伊方原発再稼働を怒りを込めて批判する。
2016年 08月 13日
2016年8月12日、四国電力は、伊方原発第3号機を再稼働させた。
四国電力は、地域住民の不安を払拭することができないままに、安倍晋三政権の「成長戦略」の誤謬のもとに、その企業論理を押し付けることになった。
愛媛新聞、高知新聞、大分合同新聞は、2016年8月12日、次のような社説・論説を掲げてこのことを批判した。
(1)愛媛新聞社説-伊方原発再稼働へ 不安な見切り発車容認できない
(2)高知新聞社説-【伊方再稼働】四国に原発は必要なのか
(3)大分合同新聞論説- 伊方原発再稼働 “到底許せない”
まずは、これの要約から。
(1)主張
(愛媛新聞)
①四国電力は伊方原発3号機をきょうにも再稼働させる。東京電力福島第1原発事故から5年5カ月。収束のめどは立たず、まだなお多くの人が避難生活を強いられている。今も続く深刻な状況から目を背ける再稼働に改めて強く異議を唱える。
②山本公一原子力防災担当相と中村時広知事はそれぞれ会見で「完璧な避難計画はない」と述べた。そうだからこそ再稼働すべきではない。計画の改善を続けるとしても「想定外」はどこかに潜んでおり、見切り発車は断じて許されない。
③重大事故時の原発施設の対応を人海戦術に頼っている点にも不安が募る。先月の訓練では、防護服を着て海水確保作業をしていた作業員2人が熱中症の症状を訴え、訓練を一時中断、やり直した。当然ながら真夏でも嵐の日でも事故は起こり得る。倒れてもやり直しはきかない。いくら巨額を投じて施設を充実させても、重大事故のさなかに、作業員がけがをせず健康であることを前提にした対策では、あまりに楽観的すぎよう。
④愛媛新聞が先月行った県民世論調査では再稼働に否定的な回答が過半数を占めた。国や県、四電は背景に根強くある県民の不安を軽視してはならない。いつ終わるともしれない大規模避難を、仕方ないこととして当然のように受け止めるのでなく、より安全なエネルギー政策や、原発に依存しない経済施策を探ることが大切だ。
⑤鹿児島県の三反園訓知事は熊本地震を受け、稼働中の九州電力川内原発の一時停止を九電に要請する方針を表明している。将来世代への責任としても、不安が拭えない再稼働は容認できない。中村知事にも再考を求めたい。
(高知新聞)
①政府はエネルギー基本計画で、原発維持の理由に安定供給や地球温暖化対策、コストの安さを挙げた。しかし、四国では16年度の供給予備率が原発なしで約13%あり、安定供給の目安8%を大きく上回る。地球温暖化対策で効果はあるとしても、事故時の影響の大きさは福島の現状をみれば明らかだ。環境面の視点からも、効果とリスクが見合うとはいえないだろう。コストに関しては、政府試算で辛うじて石炭火力を下回る。ただ廃炉や社会的な費用などを踏まえると、優位性は揺らいでくる。
②四電は、再稼働で年250億円程度の収支改善を見込む。株主総会で同社は、再稼働反対の声に「これからは競争の時代、稼ぐ時代」と述べたという。その一方で原発30キロ圏内の自治体は避難計画を義務付けられているわけで、負担を強いる当事者として見識が問われよう。さらに万一の場合、四電は損害賠償を含めた事故対応の責任を全うできるのかどうか。業界最大手の東京電力でさえ対応できず、結局は国民が電気代や税金としてそのツケを払い続けている。
③事故対応だけではない。原発から出る高レベル放射性廃棄物の課題も残る。最終処分地も決まらないままの再稼働は、将来世代に対してあまりに無責任だろう。
④公共性があるとはいえ、利益のためにこれだけのリスクを抱える原発事業は、民間企業の在り方を超えるのではないか。伊方をはじめ、全国で原発を巡る訴訟が続く。国民も改めて議論を深める必要がある。
(大分合同新聞)
① 佐賀関から45キロに位置する四国電力伊方原発が12日再稼働する。南海トラフ震源域にあり、国内最大級の中央構造線断層帯にも近い。国内の原発の中で、事故の危険性はトップクラスとの見方もある。不安がないがしろにされたわけで、多くの大分県民は許せないだろう。
