沖縄における過剰警備を考える。-沖縄タイムス・琉球新報社悦20180118から-

 沖縄タイムスと琉球新報は、2018年1月18日付けの社説で、「[高江の検問違法]『過剰警備』への警鐘だ」「琉球新報社説-高江の通行制止判決 違法な過剰警備を改めよ」、とそれぞれ論評した。
 二社の主張は、次のものである。


Ⅰ.主張

(沖縄タイムス)

(1)「名護市辺野古の新基地建設の抗議現場では今も警察官が参加者にカメラを向け続けている。抗議行動を萎縮させる人権侵害の疑いが残る。」
(2)「裁判を通して明らかになったのは、当時の警備の過剰さである。実際、高江周辺では法的根拠のない車両検問、市民テントの強制撤去、道路の封鎖などが繰り返された。高江のヘリパッド建設や辺野古の新基地建設は、安倍政権の重要課題と位置付けられており、強引な法解釈や解釈変更による工事の強行が目立つ。」
(3)「政権の強行姿勢が現場の過剰警備につながっている側面があるのではないか。」


(琉球新報)

(1)「取り締まる側の恣意(しい)的な判断で、何でもまかり通るという事態に歯止めをかける司法判断が下された。」
(2)「憲法21条は一切の言論表現の自由を、前提条件なしに保障する。米軍基地建設反対の行動は、表現の自由の行使である。非暴力である以上、規制されるべきではない。現在、抗議活動が続く名護市辺野古の新基地建設現場も同様である。」
(3)「警察官による過失を認めた今回の判決は、国際基準からしても妥当だ。国連人権理事会は市民の抗議活動を政府が制限する際のガイドラインを定めている。内容は(1)長期的な座り込みや場所の占拠もガイドラインが対象とする『集会』に位置付ける(2)座り込みなどによる交通の阻害は、救急車の通行といった基本的サービスや経済が深刻に阻害される場合以外は、許容されなければならない(3)集会参加者に対する撮影・録画行為は萎縮効果をもたらす(4)力の行使は例外的でなければならない(5)集会による渋滞や商業活動への損害も許容されなくてはならない-などだ。」
(4)「日本は国連人権理事会の理事国であり、ガイドラインを順守する立場にある。しかし、高江の過剰警備は明らかに国際基準から逸脱している。現在、辺野古の新基地建設の抗議活動に対し、抗議参加者の強制排除やビデオ撮影が続いている。民意に反してヘリパッドや新基地を建設するために、行き過ぎた警察権が行使されている。本をただせば、政府に責任がある。今回の判決は政府の姿勢も問うている。」


Ⅱ.判決の経過

(沖縄タイムス)

(1)「米軍ヘリパッド建設に反対する市民を支援する弁護士が、警察官に車の通行を制止されたなどとして国家賠償を求めていた訴訟で、那覇地裁は県警の違法性を認め、県に30万円の支払いを命じた。」
(2)「工事期間中、現場周辺では節度や抑制を欠いた警備が目立ち、反対派住民からは『公権力の濫用』との批判が絶えなかった。司法の場で違法性が認定されたことを県警は重く受け止めてもらいたい。」
(3)「ヘリパッド建設が進んでいた2016年11月、東村高江の県道で実施された検問を巡る裁判である。弁護士の男性は、警察官に車両の通行を2時間余り制止された上、承諾なくビデオ撮影されたことに精神的苦痛を受けたとして慰謝料の支払いを求めていた。」


(琉球新報)

(1)「米軍北部訓練場ヘリコプター発着場(ヘリパッド)建設を巡り、反対住民を支援する弁護士が東村高江の抗議現場近くで警察官に違法に約2時間通行を制止され精神的苦痛を受けたとして、県に損害賠償を求めた訴訟で、那覇地裁は県警の制止行為やビデオ撮影について違法と判断、県に慰謝料の支払いを命じた。」

Ⅲ.判決内容

(沖縄タイムス)

(1)「争点は車両制止とビデオ撮影が適法だったかどうか。裁判所はいずれも原告の自由を制約するもので、警察官職務執行法(警職法)や警察法に照らしても正当化できず、違法と認定した。」
(2)「警職法5条には『警察官は、犯罪がまさに行われようとするのを認めたときは…制止することができる』とあるが、判決は弁護士の言動や服装から『犯罪行為に及ぶ具体的蓋然(がいぜん)性があったと認めることはできない』と結論付けた。さらに『抗議参加者であるとの一事をもって、犯罪行為に及ぶ具体的蓋然性があると判断することは合理性を欠く』とも指摘する。」
(3)「警職法は警察権力の拡大を防ぐために厳格な要件を課している。適法に抗議する市民を犯罪者予備軍扱いするようなことがあってはならない。」
(4)「もう一つの争点である警察官によるビデオ撮影について判決は、許容できるのは『犯罪が発生する蓋然性』『証拠保全の必要性と緊急性』『方法に相当性』がある場合とする。だが今回はどの要件も満たしていないと判断した。」
(5)「警察官がデモを写真撮影したことの是非が問われた京都府学連事件で、最高裁は1969年、憲法13条を根拠に肖像権を認める初の判決を出した。デモ行進に参加している人たちであっても『みだりにその容貌・姿態を撮影されない自由』を認めたのである。那覇地裁の判決はそこまで踏み込んでいないが、警察官のビデオ撮影は承諾なく容貌を撮影されない自由を制約するもので、憲法に抵触する可能性が強い。」


(琉球新報)

(1)「高江でヘリパッド建設工事が本格化した2016年7月以降、県警は県道70号の規制を恒常化した。当初は抗議活動の参加者だけでなく、付近の住民や農家も通れず、西海岸まで戻って遠回りを余儀なくされる事例が相次いだ。判決によると、打ち合わせのため抗議現場に向かった弁護士は県警指揮下の警察官に止められ、停止の根拠を求めたが、回答はなかった。意思に反して2時間以上道路に留め置かれた上、約1時間以上にわたって承諾なくビデオ撮影された。判決は『抗議参加者であるとの一事をもって、その者が犯罪行為に及ぶ具体的な蓋然(がいぜん)性があると判断することは、合理性を欠く』と指摘し、抗議活動に理解を示した。」
(2)「警察官によるビデオ撮影についても『犯罪行為に及ぶ蓋然性はなく必要性も相当性も肯定できない』と批判し、違法と認定した。」


 確かに、安倍晋三政権は、この判決の意味を、「政権の強行姿勢が現場の過剰警備につながっている側面があるのではないか。」(沖縄タイムス)、「民意に反してヘリパッドや新基地を建設するために、行き過ぎた警察権が行使されている。本をただせば、政府に責任がある。今回の判決は政府の姿勢も問うている。」(琉球新報)、と捉える必要がある。
また、私たちは、国連人権理事会の「市民の抗議活動を政府が制限する際のガイドライン」を私たちは、きちんと理解する必要がある。





by asyagi-df-2014 | 2018-01-25 07:11 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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