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原発問題-原子力規制委員会は、関西電力高浜原発1、2号機の審査合格を正式決定した。

 標題について、朝日新聞は2016年4月21日、「運転開始から40年を超えた関西電力高浜原発1、2号機(福井県)は新規制基準を満たすとして、原子力規制委員会は20日、関電が申請した安全対策の基本方針を許可した。残る二つの認可手続きの審査に大きな課題は残っておらず、『極めて例外的』とされてきた60年までの運転延長が認可される可能性が高まった。40年を超える老朽原発が許可されたのは初めて。東京電力福島第一原発事故後の教訓を踏まえてできた運転期間を40年とする原則が骨抜きになりつつある。」、と報じた。
 また、「規制委は『時間切れ』で廃炉を迫られる事態を避けるため、審査を急いだ。今年3月には、原子炉内の重要設備の耐震性を最終確認する試験を、詳しい設計の認可の後に先送りする方針を決めた。原子炉の劣化状況を調べた関電の特別点検の結果を確かめる審査も同時並行で進めている。規制委幹部は『大きな論点は残っていない』としており、運転延長が認められる見通しだ。」、と伝えた。


 このことについて、福井新聞及び朝日新聞の社説から考える。
 両社の要約は次のとおりである。

(1)疑問等
(福井新聞)
①延命が当たり前になれば「原則40年」の原発寿命に歯止めがかからず、制限は骨抜きになる可能性がある。
②では、なぜ寿命を40年と決めたのか。延長幅の根拠は何か。規制委は国民に向き合い、疑問や不安に明確に答えるべきだ。
③延長か廃炉かは電力事業者の「費用対効果」にかかる。ただ、巨額を投じる老朽炉に国民の信頼は得られるだろうか。世論調査では脱原発が過半数を占める。40年超運転の危険性を訴える反対住民らが14日、運転延長差し止めを求め名古屋地裁に提訴。老朽炉が初めて司法判断の俎上(そじょう)に載る。
④交換できない原子炉容器には劣化懸念。さらに地震対策で関電は同じ敷地内にある3、4号機の基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)を550ガルから700ガルに引き上げた。周辺の断層3連動を考慮するよう規制委の指摘を受けた対応だ。岩盤など地形・地質の違いはあるが、東日本大震災時には3000ガル前後の揺れがあったとされる。
(朝日新聞)
①古い原発は廃炉とし、計画的に原発の数を減らしていく――東京電力福島第一原発事故への反省から決めたルールが、早くも骨抜きになろうとしている。
②原子力規制委員会は、運転開始から40年を超えた関西電力高浜原発1、2号機(福井県)について、新規制基準を満たしていると正式に決めた。新基準のもとで40年超のログイン前の続き老朽原発の運転延長が認められるのは初めてだ。残る細かい審査を7月の期限までに終えれば、あと20年、運転が続く公算が大きい。
④「40年ルール」は福島での事故後、法律を改正して導入された。「1回だけ、最長20年間」と定められた運転延長は「極めて例外的」と位置づけられた。あえて例外を設けたのは電力不足に備えるためだったが、節電や省エネの定着で懸念は解消していると言っていい。
⑤おりしも熊本県を中心に「今までの経験則からはずれている」(気象庁)という地震が続く。隣の鹿児島県で運転中の九州電力川内原発に影響が及ばないか、不安を感じている国民は少なくない。いきなり例外を認め、規制のたがを緩めるような対応は、原発行政への不信を高めるだけではないか。
⑥安倍政権は個別原発の可否の判断を規制委に丸投げしつつ、運転延長を前提にしたエネルギー計画を立てた。「原発依存度を可能な限り低減する」と繰り返していた首相は、なしくずしに方針を転換してきた。
⑦規制委は、あくまで科学的見地から原発の安全性を高めることが役割だが、今回の審査では耐震性の試験を後回しにすることを関電に認めるなど、手順に疑問が残る。7月の審査期限をにらんだスケジュールありきだったとすれば、まさに本末転倒である。

