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沖縄-辺野古・高江から-2016年12月31日

 沖縄の現場に立てないのなら、せめて事実をきちんと確認したい。
 それも、覚悟のある記者の言葉から。
 そんなことから、琉球新報と沖縄タイムスの記事を残すことにしました。
 自分の資料の基本としても。
 思えば、「構造的差別では語るに足らない、もうひとつの差別が浮き彫りになった1年だった。」(仲村清司さん)、という事実に気づかされる日々でもありました。
 2016最後の「沖縄-辺野古・高江から-」です。


 2016年12月31日、沖縄-辺野古・高江の今を、沖縄タイムス、琉球新報は次のように表した。


(1)沖縄タイムス-米軍属殺人、高江強行、辺野古裁判… 記者が振り返る沖縄基地問題1年 【深堀り】-2016年12月30日 18:00


 沖縄タイムスは、標題について次のように報じた。


①「2016年も沖縄は米軍基地問題に翻弄(ほんろう)された。米軍属による暴行殺人事件に県民の怒りが広がり、6万5千人規模の県民大会につながった。国は北部訓練場の過半を返還して負担軽減をアピールする一方、違法確認訴訟の勝訴を理由に27日、名護市辺野古の新基地建設を再開した。しかし、新基地で運用されるオスプレイは13日、名護市安部への墜落と普天間飛行場への胴体着陸という二つの事故を起こしており、危険性を白日の下にさらした。基地問題の重要局面を取材した記者たちが、それぞれの視点で振り返った。」

【米軍属による暴行殺人事件】県民の「痛み」軽視】
①「悲惨な事件さえ政府は政治利用していないか。元海兵隊員で軍属の男による暴行殺人事件を受け、日本政府は26日、軍属の範囲を明確化する日米合意に達したと発表した。岸田文雄外相の『日米同盟のさらなる深化につながる』との発言に、怒りに近い感情が芽生えた。事件から半年後、被害女性の父親は米軍関係者の事件がこれ以上起きないようにと訴え、『一日も早い基地の撤去を願っている』との手記を発表した。その家族を前に『(事件は)日米の深化につながった』と言えるだろうか。」
②「女性を悼み、6万5千人が集まった県民大会では、登壇者や参加者から『被害者は私だったかもしれない』との声が聞こえた。自宅の近くをウオーキングしていただけの女性を無慈悲に襲い、殺し、山中に遺棄した事件。多くの県民が悲惨さに胸を痛め、自分のことのように受け止め、会場に足を運んだ。しかし、事件の痛みは政府にとっては『日米関係への悪影響』に変質する。それは米軍も同じだ。オスプレイの墜落事故後、在沖米軍のトップは『感謝されるべきだ』と言い放った。」
③「『事件事故を起こさないでほしい』『被害者をこれ以上出さないで』という切実な訴えを、上から目線で『日米関係が深化した』『感謝されるべきだ』と言い放つ日米の再発防止策など期待できない。                            ④「『娘にお酒をついでほしかった』。そんな小さな幸せを壊す根本原因は何か。日米が目を背け続ける限り、沖縄の犠牲はやまない。」
(社会部・新崎哲史)

【安倍政権と沖縄】米国優先 高江工事を強行】
①「安倍晋三首相の目に、沖縄は映っていない。沖縄からは、そのことがよく分かる。28日朝(現地時間27日午前)、米ハワイ・真珠湾での演説を聞き、改めて確信した。名護市辺野古の新基地建設問題で、安倍政権は最高裁判決を『錦の御旗』に、知事が埋め立て承認取り消し処分を取り消した翌日に工事を強行的に始めた。」
②「東村高江周辺の米軍北部訓練場へのヘリパッド建設でも、国は反対する市民を排除するために大量の機動隊を投入、抗議をあざ笑うかのように自衛隊ヘリで上空から資材を搬入した。」
③「建設反対、という県民の声に安倍政権は耳を傾けない。そうして民意に反して造られたヘリパッドも、建設が進む辺野古新基地も、完成後に使用するのは米軍だ。沖縄の人々は日々、米軍機の墜落に恐怖し、騒音に耳をふさぎ、凶悪犯罪におびえる。戦後71年がたった今も、沖縄はまさに米軍の『占領下』だ。」

【首相の目は、常に米国に向いている。】
①「首相は真珠湾での演説で、かつての敵国日本を許した米国を『大いなる寛容の心』の持ち主だと絶賛した。戦後、手を差し伸べてくれた米国に感謝した。日米は『寛容』の大切さを世界へ発信する任務があるとも言った。沖縄がいまだに『占領』されているにもかかわらず、だ。その姿勢は戦後、米海兵隊を本土から沖縄に押し付けた構図と重なる。『沖縄から目をそらせば、全てがうまくいく』。そんな思考が透けて見える。米国の『寛容の心』の裏で沖縄が苦しめられている現実を、決して表に出さないよう、政府は躍起だ。」(政経部・大野亨恭)

