原発事故の避難者集団訴訟の千葉地裁の判決は、東電に賠償を命じたが、国の責任を認めず。
2017年 09月 22日
毎日新聞は2017年9月22日、表題について次のように報じた。
(1)東京電力福島第1原発事故に伴う福島県から千葉県への避難者ら18世帯45人が国と東電に約28億円の賠償を求めた訴訟の判決で、千葉地裁(阪本勝裁判長)は22日、東電に約3億7600万円の賠償を命じる一方、国については責任を認めず、請求を退けた。全国20地裁・支部に起こされた同種訴訟の中で3月の前橋地裁判決に次いで2例目。(2)事故は2011年3月11日、東日本大震災の津波により第1原発が全電源を喪失して発生。13年に提訴された千葉地裁の訴訟では、東電と国が津波を予見し対策を取れたか▽国は東電に対策を命じる権限があったか--などが主に争われた。
(3)原告側は、政府の地震調査研究推進本部が02年に公表した「福島県沖などで30年以内にマグニチュード8級の津波地震が20%の確率で起きる」との長期評価に基づき、「東電は原発敷地高(海抜約10メートル)を超える津波を予見できた」とし、「国は東電に対策を命じる権限があった」と主張。国・東電側は津波の予見可能性を否定し、国は「対策を命じる権限はなかった」と反論していた。
(4)前橋地裁判決は長期評価の合理性を認め、「東電は津波を予見でき、対策もとれた」と判断。国についても「対策を命じなかったのは著しく合理性を欠き違法だ」と指摘していた。
【斎藤文太郎】
毎日新聞は2017年9月21日、次のように報じていた。
(1)東京電力福島第1原発事故に伴い福島県から千葉県に避難した18世帯45人が、東電と国に対し、原告1人当たり2000万円の「ふるさと喪失慰謝料」を含む総額約28億円の賠償を求めた訴訟の判決が22日、千葉地裁(阪本勝裁判長)で言い渡される。全国各地で約30件提起された原発事故の避難者集団訴訟では、初の司法判断となった3月の前橋地裁判決に次ぐ2例目で、ふるさと喪失慰謝料をめぐる判断は初めて。【斎藤文太郎】
(2)前橋地裁判決は、東電と国の責任を認めたが、慰謝料の大部分については支払い済みとして賠償請求の大半を退けた。ふるさと喪失慰謝料は、福島地裁や仙台地裁、横浜地裁などで争われている集団訴訟の原告側も求めており、千葉地裁の判断が注目される。
(3)13年3、7月に提訴された千葉地裁での訴訟は、東電と国は津波を予見し対策を取れたか▽国は東電に対策を命じる権限があったか--などが争われた。
(4)政府の地震調査研究推進本部は02年、「福島県沖を含む日本海溝沿いでマグニチュード(M)8級の津波地震が30年以内に20%の確率で起きる」との長期評価を公表。原告はこれらを基に「東電は原発敷地の高さ(海抜約10メートル)を超える津波を予見できた」とし、「国は東電に対策を命じる権限があった」と主張した。東電と国は「確立した知見と言えない」と予見可能性を否定。さらに国は「権限はなかった」と反論した。(5)長期評価を巡り、原告被告双方が策定に携わった地震学者2人を証人申請した。原告側証人の島崎邦彦・東京大名誉教授は「どの程度の津波かは予測でき、対策は可能だった」と指摘。東電・国側証人の佐竹健治・東大教授も、津波の高さの試算について「それなりの精度はあった」と述べるなど、予見可能性を示唆した。一方、前橋地裁は長期評価の合理性を認め「東電は津波を予見でき対策もとれた」と判断。東電が08年に最大15・7メートルと試算したことを挙げ「実際に予見もしていた」と認定し、国も「対策を命じなかったのは著しく合理性を欠く」と断じた。
(6)東電は、国の原子力損害賠償紛争審査会が定めた「中間指針」に従い、避難指示区域で1人原則月10万円▽自主避難の場合は原則総額8万円--などを支払っている。前橋地裁は中間指針に一定の合理性を認めたが、千葉訴訟原告団は「古里を奪われた苦痛」としての慰謝料も求め、一部は住宅や家財道具、田畑なども請求している。