四国電力伊方原発運転差し止め訴訟の第6回口頭弁論を傍聴してきました。
2017年 10月 19日
四国電力伊方原発運転差し止め訴訟の第6回口頭弁論・第9回審尋が、2017年10月11日14時30分より、大分地方裁判所で開催されました。今回も傍聴参加と報告集会に参加してきました。
口頭弁論は、これまでと同様に第1法廷で開催されました。ただ、今回は、いささか参加者の数が少ないうように感じました。また、いつも通り20分ほどの時間で終了しました。
前回の口頭弁論では、傍聴席から、「裁判長の声も弁護人の声も、よく聞こえない」との発言がありました。その抗議の声に裁判所はきっちと答えてくれていました。裁判長は、マイクを通して、「一番後ろの人聞こえますか」、と確認を行いました。このことは、徳田弁護士によると、裁判所が傍聴人をを気にしていることの表れだとのことでした。
全国的傾向で原告本人の意見陳述を制限するという大きな動きがあるなかで、原告が意見陳述ができるかどうかは、裁判所の判断となっています。
こうした裁判所の判断を受けて、今回は、徳田靖之弁護士の意見陳述が行われました。
徳田弁護士の意見陳述の要約は次のものです。
(1)提出した準備書面(2)の主張の根幹は、「福島第一原発事故のような過酷な事故を二度と起こさせないという意味での『限定的』絶対的安全性」にあること。
(2)この主張は、伊方原発行政訴訟における最高裁平成4年10月29日判決『深刻な災害が万が一にも起こらないようにするため、原子炉設置許可の段階で、・・・十分な行わせることにある』と判示していることを踏まえて、その後に発生した同事故の甚大な事故に照らし、同判決の求める『万が一』との要件をより具体化したものであること。
(3)伊方原発操業差止仮処分申し立てに関する広島地裁及び松山地裁の判断枠組みとなっている、川内原発稼働等差止仮処分に関する福岡高裁宮崎支部の決定は、「原発に求められる安全性の程度は、我が国の社会がどの程度の危険性があれば容認するのかという視点、すなわち、社会通念を基準として判断するほかない」とした上で、「その社会通念を、最新の科学的技術的知見を踏まえて、合理的に予測される規模の自然災害を想定した安全性で足りると」の判断を示しめし、「限定的」絶対的安全性という主張を排斥したものになっていること。
(4)しかし、この判断は全くの誤りであること。
(5)その根拠は次のものであること。
①第一に、「本件で原告らは、憲法第13条の保障する、命・自由・幸福追求権に基づいて、伊方原発の差止を求めている」こと。何故なら、このような平穏に生活する権利が侵害されるかどうかの判断をするにあたって、社会通念を基準にするというのは、絶対にあってはならないことであるころ。
このことは、ハンセン病隔離政策が国の誤った隔離政策によって形成された「恐ろしい伝染病である故に、ハンセン病患者は、隔離されるべきだ」との誤った社会通念によって、89年間にもわたって、存続してきたことを考えれば、誰にでもわかる道理であること。
②第二に、「何故に、想定すべき自然災害の規模が、合理的に予想される範囲にとどまるというのが社会通念であるといえるのか、全く説明がつかない」こと。
川内原発稼働等差止仮処分に関する福岡高裁宮崎支部の決定は、「どのような事象が生じても発電用原子炉施設から放射性物質が周辺の環境に放出されることのない安全性を確保することは、少なくとも現在の科学技術水準をもってしては不可能というべきであって、想定される事象の水準(レベル)をいかに高く設置し、当該事象に対する安全性確保を図ったとしても、想定される水準(レベル)を超える事象は不可避的に生起する」と指摘する。
しかし、こうした認識から出てくる方策の選択は、1 だから、原発はすべて廃止すべきだ、2 それでも可能な限り想定される事象のレベルを高く設定すべきだ、ということが考えられるのに、「何故に、合理的に予想される規模を想定すれば足りる」という結論に至るのか、全く何らの説明もなされていないこと。
(6)まさしく、「非科学的、否、非論理的な決めつけ」としか言えないものであること。
(7)このことは、①前述の最高裁判決が、「万が一にも」という言葉を用いていること、②昭和53年9月29日制定の旧耐震設計指針では「基準値振動(S1)(S2)をもたらす設計用最強地震としては『最も大きいもの』を想定すると定めていること、③国土交通省河川局が作成したダムの耐震性能に関する指針においてすら、『当該地点で考えられる最大級の強さの地震動』をもとめている」ことからすると、これらの判例や従来の原発の安全性判断において求められてきた諸基準とも著しく相違していること。
(8)「福島第一原発事故は、最新の科学的知見に基づく予測を超える自然災害が起こりうることを改めて明らかに相違しています。こうした甚大且つ深刻な被害を目の当たりにしながら、何故に、その想定すべき規模を合理的に予測される範囲で足りる等ということが言えるでしょうか。・・・この隔たりの大きさを前提にしたうえで、その当否を判断するにあたって、社会通念を理由に、『合理的に予測される』規模を想定すれば足りる等という基準を採用することが、許されるはずがありません。」こと。
(9)川内原発稼働等差止仮処分に関する福岡高裁宮崎支部の決定は、改正原子炉規制法の目的及び趣旨を「最新の科学的・専門気寿的知見を踏まえて合理的に予想される規模の自然災害を想定した発電用原子炉施設の安全性の確保を求めるもの」としていますが、このような判断は、法改正が、「今後、福島第一原発事故と同様な事故を発生させない」ことを目的としていることに明らかに反すること。
徳田弁護士は、その意見陳述を次のように結びました。
「原告らが訴状で求めた『限定的』絶対的安全性は、より具体的には、最新の科学的知見に基づいた予測される最大規模の自然災害に対応しうる安全性であるということができます。本件においては、こうした判断基準によって差止の要否がされるべきことを求めて、私の意見陳述といたします。」
さて、16時8分からら行われた報告集会は、本訴訟の短さに比べて、今回も熱さに溢れたものになりました。今回も、メモをとるのは報告集会でという形となりました。
報告集会で、最初に、 河村弁護士は次のことを説明しました。
(1)今回は、二時間ほどの激しいやりとりがあった。
(2)「裁判所がよくわからないだろうから質問してください」、「12月上旬に広島高裁判断が出るから、判断枠組みが出てから判断する必要がある」、との理由で裁判所の求釈明を求め、審尋の終了に反対した。
(3)裁判長は『心外です』としたうえで論議になったが、判事で合議した結果(10分ほどかかった)、次回に90分の審尋を行うことになった。
(4)今年度中(2018年3月)に決定が出ると考えている。
(5)会場内からのミサイル問題については、原発を止めている状態と止めていない状態では、「100と3」の違いがあると説明してくれました。
最後に、徳田弁護士から、「傍聴席が満杯になることは、この問題を自分たちの問題として考えていることを、裁判所に伝える機会である。それは、裁判所にいい加減な判断をさせないということでもある。」、「やっぱり、伊方原発が危ないことをわからせることが一番重要。」、と熱くまとめてくれました。