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沖縄-国地方係争処理委員会は、適法か違法かの判断をしない結論をまとめ、議論を終結した。結果、知事の承認取り消し処分と国交相の是正指示の効力が維持されたままとなる。

 標題について、沖縄タイムスは2016年6月18日、「名護市辺野古の新基地建設を巡り、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」(係争委、小早川光郎委員長)は17日、翁長雄志知事による埋め立て承認取り消し処分に対する石井啓一国土交通相の是正指示が地方自治法の規定に適法か違法かの判断をしない結論をまとめ、議論を終結した。結果、知事の承認取り消し処分と国交相の是正指示の効力が維持されたままとなり、同決定に対する双方の今後の対応が注目される。結論は期限の21日までに県と国の双方に通知される。」、と報じた。
 また、審査の結論は、「審査の結論は委員5人の全会一致で決まった。」、と伝えた。
この審査の結論について、次のように伝えた。


①「会合後に記者会見した小早川委員長は、適法性を示さない結論は『例外的な措置」と説明しつつ、「今回のケースは適否のいずれかの判断をした場合でも、その結果で国と地方のあるべき関係を両者で構築することに資するとは考えられない。両当事者のプラスにならない」と判断の過程を解説。委員会として『最善の結論』とした。」
②「是正指示に至った一連の過程を『議論を深めるための共通の基盤づくりが不十分のまま進められ、国と地方のあるべき立場から乖離(かいり)している』と指摘。」
③「米軍普天間飛行場の返還の必要性は国と県で一致しているとし『共通の目的の実現に向けて真摯(しんし)に協議し、双方が納得できる結果を導き出す努力をすることが最善の道だと到達した』と判断した。双方に十分な議論を促した。」
④「結論に不服があれば県が高裁に提訴できるとの認識を示した。」             
 さらに、今回の結論についての沖縄県側の動きについて、「翁長知事による係争委への審査申し出は、県と国が合意した代執行訴訟などの和解条項に沿った手続きの一環として進められてきた。和解条項では係争委が適法性を判断するとの前提での手続きが規定されていたため、県側は『想定外の結論』と受け止める。県幹部は『和解条項の範囲内で対応するかどうかも検討中だ』と話した。」、と報じた。


 この係争委員会の判断について、沖縄タイムス及び琉球新報は2016年6月18日、「[是正適否判断せず]国に再協議促す内容だ」「係争委適否判断せず 自治を拒む国への警告だ」、とそれぞれ社説で主張した。
 琉球新報は、「県は是正指示取り消しの勧告を係争委に求めていた。新基地が辺野古でなければならない合理的理由はない。住民生活や環境には著しい悪影響がある。にもかかわらず前知事が埋め立てを承認したのは公有水面埋立法の要件を満たしていない。承認に瑕疵(かし)があった以上、これを取り消すのは適法であり、取り消しを覆そうとする是正指示は『違法な国の関与』だと主張していた。これに対し国は、承認を取り消せば日米の信頼関係が崩れるとし、国防上・外交上、埋め立ての必要性を判断する権限までは知事にはないと主張していた。」、と今回の論点を整理している。
 この社説での両社の主張の要約は次のとおりである。


(1)主張
(沖縄タイムス))
①「辺野古新基地建設を強権的に進めようとする安倍政権は、裁判所と第三者機関がともに再協議を求めたことを重く受け止めるべきだ。」
②「今回も国交相の是正指示の適法性の判断をしなかったのは係争委が果たすべき役割を自ら狭めたのではないかとの疑問も残る。是正指示は違法な『国の関与』に当たるなどとの県の指摘に対し、地方自治の本旨に沿った判断を示してほしかった。」
③「県は結論を精査し裁判を見据えた対応を急ぐ必要がある。国は『辺野古が唯一』との考えを捨て、県と『対話による解決』を目指すべきだ。」
(琉球新報)
①「そもそも埋め立てを承認するか否かは都道府県知事が権限を持つ法定受託事務だ。それなのに判断の権限がないというのなら、こと米軍に関する限り、地方自治体は国の言うことに、無限に、奴隷的に従え、と言うに等しい。これを許せばもはや民主国家ではない。自治の精神など皆無だ。
②「係争処理委は、国と地方は対等との認識に基づき、国の関与の適法性を第三者的に判断するのが趣旨だ。それなら、地方は何が何でも従えと言わんばかりの国の姿勢にくぎを刺してほしかった。
③「係争委の判断には明らかに国への批判的視点がある。小早川光郎委員長は会見で『是正指示にまで至った一連の過程は、国と地方のあるべき関係からは乖離(かいり)している』と述べている。『一連の過程は望ましくない』とも繰り返した。国の是正指示を好ましくないと見ているのは間違いない。県を全面的に支持して国と事を構えたくはない。かといって地方自治を完全否定するような国の姿勢には疑問が募る。そんな本音が垣間見える。」
④「結果的に知事の承認取り消しの効力は生きたままだ。司法手続きを早く終えて着工したい国のもくろみは崩れた。実質的な県の勝訴だ。係争委は真摯(しんし)な協議を求めた。少なくとも国は『辺野古が唯一』という頑迷な態度を改めるべきだ。」


