大分合同新聞から見た高裁の運転差止

 広島高裁は2017年12月13日、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを、広島市などの住民4人が求めた仮処分申請の即時抗告審で、運転差止を認める決定をした。
大分合同新聞(以下、合同)は、14日の一面をこの報道で扱った。
 合同は、 「阿蘇噴火の危険重視 3号機運転差し止め 伊方原発」、と次のように報じた。


(1)「【大分合同・愛媛伊方特別支局】四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求め、広島市などの住民4人が申し立てた仮処分の即時抗告審で、広島高裁(野々上友之裁判長)は13日、火山の影響による危険性を認め、運転を禁止する決定をした。期間は来年9月30日まで。昨年8月に再稼働した伊方3号機は定期検査のため停止中だが、この司法判断が覆らない限り、運転を再開できない。四国電は近く高裁に異議と執行停止を申し立てる方針。」
(2)「原発の運転を禁じた高裁判断は初めて。愛媛、大分、山口3県の住民が申し立て、各地の裁判所で続いている同様の仮処分審理に影響を与える可能性がある。」
(3)「高裁では火山の影響のほか、伊方原発沖を通る国内最大級の活断層帯「中央構造線断層帯」による地震のリスク、新規制基準の合理性などが争点となった。決定は火山問題を重視。同原発から約130キロの阿蘇山(熊本県)で約9万年前に起きた過去最大規模の噴火を想定した場合、火砕流が原発敷地に到達する可能性が小さいとはいえず、「立地不適」と判断した。火山灰の厚さや大気中の濃度に関する四国電の想定が過小とも指摘。『新規制基準に適合するとした国の原子力規制委員会の判断は不合理。住民らの生命、身体に対する具体的危険があると推定される』結論付けた。」
(4)「一方で、伊方原発の運転差し止め訴訟が広島地裁で続いていることを踏まえ、『火山の影響による危険性の評価について(地裁が)今回と異なる判断をする可能性もある』と、運転禁止に期限を設けた。」
(5)「火山の問題以外は『新規制基準や規制委の判断も合理的』と四国電側の主張を認めた。」
(6)「住民側の河合弘之弁護士(脱原発弁護団全国連絡会共同代表)は『高裁の決定は大きな意義がある。原発裁判で敗訴が続いていたが、流れを大きく変える歴史的な転換点だ』と強調。」
(7)「四国電は滝川重理登(えりと)原子力部副部長らが高裁前で取材に応じ、厳しい表情で『主張が認められず極めて残念』と繰り返した。」


 また、合同は、今回の決定を次のように解説した。


(1)「対岸の原発を止めたのは『火山リスク』だった。国が進める原発再稼働路線に待ったをかけた初の高裁判断として重い決定となった。」
(2)「伊方原発を巡る裁判では、地震と火山が二大リスクとされてきた。広島高裁は火山に着目。国の原子力規制委員会が安全性の審査に当たって定めた『火山ガイド』に基づき、伊方原発への影響を検討した。」
(3)「阿蘇山の過去最大規模の噴火では、火砕流が160キロの距離まで到達したとされる。阿蘇から130キロの同原発への影響が小さいと評価するには『相当程度に確かな立証が必要』とし、四国電力の立証は不十分だとして危険性を認定した。」
(4)「高裁が原発事故による広域被害の危険性を指摘した意義も大きい。広島で仮処分を申し立てた4人のうち3人は、伊方原発から約100キロ離れた広島市の住民。決定は放射性物質が放出された場合、住民らに被害が及ぶのが想定されると言及した。国は原発から半径30キロの範囲を原子力防災の重点地域とし、圏内の自治体に事故時の避難計画の策定を義務付けている。伊方原発から最短距離で45キロの対岸にある大分県は対象外だ。再稼働に必要な『地元同意』の手続きでも蚊帳の外に置かれている。高裁決定は、国による『線引き』の妥当性も問い掛けている。」
(5)「仮処分は民事保全法に定められた手続きで、通常の訴訟で争っている間に著しい損害や急迫の危険が生じるのを避ける必要から、当事者の申し立てに基づき裁判所が審理し、認めるか否かを判断する。審理は通常の訴訟より迅速に進み、決定後直ちに効力を持つ。四国電力は13日の伊方原発3号機の運転差し止め決定に対し、広島高裁へ異議申し立ての手続きを取る方針を明らかにしている。差し止めを命じた野々上友之裁判長は今月下旬に定年退官となり、別の裁判長が審理を担当する見通し。」
(6)「伊方3号機は今後、差し止めの決定を覆す司法判断が出るか、決定が差し止めの対象期間とした来年9月30日を過ぎるまで法的に動かすことができず、定期検査後の来年1月に再稼働する当初の計画は困難となった。四国電は、原発の停止によって『償うことのできない損害』が生じると訴えて一時的に仮処分の効力を止める執行停止の手続きも別途申し立てる方針で、認められた場合は異議審の間も例外的に運転が可能となる。」


