広島高等裁判所の四国電力伊方原子力発電所3号機の運転差止を命じる仮処分を決定を考える。(2)
2017年 12月 26日
広島高等裁判所は、2017年12月13日、四国電力伊方原子力発電所3号機の運転差止を命じる仮処分を決定した。
このことに関して、伊方原発運転差止広島裁判弁護団は2017年12月13日、「広島高裁決定を受けて」、という「声明」を発表した。
「声明」は、この仮処分について、次のように説明する。
Ⅰ.仮処分の内容
広島高裁第2部(野々上友之裁判長,太田雅也裁判官,山本正道裁判官)は,本日,伊方原発3号機運転差止仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件において,伊方原発3号機の運転差止を命ずる仮処分を求める住民らの申立てに対し,平成30年9月30日までの期限をつけて運転を差し止める旨の決定を出した。
Ⅱ.意義
高等裁判所として現実に原発の運転禁止を命ずるのは,史上初であり,また,被爆地ヒロシマの裁判所においてこれ以上放射線による苦しむ人々を増やさない決定がなされた意義はひとまず大きい。これによって,四国電力は,伊方原発3号機について,現在行なわれている定期検査に伴う運転停止を終えた後も(送電開始予定日は2018年(平成30年)1月22日),運転を再開することはできなくなった。
Ⅲ.問題点等
(1)もっとも,本決定の内容については,原発の危険性について正しく認定していない点も見られる。
特に,傍論とは言いながら,地震動に対する原発の安全性については,①地震科学の不確実性を見誤って事業者の楽観的な主張を踏襲している点,②地震本部の策定したいわゆるレシピを絶対視して不確実性を踏まえない点で,福島第一原発事故の教訓を活かしきれておらず,再び深刻な事態が生じかねない内容となっている点で極めて不当である。ただし,これらの点はあくまでも傍論であり,判例的価値は有しないと考える。
(2)本訴において証拠調べをするためとの理由で平成30年9月30日までの期限付の差止めとしている点でも不合理である。現在本訴において証拠調べ等の審理の見通しは立っていない状況であり,被告側は反論すら出していない。そもそも,本決定で示された差止の理由は,火山事象に対して全面的に本件原発が安全性を有していないという点であり,火山ガイドの抜本的な見直しや十分保守的な対策が講じられない限り,期限を経過したとしても,本件原発が安全でないという事実は何ら変わるものではない。
(3)9月30日が迫った段階で本訴が終了していない場合,我々は,改めて本原発差止仮処分の申請をする予定である。また,四国電力に対しては,上記期限を経過した後も,本件原発を再稼働しないことを強く求める。
Ⅳ.今後について
(1)福島第一原発事故が発生してから6年9か月以上もの長い時間が経過した現在において,その被害は収束するどころか,深刻さを増している。国からは避難指示解除によって事故前の基準の20倍も汚染された地域で生活するように強いられ,必死の思いで避難して,ようやくみなし仮設住宅に落ち着いた人たちは,その住宅の明け渡し請求訴訟まで起こされている。避難指示が解除されても,汚染された地域へ戻る人は少なく,ふるさとの存続が危ぶまれる状況にある。
(2)私たちは,本決定が現実に本原発の運転を差し止めたという事実を高く評価する。(3)また,火山事象に対する問題点は,全国の原発においても同様に当てはまる問題であるから,他の原発においてもこの点を追求していく。