②全国の原発が休止中でも、電力は事足りた。伊方原発は大分県民に不安を与えるだけの存在。一方、同原発西側で生活する佐田岬半島住民には安全な避難方法が確立していない。これが民主主義といえるだろうか。
③伊方原発については、運転差し止め請求や仮処分が係争中。県内の住民が大分地裁に起こす予定の「伊方原発運転差し止め訴訟」は、原告数が当初の目標を超え、150人に達した。司法判断の行方を見守りたい。
(2)主張の根拠
(愛媛新聞)
①伊方原発から30キロ圏内の住民を対象とする避難計画では、命を守るという最低限の保証さえ得られていない。原発がある佐田岬半島は険しい山からなる。伊方町の住民は放射性物質の漏えい前に避難を開始することになっているが、急峻(きゅうしゅん)な斜面ばかりで、手助けの必要な高齢者も多く、一刻を争う避難は困難を極める。地震や大雨を伴う複合災害の場合、道路の寸断で集落が孤立する恐れもある。
②放射性物質の流入を防ぐための「放射線防護施設」の整備は進められている。だが、現在、町内にある7施設のうち4施設は土砂災害警戒区域内にあり、危険性が否定できない。③南海トラフ巨大地震などの甚大な被害想定が欠けていることも看過できない。伊方町以外、5~30キロ圏内の6市町の住民はまず屋内退避を求められているが、多数の家屋が倒壊して車中泊を余儀なくされた熊本地震の状況を鑑みれば、実効性を疑わざるを得ない。④県内各自治体や大分への広域避難計画に関しては、道路や港の損壊、受け入れ自治体の混乱などで機能不全に陥ることを危惧する。
(高知新聞)
①原発はいったん暴走すれば、広域に甚大な被害をもたらす。その脅威は5年余りを経ても、多くの国民が鮮明に覚えていよう。
②伊方原発の近くには、国内最大級の活断層「中央構造線断層帯」が横たわり、巨大地震の恐れを否定し切れない。顧客でもある住民の不安を押し切ってまで、自社の利益を優先する企業姿勢は到底、理解を得られるものではあるまい。
④伊方3号機は昨年7月、原子力規制委員会の審査で新規制基準に合格した。だが、住民の安全が担保されたと果たしていえるのか。新基準は以前より強化されたものの、事故の原因が特定されないままつくられ、教訓を反映したとは言い難い。過去には原発の耐震設計の目安を超える地震が何度もあり、これからも「想定」を超える事態はあり得る。田中委員長も「絶対安全とは言わない」との立場だ。「万が一」にしても安全を約束できないのに、過酷事故を経験した日本で原発が必要なのか。「原発回帰」の波がわたしたちの住む四国に押し寄せた今もなお、根本的な疑問を解消できない。
(大分合同新聞)
①4月には熊本、阿蘇、大分と地震が広がり、伊方原発への波及が懸念された。県内市町村の6月議会のうち、別府、中津、臼杵の3市議会と日出町議会で、再稼働に関する意見書を可決。日出町議会は国に再稼働中止を求める内容、3市議会は再検討や慎重な対応を求めた。また、豊後大野市議会の一般質問で橋本祐輔市長は「再稼働しないことが最善の策」と答弁した。昨年10月から今春までに杵築、豊後高田、国東、竹田、由布の5市議会が「再稼働の中止や決定見直し」などの意見書を可決していた。
②不安は多岐にわたる。代表は基準地震動だろう。原発を設計する際に想定した敷地周辺での地震による最大の揺れの強さ。河合弘之氏は著書「原発訴訟が社会を変える」で「基準地震動を超える大地震が原発を見舞ってはならないのに、福島第1原発事故も含め全国の原発で2011年までの7年間に5回も記録された。特に07年の地震で、柏崎刈羽原発(新潟県)は基準地震動(450ガル)を大幅に上回る1699ガルもの揺れに襲われた」と批判している。
③「再稼働の安全確保に必要な追加条件が半分に削られた」との指摘もある。福島第1原発国会事故調元委員長の黒川清氏は、著書「規制の虜(とりこ)」で「12年3月、原子力安全・保安院がまとめた報告書には、原発・原子力の安全にとって非常に重要で、規制に反映すべき30項目が盛り込まれた。当時の政府は原発を再稼働する際の“判断基準”を策定する過程で、15項目だけを取り上げ、残りの15項目は事業者の自主判断に任せる形になった」と嘆く。
