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原発問題-毎日新聞の「『忘災』の原発列島 熊本地震 それでも再稼働か」を考える。

 毎日新聞は2016年4月22日、「『忘災』の原発列島 熊本地震 それでも再稼働か」、との特集を掲載した。
 毎日新聞の「このまま立ち止まらなくてもいいのだろうか。」を考える。
 つまり、毎日新聞の指摘する「またも大地震が発生した事実に真正面から向き合わず再稼働を進めることが、原発事故に遭った国のあり方とは思えない。」を、私たち一人ひとりがどのように考えるのかということだ。

 まずは、毎日新聞の特集記事を要約する。


(1)原発を止めない、再稼働を進める側の意見
①これまで「(原発が)安全だとは申し上げない」と繰り返してきた人にしては強気の発言に聞こえた。熊本地震を受けた18日の原子力規制委員会の記者会見で、田中俊一委員長は「今は安全上の問題はない。科学的根拠がなければ、国民や政治家が止めてほしいと言っても、そうするつもりはない」と語ったのだ。
②規制委が運転継続の判断材料にした一つに、揺れの強さを示す加速度(単位はガル)がある。震度7となった益城(ましき)町では1580ガルに達したが、そこから約120キロ離れた川内原発では、一連の地震で最大8・6ガルを観測。厳密には直接比較はできないが、基準地震動(九電が想定した最大の揺れ)の620ガルなどより小さかった。
③運転継続に対し、政府は「規制委が専門的見地から判断したことを尊重する」(原子力防災担当相を兼ねる丸川珠代環境相)との姿勢を明らかにしている。東京大地震研究所の古村孝志教授(地震学)は「(川内原発周辺の)断層は分かっており、最大でどれぐらいの地震が起きるのか、その際の震度はどうなるか、原発への影響はどうかについては十分に確認され、評価されている。その上で規制委がOKとするならば問題はないだろう」と言う。
 熊本地震の収束が見えない中、再稼働に向けた手続きは進められている。規制委は19日、伊方原発3号機の再稼働前に必要な全ての審査を終えた。20日には関西電力高浜原発1、2号機(福井県高浜町)について新規制基準に適合しているとする審査書を正式決定した。これで新基準に適合した原発は計7基になる。
④四電は、7月下旬に伊方原発を再稼働させる方針で、6月下旬にも、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を含む燃料集合体157本を炉心に装着する。付近で大地震が発生したらという懸念は尽きないのだが−−。
⑤熊本に現地調査に入った東北大教授の遠田晋次さん(地震地質学)は四国方面について「今の状況では影響はないと思う。ただ、大分・別府あたりに別府−万年山(はねやま)断層帯があり、仮にここで大きな地震があれば、四国への影響がないとは言えない」と話す。それでも伊方原発の安全性に関しては「中央構造線が動いても、その地震動に耐えられる設計で固い岩盤の上に建てられており、厳しい安全基準をクリアしているのだから問題はないのではないか」との認識を示した。
⑥かつて原子力安全委員長代理を務めた住田健二・大阪大名誉教授(原子炉工学)はこう語る。「少なくとも20〜30年先までは、太陽光や地熱などの再生可能エネルギーが原子力に取って代われるとは思えない。残念ながら、原子力のように大きなエネルギー需要に応えられる手段はないからだ。原発は事故を起こさないと決めてかかって、安全対策に手を抜いてきたのではないか、という指摘には謙虚に向き合わなければならない。しかし、私たちがある程度手に入れた安全性を基に注意深く原子力を使うことは、今は最も現実的な対応ではないか」