(2)主張
(福井新聞)
 15年4月の高浜3、4号再稼働差し止めを命じた福井地裁の仮処分決定では、700ガル以下の地震でも炉心損傷に至る危険性を指摘し、規制委の新基準を「楽観的」と批判した。
 地震列島における原発の安全論議は今、知見を超えた熊本地震を契機に拡大している。九州中部を斜めに横切る断層帯の先には稼働中の九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)が立地。熊本-大分の延長線上には大活断層帯「中央構造線断層帯」が走り、近くには四国電力伊方原発(愛媛県)がある。
 廃炉の可能性がある日本原電敦賀2号機や北陸電力志賀1号機は、建屋直下の活断層が問題視されているが、もっとスケール感を持った視点が必要になる。原発の耐震安全性が厳しく問われよう。規制委は原発の長寿命化を含め国民にしっかり説明する義務がある。
(朝日新聞)
①結局、廃炉にするかどうかの実質的な判断は電力会社に委ねられ、運転延長が採算に合うかどうかという観点から決まるという状況になりつつある。
②狭い国土に多くの人が住み、地震など自然災害も多い日本で、多くの原発を抱えていくリスクは大きい。福島での事故を経て、そこが原子力行政見直しの出発点だったはずだ。
④原発を維持する政策をとり続ければ、廃棄物の処理などで長期的には国民負担も増えかねない。エネルギー自給率は再生エネルギーの育成で高めようというのが世界の大勢だ。
⑤移行期間は必要だとしても、着実に原発を閉じていく政策にこそ合理性があろう。40年規制はそのための柱の一つである。そのことを思い起こすべきだ。


 今回の原子力規制委員会の審査合格は、「廃炉にするかどうかの実質的な判断は電力会社に委ねられ、運転延長が採算に合うかどうかという観点から決まるという状況になりつつある。」(朝日新聞)ということに尽きる。
 「延長か廃炉かは電力事業者の『費用対効果』にかかる。」(福井新聞)などが許されていいはずがない。
 本来、「3.11」を受け止めるなかで、原子力行政を見直したのではなかったのか。
 もう一度、原点に立ち戻らなくてはならない。


 以下、福井新聞、朝日新聞の引用。







朝日新聞-原発40年の原則、骨抜き 規制委、初の許可 高浜1・2号機-2016年4月21日05時00分

 運転開始から40年を超えた関西電力高浜原発1、2号機(福井県)は新規制基準を満たすとして、原子力規制委員会は20日、関電が申請した安全対策の基本方針を許可した。残る二つの認可手続きの審査に大きな課題は残っておらず、「極めて例外的」とされてきた60年までの運転延長が認可される可能性が高まった。

 40年を超える老朽原発が許可されたのは初めて。東京電力福島第一原発事故後の教訓を踏まえてできた運転期間を40年とする原則が骨抜きになりつつある。

 今の制度では、運転開始から原則40年までに規制委が認めれば1回だけ最長20年間延長できる。高浜1、2号機は60年までの運転延長が申請された初めてのケース。関電は、経過措置で猶予された今年7月の期限までに、安全対策の許可、詳しい設計の認可、運転延長の認可の三つをすべて受ける必要がある。

 規制委は「時間切れ」で廃炉を迫られる事態を避けるため、審査を急いだ。今年3月には、原子炉内の重要設備の耐震性を最終確認する試験を、詳しい設計の認可の後に先送りする方針を決めた。原子炉の劣化状況を調べた関電の特別点検の結果を確かめる審査も同時並行で進めている。規制委幹部は「大きな論点は残っていない」としており、運転延長が認められる見通しだ。

 規制委は、今年2月に新基準を満たすと認める審査書案を公表。30日間に606件の意見が集まった。運転延長に対するものは100件以上あり、「(延長は)例外ではなかったのか」「原子炉は老朽化していないのか」といった懸念が多かったという。新基準の審査で焦点だった電気ケーブルの防火対策についても、「難燃性が確保できるか不明だ」といった意見が相次いだ。

 関電は、安全対策の工事に数年かかり、再稼働の時期は2019年秋以降になるとみている。

 規制委の田中俊一委員長は20日の会見で、熊本県などの一連の地震で原発に対する不安を感じている人がいることに触れ、「劣化状況や地震動などの説明がわかりやすくなるよう、工夫していきたい」と語った。ただ、審査の進め方には問題がなく、延長しても新基準を満たすことをしっかり確かめていく考えを示した。

 関電は「安全性が確認された原発の再稼働に全力で取り組む」とのコメントを発表した。(東山正宜)


福井新聞社説-高浜1、2号審査合格 延命へ地震対策は万全か-2016年4月21日午前7時30分

 原子力規制委員会は関西電力高浜原発1、2号機が新規制基準を満たしているとして審査合格を正式決定した。運転開始から40年超の高経年炉、いわゆる老朽原発の運転延長を国内で初めて認めることになる。延命が当たり前になれば「原則40年」の原発寿命に歯止めがかからず、制限は骨抜きになる可能性がある。

 では、なぜ寿命を40年と決めたのか。延長幅の根拠は何か。規制委は国民に向き合い、疑問や不安に明確に答えるべきだ。

 東京電力福島第1原発事故後、民主党政権は改正原子炉等規制法で原発の運転期間を40年とする原則を設け、特例で1回に限り最長20年延長ができるとした。

 だが、安倍政権は政策転換を図り、エネルギー基本計画で原発を「重要なベースロード電源」と位置付け総発電量に占める原発の割合を「20〜22%」とした。原発の新設が困難な中で延命路線がより明確になり、原則は形骸化の方向だ。

