米軍再編-米軍再編に関して、再編交付金の対象を、都道府県と自治会まで広げる方針を固めた。
2016年 06月 07日
標題について、沖縄タイムスは2016年6月2日、「政府は米軍再編で負担が増す市町村へ進捗(しんちょく)に応じて支給する再編交付金の対象を、都道府県と自治会まで広げる方針を固めた。1日、政府関係者が明らかにした。県を対象にすることで、辺野古への新基地建設に反対する翁長雄志知事を揺さぶる狙いがある。」、と報じた。
また、「再編交付金の根拠となる『駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法』は2007年から10年間の時限立法で、本年度末に失効する。再度10年間延長するために、防衛省は内容を改め法案を作っている。来年4月から施行できるよう政治状況を見極めながら、国会に法案を提出する。」、「新基地建設に反対する稲嶺進市長が誕生した名護市は10年度から交付金を受け取っていない。政府は昨年度、建設予定地に近い辺野古、豊原、久志の『久辺3区」へ補助率100%の交付金を直接支給する仕組みを作った。今回は、この仕組みを応用し制度化する。」、「再編交付金は、沖縄の場合、国の負担割合を最大で95%とする沖縄振興特別措置法を適用している。政府関係者によると、協力してほしい自治会や市町村、都道府県が受け入れを決断した場合は補助率を上げるなど特例を準備しているという。」、「名護市議会の野党会派はことし2月、菅義偉官房長官に再編交付金を自治会が直接受け取れるよう制度の変更を求めていた。」、と伝えた。
沖縄タイムスは、「武田真一郎成蹊大法科大学院教授は『お手盛りで配られないよう、補助金を配るときには必ず行政が申請し公益性があるかきちんとチェックして決定する。自治体に交付して予算化されれば、議会のチェックもあり住民監査請求もできるが、自治会のような団体では不可能。補助金等適正化法の趣旨に反する』と指摘した。」、とこのことについての指摘を報じた。
さらに、琉球新報はその社説(2016年6月3日付)で、「再編交付金拡大 地方自治への介入やめよ」、と厳しく反論した。
その社説の要旨は次のとおりである。
①「再編交付金の対象を拡大する狙いは明らかだ。住民意思を無視して米軍再編を強行し、地方自治体と住民を分断することにある。それは沖縄と県外の二つの例から分かる。」
②「名護市では辺野古新基地建設に反対する稲嶺進市長が当選後、再編交付金が支給されていない。一方で国は移設予定地周辺の辺野古、豊原、久志(久辺3区)に直接補助金を支給する制度を創設した。住民の生活環境向上であれば、基地再編に関係なく行うべきであり、名護市を通すのが筋だ。山口県岩国市では、岩国基地への空母艦載機移転などの機能強化に当時の市長が反対し、住民投票でも過半数が艦載機移転を拒否した。しかし国は市庁舎建設への補助金を凍結し、市議会も「現実的対応」を要求。最終的には国が支援する容認派市長が誕生した。神奈川県座間市は、米陸軍第1軍団司令部のキャンプ座間移転に市長、議会、市民が一体となって反対した。隣接自治体に億単位の交付金が支給され、国からの圧力も強まる中、反対派市民不在のまま、座間市長は受け入れに転じた。
③「いずれも賛成すれば交付金支給、反対なら凍結というアメとムチを使い分け、住民間に対立をもたらした。地方自治を保障した憲法92条に反するだけでなく、国が地域での対立をあおった側面もある。」
④「自治会への交付金支出は基地強化に反対する住民意見を封じ込めることにつながりかねない。十分な監査機能を持たない自治会などの任意団体に公金を投入することは、補助金適正化法にも違反する。適正化法は『税金その他の貴重な財源でまかなわれるものであることに留意し(中略)公正かつ効率的に使用されるよう』求めている。
⑤「議会や監査の審査を受けず、住民分断に血税を投入することは許されない。これ以上、国の暴走を見過ごせない。地方自治の原点に戻れば、米軍再編を強行するのは誤りだ。辺野古新基地建設を含め、住民の意思を尊重した見直しにこそ政府はかじを切るべきだ。」
以下、沖縄タイムス、琉球新報の引用。