(2)原発を止める、再稼働を認めない側の意見
①九州中央部では活断層が連なる「別府−島原地溝帯」がまたがり、地震が起きやすい地域として注目されてきた。今回は1949年の震度7導入以来初めて、震度7を2度観測した。大分地方を震源とする地震も続発。熊本から大分を結ぶ線の先には、四国から近畿に続く国内最大級の断層群「中央構造線断層帯」があり、その南側には伊方原発が建つ。②「規制委は危険なギャンブルをしている。国民の安全を預かる組織としては不適切な判断だ」と批判するのが、脱原発弁護団全国連絡会共同代表の河合弘之弁護士だ。「甚大な被害が予想される事故には予防原則を徹底するのが当然で、地震が続く今、川内原発を直ちに止めるべきだ。国は、運転停止に伴う九電の損害と九州の安全をてんびんにかけ、電力会社の経営を優先することを選んだのではないか」と語気を強める。
③川内原発運転継続に「NO」と意思表示する市民の声も広がりを見せている。国際環境NGO「FoE Japan」によると、熊本出身の男性がインターネット上で始めた運転停止を求める署名活動には、11万人を超える賛同者が集まったという。
④チェルノブイリ原発事故の写真を撮り続けているフォトジャーナリストの広河隆一さんは16日、作家の落合恵子さん、鎌田慧さん、沢地久枝さんら6人の連名で、九電に対して川内原発の即時停止を求める要請文を送った。「これほどの地震なのに原発は安全となぜ言い切れるのか。『異常なし』と言うが『異常あり』が出たらもう手遅れだということだ。それが東京電力福島第1原発事故で得られた教訓のはずだ」と憤る。
⑤熊本地震では家屋の倒壊、橋の崩落、高速道路の陥没などが各地で発生した。仮に今、原発で事故が起きたら住民は避難できるのか、という切実な問題が改めて浮かび上がっている。
⑥川内、伊方両原発の周辺は山と海に囲まれ、十分な避難経路が確保されているとは言い難い。地元の実情を知ろうと、市民団体「伊方原発をとめる会」(松山市)の和田宰事務局次長に聞いた。「もし事故が起きたら住民は被ばくを避けるために屋内退避を、と言われているが、熊本地震で多くの家屋が倒壊したように現実味がない対策だ。トンネルや道路も損壊すると考えられるので、今ある避難計画は机上の空論に過ぎない」。半島で暮らす住民は船で逃げる計画だが、地元では「地震で道路が寸断されれば港にたどり着けない」との不安な声もある。
⑦NPO法人「原子力資料情報室」の伴英幸共同代表も熊本の被害を伝える映像を見て衝撃を受けた。「そもそも現時点の避難計画が成り立つのかと直感的に思った。本当に住民全員が逃げられると想定して避難計画は策定されているのだろうか。熊本地震を機に原発の立地自治体や住民だけではなく、電力会社を交えて防災計画を改めて見直し、無理だ、と判断したら直ちに原発を止めるべきだ」。避難計画の見直しは九州、四国の原発に限った話ではない。この国ではいつ、どこの原発が激しい揺れに襲われるかは分からない。
⑧専門家はどう見ているのだろう。米原発会社「ゼネラル・エレクトリック」で18年間、原発技術者として働いた原子力コンサルタントの佐藤暁さんは米国の事例を引き合いに説明する。「米国では、原発周辺に大型ハリケーンが来襲すると予報されれば原発を止める。原発に被害がなくても、送電線や鉄塔が倒壊して外部電源が喪失し、深刻なリスクを及ぼしかねないからだ。地震の場合も同様。本震で原発が大丈夫でも、余震で送電線などが損傷する可能性があると考えれば、あらかじめ運転を止める選択もあるのではないか」
 佐藤さんは、原発事故の対応計画が「紙の上の議論に終始している」とも懸念する。「熊本地震での自衛隊らの捜索活動が余震で度々中断したように、事故対応も想定通りには進まないはず。なかなか電力会社は理解してくれないのだが……」。福島原発事故が起きても、「想定外」は関係者の頭の片隅に追いやられているのが実情だ。


 この毎日新聞の特集で、私たちが受け止めることのできることの一つは、「原発は事故を起こさないと決めてかかって、安全対策に手を抜いてきたのではないか、という指摘には謙虚に向き合わなければならない。しかし、私たちがある程度手に入れた安全性を基に注意深く原子力を使うことは、今は最も現実的な対応ではないか」という考え方と「科学者の判断のみを信じ、国民を危険にさらしてはいけない。科学的な意見を聞き、政治が国民の安全を最優先に考えて判断するしかない」についてきちっと比較して考え、その上であらためて原発についての結論を出す必要があるということである。


