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琉球新報社説から、沖縄の県民投票20年を考える。

 琉球新報は2016年9月9日、「県民投票20年 民意表明の意義は不変だ」、との社説を掲げた。
 あわせて、2016年9月10日に「資材輸送ヘリ投入 工事止め地元に向き合え」、2016年9月11日に「県外機動隊経費負担 政治的中立とは程遠い」、とその社説を続けた。
 この琉球新報の社説を受けて、1996年9月の県民投票という歴史的意味-「県民の人権を脅かし続ける米軍基地と日米地位協定に対する沖縄の民意を表明した歴史的意義」(琉球新報)-を、現在の辺野古・高江の状況のなかで、あらためて考える。
 まず、1996年9月8日の県民投票とは何だったのか、琉球新報は次のように指摘する。


(1)投票率59・53%で、賛成票は89・09%だった。
(2)県民は投票によって、基地の整理縮小と地位協定の見直しを明確に求めたのである。(3)前年に起きた少女乱暴事件に抗議する10・21県民大会で掲げた要求を再び突き付け、日米安保体制の根幹を揺さぶった。
(4)対米追従に終始し、沖縄への基地集中を当然視する日本政府への異議申し立ては、沖縄の将来を自ら決定するという「自己決定権」の行使であった。
(5)「日米安保のくびき」から脱しようという県民の願いを1票に託したのだ。


 つまり、2016年9月8日の沖縄県が行った県民投票とは、「対米追従に終始する基である『日米安保のくびき』」を脱するために、「沖縄への基地集中を当然視する日本政府への異議申し立を行い、沖縄の将来を自ら決定するという『自己決定権』の行使を実行したもの」であった。これは、沖縄にとって、いや日本にとって、歴史的意義を持つもであった。
 それは、「県民投票は政府のみならず、安保条約を容認する国民全体に対しても、民主主義に照らして沖縄の基地負担を放置してよいのかを問うものであった。その意義を国民全体で改めて共有すべきだ。」、ということであった。
 しかし、県民投票後の20年間は、「投票で示された県民要求とは逆行する事態がこの20年で進んでいる。」、と琉球新報は突く。そして、「辺野古新基地やヘリパッド建設の強行はその象徴だ。」、と。
 このことについて、琉球新報は、次のように記す。


(1)沖縄の基地負担軽減を標榜(ひょうぼう)したSACO(日米特別行動委員会)や在日米軍再編による基地施策は、沖縄の基地負担を軽減するものではない。辺野古新基地やヘリパッドは基地負担の移転にすぎず、投票で示された県民意思に合致しない。
(2)逆にMV22オスプレイの配備強行によって米軍普天間飛行場の基地機能は強化された。嘉手納基地に所属するF15戦闘機の訓練移転は実施されたが、外来機の飛来で騒音は増加傾向にある。
(3)地位協定の改定も実現せず運用改善にとどまっている。米軍属女性暴行殺人事件を受け、日米両政府は地位協定上の軍属の適用対象を狭めることで合意したが、これも弥縫(びほう)策の域を出ない。米軍に絡む事件・事故から県民の生命・財産を守る上で、基地の整理縮小と地位協定見直しは最低レベルの要求だ。それが顧みられないことへの憤りと不信感が20年でさらに蓄積されてきたのだ。


 結局、日本政府は、県民投票の真の意味を理解することなく、対米従属の政策をかえりみずに、逆に、米軍再編に積極的に自らの命運を託そうとしている。
 だから、琉球新報は、「米軍に絡む事件・事故から県民の生命・財産を守る上で、基地の整理縮小と地位協定見直しは最低レベルの要求だ。それが顧みられないことへの憤りと不信感が20年でさらに蓄積されてきたのだ。」、と述べる。
 そして、日本政府が県民投票の歴史的意義を振りかえることなく、進んで来てしまったことが、現在の辺野古・高江の問題を引き起こしてしまった、と。
 琉球新報は、県民投票の歴史的意義を直視しろと、次のことを強く訴える。