④神戸大学の石橋克彦名誉教授(地震学)は、著書「南海トラフ巨大地震」で「浜岡原発と伊方原発の再稼働は無謀」と最も危険視。浜岡原発は福島第1原発事故後、政府が稼働を差し止め、再稼働できない。伊方原発が再稼働していいはずがない。新規制基準については「非常に危険。福島第1原発事故で原因が不明なまま、地震動を軽視した基準を作った。地震列島にある原発の“安全性の確認”など到底できない。地震動や津波をすべて予測することはできないからだ」と指摘している。
⑤原発が再稼働すれば、大事故の可能性が、休止中と比較にならないほど高まる。特に、中央構造線断層帯が近い伊方原発は「大地震発生時に、原子炉を止める制御棒が間に合わない恐れがある」との懸念もある。
この三紙の主張からだけでも、今回の四国電力による伊方原発3号機の再稼働は、間違っている。
私たちは、「3.11」をいまだ克服できないでいる。
愛媛新聞の「東京電力福島第1原発事故から5年5カ月。収束のめどは立たず、まだなお多くの人が避難生活を強いられている。今も続く深刻な状況から目を背ける再稼働に改めて強く異議」、という考え方こそ「3.11」を受け取った日本がとるべき基本的なっスタンスでなけねばならない。
また、四国電力は、再稼働をする前に、高知新聞の「公共性があるとはいえ、利益のためにこれだけのリスクを抱える原発事業は、民間企業の在り方を超えるのではないか。」、という疑問にきちんと答えなければならない。四国電力は、まずは、一企業として、「顧客でもある住民の不安を押し切ってまで、自社の利益を優先する企業姿勢は到底、理解を得られるものではあるまい。」(高知新聞)、という立場に立たなけねけねばならない。
四国電力の再稼働に対しての住民の具体的な不安は、「基準値震動」と「避難計画」についてである。
「基準値震動」については、「新規制基準については『非常に危険。福島第1原発事故で原因が不明なまま、地震動を軽視した基準を作った。地震列島にある原発の“安全性の確認”など到底できない。地震動や津波をすべて予測することはできないからだ』と指摘」(大分合同新聞)、に尽きる。
「避難計画」について、「山本公一原子力防災担当相と中村時広知事はそれぞれ会見で『完璧な避難計画はない』と述べた。そうだからこそ再稼働すべきではない。計画の改善を続けるとしても『想定外』はどこかに潜んでおり、見切り発車は断じて許されない。」(愛媛新聞)、という考え方こそが、住民の命を預かる行政者としてあたりまえのものである。
最後に、四国電力は、「原発が再稼働すれば、大事故の可能性が、休止中と比較にならないほど高まる。」(大分合同新聞)という判断の中で、「『万が一』にしても安全を約束できないのに、過酷事故を経験した日本で原発が必要なのか。」、「事故対応だけではない。原発から出る高レベル放射性廃棄物の課題も残る。最終処分地も決まらないままの再稼働は、将来世代に対してあまりに無責任だろう。」、という高知新聞の指摘を謙虚に受け止め、伊方原発3号機の再稼働を止めなけねばならない。
以下、各新聞社の社説・論説の引用。
(1)愛媛新聞社説-伊方原発再稼働へ 不安な見切り発車容認できない- 2016年08月12日
四国電力は伊方原発3号機をきょうにも再稼働させる。東京電力福島第1原発事故から5年5カ月。収束のめどは立たず、まだなお多くの人が避難生活を強いられている。今も続く深刻な状況から目を背ける再稼働に改めて強く異議を唱える。
伊方原発から30キロ圏内の住民を対象とする避難計画では、命を守るという最低限の保証さえ得られていない。
