『憲法9条一項・二項は残し、3項を新設し自衛隊を書き込む』を考える。(1)

 『憲法9条一項・二項は残し、3項を新設し自衛隊を書き込む』を考える。
 東京新聞は2017年5月21日、「核心」に「憲法から軍事力の統制なくなる」と石川健治東京大学法学部教授のインタビュー記事を掲載した。
この記事を基にこの問題を考える。
石川健治教授は、次のように説明する。


Ⅰ.統治機構の論点


(1)統治機構の論点は、常に三つの層をなして成立している。
(2)一層目は、法的な根拠があるかどうか。
(3)二層目は、その権限を実際に行使する正当性(資格や理由)があるかどうか。
(4)三層目は、権限を裏付ける財政面の決定統制も重要な層をなしている。
(5)これらの三層構造で権力は統治されている。


Ⅱ.日本国憲法九条をこの統治機構と関連して捉え直すとこうなる


(1)九条とりわけ二項(戦力の不保持)は本来、軍隊を組織する権限を国会から奪っている。しかし、すでにここは、自衛力という新手の論理が持ち込まれて、突破されている。それでも、二層と三層はその後も有効に機能してきた。
(2)九条を根拠に、自衛隊から権限行使の正当性を奪う二層目のコントロールについては、現在なお世論の強い後押しがある。
(3)何より、正当性に疑いがかけられた組織は、世間から後ろ指をさされることがないように、常に身を慎むことになる。自衛隊に対する国民の支持も、そうした慎みのある組織だからこそのこと。
(4)三層目の財政的統制については、二層目の存在を背景として大蔵省・財務省が杓子定規に軍拡予算の編成を阻んできたという側面が、特に大きい。
(5)戦後日本の軍事力が完璧にコントロールされて木田という事実が、九条方式ともいうべき軍事力統制システムの優秀さを証明している。


Ⅲ.3項に自衛隊を書き込むことはどのような意味を持つのか。


(1)九条に3項を新設して自衛隊に正当性を持たせてしまうと、まず二層目のコントロールが利かなくなってしまう。
(2)そしてそれを理由として、軍事力の財政的統制という三層目も、やすやすと突破されたしまう。
(3)軍事力のコントロールが、憲法上はなくなってしまう。かといって、九条方式に匹敵する、優秀な軍事力統制メニューが出されているわけではない。


四.軍拡路線の歯止めである三層が、九条3項の新設によって外されることによって起こること


(1)北東アジアにおける軍拡競争に巻き込まれざるを得なくなる。
(2)何より、九条改正によって初めて正当性を持たされた自衛隊が、それにあぐらをかいて変質してしまう心配がある。


 結局、『憲法9条一項・二項は残し、3項を新設し自衛隊を書き込む』ことは、日本国憲法から軍事力のコントロール機能を奪うことになる。
 石川健治教授は、このインタビューの最後を次のように締めています。


 「連戦連勝の選挙結果で得られた民主的正当性を背景にして、相次ぐ大臣の失言にみられる規律の緩みや、今回の改憲起案のような暴走気味の政権運営が目立つ、安倍政権自体がその雄弁な論証になっています。」


 確かに、安部晋三政権の存在そのものが、「否」の最大の根拠になっている。




by asyagi-df-2014 | 2017-05-27 06:21 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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