福井県知事が、関西電力大飯原発3・4号機の再稼働に合意。
2017年 12月 01日
福井県の西川一誠知事は、関西電力大飯(おおい)原発3、4号機の再稼働への同意を表明した。
このことについて、毎日新聞は、次のように報じた。
(1)「関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)について、福井県の西川一誠知事は27日、県庁で記者会見し、『再稼働は地域のためになる。日本にとっても有意義だ』と述べ、再稼働への同意を表明した。世耕弘成経済産業相に電話で意向を伝えた。おおい町長・町議会と福井県議会も既に同意しており、地元同意手続きは完了した。関電は3号機を来年1月中旬、4号機を3月中旬に再稼働させる計画だ。」
(2)「東京電力福島第1原発事故を受けて策定された原子力規制委員会の新規制基準の下で、西川知事が原発の再稼働に同意したのは、稼働中の関電高浜原発3、4号機(福井県高浜町)に続き2例目。知事同意は▽九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)▽四国電力伊方原発3号機(愛媛県)▽高浜原発3、4号機▽九電玄海原発3、4号機(佐賀県)--に続き全国で5例目となる。」
(3)「大飯3、4号機は5月に規制委の安全審査に合格。西川知事は今月22日、福井県原子力安全専門委員会から2基の安全性を評価する報告書を受け取った。26日には世耕氏と面会し、原発の必要性を訴える国の姿勢を確認した。一方、県外立地を求めている使用済み核燃料中間貯蔵施設については、23日に関電の岩根茂樹社長から『来年には具体的な計画地点を示す』との回答を引き出した。」
(4)「大飯3、4号機を巡っては、福井地裁が2014年5月の判決で、原発から250キロ圏内の住民は『運転により人格権が侵害される危険がある』とし、関電に運転差し止めを命じ、関電側が控訴した。名古屋高裁金沢支部での控訴審は今月20日に結審したが、判決期日は未定。運転差し止め判決が確定しない限り、2基は再稼働できる。」
【岸川弘明、立野将弘】
さて、問題は、どうして「再稼働は地域のためになる。日本にとっても有意義だ」と福井県知事は言い切ることができるのか、ということだ。
これに関して、朝日新聞は2017年11月30日、「関電大飯原発 課題はまた置き去りか」、とその社悦で論評した。
朝日新聞は、「再稼働はとうてい容認できない。」との見解の基に、次のように指摘する。
(1)「福井県の西川一誠知事が、関西電力大飯原発3、4号機の再稼働への同意を表明した。『地元同意』の手続きはこれで終わり、関電は年明け以降、2基を順次稼働させる方針だ。」
(2)「自治体の避難計画作りの対象となる原発から30キロ圏には15万9千人が暮らす。その圏内で、大飯原発から西に14キロの関電高浜原発では、3、4号機が今年5~6月から稼働している。だが、両原発が同時に事故を起こすことを想定した住民避難計画はできていない。重い課題がまたも置き去りだ。再稼働はとうてい容認できない。」
(3)「関電は、運転開始から40年を超えた高浜1、2号機と美浜原発3号機をあと20年使うと決めた。再来年で40年になる大飯1、2号機も存廃は未定だ。福井の若狭湾沿いに多くの原発が集中する状況は当分続く。」
(4)「もし原発事故が起きれば、周辺住民の大半がマイカーで避難する想定だ。これまでの避難訓練で、限られた避難ルートで渋滞が起きないか、悪天候時に一部の地域が孤立しないかといった懸念が浮かんでいる。近接する原発が同時に事故を起こせば、住民の混乱は必至だ。さまざまな展開を想定して計画を練り、住民に周知することが最低限、必要だろう。それがないまま再稼働を進める関電や国はもちろん、同意した自治体も無責任というしかない。」
(5)「30キロ圏に住民がいる滋賀県知事が『容認できる環境にない』と述べるなど、周辺自治体の懸念は根強い。だが関電は、福井県と原発が立地する町以外に『同意権』を認めないままだ。」
(6)「関電の原発は使用済み核燃料プールが満杯に近い。岩根茂樹社長は今月、福井県外につくるとしている中間貯蔵施設について「来年中に計画地点を示す」と述べた。ただ、関西の電力消費地では、多くの自治体が受け入れを拒む構えだ。関電の思惑通りに進むか予断を許さない。」
(7)「関電は高浜原発で、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を用いるプルサーマル発電をしており、大飯でも実施の可能性を探るという。だが、使用済みMOX燃料を再処理する国の構想は白紙の状態だ。当面、各原発で保管し続けるしかない。」
(8)「こうした課題の多くは全国のほかの原発にも共通し、しかも繰り返し指摘されてきた。ところが電力会社と国、多くの立地自治体は、真剣に向き合う姿勢をいっこうに見せない。」
(9)「懸念が積み重なるなかで、再稼働だけが既成事実になっていくことを憂える。」
この朝日新聞の指摘だけから見ても、今回の福井県知事の再稼働承認には、次の問題がある。
Ⅰ.両原発が同時に事故を起こすことを想定した住民避難計画はできていない。重い課題がまたも置き去りだ。
Ⅱ.開催電力は、福井県と原発が立地する町以外に『同意権』を認めないままだ。
Ⅲ.使用済み核燃料について、使用済みMOX燃料を再処理する国の構想は白紙の状態だ。当面、各原発で保管し続けるしかない。
結局、「ところが電力会社と国、多くの立地自治体は、真剣に向き合う姿勢をいっこうに見せない。懸念が積み重なるなかで、再稼働だけが既成事実になっていくことを憂える。」、という朝日新聞の警告が、日本政府の原発行政のあり方を撃つのである。