原発がある佐田岬半島は険しい山からなる。伊方町の住民は放射性物質の漏えい前に避難を開始することになっているが、急峻(きゅうしゅん)な斜面ばかりで、手助けの必要な高齢者も多く、一刻を争う避難は困難を極める。地震や大雨を伴う複合災害の場合、道路の寸断で集落が孤立する恐れもある。
放射性物質の流入を防ぐための「放射線防護施設」の整備は進められている。だが、現在、町内にある7施設のうち4施設は土砂災害警戒区域内にあり、危険性が否定できない。
南海トラフ巨大地震などの甚大な被害想定が欠けていることも看過できない。伊方町以外、5~30キロ圏内の6市町の住民はまず屋内退避を求められているが、多数の家屋が倒壊して車中泊を余儀なくされた熊本地震の状況を鑑みれば、実効性を疑わざるを得ない。県内各自治体や大分への広域避難計画に関しては、道路や港の損壊、受け入れ自治体の混乱などで機能不全に陥ることを危惧する。
山本公一原子力防災担当相と中村時広知事はそれぞれ会見で「完璧な避難計画はない」と述べた。そうだからこそ再稼働すべきではない。計画の改善を続けるとしても「想定外」はどこかに潜んでおり、見切り発車は断じて許されない。
加えて、重大事故時の原発施設の対応を人海戦術に頼っている点にも不安が募る。
先月の訓練では、防護服を着て海水確保作業をしていた作業員2人が熱中症の症状を訴え、訓練を一時中断、やり直した。当然ながら真夏でも嵐の日でも事故は起こり得る。倒れてもやり直しはきかない。いくら巨額を投じて施設を充実させても、重大事故のさなかに、作業員がけがをせず健康であることを前提にした対策では、あまりに楽観的すぎよう。
愛媛新聞が先月行った県民世論調査では再稼働に否定的な回答が過半数を占めた。国や県、四電は背景に根強くある県民の不安を軽視してはならない。いつ終わるともしれない大規模避難を、仕方ないこととして当然のように受け止めるのでなく、より安全なエネルギー政策や、原発に依存しない経済施策を探ることが大切だ。
鹿児島県の三反園訓知事は熊本地震を受け、稼働中の九州電力川内原発の一時停止を九電に要請する方針を表明している。将来世代への責任としても、不安が拭えない再稼働は容認できない。中村知事にも再考を求めたい。
(2)高知新聞社説-【伊方再稼働】四国に原発は必要なのか-2016年8月12日
四国電力がきょう、伊方原発3号機の運転を再開する。9月上旬には営業運転に入る見通しで、福島第1原発事故後の2012年1月から続いた四国の「原発ゼロ」は終わりを告げる。
原発はいったん暴走すれば、広域に甚大な被害をもたらす。その脅威は5年余りを経ても、多くの国民が鮮明に覚えていよう。
伊方原発の近くには、国内最大級の活断層「中央構造線断層帯」が横たわり、巨大地震の恐れを否定し切れない。顧客でもある住民の不安を押し切ってまで、自社の利益を優先する企業姿勢は到底、理解を得られるものではあるまい。
伊方3号機は昨年7月、原子力規制委員会の審査で新規制基準に合格した。だが、住民の安全が担保されたと果たしていえるのか。
新基準は以前より強化されたものの、事故の原因が特定されないままつくられ、教訓を反映したとは言い難い。過去には原発の耐震設計の目安を超える地震が何度もあり、これからも「想定」を超える事態はあり得る。田中委員長も「絶対安全とは言わない」との立場だ。
「万が一」にしても安全を約束できないのに、過酷事故を経験した日本で原発が必要なのか。「原発回帰」の波がわたしたちの住む四国に押し寄せた今もなお、根本的な疑問を解消できない。
政府はエネルギー基本計画で、原発維持の理由に安定供給や地球温暖化対策、コストの安さを挙げた。しかし、四国では16年度の供給予備率が原発なしで約13%あり、安定供給の目安8%を大きく上回る。
地球温暖化対策で効果はあるとしても、事故時の影響の大きさは福島の現状をみれば明らかだ。環境面の視点からも、効果とリスクが見合うとはいえないだろう。
コストに関しては、政府試算で辛うじて石炭火力を下回る。ただ廃炉や社会的な費用などを踏まえると、優位性は揺らいでくる。