今回の「議論を深めるための共通の基盤づくりが不十分のまま進められ、国と地方のあるべき立場から乖離(かいり)している」、との委員長発言は、権力関係から見れば、圧倒的に国の対応への批判である。
 安倍晋三政権にこの結論を受け取るだけの度量があるのか、問われているのは国である。


 以下、沖縄タイムス及び琉球新報の引用。








沖縄タイムス-係争委、適否判断せず 辺野古承認取り消し是正指示 国・県に協議促す-2016年6月18日 05:10


 【東京】名護市辺野古の新基地建設を巡り、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」(係争委、小早川光郎委員長)は17日、翁長雄志知事による埋め立て承認取り消し処分に対する石井啓一国土交通相の是正指示が地方自治法の規定に適法か違法かの判断をしない結論をまとめ、議論を終結した。結果、知事の承認取り消し処分と国交相の是正指示の効力が維持されたままとなり、同決定に対する双方の今後の対応が注目される。結論は期限の21日までに県と国の双方に通知される。

 審査の結論は委員5人の全会一致で決まった。

 会合後に記者会見した小早川委員長は、適法性を示さない結論は「例外的な措置」と説明しつつ、「今回のケースは適否のいずれかの判断をした場合でも、その結果で国と地方のあるべき関係を両者で構築することに資するとは考えられない。両当事者のプラスにならない」と判断の過程を解説。委員会として「最善の結論」とした。

 また、是正指示に至った一連の過程を「議論を深めるための共通の基盤づくりが不十分のまま進められ、国と地方のあるべき立場から乖離(かいり)している」と指摘。

 一方、米軍普天間飛行場の返還の必要性は国と県で一致しているとし「共通の目的の実現に向けて真摯(しんし)に協議し、双方が納得できる結果を導き出す努力をすることが最善の道だと到達した」と判断した。双方に十分な議論を促した。

 その上で、結論に不服があれば県が高裁に提訴できるとの認識を示した。翁長知事による係争委への審査申し出は、県と国が合意した代執行訴訟などの和解条項に沿った手続きの一環として進められてきた。

 和解条項では係争委が適法性を判断するとの前提での手続きが規定されていたため、県側は「想定外の結論」と受け止める。県幹部は「和解条項の範囲内で対応するかどうかも検討中だ」と話した。
■翁長知事「通知書を精査」
 【東京】辺野古埋め立て承認取り消しに対する国土交通相の是正の指示の適法性について国地方係争処理委員会が判断しないとの結論を出したことについて、翁長雄志知事は17日夜、都内で報道陣の取材に応じ「地方自治の本旨に沿った判断をしてもらえると期待していた。決定通知書の内容を精査し、県の対応を検討する」とコメントした。沖縄に戻る18日午後3時以降に会見を開き、改めて対応について話す

 代執行訴訟の和解条項では、同委の決定に不服がある場合などに県側が提訴することが規定されているが、「(現時点の)資料だけでは責任を持った判断ができない。明日の会見で申し上げたい」と述べた。


沖縄タイムス社説-[是正適否判断せず]国に再協議促す内容だ-2016年6月18日


 名護市辺野古の新基地建設を巡り、翁長雄志知事による埋め立て承認取り消しに対する石井啓一国土交通相の是正指示の適法性を審査する総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」(係争委)は17日、最終となる第9回会合を開いた。

 会合後、記者会見した小早川光郎委員長は国の是正指示について「違法か違法でないかの判断はしなかった」との結論を明らかにした。

 5委員の全員一致の結論で、審査期限の21日までに国と県に通知する。

 小早川委員長は、辺野古新基地建設について「国と沖縄県は普天間飛行場の返還という共通の目的の実現に向けて真(しん)摯(し)に協議することが問題解決の最善の道だ」と指摘。双方に再協議を促した形だ。