 高浜1、2号機は、7月7日までの期限内に運転延長と工事計画の認可も受ける必要がある上、重大事故対策などに3年程度かかるため、運転再開はまだ先のことだ。しかし、投じる安全対策費用はケーブルの防火対策などを含め2千億円以上。同3、4号機の約2倍となる見込み。

 関電は県内3カ所の原発11基のうち、美浜1、2号機の廃炉を決めたが、いずれも出力が小さい。延長か廃炉かは電力事業者の「費用対効果」にかかる。

 ただ、巨額を投じる老朽炉に国民の信頼は得られるだろうか。世論調査では脱原発が過半数を占める。40年超運転の危険性を訴える反対住民らが14日、運転延長差し止めを求め名古屋地裁に提訴。老朽炉が初めて司法判断の俎上(そじょう)に載る。

 交換できない原子炉容器には劣化懸念。さらに地震対策で関電は同じ敷地内にある3、4号機の基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)を550ガルから700ガルに引き上げた。周辺の断層3連動を考慮するよう規制委の指摘を受けた対応だ。岩盤など地形・地質の違いはあるが、東日本大震災時には3000ガル前後の揺れがあったとされる。

 15年4月の高浜3、4号再稼働差し止めを命じた福井地裁の仮処分決定では、700ガル以下の地震でも炉心損傷に至る危険性を指摘し、規制委の新基準を「楽観的」と批判した。

 地震列島における原発の安全論議は今、知見を超えた熊本地震を契機に拡大している。九州中部を斜めに横切る断層帯の先には稼働中の九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)が立地。熊本-大分の延長線上には大活断層帯「中央構造線断層帯」が走り、近くには四国電力伊方原発(愛媛県)がある。

 廃炉の可能性がある日本原電敦賀2号機や北陸電力志賀1号機は、建屋直下の活断層が問題視されているが、もっとスケール感を持った視点が必要になる。原発の耐震安全性が厳しく問われよう。規制委は原発の長寿命化を含め国民にしっかり説明する義務がある。


朝日新聞社説-原発40年規制 早くも骨抜きなのか-2016年4月21日



 古い原発は廃炉とし、計画的に原発の数を減らしていく――東京電力福島第一原発事故への反省から決めたルールが、早くも骨抜きになろうとしている。

 原子力規制委員会は、運転開始から40年を超えた関西電力高浜原発1、2号機(福井県)について、新規制基準を満たしていると正式に決めた。新基準のもとで40年超のログイン前の続き老朽原発の運転延長が認められるのは初めてだ。残る細かい審査を7月の期限までに終えれば、あと20年、運転が続く公算が大きい。

 「40年ルール」は福島での事故後、法律を改正して導入された。「1回だけ、最長20年間」と定められた運転延長は「極めて例外的」と位置づけられた。あえて例外を設けたのは電力不足に備えるためだったが、節電や省エネの定着で懸念は解消していると言っていい。

 おりしも熊本県を中心に「今までの経験則からはずれている」(気象庁)という地震が続く。隣の鹿児島県で運転中の九州電力川内原発に影響が及ばないか、不安を感じている国民は少なくない。いきなり例外を認め、規制のたがを緩めるような対応は、原発行政への不信を高めるだけではないか。

 安倍政権は個別原発の可否の判断を規制委に丸投げしつつ、運転延長を前提にしたエネルギー計画を立てた。「原発依存度を可能な限り低減する」と繰り返していた首相は、なしくずしに方針を転換してきた。

 規制委は、あくまで科学的見地から原発の安全性を高めることが役割だが、今回の審査では耐震性の試験を後回しにすることを関電に認めるなど、手順に疑問が残る。7月の審査期限をにらんだスケジュールありきだったとすれば、まさに本末転倒である。

 結局、廃炉にするかどうかの実質的な判断は電力会社に委ねられ、運転延長が採算に合うかどうかという観点から決まるという状況になりつつある。

 狭い国土に多くの人が住み、地震など自然災害も多い日本で、多くの原発を抱えていくリスクは大きい。福島での事故を経て、そこが原子力行政見直しの出発点だったはずだ。

 原発を維持する政策をとり続ければ、廃棄物の処理などで長期的には国民負担も増えかねない。エネルギー自給率は再生エネルギーの育成で高めようというのが世界の大勢だ。

 移行期間は必要だとしても、着実に原発を閉じていく政策にこそ合理性があろう。40年規制はそのための柱の一つである。そのことを思い起こすべきだ。


by asyagi-df-2014 | 2016-04-22 05:50 | 書くことから-原発 | Comments(0)

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