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熊本地裁家族訴訟第7回口頭弁論に参加してきました。

2017年12月4日、「ハンセン病回復者の本当の人権回復と社会復帰へ向けて共に歩む会・大分」の一員として、熊本地裁で行われた家族訴訟第7回口頭弁論に大分県から6人で参加してきました。
この第7回から証人尋問が始まり、今回は、東北学院大学準教授黒坂愛衣さん(以下、黒坂)が証言台に立ちました。
この日配布された黒坂の「意見書」(甲A第39号証の1)は実に18ページに及ぶものでした。この「意見書」を解説する力はありませんので、第7回口頭弁論の様子を簡単に紹介します。
 この熊本地裁家族訴訟について、「ハンセン病家族訴訟 公正な判決を求める要請署名」には、次のようにその趣旨が記載されています。


「ハンセン病患者は、国による絶対隔離政策により、療養所に隔離され厳しい差別を受けてきましたが、その政策は、家族たちおも差別の渦中におとしいれ、家族たちもまた偏見差別にさらされてきました。家族は社会内で暮らすゆえに、隔離されている患者本人より過酷なものとなることもありました。偏見差別を受けることをおそれ、患者家族の事を絶対的な秘密として抱えながら生きることを強いられ、ハンセン病家族の家族たちも人生被害を被ってきました。2001年5月の熊本判決により国のハンセン病患者に対する隔離政策は断罪されましたが、家族への国の謝罪はなされず、未だに被害回復がなされていません。
 2016年2月15日に第1陣59名、土往年3月29日に第2陣509名が熊本地方裁判所に提訴し、国に対して家族たちの被害に対する損害賠償と謝罪広告を求めて、現在闘っています。裁判所がこのような家族の被害と向き合い、その訴えに耳を傾け、適切かつ迅速な審理の上、原告たちの受けた人生被害を認め、公正な判決を出されるよう強く要請します。」


 第1号法廷で、14時に始まった口頭弁論の証人尋問は、5分間の休憩を挟み、16時35分まで行われました。その後最終的には、16時44分に終わりました。
今回の口頭弁論への参加は、私にとっては有意義な、法廷内でのやりとりを見られたという気がします。
 ただ、一人の男性が、原告団の人ではなかったかと思いますが、小さなつぶやき声を発し続けた後に途中で怒りを示しながら退廷していきました。聞くところによると、法廷の外で、3人の裁判所職員に大声で怒りをぶつけていたということでした。このことは、裁判で争うことの意味をある面で伝えるものでもあるなと感じました。
 また、特に、印象的だったのは、徳田弁護士が証人に目を向け、しきりにやっしく頷く様子でした。その様子は、黒坂証人への尋問で、「語れなかったことに価値がある」と述べる中で、この裁判が日本国憲法第13条を基に起こしていることを証人に確認させる場面とともに、深く心に残りました。
 さらに、原告弁護団は、優に40人を超えていたではないかと思います。国側は、7人でしたし、原告側と比べると、その卑小感はどことなく漂っていました。この裁判への国の位置づけが伝わってくるような気がしました。

 黒坂は、この家族裁判でポイントとなる「被害」の意味を、①「堕胎」の問題、②附属療養所に収容されたことの問題、③政府の隔離政策によって差別された問題、の三つにあると説明しました。
また、この家族裁判における差別の意味について、社会的マイノリティとして構成されたカテゴリーへの帰属としてなされる排除や蔑視である、と社会学者としての説明を行いました。このカテゴリーへの帰属とは、そうでないものとの間に非対称な関係(対等でない関係)を生むと説明します。
 ハンセン病患者の家族は、社会的マイノリティとしてのカテゴリ-にあると説明します。
 さらに、こうした「差別」は、①心理的負荷、②生き方の選択肢の制限、をもたらしていると説明します。このことは、大きな心理的負荷を負うことによって、人と人との関係が奪われ、別の場所でも起きると思わされる、というものであると。

 黒坂は、国側の弁護士の「共通被害はないのではないのか。だから請求棄却もあるのではないか」という意図の基に行われる尋問に対して、懸命に答えていました。
 ただ、ちょっと驚かされたのは、裁判官が「差別をなくすためにはどうしたらよいのか」、と黒坂に質問したことでした。このような発言がこの裁判にどうゆう意味を持っているのかは、よく理解できないものでした。
 黒坂は、証人尋問の最後に、こう結んでくれました。


 「ハンセン病を負荷の位置づけや外側からのマイナスという見方ではなく、豊かなイメージを育んでいく必要があること。つまり、家族が肯定できる価値付けを行うことが重要である。また、当事者が安心して話をできる場所、家族の体験を共有できる場所を作ることによって、社会の価値を作り直す必要がある。」


 その「意見書」には、このように書き込まれていました。


「2016年春の『家族』原告568名による本件訴訟の提訴は、、ハンセン病家族たちが長く強いられてきた沈黙の、転換点である。日本社会には、インビシブル・マイノリティとして数多くのハンセン病家族が存在していることと、その苦悩の不当さへの怒りを、かれらは集団提訴のかたちで声をあげることにより、示したのであった。そのような『家族』の訴えにどれほど真摯に耳を傾けることができるのか、本件訴訟の関係者(本意見書を執筆している私自身を含む)は、問われている。」


 私たちにとっての本件訴訟の意味は、黒坂のこの指摘にあるような気がします。




by asyagi-df-2014 | 2017-12-06 06:54 | ハンセン病 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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