(1)米軍に絡む事件・事故から県民の生命・財産を守る上で、基地の整理縮小と地位協定見直しは最低レベルの要求だ。それが顧みられないことへの憤りと不信感が20年でさらに蓄積されてきたのだ。そのことを政府は直視し、率直に反省すべきだ。県民投票で示された民意の延長上に、今日の辺野古新基地やヘリパッド建設への抵抗があることを忘れてはならない。
(2)県民投票は政府のみならず、安保条約を容認する国民全体に対しても、民主主義に照らして沖縄の基地負担を放置してよいのかを問うものであった。その意義を国民全体で改めて共有すべきだ。


 この上で、琉球新報は、今起きていることに言及するのである。


(1)政府は反対運動の住民を排除するため県外から500人もの機動隊を導入した。自衛隊ヘリの投入をも辞さない姿勢は、国家権力を総動員するかのような強権的な進め方だ。
 米軍基地建設のために手段を選ばぬ政府の対応は、戦後の米軍による「銃剣とブルドーザー」の住民弾圧をほうふつさせる。
(2)問答無用の工事強行に、反対運動は激しさを増すばかりだ。逮捕者が相次ぎ、一触即発の状況にある。その上、資材搬入にヘリを投入する頭越しのやり方は、火に油を注ぐ暴挙と言わざるを得ない。
(3)政府は2007年に、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた調査の支援を名目として海上自衛隊掃海母艦を投入した。14年にも海底ボーリング調査の支援のため、掃海母艦派遣を検討した経緯がある。
(4)北部訓練場で警備に当たる警視庁や大阪府警などの機動隊に、給油代や高速道路代など現地での経費を沖縄側が負担していたことが分かった。抗議の市民に負傷者が出るなど暴力的な警備をする各地の機動隊は、土足で沖縄に踏み込んだだけでなく、県民の税金である公費まで使用している。市民感情からして納得のいく話ではない。


 琉球新報は、この事実に対して、次のように主張する。


(1)自衛隊ヘリの投入については、当の自衛隊、防衛省関係者にも「米軍との一体化の批判を受けかねない」と疑問視する声があるという。米軍基地建設に自衛隊が加担することは、自衛隊の本来業務にも反するのではないか。
 県は北部訓練場の過半返還の条件としてのヘリパッド移設を容認した経緯がある。しかし翁長雄志知事は、オスプレイ運用が明らかになった時点で「運用反対」を表明し、政府の工事強行を批判している。伊集盛久東村長もオスプレイの運用に反対している。
 騒音激化に苦しむ東村高江区の住民、多くの県民、県知事が強権的な工事強行に反対、批判を強める中で、地元の声を一顧だにしない政府の姿勢は民主主義国家の名に値しない。
 これ以上の対立激化は流血の事態さえ招きかねない。政府は工事をいったん中止し、虚心坦懐に県や東村、地元住民と話し合うべきだ。
 米海兵隊の「戦略展望2025」には北部訓練場の過半返還について「使用不能な演習場を返還し、最大限に活用する訓練場が新たに開発される」とある。既設ヘリパッドでのオスプレイ訓練の激化で基地機能の強化は明白だ。新たな移設工事は容認できない。
(2)住民意見を反映し、政治的中立性を保つのであれば、現在、北部訓練場の周辺で起きている暴力的な警備をやめさせ、応援の機動隊の撤退を県公安委は決定すべきだ。法的根拠すら曖昧な検問や抗議する市民との衝突によって周辺住民の生活にまで悪影響を及ぼしている。県公安委の各委員が現状をどう見ているのか示してもらいたい。
 北部訓練場のヘリパッド建設は、同訓練場の過半の返還という「アメ」を見せ、米軍の機能強化を図ることが目的にある。
 しかもヘリパッドは東村高江の集落を取り囲むように建設される。生活環境の悪化だけでなく、ヘリ墜落の危険が増す高江住民が反対するのは当然である。混乱のそもそもの原因は住民の意思を無視したヘリパッド建設にあるのだ。
 警備体制を見直せば済む問題ではない。豊かな森が残る本島北部は15日に国立公園として正式に指定される。政府が行うべきは北部訓練場の全面返還による自然保護であり、さらなる負担を押し付ける基地機能強化ではない。