 以下、毎日新聞の引用。







毎日新聞-「忘災」の原発列島 熊本地震 それでも再稼働か-2016年4月22日 


 熊本地震は、この国が「地震大国」であることを改めて知らしめた。続発する揺れによる被害拡大と併せて心配されるのが、原子力発電所への影響だ。一連の震源域の近くには、全国で唯一稼働している九州電力の川内(せんだい)原発(鹿児島県)と、海を挟んで四国電力の伊方原発(愛媛県伊方町)がある。原子力規制委員会は川内原発の運転を止めず、その他の原発でも再稼働に向けた準備が進んでいる。このまま立ち止まらなくてもいいのだろうか。【宇田川恵、江畑佳明、瀬尾忠義】

 これまで「(原発が)安全だとは申し上げない」と繰り返してきた人にしては強気の発言に聞こえた。熊本地震を受けた18日の原子力規制委員会の記者会見で、田中俊一委員長は「今は安全上の問題はない。科学的根拠がなければ、国民や政治家が止めてほしいと言っても、そうするつもりはない」と語ったのだ。

 規制委が運転継続の判断材料にした一つに、揺れの強さを示す加速度(単位はガル)がある。震度7となった益城(ましき)町では1580ガルに達したが、そこから約120キロ離れた川内原発では、一連の地震で最大8・6ガルを観測。厳密には直接比較はできないが、基準地震動(九電が想定した最大の揺れ)の620ガルなどより小さかった。

 運転継続に対し、政府は「規制委が専門的見地から判断したことを尊重する」(原子力防災担当相を兼ねる丸川珠代環境相)との姿勢を明らかにしている。東京大地震研究所の古村孝志教授(地震学)は「(川内原発周辺の)断層は分かっており、最大でどれぐらいの地震が起きるのか、その際の震度はどうなるか、原発への影響はどうかについては十分に確認され、評価されている。その上で規制委がOKとするならば問題はないだろう」と言う。

 しかし、である。九州中央部では活断層が連なる「別府−島原地溝帯」がまたがり、地震が起きやすい地域として注目されてきた。今回は1949年の震度7導入以来初めて、震度7を2度観測した。大分地方を震源とする地震も続発。熊本から大分を結ぶ線の先には、四国から近畿に続く国内最大級の断層群「中央構造線断層帯」があり、その南側には伊方原発が建つ。

 「規制委は危険なギャンブルをしている。国民の安全を預かる組織としては不適切な判断だ」と批判するのが、脱原発弁護団全国連絡会共同代表の河合弘之弁護士だ。「甚大な被害が予想される事故には予防原則を徹底するのが当然で、地震が続く今、川内原発を直ちに止めるべきだ。国は、運転停止に伴う九電の損害と九州の安全をてんびんにかけ、電力会社の経営を優先することを選んだのではないか」と語気を強める。

 川内原発運転継続に「NO」と意思表示する市民の声も広がりを見せている。国際環境NGO「FoE Japan」によると、熊本出身の男性がインターネット上で始めた運転停止を求める署名活動には、11万人を超える賛同者が集まったという。

 チェルノブイリ原発事故の写真を撮り続けているフォトジャーナリストの広河隆一さんは16日、作家の落合恵子さん、鎌田慧さん、沢地久枝さんら6人の連名で、九電に対して川内原発の即時停止を求める要請文を送った。「これほどの地震なのに原発は安全となぜ言い切れるのか。『異常なし』と言うが『異常あり』が出たらもう手遅れだということだ。それが東京電力福島第1原発事故で得られた教訓のはずだ」と憤る。

 熊本地震では家屋の倒壊、橋の崩落、高速道路の陥没などが各地で発生した。仮に今、原発で事故が起きたら住民は避難できるのか、という切実な問題が改めて浮かび上がっている。

 川内、伊方両原発の周辺は山と海に囲まれ、十分な避難経路が確保されているとは言い難い。地元の実情を知ろうと、市民団体「伊方原発をとめる会」(松山市)の和田宰事務局次長に聞いた。「もし事故が起きたら住民は被ばくを避けるために屋内退避を、と言われているが、熊本地震で多くの家屋が倒壊したように現実味がない対策だ。トンネルや道路も損壊すると考えられるので、今ある避難計画は机上の空論に過ぎない」。半島で暮らす住民は船で逃げる計画だが、地元では「地震で道路が寸断されれば港にたどり着けない」との不安な声もある。

