原子力規制委員会は、柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働への審査で、東京電力の「適格性」を条件付きで認める。(2)
2017年 09月 19日
東京新聞は2017年9月14日、表題について次のように報じた。
(1)原子力規制委員会は十三日の定例会合で、福島第一原発事故を起こした東京電力には、柏崎刈羽6、7号機(新潟県)を運転する資格があるとの判断で一致した。田中俊一委員長は会合後の記者会見で「東電に適格性はある」と明言。東電側に新たに示した条件が満たされることを前提に、二十日以降の会合で、両号機が原発の新規制基準「適合」と判断する。
(2)規制委はこの日、東電に適格性があるとする理由を記した文書を了承した。東電の小早川智明社長らが「福島第一の廃炉をやり遂げることと、柏崎刈羽の安全性向上を両立していく」と決意を表明したほか、田中委員長らが柏崎刈羽を視察し、現場の安全意識が向上していると感じたことなどが盛り込まれている。
(3)東電側の決意表明を言葉だけに終わらせないため、二つの条件を付けた。まず、柏崎刈羽の運営や事故対応方針をまとめた東電の保安規定に、決意内容を盛り込むよう求めた。規制委は保安規定の順守状況を検査する権限を持ち、東電が約束を守らない場合は、保安規定違反として運転停止や原発の設置許可取り消しなどの処分ができる。
(4)次回二十日の会合に、小早川社長を呼んで、この条件を満たせるかどうか確認する。また、経済産業省が、東電が約束を確実に実行するよう指導することも条件にした。
(5)規制委は、十八日に任期を終える田中委員長の退任前に、柏崎刈羽は新基準に「適合」と判断する予定だったが延期した。二十日以降の会合で適合の判断を記した審査書案を決めた後、意見公募(パブリックコメント)の手続きに入る。
今回の原子力規制委員会の「福島第一原発事故を起こした東京電力には、柏崎刈羽6、7号機(新潟県)を運転する資格があるとの判断で一致」との判断についての検証が必要である。
このことに関して、朝日新聞は2017年9月14日、「東電と原発 規制委の容認は尚早だ」、と社説を掲げた。
この社説を読む。
朝日新聞は、次のように主張する。
(1) 福島第一原発事故を起こした東京電力に、原発を動かす資格はあるのか。また、規制委の姿勢には前のめり感が否めない。今回の判断は時期尚早である。
(2)福島の事故後、日本の原発について、事業者も規制当局も設備などのハード面に関心が偏っているとの指摘が内外から相次いだ。安全文化の醸成と定着へ組織運営や職員の意識を改めていくソフト面の取り組みは、東電以外の事業者にも共通する課題であり、事故後の新規制基準でも不十分なままだ。規制委にとって、適格性の審査は新しい取り組みだ。専門のチームで検討を始めたのは今年7月で、年内に中間まとめを出す予定という。
まずは適格性に関する指針を固める。その上で、個々の原発の再稼働審査にあてはめ、安全文化を徹底させる。それが、規制委が踏むべき手順である。
朝日新聞は、この主張について、次のように理由づける。
(1)原子力規制委員会が、柏崎刈羽(かしわざきかりわ)原発6、7号機(新潟県)の再稼働への審査で、安全文化が社内に根付いているかなど「適格性」を条件付きで認めた。
「経済性より安全性追求を優先する」などと東電社長が表明した決意を原発の保安規定に盛り込み、重大な違反があれば運転停止や許可の取り消しもできるようにするという。しかし、今後のチェック体制を整えることと、現状を評価することは全く別の話だ。適格性を十分確認したとは言えないのに、なぜ結論を急ぐのか。近く5年の任期を終える田中俊一委員長に、自身の任期中に決着をつけたいとの思いがあるのか。
(2)安全文化は「過信」から「慢心」、「無視」「危険」「崩壊」へと5段階で劣化していくが、福島の事故前から原発のトラブル隠しやデータ改ざんで既に「崩壊」していた。東電は2013年、事故をそう総括した。改善に向けて、社外のメンバーをまじえた委員会に定期的に報告する態勢を整え、成果を誇る自己評価書も公表済みだ。ところが、第一原発事故で当時の社長が「炉心溶融」の言葉を使わないよう指示していたことは、昨年まで明るみに出なかった。柏崎刈羽原発では、重要施設の耐震性不足を行政に報告していなかったことが発覚。今年8月、第一原発の地下水くみ上げで水位低下の警報が鳴った際は公表が大幅に遅れ、規制委は「都合の悪い部分を隠し、人をだまそうとしているとしか思えない」と厳しく批判した。それなのに、規制委はなぜ、適格性について「ないとする理由はない」と判断したのか。
確かに、次のことが言える。
Ⅰ.企業の適格性を考えるのに、「今後のチェック体制を整えることと、現状を評価することは全く別の話だ。」。
Ⅱ.少なくとも、①「第一原発事故で当時の社長が『炉心溶融』の言葉を使わないよう指示していたことは、昨年まで明るみに出なかった。」、②「柏崎刈羽原発では、重要施設の耐震性不足を行政に報告していなかったことが発覚。」、③「今年8月、第一原発の地下水くみ上げで水位低下の警報が鳴った際は公表が大幅に遅れ、規制委は「都合の悪い部分を隠し、人をだまそうとしているとしか思えない」と厳しく批判した。」、という事実がある中では、原子力規制委員会は、東京電力の適格性を認めることはできない。