 「県民投票は政府のみならず、安保条約を容認する国民全体に対しても、民主主義に照らして沖縄の基地負担を放置してよいのかを問うものであった。その意義を国民全体で改めて共有すべきだ。」、という県民投票を行ったの沖縄の意思は、今また、新基地建設という日米両政府の思惑の中で、切り刻まれている。
 今本当に必要なことは、まずは、「豊かな森が残る本島北部は15日に国立公園として正式に指定される。政府が行うべきは北部訓練場の全面返還による自然保護であり、さらなる負担を押し付ける基地機能強化ではない。」(琉球新報)、ということである。


以下、琉球新報の引用。








(1)琉球新報社説-県民投票20年 民意表明の意義は不変だ-2016年9月9日 06:02


 県民の人権を脅かし続ける米軍基地と日米地位協定に対する沖縄の民意を表明した歴史的意義は不変であることを確認したい。

 在沖米軍基地の整理縮小と日米地位協定の見直しの是非を問うた1996年9月8日の県民投票から20年がたった。投票率59・53%で、賛成票は89・09%だった。
 県民は投票によって、基地の整理縮小と地位協定の見直しを明確に求めたのである。前年に起きた少女乱暴事件に抗議する10・21県民大会で掲げた要求を再び突き付け、日米安保体制の根幹を揺さぶった。
 対米追従に終始し、沖縄への基地集中を当然視する日本政府への異議申し立ては、沖縄の将来を自ら決定するという「自己決定権」の行使であった。「日米安保のくびき」から脱しようという県民の願いを1票に託したのだ。
 しかし、投票で示された県民要求とは逆行する事態がこの20年で進んでいる。辺野古新基地やヘリパッド建設の強行はその象徴だ。
 沖縄の基地負担軽減を標榜(ひょうぼう)したSACO(日米特別行動委員会)や在日米軍再編による基地施策は、沖縄の基地負担を軽減するものではない。辺野古新基地やヘリパッドは基地負担の移転にすぎず、投票で示された県民意思に合致しない。
 逆にMV22オスプレイの配備強行によって米軍普天間飛行場の基地機能は強化された。嘉手納基地に所属するF15戦闘機の訓練移転は実施されたが、外来機の飛来で騒音は増加傾向にある。
 地位協定の改定も実現せず運用改善にとどまっている。米軍属女性暴行殺人事件を受け、日米両政府は地位協定上の軍属の適用対象を狭めることで合意したが、これも弥縫(びほう)策の域を出ない。
 米軍に絡む事件・事故から県民の生命・財産を守る上で、基地の整理縮小と地位協定見直しは最低レベルの要求だ。それが顧みられないことへの憤りと不信感が20年でさらに蓄積されてきたのだ。
 そのことを政府は直視し、率直に反省すべきだ。県民投票で示された民意の延長上に、今日の辺野古新基地やヘリパッド建設への抵抗があることを忘れてはならない。
 県民投票は政府のみならず、安保条約を容認する国民全体に対しても、民主主義に照らして沖縄の基地負担を放置してよいのかを問うものであった。その意義を国民全体で改めて共有すべきだ。


(2)琉球新報社説-資材輸送ヘリ投入 工事止め地元に向き合え-2016年9月10日 06:02


 沖縄防衛局は米軍北部訓練場内のヘリパッド建設で、資材搬入のため民間の大型特殊ヘリの投入に踏み切った。さらに陸自ヘリの使用も検討しているという。県民の根強い反対運動に目もくれぬ強硬措置であり容認できない。