 さらに、合同は、この決定の反響を次のように報じた。


(1)「伊方原発の運転差し止めを求め、大分地裁で係争中の県内関係者は13日、広島高裁の決定を一様に歓迎した。ただ、高裁は『阿蘇山の火砕流』の危険性を指摘したものの、主な争点だった地震の想定は問題なしと判断。『大分での闘いに、どれだけ影響があるか分からない』との声も漏れた。」
(2)「大分地裁では昨年から、仮処分の手続きと、訴訟の審理が並行して続いている。仮処分は今月20日に審尋を終え、年度内にも判断が出る見通しという。」
(3)「『伊方原発をとめる大分裁判の会』のメンバー約10人はこの日、大分市中心部でチラシを配り、『対岸の原発』が止まることを買い物客らに伝えた。小坂正則事務局長(64)は『すごい決定が出た。高裁レベルの判断であり、大きな影響力がある』と笑顔。『多くの県民が関心を持ち、裁判に参加してもらいたい。訴訟の原告を現在の378人から、大分地裁での過去最大を超える500人以上にしたい』と意気込んだ。」
(4)「原告団と弁護団は同日夜、同市内で会議を開き、今後の方針を確認。運転差し止めの理由に『火砕流』を追加する考えを示した。会議終了後、弁護団の徳田靖之共同代表(73)は『司法に原発容認の流れがある中で、期限付きとはいえ差し止めの判断が出たのは高く評価したい』と強調。一方で、『理由が火砕流に限定されている。大分の仮処分や訴訟への影響は限定的ではないか』と述べた。原告団の松本文六共同代表(75)は『内容は100パーセント満足とはいかないが、停止は非常に大きなインパクトがあった。さらに市民の意識を高めることができると思う』と話した。」

事故想定の対策に現時点で影響なし 広瀬知事
(5)「広島高裁が四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを決めたことを受け、広瀬勝貞知事は13日、現時点で原発事故を想定した県の安全対策に影響はないとの考えを示した。県庁で記者団の取材に応じ、『今回の決定と各地で提起されている訴訟の状況を注目していく。一つのプロセスであり、今のところ対応が変わることはない』などと述べた。
さらに、知事は『仮処分の決定でどういう点が判断の基準になったのか勉強したい』と言及。『国民は原発の安全性を心配している。国、電力会社には万全の措置を取ってもらわないといけない。今回の決定に対しても、しっかり説明できるかが大事なポイントと思う』と語った。」
(6)「大分合同新聞社は13日、伊方原発3号機の運転を差し止めた広島高裁決定を伝える号外を発行。大分市中心部6カ所に11枚を張り出した。トキハ本店前で見た大分市判田台の無職真田耕治さん(87)は『地震の心配もあり、運転差し止めには賛成。原発は永久的に廃止してもらいたい』と話した。」


 確かに、今回の高裁の決定に関しては、『地震の心配もあり、運転差し止めには賛成。原発は永久的に廃止してもらいたい』との大分県民の声を届けた合同の指摘を受けて、次のことが押さえられる。


Ⅰ.この高裁判断は、国が進める原発再稼働路線に待ったをかける初めての判断であり、非常に重い決定であること。
Ⅱ.この高裁の判断理由に、「阿蘇山の過去最大規模の噴火では、火砕流が160キロの距離まで到達したとされる。阿蘇から130キロの同原発への影響が小さいと評価するには『相当程度に確かな立証が必要』」とされ、四国電力の立証は不十分だとして危険性が認定されたことは、今後の裁判に大きな影響を持つこと。
Ⅲ.高裁が原発事故による広域被害の危険性を指摘した意義は大きく、今後、国による「線引き」の妥当性も問われることになること。
Ⅳ.今回の決定の理由が、火砕流に限定されているため、大分の仮処分や訴訟への影響は限定的になることも予想されること。




by asyagi-df-2014 | 2017-12-15 06:02 | 書くことから-原発 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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