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自由権-国連特別報告者による暫定的調査結果についての日弁連会長声明を考える。

 国連特別報告者のデービッド・ケイ氏が、日本の表現の自由と知る権利に関する調査を行い、2016年4月19日、日本政府に対する暫定的調査結果(Preliminary Observations)を公表した。
 このことに関して、日本弁護士連合会は2016年4月28に会長声明を発表した。
 この会長声明で、日弁連は、「上記最終報告を待つまでもなく、暫定的調査結果を真摯に受け止め、放送法第4条第1項が倫理規定であることの確認及び放送事業者による自律的規制の尊重や秘密保護法の抜本的見直し等、必要な対応を速やかに行うよう求める。」、と日本政府に突きつけた。
 この声明について考える。その要約は下記のとおりである。
 

(1)暫定的調査結果の指摘事項
①いかなる政府も、何が公平であるかを決定する立場にあってはならず、その判断は、公の議論に委ねるべきであり、日本には自律的規制機関であるBPOが既に存在していることを指摘している。                               ②、放送法第4条違反を理由に電波停止ができるとする本年2月の総務大臣の発言は、メディア規制に関する脅しだと受け止められていると言わざるを得ないとしている。
③特定秘密の保護に関する法律(以下「秘密保護法」という。)について、ケイ氏は暫定的調査結果で、原子力発電、国家安全保障及び防災等、公共の利益という重大な分野において国民の知る権利を危機にさらしていると指摘した。
③1.特定秘密の定義が広範に過ぎ、適切に限定されていないこと、2.ジャーナリストに対する保護規定(同法第22条)は不十分であり、公益のために秘密を開示したジャーナリストや公務員を処罰の対象から除くこと、3.特定秘密についても、公益通報した者が刑事罰から保護されるように同法を改めること、4.特定秘密の指定と解除について同法が設立した監視のメカニズムが十分に独立性のあるものとなっていないこと、とりわけ国会内の情報監視審査会の勧告に拘束力がないこと等を改善すべき点として具体的に指摘した。
④暫定的調査結果は、メディアが政府に対する監視役として積極的に問題を提起していく役割を負っていることを指摘している。
⑤その他の表現規制についても改善を求めている。


(2)日弁連の主張
①2016年4月14日付け「放送法の『政治的公平性』に関する政府見解の撤回と報道の自由の保障を求める意見書」において、放送法第4条第1項各号の規定は倫理規定であるから、同項第2号の「政治的公平性」を政府が自ら判断し、電波停止等の処分をすることは許されず、放送局の自律的な取組によって放送倫理が確立されることを尊重することを政府に対して求めた。
②指摘は、当連合会が同法の成立前から指摘した意見と一致するものである。
③今回の暫定的調査結果は、危機に瀕する我が国の表現の自由を回復し、知る権利と民主主義を確立していく上で、重要な示唆を含むものである。
④ケイ氏による国連人権理事会に対する最終報告は、2017年に報告される予定であるが、当連合会は政府に対し、上記最終報告を待つまでもなく、暫定的調査結果を真摯に受け止め、放送法第4条第1項が倫理規定であることの確認及び放送事業者による自律的規制の尊重や秘密保護法の抜本的見直し等、必要な対応を速やかに行うよう求める。


 私たちは、この暫定的調査結果から、「いかなる政府も、何が公平であるかを決定する立場にあってはならず、その判断は、公の議論に委ねるべきである」にもかかわらず、日本が、「原子力発電、国家安全保障及び防災等、公共の利益という重大な分野において国民の知る権利を危機にさらしている」という状況に陥っていることをあらためて確認させられた。
 また、日弁連の声明による「危機に瀕する我が国の表現の自由を回復し、知る権利と民主主義を確立」の重要性を重く受け止めねばならない。
さらに、日弁連の「暫定的調査結果を真摯に受け止め、放送法第4条第1項が倫理規定であることの確認及び放送事業者による自律的規制の尊重や秘密保護法の抜本的見直し等、必要な対応を速やかに行うよう求める」ことを、取り組んで行かねばならない。


 以下、日弁連会長声明の引用。







国連特別報告者による表現の自由及び市民の知る権利に関する暫定的調査結果についての会長声明


国連人権理事会が任命した「意見及び表現の自由」の調査を担当する国連特別報告者のデービッド・ケイ氏(以下「ケイ氏」という。)が、本年4月12日から4月18日まで日本の表現の自由と知る権利に関する調査を行い、4月19日、日本政府に対する暫定的調査結果(Preliminary Observations)を公表した。

暫定的調査結果において、ケイ氏は、メディアの独立性について、最初に、放送法第3条が放送事業者の独立性を強調していること及び放送倫理・番組向上機構(以下「BPO」という。)が自律的な規制を行っていることを指摘した。

そして、放送法は第4条において、放送事業者に対して、「公安及び善良な風俗を害しないこと」「政治的に公平であること」「報道は事実をまげないですること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を規定することで、メディアとしての基本的な職業規範を定めているが、いかなる政府も、何が公平であるかを決定する立場にあってはならず、その判断は、公の議論に委ねるべきであり、日本には自律的規制機関であるBPOが既に存在していることを指摘している。さらに、放送法第4条違反を理由に電波停止ができるとする本年2月の総務大臣の発言は、メディア規制に関する脅しだと受け止められていると言わざるを得ないとしている。

これに関し、当連合会は、2016年4月14日付け「放送法の『政治的公平性』に関する政府見解の撤回と報道の自由の保障を求める意見書」において、放送法第4条第1項各号の規定は倫理規定であるから、同項第2号の「政治的公平性」を政府が自ら判断し、電波停止等の処分をすることは許されず、放送局の自律的な取組によって放送倫理が確立されることを尊重することを政府に対して求めた。

特定秘密の保護に関する法律(以下「秘密保護法」という。)について、ケイ氏は暫定的調査結果で、原子力発電、国家安全保障及び防災等、公共の利益という重大な分野において国民の知る権利を危機にさらしていると指摘した。

また、①特定秘密の定義が広範に過ぎ、適切に限定されていないこと、②ジャーナリストに対する保護規定(同法第22条)は不十分であり、公益のために秘密を開示したジャーナリストや公務員を処罰の対象から除くこと、③特定秘密についても、公益通報した者が刑事罰から保護されるように同法を改めること、④特定秘密の指定と解除について同法が設立した監視のメカニズムが十分に独立性のあるものとなっていないこと、とりわけ国会内の情報監視審査会の勧告に拘束力がないこと等を改善すべき点として具体的に指摘した。これらの指摘は、当連合会が同法の成立前から指摘した意見と一致するものである。

さらに、暫定的調査結果は、メディアが政府に対する監視役として積極的に問題を提起していく役割を負っていることを指摘しているほか、 その他の表現規制についても改善を求めている。

今回の暫定的調査結果は、危機に瀕する我が国の表現の自由を回復し、知る権利と民主主義を確立していく上で、重要な示唆を含むものである。

ケイ氏による国連人権理事会に対する最終報告は、2017年に報告される予定であるが、当連合会は政府に対し、上記最終報告を待つまでもなく、暫定的調査結果を真摯に受け止め、放送法第4条第1項が倫理規定であることの確認及び放送事業者による自律的規制の尊重や秘密保護法の抜本的見直し等、必要な対応を速やかに行うよう求める。

2016年(平成28年)4月28日
                      日本弁護士連合会
                           会長 中本 和洋 


by asyagi-df-2014 | 2016-05-03 05:27 | 自由権 | Comments(0)

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