だにしなかった問題である。
 言わば、このことから、今回の判決がいかに不当であるかが分かる。
 まさしく、「判決後の記者会見で山城議長は『沖縄の実態を見ようとしない不当な判決だ』と声を荒げた。」(沖縄タイムス)が示すものである。


(1)「米軍基地を巡る裁判で、決まって、住民側から提起される問いがある。『本来、問われるべきは何なのか』『裁かれるべきは誰なのか』という問いかけだ。」
(2)「辺野古の新基地建設や高江のヘリパッド建設で浮かび上がったのは、目まいがするような政府側と住民側の「不均衡」である。警備陣の暴力的な警備によって住民側には負傷者が相次いだ。違法行為や違法な疑いのある行為も目立った。」
(3)「名護市長選や知事選、衆院選などで新基地建設に反対する候補者が当選し、明確に民意が示されたにもかかわらず、一顧だにせず、強引に工事を進めた。その結果、高江や辺野古の現場では、取り締まる側と市民の間に著しく『衡平(こうへい)』を欠いた状態が生じてしまったのである。」


 両社の社説を通して確認できることは、次のことである。
 第一に、「ヘリ発着場建設や新基地建設の抗議行動に対する警備は、市民の抗議活動を政府が制限する際の国連ガイドラインを逸脱している。」(琉球新報)、ということが出発であること。
 第二に、那覇地裁の訴訟の進め方が、弁護側が提出した国際人権法専門家の証人申請を却下し、長期勾留を批判した国連特別報告者の資料などの証拠申請も却下するなど、国連が指摘した国連ガイドラインに沿ったものではないこと。
 第三に、「表現の自由の範囲を逸脱している」との判決は、「この判決は大きな副作用を生むおそれがある。傷害罪の成立を認めることによって憲法で保障された市民の正当な抗議行動と反対意見の表明を萎縮させかねないのである。」(沖縄タイムス)、というものであること。
 第四に、「辺野古・高江裁判は、日本の民主主義を、根っこから問う裁判といっても過言ではない。」(沖縄タイムス)、ということ。
 
ただ、思う。
 私たちは、これまで、「日本の民主主義を、根っこから問う裁判」に負け続けてきた。
 だからこそ、踏みとどまるひつようがある。




by asyagi-df-2014 | 2018-03-21 07:56 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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