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「働き方改革」を考える。(Ⅰ)-日本労働弁護団「真に長時間労働を抑制する実効性ある労働時間制度を求める決議より-

 朝日新聞は2017年2月23日、「政府の働き方改革実現会議(議長・安倍晋三首相)が22日開かれた。焦点の『残業時間の上限規制』を巡る突っ込んだ議論はなかったが、会議後、経団連の榊原定征会長と連合の神津里季生会長はそれぞれ記者団に対し、できるだけ早くトップ会談の場を設けて合意形成を目指す考えを明らかにした。」、と報じた。
 安倍晋三政権による「働き方改革」がいよいよ正念場を迎える。
 このことを考える。
 2017年2月10日に行われた「高プロ・裁量労働制の規制緩和に反対し、真に実効性ある長時間労働規制を求める院内集会」で出されたアピールには、「日本社会に蔓延している長時間労働が引き起こす最大の問題は、数多くの労働者の命と健康を奪っているということである。」、と提起されている。
 安倍晋三政権の「働き方改革」を捉えることは、この政策がこの提起をどれぐらい踏まえることができているかということを基準に考えることである。
今回は、2016年11月12日の日本労働弁護団第60回全国総会で採択された「真に長時間労働を抑制する実効性ある労働時間制度を求める決議」から、このことを考える。
 日本労働弁護団は、まず、「もとより、我が国の長時間労働は労働者が休む時間を奪い、過労による精神疾患等の発症、過労死・過労自殺等を引き起こし、労働者の健康のみならず命を脅かす社会問題である。 のみならず、長時間労働は、労働者を職場に縛り付け、その生活時間を奪い、真の女性の活躍や、労働者の民主主義の過程への参加等を阻害するものである。長時間労働の是正は、我が国の急務であることは間違いのないことである。」、とその基本的考え方を示す。
また、この場合の長時間労働の是正は、「しかし言うまでもなく、長時間労働の是正は、実効的なものでなければならない。形ばかり制度の見直しをして、「働き方改革」を実現したとすることはできない。」、とする。
 日本労働弁護団は、安倍晋三政権の「働き方改革」の政策について次のように把握する。


(1)2016年6月2日、政府は「ニッポン一億総活躍プラン」を閣議決定した。同プランは「働き方改革の方向」として長時間労働の是正を掲げ、具体的には36協定における時間外労働規制の在り方について、 再検討を開始することなどを挙げる。
(2)政府が再検討をするという36協定における時間外労働規制の在り方については、当初は、時間外労働が月100時間を超えた企業に対する労働基準監督署の立入調査の基準を月80時間に引き下げるなどの数値目標が議論されていたが、前記プランでは数値目標はなくなっている。
(3)また、36協定に関する再検討の終了時期については、2018年度中が目標とされている。しかも、労働時間の量的上限規制、インターバル規制、そして野党4党の「長時間労働規制法案」でも掲げられる労働時間記録の義務化など、長時間労働抑制にとって実効性のある制度の導入の検討が欠如している。
(4)長時間労働の是正が待ったなしの急務である中、これが果たして長時間労働の抑制に実効性ある改革といえるのか、疑問である。


 また、日本労働弁護団は、もう一つの問題を次のように指摘する。


(1)他方で、安倍政権は、2015年、2016年通常国会と「労働基準法等を一部改正する法律案」を提出し、これを成立させようとしている。同法律案は、一部の労働者を現行労働時間規制から適用除外とする高度プロフェッショナル制度の導入および、 企画業務型裁量労働制度を導入できる業務を大幅に拡大することを柱としている。
(2)これらの制度は、我が国の労働者の長時間労働は是正するどころか、これを拡大・助長しかねないものである。


 日本労働弁護団は、安倍晋三政権の「働き方改革」について、次のように批判・要求する。


(1)一方で長時間労働の是正を掲げ、他方でこのような「定額働かせ放題」「残業代ゼロ」法案を通そうとするのは、大きく矛盾する行動であり、真に長時間労働を是正しようとしているとは考えがたい。
(2)実効性のある長時間労働の抑制を実現するために必要なのは現行の労働時間規制の緩和ではなく、その強化である。安倍政権が真に実質を伴う労働時間改革を目指すのであれば、量的上限規制、インターバル規制、労働時間記録義務の導入が不可欠である。
(3)安倍政権の「働き方改革」にいう長時間労働の是正が、単なるスローガンにとどまらないよう、長時間労働が労働者の命と健康に対する脅威であるだけでなく、真の女性の活躍や、労働者の民主主義の過程への参加等にとって欠くことのできない生活時間の確保を阻害するものであることを十分に踏まえた真に実効性ある長時間労働抑制策が実現されることを強く求める。


 この上で、日本労働弁護団は、「全国各地で全ての労働者、労働組合と団結して社会労働運動としての上記の立法運動に全力で取り組むことを宣言する。」、とする。


 確認することは次のことである。


Ⅰ.安倍晋三政権の「働き方改革」は、常套手段であるスローガン主義に止まるもので、
「長時間労働が数多くの労働者の命と健康を奪っている」という状況を改善するものではない。
Ⅱ.特に、「一方で長時間労働の是正を掲げ、他方でこのような「定額働かせ放題」「残業代ゼロ」法案を通そうとするのは、大きく矛盾する行動」である。こうしたやりかたの
安倍晋三政権の「働き方改革」では、長時間労働を是正にはならない。したがって、
継続審議となっている「労基法改正案」を白紙に戻さなくてはならない。
Ⅲ.現在の日本のにおける大きな課題が、「日本社会に蔓延している長時間労働が引き起こす最大の問題は、数多くの労働者の命と健康を奪っているということである。」、との認識に立ち、その解決のためには、労働時間規制の強化が必要である。特に、労働時間の上限規制はもちろん、勤務間インターバル規制を導入し、使用者に罰則付きで全ての労働者の労働時間記録義務を課する労基法を改正しなければならない。


 以下、日本労働弁護団の「決議」の引用。




by asyagi-df-2014 | 2017-02-28 08:16 | 書くことから-労働 | Comments(0)

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