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松山地裁は、伊方3号機差し止め認めず。(3)

 東京新聞は2017年7月21日、標題について、「四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転を禁止するよう県内の住民らが申し立てた仮処分について、松山地裁(久保井恵子裁判長)は21日、却下する決定をした。4カ所で申し立てられた仮処分のうち、今年3月の広島地裁決定に続いて運転差し止めを認めなかった。」、と報じた。
 また、「四国電側が算出した原発の耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)の信用性や、東京電力福島第1原発事故後に原子力規制委員会が策定した新規制基準に基づく審査の在り方などが争点だった。ほか3カ所の仮処分は、広島地裁に申し立てた住民側が広島高裁へ即時抗告したほか、大分地裁と山口地裁岩国支部で審理が続いている。」、と伝えた。
 伊方原発をとめる弁護団・伊方原発をとめる会は、21日の15時30分から愛媛県庁記者クラブで行った記者会見で「伊方3号炉松山地裁仮処分決定についての声明」を発表した。また、18時から開催した報告集会では、抗議決議をあげた。
 この「声明」を読む。以下、要約。


Ⅰ.主張

 本日の決定を到底許すことは出来ない。速やかに即時抗告を行い,上級審において逆転決定を求めるものである。


Ⅱ.松山地裁仮処分の申立却下決定の意味

(1)福島原発事故の悲劇に目を塞ぎ、福島原発事故を防ぐことができなかった司法の責任を忘れた許し難い決定である。
(2)「原子力規制委員会の許認可を受け、現在の安全規制の下でその設置運転等がされていることを主張疎明すれば足る」という四電の主張を排斥し、四電において、「具体的危険性が存在しないこと、または現在の科学技術水準に照らし、新規制基準に不合理な点がないこと、ならびに新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の調査審議および判断の過程に看過し難い過誤,欠落がないことの主張疎明を尽くす必要がある」としながら、実際の判断においては,原子力規制委員会が新規制基準に適合したと判断したことを以って四電の主張疎明が尽くされたとしており、羊頭狗肉の典型といわざるを得ない。
(3)「以下では、債務者の上記主張,疎明が尽くされているといえるか否かについて、検討することとする。」としながら,実際の判断においては、「債権者らの主張には理由がない」「債権者らの指摘する危険性を認めるに足りる疎明資料はない」として、債権者らに主張疎明責任を負担させるという明らかな論理矛盾を犯しており、裁判所の判断とも思われない。
(4)同じ伊方3号炉についての3月30日の広島地裁決定同様、福島原発事故による深刻な被害の認定がないことが特徴的であるが,広島地裁決定では、裁判官が確証を持てなかったことを正直に吐露しているのに対し、この決定にはそれすらもなく、残念ながら、この決定は、鉄面皮ともいえる国策追従決定と評価せざるを得ない。


Ⅲ.伊方原発の深刻な問題点の指摘

(1)伊方原発は、我が国最大の活断層である中央構造線を無視して建設された原発である。伊方1号炉は、中央構造線の存在を無視して建設され、伊方2、3号炉は、中央構造線が活断層ではないとして建設された。「大きな事故の誘因」がないことを立地条件とする立地審査指針により、本来設置が許可される筈のない伊方原発が、中央構造線の存在を無視し活動性を否定することによって許可されてしまったのである。そして、その後、中央構造線が我が国最大の活断層であることが明確になったにもかかわらず、今度は、原子力規制委員会によって立地審査指針が無視されて、再稼働が許可されてしまった。本来地震国である我が国に原発を建設すること自体が間違っているが、想定東海地震の震源域の中央に建設された浜岡原発同様に、伊方原発は、中央構造線の直近に位置すると同時に南海トラフの巨大地震の震源域にも位置しており、地震による危険性は全国でも飛び抜けた危険極まりない原発なのである。
(2)事故が発生した場合には、佐田岬の半島側に居住する約5000人もの人々が避難出来ないことも常識となっていると言って過言ではないし、閉鎖性水域である瀬戸内海が死の海になることは必定なのである。
(3)かつて「絶対安全」とされていた原発が,福島原発事故においてレベル7の破滅的な事故を起こし,それ以降,国も電力会社も「絶対安全などあり得ない」というようになり,過酷事故を想定した大規模な避難訓練を行うようになった。我が国最大の活断層である中央構造線が直近にあり,南海トラフの巨大地震の震源域にある伊方原発が過酷事故を起こす危険を避けるため,住民が,その運転停止を求めるのは当然のことである。戦前の竹槍訓練を想起させる避難訓練に身を委ねることは出来ないと住民が思うのも当たり前のことではないか。


Ⅳ.司法の問題の指摘

(1)かつて,松山地裁において,我が国初の本格的な原発訴訟である伊方1号炉の行政訴訟が行われたが、その結審直前に、ずっと審理を担当してきた村上裁判長が異動になり、殆ど審理に関与しなかった柏木裁判長が原告敗訴の判決を書き、その後の住民側敗訴のレールを敷いてしまった。福島原発事故を受けてそれまでの司法判断の流れが変わり、福井地裁で、樋口裁判長による大飯原発差止判決や高浜原発運転停止仮処分決定が出たが、その後、高浜異議審は3名とも最高裁経験者である福井地裁でも異例の裁判体によって樋口決定が覆され、また、大飯控訴審、川内即時抗告審においても、最高裁シフトと呼ばれる異例の裁判官人事が行われ、かつての司法判断への回帰が画策されている。本件仮処分においても、昨年5月31日に申し立てた直後の7月、最高裁経験者が主任裁判官として配属された。本件仮処分の審理では,主張においても、疎明においても、住民側が、四電を凌駕していたと自負しているが、裁判官人事によって、審理結果が左右されるならば、裁判所の存在意義はないに等しい。




by asyagi-df-2014 | 2017-08-01 05:34 | 書くことから-原発 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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