【翁長県政と基地】保革で揺らぐ知事態度』
①「翁長雄志知事が、米軍基地問題へのスタンスを厳しく問われた年だった。」
②「米軍北部訓練場の返還とヘリパッド建設で、一度は返還を『歓迎する』と発言して3日後に撤回。さらに返還を『苦渋の選択の最たるもの』と発言したため『ヘリパッド建設容認』と報じられ、物議を醸した。端的に言うと、翁長県政は『建白書』と書かれた旗の下に、さまざまな立場の勢力が集結した『1点共闘主義』だ。」

 建白書の主張は「普天間飛行場の県内移設断念」と「オスプレイ配備撤回」であり、これを「全ての米軍基地の県内移設断念」に拡大すれば、保守系の支持層が「非現実的だ」とそっぽを向く。

 だからヘリパッド建設の反対を明言せず、那覇軍港の浦添移設は「容認」と表明した。革新系の支援者からは失望の声も漏れる。

 辺野古以外の県内移設への対処を通して「県政-与党-市民」という三角形に、まだら模様が浮かび上がった年でもあった。

 もともと革新色が強い与党だが、建白書の実現を重視しているため、知事に公然と異を唱える場面は少ない。ただ、地元では「なぜ知事に県内移設を容認させるのか」という支援者の突き上げにさらされる。

 知事と「腹八分、腹六分」で連携するが、与党は「われわれが支援者に頭を下げて我慢している『腹二分、腹四分』に、知事はどの程度、思いをはせているだろうか」との疑心も持つ。

 現在の米軍再編計画の基礎となったSACO(日米特別行動委員会)最終報告は、大半の返還予定基地を県内に移設する内容だ。

 知事は戦後71年もの間、沖縄が過重な基地負担を背負わされてきた歴史を繰り返し訴えている。であれば、新たな負担のたらい回しであるSACOの正当性を問い直し、保守系の支持層に丁寧に説明して理解を得るのが筋ではないか。(政経部・吉田央)

【辺野古違法確認訴訟】権力のゆがみ 是正せず 

 翁長雄志知事の辺野古埋め立て承認取り消し処分の適法性を巡って国と県が争った「辺野古違法確認訴訟」は、あっけない最高裁判決で幕を閉じた。最高裁は12月、明確な根拠法や話し合いがないまま新基地建設をごり押しする国の「ゆがんだ権力行使」について何も言及することなく、わずか12ページの判決で訴訟を終局させた。国の提訴から約5カ月。明らかに審理不十分だ。

 代執行訴訟の和解を受け、国の是正指示の違法性を訴えて県が審査を求めた国地方係争処理委員会(係争委)は、決定主文で是正指示の違法性を指摘するか、「円満解決」に向けた協議を強く促すべきだった。

 ただ、仮に係争委が国に是正指示の違法性を勧告したとしても、国にそれを順守する義務はない。90日という法定の審査期間もネックになったのだろうか。

 係争委は国が地方に違法な介入をした場合に、不服を申し立てられる「駆け込み寺」として新設された第三者機関だ。しかし改正地方自治法が与えた権限は弱く、このような深刻な国と地方の対立では機能しないことが明らかになった。

 9月の違法確認訴訟の一審福岡高裁那覇支部判決は、「辺野古唯一」や「沖縄の地理的優位性」を認定した信じがたいものだった。最高裁は法治主義を真っ向から否定した一審判決に対し、判断枠組みの変更で逃げずに、法解釈と審理不尽を指摘して破棄差し戻しを決断するべきだった。

 県が最高裁への上告理由書で訴えた「国内法に基づかず、米軍基地を建設することが許されるのか」との指摘を、全国の都道府県はどれだけ深刻に受け止めたのだろう。今後、他府県で米軍基地建設が議論され、都道府県が反対した場合、国は今回と同様に、是正指示と提訴を連発するのだろうか。(社会部・国吉聡志)

【米海兵隊撤退決議】撤退機運の醸成 道半ば

 海兵隊は沖縄に駐留する必要があるのか?

 名護市辺野古の新基地建設問題で閉塞(へいそく)感が漂う中、古くて新しい問い掛けがクローズアップされた。

 県議会は5月、「在沖海兵隊の撤退」を求める決議と意見書を全会一致で初めて可決した。自民会派は退席したが、公明会派は賛成に回った。翁長雄志知事が参加した5月の県民大会でも主要スローガンの一つとなった。知事を支持する最大の議員グループ「立憲ネットワークおきなわ」は12月、海兵隊撤退を求める声明を出した。

 日本政府は海兵隊の地上部隊と航空部隊を切り離すことはできないと主張してきた。であれば、普天間飛行場の県外移設といった部隊や施設ごとに議論するより、全体の撤退を求める方が合理的だ、そんな見方が広まりつつある。

 戦闘部隊を輸送する艦船は長崎県佐世保市にあるという状況を一つとっても、沖縄でなければ運用できないという根拠は乏しい。

 小さなかごにあまりにも多くの卵を詰め込みすぎていることが、沖縄問題の本質だ。かごの中に押し込めたまま、バランスを取る弥縫(びほう)策では解決につながらないことは、この20年間で証明されている。

