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「国境なき記者団の声明」を読む。

 国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(RSF)は2016年10月22日、沖縄における報道の自由侵害を懸念する声明を発表した。
 この声明を考える。


声明は、最初に、「国境なき記者団は、在沖米軍が日本の市民、NGO、ジャーナリストを広範囲に監視していることについて、米軍と日本政府に説明を求める。」、とその主張を明確にする。
声明は、この監視活動の実態を次のように告発する。


(1)監視活動は英国人ジャーナリスト、ジョン・ミッチェル氏が情報公開請求で入手した305ページの文書で明らかになった。ことし5~7月の在沖米海兵隊捜査当局による監視活動の日報、幹部が出した電子メール、ある基地の憲兵隊が回覧した報告書が含まれる。
(2)6月9日付の日報には、ミッチェル氏が米軍の環境汚染について講演したことが、写真や短いプロフィル付きで記述されている。ある電子メールはミッチェル氏を「敵対的」「協力関係を築く見込みがない。彼には方針があり、それを隠そうとしない」と表現している。
(3)沖縄の2つの日刊紙、沖縄タイムスと琉球新報についても日報で言及されている。
(4)米軍がミッチェル氏を監視するのは、沖縄における軍事活動、環境汚染、冷戦中の化学兵器投棄などを報じてきた結果だという。地元の平和運動、米軍基地や日本政府の政策への抗議行動も取材しており、ミッチェル氏はこれも監視下に置かれた理由になったと考えている。
(5)国境なき記者団は在沖米海兵隊が監視活動を説明すべきだと信じ、連絡したが返事がなかった。ミッチェル氏は米国防総省に監視活動の程度や、どのレベルで許可されたのかを照会したが、拒否された。
(6)国境なき記者団はテストを実施し、ミッチェル氏の自宅のIPアドレスがインターネット接続遮断の標的になっていることを突き止めた。嘉手納基地を含むいくつかの米軍ウェブサイトを閲覧することができなくなっている。


 この事実を受けて国境なき監視団は、次のように見解を表明する。


 国境なき記者団アジア太平洋事務所のベンジャミン・イズマイル所長は「ミッチェル氏が入手した文書は、米軍が彼の日本における全ての行動を注意深く監視していることを明確に示しており、非常に深い懸念を抱く。文書に照らし、米軍はこの監視活動の決定を説明すべきだ。在日米軍による監視活動は、報道の自由を保障する日本政府の責務を脅かしている。日本政府もこれらの活動に関与したかどうかを明確にする必要がある」と述べた。


 また、沖縄での抗議活動の取材に関連して次のように告発する。


 沖縄での抗議活動の取材に関連して、標的にされたジャーナリストはミッチェル氏だけではない。8月、県北部での米軍ヘリパッド建設に対する抗議行動を取材していた沖縄タイムスと琉球新報の記者を、機動隊員が拘束した。記者であることを警察に証明したにもかかわらず、現場から連れ去られた。両紙やマスメディアの労働組合は「国による報道の自由の深刻な侵害だ」と非難した。しかし、安倍晋三首相が率いる政府は警察のこうした行動を容認し、将来抗議行動を取材するジャーナリストにとって危険な先例を作った。


 
 さらに、日本の状況の悪化を告発する。


(1)与党自民党のメンバーは昨年、政府に批判的なメディアには財政的圧力を加えるべきだと言い、公共放送NHKの前経営委員は沖縄タイムスと琉球新報がつぶれるべきだと発言した。
(2)国境なき記者団は国連の表現の自由に関する特別報告者、デイビッド・ケイ氏が4月に日本を訪問する直前、日本における報道の自由を巡る状況が深刻だとの評価を発表した。


 結局、国境なき記者団は、「安倍氏が2012年12月に再び首相に就任して以来、報道の自由への配慮は大幅に後退している。16年の報道の自由度ランキングでは日本は180カ国中72位で、ランキングが02年に創設されて以来、過去最悪となった。」、と指摘する。