 辺野古新基地建設を巡り、訴訟合戦となった国と県が今年3月に合意した和解条項でも、福岡高裁那覇支部は訴訟を一本化して司法の場で争う道筋を示す一方で「国と県は円満解決に向けた協議」を求めている。安倍晋三首相は和解を受け入れながらも「辺野古が唯一」とのかたくなな姿勢を変えていない。

 福岡高裁那覇支部が示した和解勧告文にあるように、本来であれば、国は「オールジャパンで最善の解決策を合意して、米国に協力を求めるべきである」。そうすれば「米国としても、大幅な改革を含めて積極的に協力しようという契機となりうる」。

 辺野古新基地建設を強権的に進めようとする安倍政権は、裁判所と第三者機関がともに再協議を求めたことを重く受け止めるべきだ。
■    ■
 翁長知事が昨年11月、埋め立て承認を取り消したのに対し、国交相が「効力停止」としたことを不服として係争委に審査を申し出。係争委は「審査対象に当たらない」として県の申し出を門前払いにする結論を出している。

 今回も国交相の是正指示の適法性の判断をしなかったのは係争委が果たすべき役割を自ら狭めたのではないかとの疑問も残る。是正指示は違法な「国の関与」に当たるなどとの県の指摘に対し、地方自治の本旨に沿った判断を示してほしかった。

 国と地方の関係は1999年の地方自治法改正に伴い、「上下・主従」から「対等・協力」に転換した。

 これに伴い、係争委は国の不当な是正要求から地方自治が侵害されるのを防ぐために2000年に設置された。

 だが、沖縄が選挙という民主的な手法で何度も辺野古新基地建設反対の民意を示しても「辺野古が唯一」との姿勢を変えない国の姿勢からは県と「対等・協力」の関係にあることがうかがえない。
■    ■
 係争委は国交相の是正指示が適法か違法かの判断をしていないため、翁長知事の埋め立て承認取り消し処分と国交相の是正指示の効力がいずれも維持されたままになっている。和解条項が想定していない事態だ。

 県は結論を精査し裁判を見据えた対応を急ぐ必要がある。国は「辺野古が唯一」との考えを捨て、県と「対話による解決」を目指すべきだ。


琉球新報社説-係争委適否判断せず 自治を拒む国への警告だ-2016年6月18日


 あまりに自治をないがしろにした国の手法に、やはりお墨付きを与えるわけにはいかない。国に対するそんな警告ではないか。

 辺野古新基地建設を巡り、前知事の埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事の処分に対する石井啓一国土交通相の是正指示について、国地方係争処理委員会は国と県に継続協議を求めた。是正指示が違法か否かは判断しなかった。
 県は是正指示取り消しの勧告を係争委に求めていた。新基地が辺野古でなければならない合理的理由はない。住民生活や環境には著しい悪影響がある。にもかかわらず前知事が埋め立てを承認したのは公有水面埋立法の要件を満たしていない。承認に瑕疵(かし)があった以上、これを取り消すのは適法であり、取り消しを覆そうとする是正指示は「違法な国の関与」だと主張していた。
 これに対し国は、承認を取り消せば日米の信頼関係が崩れるとし、国防上・外交上、埋め立ての必要性を判断する権限までは知事にはないと主張していた。
 そもそも埋め立てを承認するか否かは都道府県知事が権限を持つ法定受託事務だ。それなのに判断の権限がないというのなら、こと米軍に関する限り、地方自治体は国の言うことに、無限に、奴隷的に従え、と言うに等しい。
 これを許せばもはや民主国家ではない。自治の精神など皆無だ。
 係争処理委は、国と地方は対等との認識に基づき、国の関与の適法性を第三者的に判断するのが趣旨だ。それなら、地方は何が何でも従えと言わんばかりの国の姿勢にくぎを刺してほしかった。
 ただ、係争委の判断には明らかに国への批判的視点がある。小早川光郎委員長は会見で「是正指示にまで至った一連の過程は、国と地方のあるべき関係からは乖離(かいり)している」と述べている。「一連の過程は望ましくない」とも繰り返した。国の是正指示を好ましくないと見ているのは間違いない。
 県を全面的に支持して国と事を構えたくはない。かといって地方自治を完全否定するような国の姿勢には疑問が募る。そんな本音が垣間見える。
 結果的に知事の承認取り消しの効力は生きたままだ。司法手続きを早く終えて着工したい国のもくろみは崩れた。実質的な県の勝訴だ。係争委は真摯(しんし)な協議を求めた。少なくとも国は「辺野古が唯一」という頑迷な態度を改めるべきだ。


by asyagi-df-2014 | 2016-06-19 05:59 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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