 政府は反対運動の住民を排除するため県外から500人もの機動隊を導入した。自衛隊ヘリの投入をも辞さない姿勢は、国家権力を総動員するかのような強権的な進め方だ。
 米軍基地建設のために手段を選ばぬ政府の対応は、戦後の米軍による「銃剣とブルドーザー」の住民弾圧をほうふつさせる。
 問答無用の工事強行に、反対運動は激しさを増すばかりだ。逮捕者が相次ぎ、一触即発の状況にある。その上、資材搬入にヘリを投入する頭越しのやり方は、火に油を注ぐ暴挙と言わざるを得ない。
 政府は2007年に、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた調査の支援を名目として海上自衛隊掃海母艦を投入した。14年にも海底ボーリング調査の支援のため、掃海母艦派遣を検討した経緯がある。
 自衛隊ヘリの投入については、当の自衛隊、防衛省関係者にも「米軍との一体化の批判を受けかねない」と疑問視する声があるという。米軍基地建設に自衛隊が加担することは、自衛隊の本来業務にも反するのではないか。
 県は北部訓練場の過半返還の条件としてのヘリパッド移設を容認した経緯がある。しかし翁長雄志知事は、オスプレイ運用が明らかになった時点で「運用反対」を表明し、政府の工事強行を批判している。伊集盛久東村長もオスプレイの運用に反対している。
 騒音激化に苦しむ東村高江区の住民、多くの県民、県知事が強権的な工事強行に反対、批判を強める中で、地元の声を一顧だにしない政府の姿勢は民主主義国家の名に値しない。
 これ以上の対立激化は流血の事態さえ招きかねない。政府は工事をいったん中止し、虚心坦懐に県や東村、地元住民と話し合うべきだ。
 米海兵隊の「戦略展望2025」には北部訓練場の過半返還について「使用不能な演習場を返還し、最大限に活用する訓練場が新たに開発される」とある。既設ヘリパッドでのオスプレイ訓練の激化で基地機能の強化は明白だ。新たな移設工事は容認できない。



(3)琉球新報社説-県外機動隊経費負担 政治的中立とは程遠い-2016年9月11日 06:02


 北部訓練場で警備に当たる警視庁や大阪府警などの機動隊に、給油代や高速道路代など現地での経費を沖縄側が負担していたことが分かった。抗議の市民に負傷者が出るなど暴力的な警備をする各地の機動隊は、土足で沖縄に踏み込んだだけでなく、県民の税金である公費まで使用している。市民感情からして納得のいく話ではない。

 沖縄平和市民連絡会が開示請求した公文書で明らかになった。文書は沖縄県警が各都道府県警に宛てたもので、車両の修理経費も沖縄県警が負担するとしている。
 県民と対峙(たいじ)し、批判も多い北部訓練場での警備に対し、公金を支出するのが果たして適切なのか。県警本部長と県公安委員会の各委員は県民に説明する義務がある。
 北部訓練場の警備に当たり、各都道府県警への援助要求は県公安委が出したものだが、起案したのは県警だ。県公安委は、県警の案を追認し、政府のヘリパッド建設強行に加担したといえる。
 県公安委のホームページには次のように書かれている。
 「公安委員会は、警察行政に県民の方々の意見を反映させながら、警察の民主的な運営と政治的な中立性を確保するために設置されており、警察を管理する機関として大きな役割を果たしています」
 住民意見を反映し、政治的中立性を保つのであれば、現在、北部訓練場の周辺で起きている暴力的な警備をやめさせ、応援の機動隊の撤退を県公安委は決定すべきだ。法的根拠すら曖昧な検問や抗議する市民との衝突によって周辺住民の生活にまで悪影響を及ぼしている。県公安委の各委員が現状をどう見ているのか示してもらいたい。
 北部訓練場のヘリパッド建設は、同訓練場の過半の返還という「アメ」を見せ、米軍の機能強化を図ることが目的にある。
 しかもヘリパッドは東村高江の集落を取り囲むように建設される。生活環境の悪化だけでなく、ヘリ墜落の危険が増す高江住民が反対するのは当然である。混乱のそもそもの原因は住民の意思を無視したヘリパッド建設にあるのだ。
 警備体制を見直せば済む問題ではない。豊かな森が残る本島北部は15日に国立公園として正式に指定される。政府が行うべきは北部訓練場の全面返還による自然保護であり、さらなる負担を押し付ける基地機能強化ではない。


by asyagi-df-2014 | 2016-09-16 05:29 | 沖縄から | Comments(0)

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