 国外からの「日本における報道の自由を巡る状況が深刻」との指摘によって、初めて問題の本質に気がつく状況は、日本がすでに、自らでは告発できないシステムに陥ってしまっているのではないか。
 安倍晋三政権の持つ危険性だけに寄りかかるのではなく、本旨的な問題に立ち向かう時が来ているのではないか。
 特に、この声明の次の指摘は、日本及び日本のマスコミにとって試金石である。


「米軍はこの監視活動の決定を説明すべきだ。在日米軍による監視活動は、報道の自由を保障する日本政府の責務を脅かしている。日本政府もこれらの活動に関与したかどうかを明確にする必要がある」


 以下、国境なき記者団の声明の引用。








 国境なき記者団は、在沖米軍が日本の市民、NGO、ジャーナリストを広範囲に監視していることについて、米軍と日本政府に説明を求める。

 監視活動は英国人ジャーナリスト、ジョン・ミッチェル氏が情報公開請求で入手した305ページの文書で明らかになった。ことし5~7月の在沖米海兵隊捜査当局による監視活動の日報、幹部が出した電子メール、ある基地の憲兵隊が回覧した報告書が含まれる。

 6月9日付の日報には、ミッチェル氏が米軍の環境汚染について講演したことが、写真や短いプロフィル付きで記述されている。ある電子メールはミッチェル氏を「敵対的」「協力関係を築く見込みがない。彼には方針があり、それを隠そうとしない」と表現している。

 沖縄の2つの日刊紙、沖縄タイムスと琉球新報についても日報で言及されている。

 米軍がミッチェル氏を監視するのは、沖縄における軍事活動、環境汚染、冷戦中の化学兵器投棄などを報じてきた結果だという。地元の平和運動、米軍基地や日本政府の政策への抗議行動も取材しており、ミッチェル氏はこれも監視下に置かれた理由になったと考えている。

 国境なき記者団アジア太平洋事務所のベンジャミン・イズマイル所長は「ミッチェル氏が入手した文書は、米軍が彼の日本における全ての行動を注意深く監視していることを明確に示しており、非常に深い懸念を抱く。文書に照らし、米軍はこの監視活動の決定を説明すべきだ。在日米軍による監視活動は、報道の自由を保障する日本政府の責務を脅かしている。日本政府もこれらの活動に関与したかどうかを明確にする必要がある」と述べた。

 国境なき記者団は在沖米海兵隊が監視活動を説明すべきだと信じ、連絡したが返事がなかった。ミッチェル氏は米国防総省に監視活動の程度や、どのレベルで許可されたのかを照会したが、拒否された。

 国境なき記者団はテストを実施し、ミッチェル氏の自宅のIPアドレスがインターネット接続遮断の標的になっていることを突き止めた。嘉手納基地を含むいくつかの米軍ウェブサイトを閲覧することができなくなっている。

 沖縄での抗議活動の取材に関連して、標的にされたジャーナリストはミッチェル氏だけではない。8月、県北部での米軍ヘリパッド建設に対する抗議行動を取材していた沖縄タイムスと琉球新報の記者を、機動隊員が拘束した。記者であることを警察に証明したにもかかわらず、現場から連れ去られた。両紙やマスメディアの労働組合は「国による報道の自由の深刻な侵害だ」と非難した。しかし、安倍晋三首相が率いる政府は警察のこうした行動を容認し、将来抗議行動を取材するジャーナリストにとって危険な先例を作った。

 与党自民党のメンバーは昨年、政府に批判的なメディアには財政的圧力を加えるべきだと言い、公共放送NHKの前経営委員は沖縄タイムスと琉球新報がつぶれるべきだと発言した。

 国境なき記者団は国連の表現の自由に関する特別報告者、デイビッド・ケイ氏が4月に日本を訪問する直前、日本における報道の自由を巡る状況が深刻だとの評価を発表した。

 安倍氏が2012年12月に再び首相に就任して以来、報道の自由への配慮は大幅に後退している。16年の報道の自由度ランキングでは日本は180カ国中72位で、ランキングが02年に創設されて以来、過去最悪となった。
(沖縄タイムス2016年10月23日より掲載〉


by asyagi-df-2014 | 2016-10-30 06:17 | 自由権 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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