四電は、再稼働で年250億円程度の収支改善を見込む。株主総会で同社は、再稼働反対の声に「これからは競争の時代、稼ぐ時代」と述べたという。その一方で原発30キロ圏内の自治体は避難計画を義務付けられているわけで、負担を強いる当事者として見識が問われよう。
さらに万一の場合、四電は損害賠償を含めた事故対応の責任を全うできるのかどうか。業界最大手の東京電力でさえ対応できず、結局は国民が電気代や税金としてそのツケを払い続けている。
事故対応だけではない。原発から出る高レベル放射性廃棄物の課題も残る。最終処分地も決まらないままの再稼働は、将来世代に対してあまりに無責任だろう。
公共性があるとはいえ、利益のためにこれだけのリスクを抱える原発事業は、民間企業の在り方を超えるのではないか。伊方をはじめ、全国で原発を巡る訴訟が続く。国民も改めて議論を深める必要がある。
(3)大分合同新聞論説- 伊方原発再稼働 “到底許せない”-2016年8月12日
佐賀関から45キロに位置する四国電力伊方原発が12日再稼働する。南海トラフ震源域にあり、国内最大級の中央構造線断層帯にも近い。国内の原発の中で、事故の危険性はトップクラスとの見方もある。不安がないがしろにされたわけで、多くの大分県民は許せないだろう。
4月には熊本、阿蘇、大分と地震が広がり、伊方原発への波及が懸念された。県内市町村の6月議会のうち、別府、中津、臼杵の3市議会と日出町議会で、再稼働に関する意見書を可決。日出町議会は国に再稼働中止を求める内容、3市議会は再検討や慎重な対応を求めた。また、豊後大野市議会の一般質問で橋本祐輔市長は「再稼働しないことが最善の策」と答弁した。
昨年10月から今春までに杵築、豊後高田、国東、竹田、由布の5市議会が「再稼働の中止や決定見直し」などの意見書を可決していた。
不安は多岐にわたる。代表は基準地震動だろう。原発を設計する際に想定した敷地周辺での地震による最大の揺れの強さ。
河合弘之氏は著書「原発訴訟が社会を変える」で「基準地震動を超える大地震が原発を見舞ってはならないのに、福島第1原発事故も含め全国の原発で2011年までの7年間に5回も記録された。特に07年の地震で、柏崎刈羽原発(新潟県)は基準地震動(450ガル)を大幅に上回る1699ガルもの揺れに襲われた」と批判している。
「再稼働の安全確保に必要な追加条件が半分に削られた」との指摘もある。福島第1原発国会事故調元委員長の黒川清氏は、著書「規制の虜(とりこ)」で「12年3月、原子力安全・保安院がまとめた報告書には、原発・原子力の安全にとって非常に重要で、規制に反映すべき30項目が盛り込まれた。当時の政府は原発を再稼働する際の“判断基準”を策定する過程で、15項目だけを取り上げ、残りの15項目は事業者の自主判断に任せる形になった」と嘆く。
神戸大学の石橋克彦名誉教授(地震学)は、著書「南海トラフ巨大地震」で「浜岡原発と伊方原発の再稼働は無謀」と最も危険視。浜岡原発は福島第1原発事故後、政府が稼働を差し止め、再稼働できない。伊方原発が再稼働していいはずがない。
新規制基準については「非常に危険。福島第1原発事故で原因が不明なまま、地震動を軽視した基準を作った。地震列島にある原発の“安全性の確認”など到底できない。地震動や津波をすべて予測することはできないからだ」と指摘している。
原発が再稼働すれば、大事故の可能性が、休止中と比較にならないほど高まる。特に、中央構造線断層帯が近い伊方原発は「大地震発生時に、原子炉を止める制御棒が間に合わない恐れがある」との懸念もある。
全国の原発が休止中でも、電力は事足りた。伊方原発は大分県民に不安を与えるだけの存在。一方、同原発西側で生活する佐田岬半島住民には安全な避難方法が確立していない。これが民主主義といえるだろうか。
伊方原発については、運転差し止め請求や仮処分が係争中。県内の住民が大分地裁に起こす予定の「伊方原発運転差し止め訴訟」は、原告数が当初の目標を超え、150人に達した。司法判断の行方を見守りたい。
2016年8月12日