生活保護基準の切り下げは許されない。(3)

 生活保護基準の切り下げの問題に関して、認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい(以下、もやい)は、「生活扶助基準の引き下げを止めてください」、との緊急声明を出した。
 この声明から、生活保護基準の改定切り下げの問題を考える。
厚労省は2017年12月8日に、生活保護基準部会を開催し、「生活扶助基準の検証結果(案)」「有子扶助・加算に関する検証結果(案)」「これまで出された検証手法に関するご意見について」の資料が明らかにするなかで、具体的な今後の生活扶助基準の見直しについての「提案」を明らかにした。
 この「提案」について、もやいは、次のように具体的に反論する。


Ⅰ.生活扶助基準が大幅に削減されること
(1)この「生活扶助基準の検証結果(案)」においては、二つの新たな生活扶助基準の計算方法が書かれており(「展開方法①」と「展開方法②」)、この通りに基準が見直されるとすると、多くの世帯で可能性があります。
(2)例えば、都市部(1級地の1)で夫婦子1人世帯 (30代夫婦+子3~5歳)の場合、現行基準が148380円のところ、展開方法①だと144760円、展開方法②だと143340円となります。どちらの方法でも4000円~5000円の減額となります。また、同じく都市部の母子世帯 (子2人) (40代親+中学生+小学生)の場合は、現行基準が155250円のところ、展開方法①だと145710円、展開方法②だと144240円となり、こちらはどちらも1万円以上の減額となります。そして、同様に都市部の高齢単身世帯 (65歳)に関しては、現行基準で79790円のところ、展開方法①では73190円、展開方法②だと74370円とこちらも減額です。もちろん、世帯構成によっては展開方法①の場合は現行基準を上回る、などのものもありますが、現実には高齢単身世帯が多いことなどの実際の生活保護世帯の世帯類型でみれば、総じて引き下げといった方向性であることは明らかです。

Ⅱ.算定基準の問題
(1)また、そもそもが、これはすでに様々な指摘があることでもありますが、生活扶助基準を計算するときに、第1・十分位(最も所得が低い下位10%層)の消費実態と比較するという方法自体に問題があります。生活保護制度自体の捕捉率が2~3割と言われている現状で、第1・十分位と比較しそこに基準を合わせていくことは、引き下げありきの議論であると言わざるを得ません。低所得者は所得が低いわけですから必ずしも消費を満足にできません。その低所得者の消費実態をもとに最低生活基準を定めるのではなく、物価の上昇等をふまえた現実に即した基準の検討をおこなってもらいたいと思います。
(2)加算に関しても現段階でまだ金額は明らかになっていませんが、「有子扶助・加算に関する検証結果(案)」を見る限りにおいては、大幅な減額になる可能性もあります。そもそもが「母子加算」に関しては、子どもにかかる費用というよりは、ひとり親で子育てをすることに対しての「加算」であるにも関わらず、親が二人いる世帯と「固定的経費の割合は変わらない」という発想は筋違いであるとも考えます。

Ⅲ.これまでに生活扶助基準の引き下げが行われてきた結果
(1)生活扶助基準の引き下げは、今回が初めてではありません。2013年8月から、すでに段階的に生活扶助基準の引き下げはおこなわれ、生活保護世帯の家計の平均6%がカットされました。しかも、子どものいる世帯ほど結果的に多く削減される計算方法がとられており、同年に成立した「子どもの貧困対策基本法」の理念と矛盾したものとなっています。
(2)そして、2014年4月からは、消費税が8%となり、低所得者、生活保護世帯の暮らしを圧迫しています。また、物価の上昇や円安の影響により、食料品や灯油代等の値上げも、喫緊の課題として家計を直撃しています。
(3)実際に、報道等ですでに「生活扶助の1割カット」というニュースを見て、不安に感じた生活保護利用者より当団体にも相談が寄せられています。2013年の生活扶助基準の引き下げ以降、生活保護利用者の生活は苦しくなる一方です。必要なのは引き下げではなく支援を手厚くしていくことなのではないでしょうか。


 もやいは、最後に、「私たち、〈もやい〉は、まだ案の段階であるものの、生活扶助基準の引き下げに対して大きな懸念を感じております。また、拙速な議論による引き下げには強く反対いたします。さらなる生活扶助基準の引き下げをいますぐに止めていただくよう、声明します。」、と声明を結んだ。


 私たちが確認しなければならないのは、生活扶助基準が大幅に削減されると、直接、生活そのものを脅かされるということ。また、 今必要なのは、引き下げではなく支援を手厚くしていくことであるということ。




by asyagi-df-2014 | 2018-01-13 07:05 | 持続可能な社会 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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