 NPO法人「原子力資料情報室」の伴英幸共同代表も熊本の被害を伝える映像を見て衝撃を受けた。「そもそも現時点の避難計画が成り立つのかと直感的に思った。本当に住民全員が逃げられると想定して避難計画は策定されているのだろうか。熊本地震を機に原発の立地自治体や住民だけではなく、電力会社を交えて防災計画を改めて見直し、無理だ、と判断したら直ちに原発を止めるべきだ」。避難計画の見直しは九州、四国の原発に限った話ではない。この国ではいつ、どこの原発が激しい揺れに襲われるかは分からない。

 専門家はどう見ているのだろう。米原発会社「ゼネラル・エレクトリック」で18年間、原発技術者として働いた原子力コンサルタントの佐藤暁さんは米国の事例を引き合いに説明する。「米国では、原発周辺に大型ハリケーンが来襲すると予報されれば原発を止める。原発に被害がなくても、送電線や鉄塔が倒壊して外部電源が喪失し、深刻なリスクを及ぼしかねないからだ。地震の場合も同様。本震で原発が大丈夫でも、余震で送電線などが損傷する可能性があると考えれば、あらかじめ運転を止める選択もあるのではないか」

 佐藤さんは、原発事故の対応計画が「紙の上の議論に終始している」とも懸念する。「熊本地震での自衛隊らの捜索活動が余震で度々中断したように、事故対応も想定通りには進まないはず。なかなか電力会社は理解してくれないのだが……」。福島原発事故が起きても、「想定外」は関係者の頭の片隅に追いやられているのが実情だ。

「安全最優先の政治判断を」

 熊本地震の収束が見えない中、再稼働に向けた手続きは進められている。規制委は19日、伊方原発3号機の再稼働前に必要な全ての審査を終えた。20日には関西電力高浜原発1、2号機(福井県高浜町)について新規制基準に適合しているとする審査書を正式決定した。これで新基準に適合した原発は計7基になる。

 四電は、7月下旬に伊方原発を再稼働させる方針で、6月下旬にも、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を含む燃料集合体157本を炉心に装着する。付近で大地震が発生したらという懸念は尽きないのだが−−。

 熊本に現地調査に入った東北大教授の遠田晋次さん(地震地質学)は四国方面について「今の状況では影響はないと思う。ただ、大分・別府あたりに別府−万年山(はねやま)断層帯があり、仮にここで大きな地震があれば、四国への影響がないとは言えない」と話す。それでも伊方原発の安全性に関しては「中央構造線が動いても、その地震動に耐えられる設計で固い岩盤の上に建てられており、厳しい安全基準をクリアしているのだから問題はないのではないか」との認識を示した。

 かつて原子力安全委員長代理を務めた住田健二・大阪大名誉教授(原子炉工学)はこう語る。「少なくとも20〜30年先までは、太陽光や地熱などの再生可能エネルギーが原子力に取って代われるとは思えない。残念ながら、原子力のように大きなエネルギー需要に応えられる手段はないからだ。原発は事故を起こさないと決めてかかって、安全対策に手を抜いてきたのではないか、という指摘には謙虚に向き合わなければならない。しかし、私たちがある程度手に入れた安全性を基に注意深く原子力を使うことは、今は最も現実的な対応ではないか」

 このような見方に前出の河合さんは「待った」を掛ける。「地震が連続している時期になぜ再稼働を進めるのか。全く理解できない。規制委と政府は、何が何でも原発を動かすと決めているとしか思えない。まるで原発を止めたら負けというチキンレースをやっているようだ」。原発政策にはギャンブル的要素があると改めて強調する。

 政治判断で原発を止めた実例はある。東日本大震災後の2011年5月、菅直人首相(当時)は、再び巨大地震に襲われたら甚大な影響が免れないとして、中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)の運転停止を要請した。自民党は今も「政治的なパフォーマンス」と否定的だが、河合さんは違う。「科学者の判断のみを信じ、国民を危険にさらしてはいけない。科学的な意見を聞き、政治が国民の安全を最優先に考えて判断するしかない」

 またも大地震が発生した事実に真正面から向き合わず再稼働を進めることが、原発事故に遭った国のあり方とは思えない。


by asyagi-df-2014 | 2016-04-24 06:11 | 書くことから-原発 | Comments(0)

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