沖縄タイムス-米軍再編交付金の対象、自治会にも拡大 来春施行検討-2016年6月2日 05:05
【東京】政府は米軍再編で負担が増す市町村へ進捗(しんちょく)に応じて支給する再編交付金の対象を、都道府県と自治会まで広げる方針を固めた。1日、政府関係者が明らかにした。県を対象にすることで、辺野古への新基地建設に反対する翁長雄志知事を揺さぶる狙いがある。
再編交付金の根拠となる「駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法」は2007年から10年間の時限立法で、本年度末に失効する。再度10年間延長するために、防衛省は内容を改め法案を作っている。来年4月から施行できるよう政治状況を見極めながら、国会に法案を提出する。
新基地建設に反対する稲嶺進市長が誕生した名護市は10年度から交付金を受け取っていない。政府は昨年度、建設予定地に近い辺野古、豊原、久志の「久辺3区」へ補助率100%の交付金を直接支給する仕組みを作った。今回は、この仕組みを応用し制度化する。
再編交付金は、沖縄の場合、国の負担割合を最大で95%とする沖縄振興特別措置法を適用している。政府関係者によると、協力してほしい自治会や市町村、都道府県が受け入れを決断した場合は補助率を上げるなど特例を準備しているという。
名護市議会の野党会派はことし2月、菅義偉官房長官に再編交付金を自治会が直接受け取れるよう制度の変更を求めていた。
武田真一郎成蹊大法科大学院教授は「お手盛りで配られないよう、補助金を配るときには必ず行政が申請し公益性があるかきちんとチェックして決定する。自治体に交付して予算化されれば、議会のチェックもあり住民監査請求もできるが、自治会のような団体では不可能。補助金等適正化法の趣旨に反する」と指摘した。
琉球新報社説-再編交付金拡大 地方自治への介入やめよ-2016年6月3日
現在の日本政府に立憲主義や民主主義を理解する者はいないのだろうか。政府方針を実現するためなら「ばらまき」も辞さずという姿勢には不信感ばかりが募る。
在日米軍再編に伴い、基地負担が増す市町村に交付される再編交付金について、政府は自治会や都道府県への拡大を検討している。
再編交付金の対象を拡大する狙いは明らかだ。住民意思を無視して米軍再編を強行し、地方自治体と住民を分断することにある。それは沖縄と県外の二つの例から分かる。
名護市では辺野古新基地建設に反対する稲嶺進市長が当選後、再編交付金が支給されていない。一方で国は移設予定地周辺の辺野古、豊原、久志(久辺3区)に直接補助金を支給する制度を創設した。
住民の生活環境向上であれば、基地再編に関係なく行うべきであり、名護市を通すのが筋だ。
山口県岩国市では、岩国基地への空母艦載機移転などの機能強化に当時の市長が反対し、住民投票でも過半数が艦載機移転を拒否した。しかし国は市庁舎建設への補助金を凍結し、市議会も「現実的対応」を要求。最終的には国が支援する容認派市長が誕生した。
神奈川県座間市は、米陸軍第1軍団司令部のキャンプ座間移転に市長、議会、市民が一体となって反対した。隣接自治体に億単位の交付金が支給され、国からの圧力も強まる中、反対派市民不在のまま、座間市長は受け入れに転じた。
いずれも賛成すれば交付金支給、
反対なら凍結というアメとムチを使い分け、住民間に対立をもたらした。地方自治を保障した憲法92条に反するだけでなく、国が地域での対立をあおった側面もある。
自治会への交付金支出は基地強化に反対する住民意見を封じ込めることにつながりかねない。
十分な監査機能を持たない自治会などの任意団体に公金を投入することは、補助金適正化法にも違反する。適正化法は「税金その他の貴重な財源でまかなわれるものであることに留意し(中略)公正かつ効率的に使用されるよう」求めている。
議会や監査の審査を受けず、住民分断に血税を投入することは許されない。これ以上、国の暴走を見過ごせない。地方自治の原点に戻れば、米軍再編を強行するのは誤りだ。辺野古新基地建設を含め、住民の意思を尊重した見直しにこそ政府はかじを切るべきだ。