 ただ、機運を醸成できたかといえば、そうではない。翁長知事が「撤退」に踏み込んだことはなく、県内でも意見がまとまっていないのが実情だ。

 海兵隊は在沖米軍の兵力の6割、面積の7割を占める。撤退すれば米軍絡みの事件・事故は大幅に減り、基地問題の大半が消滅する。掛け声倒れに終わらず、「辺野古が唯一」と繰り返す日本政府の“固定観念”を崩すにはどうすればよいか。「雨垂れ 石を穿(うが)つ」ような政治的エネルギーが必要なのは間違いない。(特別報道チーム・福元大輔)


(2)琉球新報-墜落オスプレイ、残骸回収やり直し 米軍、トラック1台分-2016年12月31日 07:30


 琉球新報は、標題について次のように報じた。


①「米軍垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが13日、名護市安部の海岸に墜落した事故で、米海兵隊は30日、同海岸の浅瀬付近に散乱しているオスプレイの残骸や部品の回収作業を行った。米海兵隊は機体の回収作業を終了したと22日に発表したが、住民が調べたところ、墜落現場付近の浅瀬や岩礁に無数の残骸や部品が回収されずに残っていた。そのため、安部区は28日、沖縄防衛局担当者に『完全な回収』を求める抗議文を手渡した。米軍は防衛局を通じて数日内に回収作業を行う意向を示していた。」
②「作業は30日午前10時ごろから夕方近くまで行われた。米海兵隊員25人以上が3艇のゴムボートに分乗し、周辺の海域に潜水しファイバー繊維、鉄、プラスチック、電気ワイヤなどの残骸や部品を集めた。集めたものは複数のカヌーに積み込み浜に運んだ。トラック1台分の残骸や部品が回収された。沖では海上保安庁のボートが作業を見守っていた。」
③「同日の朝、作業の連絡を受けたという當山真寿美区長は『できるだけ早くやるように求めていた。しっかり回収してほしい』と話した。区民の男性は『まだたくさん残骸が残っていたので、米軍が回収を行うのは当然だ。元の状態に戻してほしい』と求めた。」


(3)沖縄タイムス-知事は直ちに「撤回」を 政治的判断には説明責任[平安名純代の想い風]-2016年12月31日 10:00


 沖縄タイムスは、標題について次のように報じた。


①「米ニューヨーク・マンハッタンの5番街にあるトランプ・タワー内のレストランで約2週間前、元米高官と会食した。同氏が推した人物がトランプ新政権に閣僚入りしたこともあり、新政権や対日交渉役の顔ぶれの変化などに関する話題がしばらく弾んだ。」
②「米軍再編に深く携わり、訪沖経験もある同氏との会話はやがて辺野古移設へと移り、高江のヘリパッドがもうすぐ完成すると告げると、遠くを見るような表情で『高江も辺野古も一つの大きなパズルのピース(断片)だ。辺野古を阻止しようというならば、パズルそのものを作り替える必要があるのだが…』と声を落とした。『沖縄は島全体がひとつの米軍基地だ』と語るその元高官は、米政府内にある沖縄の民意の尊重を説く声は、いつの時代も米軍にひっくり返されてきたと指摘し、『法廷で争える今がその構図をひっくり返す最大のチャンスだ。すべてのカードを使って最後まで闘い抜く必要がある』と強調した。」
③「翁長雄志知事は26日、辺野古埋め立て承認取り消し処分を取り消した。『新基地は造らせないと改めて決意を固めた』といいながら、自ら工事再開を復活させた言動の不一致を理解するのは難しい。』
④「米側では今後の展開について、工事再開後に県が埋め立て承認を撤回する場合、日本政府は撤回によって生じる不利益の補償を県に請求できるため、撤回の時期が長引くほど展開は沖縄にとって不利になると予想する。一方、県内では、知事はなぜ取り消しを急ぐ必要があったのかと指摘する声もある。うるま市具志川九条の会のメンバーら約100人は26日午前、県庁で抗議集会を開催。元裁判官の仲宗根勇共同代表は、『承認取り消しを取り消すならば、同時に撤回に踏み切るべきだ』と何度も強調し、埋め立て承認が復活すれば工事が再開され、後に撤回しても、裁判で勝つまで工事が続いていく危険性を指摘。同会議メンバーらも、翁長知事は承認取り消しでは第三者委員会を設置し時間をかけて検討したが、今回はなぜこんなに急ぐのかと疑問視。『現場に危機的状況を招かないでほしい』と訴えた。」
⑤「前述した元高官に、こうした状況を告げると『少数でも正論だ。戦略のない闘いに勝利はない。行動の遅さは致命的結果を招く』とと撤回の重要性に理解を示した。」
⑥「確かに沖縄は再び最高裁で敗れた。しかし、自信を持てばいいのだ。沖縄の自己決定権を主張するのに世論を恐れる必要はない。建設的な批判を尊重し、軌道修正して闘いを続ければいいのだ。そのためにもまず、翁長知事は今回の重大な政治的判断を巡る県民への説明責任を果たし、直ちに撤回を実行する必要がある。」


by asyagi-df-2014 | 2016-12-31 17:30 | 沖縄から | Comments(0)

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