菊池事件の再審拒否に対して、元患者が熊本地裁に国賠提訴を起こす。(4)

 毎日新聞は2017年8月30日、「ハンセン病患者とされた熊本県の男性が殺人罪などに問われ、無実を訴えながら裁判所外の隔離された特別法廷で死刑判決を受けて執行された『菊池事件』で、元ハンセン病患者6人が29日、無罪となるべき男性について検察が再審請求しないため精神的苦痛を受けたとして、国を相手取って1人当たり10万円の慰謝料を求める国家賠償請求訴訟を熊本地裁に起こした。」、と報じた。
このことについて、熊本日日新聞は2017年8月30日、「ハンセン病患者とされた男性が1952年に殺人事件を起こしたとして、事実上非公開の特別法廷で死刑判決を受けた『菊池事件』は、62年の死刑執行から間もなく55年となる。男性が無実を訴えた事件の本質を問い続け、再審を目指して熊本地裁へ提訴した意義を、弁護団代表と学識者に聞いた。」、と「菊池事件・国家賠償が問うもの」(下)-【菊池事件・国賠訴訟が問うもの】(下)誤判の是正、検察の責務-を掲載した。
この国家賠償請求訴訟償の「男性が無実を訴えた事件の本質を問い続け、再審を目指して熊本地裁へ提訴した意義」を熊本日日新聞で考える。
 熊本日日新聞は、内田博文・九州大名誉教授(刑事法学)への質問とその回答を次のように載せる。


(1)-提訴理由の一つに、男性が死刑判決を受けた「特別法廷」の違憲性を挙げています。:
 「ハンセン病を理由に隔離施設内に設けられた事実上非公開の特別法廷で裁かれた患者らは当時、公開の場で裁判を受ける権利を保障した憲法の外側に置かれていた。特別法廷は日本国憲法下で最大の人権侵害の一つといえる」
 「最高裁は特別法廷の違法性を認めて謝罪したが、手続きが違法なら、判決にも影響を与えるというのが国際的な考え方だ。ハンセン病問題基本法は被害救済や再発防止を公務員や国に義務付けており、刑事訴訟法も検察官に対し、誤った判決を正すために再審請求する権限を与えている。検察はその職務を果たす責務がある」
(2)-最高検察庁は3月、特別法廷に関与した責任を認めて謝罪しましたが、菊池事件の再審請求はしないと回答しました。:
 「再審請求しない理由について、検察側はほとんど説明していない。菊池事件など個別の裁判について、被告らの名誉回復を図ったわけでもない。今回の国賠訴訟で、検察官に証人尋問に出てもらい、判断の理由を聞くことも考えられる」
(3)-今回の裁判では、元患者らが原告になりました。:
 「元患者らは、ハンセン病というだけで差別的な特別法廷の被告席に座る可能性があった。男性と同様に人権が侵害される不安定な立場に置かれ、共通の精神的な損害を受けたという考え方だ」
(4)-弁護団は今回の裁判を通して、国民に問題提起したいとも語っています。:
「司法判断の誤りを是正する国の義務が現行法の下で認められないということであれば、法律に問題があるということ。是正する義務は国会や国民にもある。裁判と並行して国会議員へ立法措置などを働き掛け、国民に問い掛けたい」
(5)-日本の再審制度にも問題があると指摘しています。:
 「裁判の誤りは国家として最大の誤りで、是正に終わりはないはずだ。それなのに有罪判決を受けた当事者や一部親族などに請求する権利を限定しているのは問題。彼らがいなくなれば、裁判の誤りを正すことが困難になるからだ。憲法違反でさえ請求の事由になっていない。各都道府県の弁護士会長が再審請求できるようにする制度作りも考えられる」


 前回、徳田弁護士の指摘から、この国家賠償請求訴訟の目的をまとめた。
 今回の内田教授の指摘を、これに加えると次のようになる。


Ⅰ.特別法廷がいかにひどいものだったか、違憲だったかを明らかにすること。それは、、「ハンセン病を理由に隔離施設内に設けられた事実上非公開の特別法廷で裁かれた患者らは当時、公開の場で裁判を受ける権利を保障した憲法の外側に置かれていた。特別法廷は日本国憲法下で最大の人権侵害の一つ」であることを明確にすること。
Ⅱ.特に、ハンセン病への差別偏見が社会に根付いてしまった原因の一つは、憲法の守り手である最高裁がハンセン病隔離政策の一環として特別法廷を許し続けたことにあることを明らかにすること。
Ⅲ.たとえ判決で再審請求が認められなくても、男性の無実と、ずさんな事実認定で死刑判決が出されたことを示すこと。このことは、元患者らが原告になった意味を明らかにすることでもある。それは、「元患者らは、ハンセン病というだけで差別的な特別法廷の被告席に座る可能性があった。男性と同様に人権が侵害される不安定な立場に置かれ、共通の精神的な損害を受けたと」ということ。
Ⅳ.いずれ遺族が再審請求したいと思った時に、可能になる道筋もつけておくこと。つまり、「裁判の誤りは国家として最大の誤りで、是正に終わりはないはずだ。それなのに有罪判決を受けた当事者や一部親族などに請求する権利を限定しているのは問題。彼らがいなくなれば、裁判の誤りを正すことが困難になるからだ。憲法違反でさえ請求の事由になっていない。各都道府県の弁護士会長が再審請求できるようにする制度」作りが必要であることを示すこと。
Ⅴ.菊池事件は、冤罪が生まれる恐ろしい構造も示していることから、菊池事件を放置しておくことは、日本の裁判所、法律家にとって汚点であることを認識する必要させる必要があること。特に、検察は、「最高裁は特別法廷の違法性を認めて謝罪したが、手続きが違法なら、判決にも影響を与えるというのが国際的な考え方だ。ハンセン病問題基本法は被害救済や再発防止を公務員や国に義務付けており、刑事訴訟法も検察官に対し、誤った判決を正すために再審請求する権限を与えている。検察はその職務を果たす責務がある」こと。さらに、「再審請求しない理由について、検察側はほとんど説明していない。菊池事件など個別の裁判について、被告らの名誉回復を図ったわけでもない。今回の国賠訴訟で、検察官に証人尋問に出てもらい、判断の理由」を明確にする必要があること。
Ⅵ.再審無罪をやり遂げない限り、日本の司法は本当の意味で信頼されるものにならないこと。だとするならば、やはり、「司法判断の誤りを是正する国の義務が現行法の下で認められないということであれば、法律に問題があるということ。是正する義務は国会や国民にもある。裁判と並行して国会議員へ立法措置などを働き掛け、国民に問い掛け」が必要であること。




by asyagi-df-2014 | 2017-09-09 06:05 | ハンセン病 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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