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米軍ヘリ運航再開を考える。-沖縄タイムス・琉球新報社悦20171219から-

沖縄タイムスと琉球新報は、12月19日付けの社説で、沖縄タイムスは「[米軍ヘリ飛行再開へ]負担の強要 もはや限界」、琉球新報は「CH53E飛行再開へ 米本国では許されない」、と論評した。
しかし、2017年12月19日12時23分頃、沖縄県や地元の宜野湾市が中止を求める中、GH53E1は米軍普天間飛行場を離陸した。
あらためて、この問題を、19日付けの二紙の社説で考える。
 沖縄の二紙は、このように主張する。


Ⅰ.沖縄タイムス
ⅰ.事実

(1)事故が起きてからまだ1週間もたっていない。原因究明はおざなりで、再発防止策も実効性の疑わしい内容だ。それなのに米軍は、事故を起こしたCH53E大型ヘリの飛行を再開し、日本政府もこれを認める考えだという。
(2)13日午前、米軍普天間飛行場所属のCH53Eの窓が、普天間第二小学校の校庭に落下した。小2と小4の児童約60人が、体育の授業を受けていたまさにその場に、重さ約7・7キロ、約90センチ四方の脱出用の窓が、金属製の枠もろとも、きりもみ状態で落下したのである。保護者や住民が受けた衝撃は計り知れない。
(3)米軍は、手順を守らなかった搭乗員の人為的なミスで機体に問題はなかった、との調査結果を県に伝えた。事故後見合わせていた同型機の飛行を再開する方針だ。
(4)防衛省によると、搭乗員は飛行前点検の際、窓のレバーが安全ワイヤによって固定されていないことを見落とした。「(窓のレバーが)誤って、または不注意によって緊急脱出の位置に動かされたことによって、窓が航空機から離脱した」のだという。


ⅱ.問題点

(1)再発防止策として普天間第二小を含むすべての学校の上空飛行を「最大限可能な限り避ける」としている。そういう方針は、建前上は、これまでも堅持していたのではないのか。それともこれまでは「できる限り学校、病院を含む人口密集地帯上空を避ける」と言いながら、「できる限り」を都合よく解釈して運用してきたというのか。
(2)騒音規制措置に盛り込まれた「できる限り」という表現を、再発防止策と称して「最大限可能な限り」という表現に変えたことに、逆に不信感を抱かざるを得ない。
(3)米軍は、米連邦航空法に基づく飛行場の安全対策として、滑走路両端の延長上にクリアゾーン(事故可能性区域)を設け、土地利用を大幅に制限している。ところが、普天間飛行場では、クリアゾーンに普天間第二小をはじめ学校や保育園、病院、公民館などの公共施設が存在する。それが問題だ。


ⅲ.主張

(1)なぜ、これほど単純な操作ミスが発生するのか、そこがまったく明らかにされていない。米軍機の事故がこれでもかこれでもかと立て続けに起きているのはなぜなのか。
機体に問題がないからといって、飛行を再開してもいいということにはならない。一方的な再開方針の伝達は県民感情を無視した基地負担の押し付けである。
(2)普天間飛行場は、住民の安全への考慮を欠いた欠陥飛行場である。普天間飛行場の辺野古移設は「高機能の新基地を確保するために危険性除去を遅らせる」もので、負担軽減とは言えない。一日も早い危険性の除去を実現するためには、安倍晋三首相が仲井真弘多前知事に約束した「5年以内の運用停止」を図る以外にない。期限は2019年2月。そこに向かって、不退転の決意で大きなうねりをつくり出し、目に見える形で県民の強い意思を示す必要がある。命と尊厳を守るために。


Ⅱ.琉球新報

ⅰ.問題点

(1)普天間第二小米軍ヘリ窓落下事故を受け、飛行を控えていた米軍普天間飛行場所属のCH53E大型輸送ヘリコプターの飛行を再開する方針を米軍が県などに伝えた。事故原因について米側は「人的要因」と説明した。だとすれば訓練が必要だろうし短期間の飛行再開は納得できない。
(2)この1年間、米軍機の事故が頻発している。その都度日本政府は、米軍の飛行再開を容認してきた。翁長雄志知事が指摘するように「当事者能力がない」。
(3)CH53Eは2004年に宜野湾市の沖縄国際大学に墜落したCH53Dの後継機。30年以上運用し、アフガニスタン紛争にも投入された。老朽化が進み部品が枯渇して、海兵隊航空機の中でも最も深刻な整備と即応性の課題が指摘されている。飛行可能は37%という米国報道もある。だから今回の事故が「人的要因」というのは説得力がない。順次退役が決まっているが、積載量の増加やコックピットの近代化などを打ち出した新型機CH53Kは開発が遅れ、今年4月に生産体制が整ったばかりだ。
(4)今年10月11日に東村高江で不時着炎上したCH53は、1週間後の18日に通常飛行を再開した。発表文で米軍は「整備記録」を確認した結果、飛行再開を決めたとしたが、原因究明や再発防止策の説明は一切なかった。この時、ローレンス・ニコルソン在沖米四軍調整官は「われわれは日本における米海兵隊航空機の飛行の安全性を約束している。安全ではないと思える運用は決して許さない。CH53Eヘリは沖縄や日本本土で長年、日米同盟に奉仕してきた信頼できる航空機だ」と述べた。
(5)にもかかわらず今回、落下事故が発生した。米本国では短期間の飛行再開は許されないだろう。

ⅱ.主張

(1)米軍の不誠実な対応と日本政府の米国追従ぶりは、目に余る。
(2)防衛省は飛行再開のために必要な措置が取られたとして、飛行再開の容認を決めた。県民にきちんと説明しないまま、米軍の言いなりである。これでは米軍の代行機関ではないか。
(3)海兵隊は普天間第二小学校の喜屋武悦子校長に安全点検と搭乗員に対する教育を徹底できたとの認識を表明。最大限、学校上空を飛ばないようにすると米軍内で確認したことを伝えた。これに対し「最大限の確認では納得できない」と喜屋武校長が述べたのは当然だ。飛行禁止にすべきだ。
(4)昨年12月の北部訓練場過半の返還を記念した式典で、菅義偉官房長官は「今回の返還は日本復帰後最大の返還であり、沖縄の米軍施設の約2割が返還され、沖縄の負担軽減に大きく寄与する」と強調した。だが沖縄で起きているのは「負担強化」でしかない。
現状を改善できないなら、日本政府は米国の「共犯」と言われても仕方ない。


 確かに、今回のGH53E飛行再開の強行があらためて明確にしたのは、一つには、「米本国では短期間の飛行再開は許されない」という米国の二重基準の使い分けの露呈と、もう一つは、日本政府の米国追従ぶりのすごさという主体性のなさである。
 今回のことで残されたのは、『最大限飛ばさない』という口約束の「安全宣言」とこれまで同様の危険性でしかない。
 結局、最も深刻なのは、『最大限可能な限り避けるよう指示』というあいまいな理由で命を危険に曝されて続ける側に思いを寄せることができない、『目下の同盟』から抜け出せない日本という国のあり方である。




by asyagi-df-2014 | 2017-12-30 06:55 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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