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原発問題-「フクイチ(東京電力福島第1原発事故)が終わっていない。インドに原発売ってる場合か!」。日本の原発輸出にインド国民の反発。

 標題について、毎日新聞は2016年1月28日、「安倍晋三首相は就任以来、海外での原発セールスに積極的だ。昨年12月にはインドでモディ首相と会談、原子力協定を締結することで合意し、原発輸出に道を開いた。安倍首相は成果を強調するのだが、インドは核拡散防止条約(NPT)に加盟していない。日本は唯一の被爆国であり、核兵器廃絶が国是であることをお忘れなのだろうか。」、「インド西部の町、ジャイタプールで昨年12月12日、原発建設の反対集会が開かれた。集まった農民や漁民ら2000人以上が冒頭のシュプレヒコールを何度も繰り返したという。インド政府は、この地で最大で6基の原子炉を建設する計画を進めているのだ。安倍首相はこの日、ニューデリーでモディ首相と会談、日印原子力協定を締結することで原則合意した。これに反対する集会がインド各地で開かれ、中部のナーグプルでは掲げられた横断幕にこう記されていた。『フクイチ(東京電力福島第1原発事故)が終わっていない。インドに原発売ってる場合か!』」、と報じた。
 インドの原発事情について、「『稼働中の原発は21基ですが、政府は【急増する電力需要に対応する】などとして、さらに原発を増やす方針です。具体的には建設中が6基、計画中が24基。いずれの予定地でも住民の反対運動が起きており、特に福島第1原発事故後に激しくなりました』。2011年にはデモ隊に治安当局が発砲し、死者を出した事件も発生。政府が強硬に原発建設を進めている構図が改めて浮かび上がった。」、と伝えた。
 一方、日本企業の「原発ビジネスは1基当たり5000億円規模と言われる。日本企業にとっても資機材の輸出によって莫大(ばくだい)な利益を得るチャンスなのだ。」、との思惑を伝える。
 また、市民団体「原子力資料情報室」のスタッフ松久保肇さんからの「インドには原発事故時、メーカーに賠償責任を負わせる『原子力損害賠償法』があることから、インド進出に二の足を踏む米国企業もある。日本はそのリスクを承知して、原発輸出を考えているのか」や 「『インドは核兵器の保有国ですが、イスラエル、パキスタンなどと同様、NPT非加盟国であることを忘れてはなりません』(松久保肇さん)と批判する。NPTを空洞化させてしまう恐れもあると指摘するのだが、どういうことなのだろう。」、との疑問について、次のようにまとめる。


①松久保さんは話す。「米国は『インドを孤立させるより、国際社会の枠組みの中に引き入れることが重要』という理屈で関係改善を進めました。日本も同じ論理で臨んでいます」。確かに安倍首相は、日印原子力協定の意義をこう強調している。「国際的な不拡散体制にインドを実質的に参加させることにつながる。不拡散を推進する日本の立場に合致する」と。しかし、松久保さんは「非核国の日本がこの協定を結ぶことは、インドの『核軍拡』を容認することになってしまう。それでも核不拡散体制に引き込んだと言えるのでしょうか」と、政府の理屈は成り立たないと断じた。
②日本がNPT非加盟国と協定を結ぶのは初となるだけに、「非核」を国是とする日本にとって望ましくないという声は根強い。両首脳が合意した日に、広島市の松井一実市長と、長崎市の田上富久市長は「交渉中止を政府に要請していたが、被爆地の要請が考慮されず誠に遺憾」などと批判した。原水爆禁止日本国民会議、原水爆禁止日本協議会も「核兵器の拡散につながる」などと、それぞれ抗議声明を発表している。
③さらに重大な問題がある。この協定では「原子力の平和利用」の確約が不十分だということだ。両国の交渉で、日本側は「核実験を実施した場合は協力を停止する」との規定を盛り込むことにこだわったが、核開発の制約を受けたくないインドは難色を示していた。「核実験で協力停止」という条件を巡って、安倍首相は「モディ首相に伝え、理解を得られた」と胸を張った。だが、首脳同士で交わした覚書にはこの記述はない。関係者によると、協定関連文書には明記される見込みだが、どんな文言になるかはまだ不明だ。
④使用済み核燃料の再処理をどこまで認めるかについても不明確なままだ。簡単に説明すると、日本製の資機材で作られた原発から出た核のごみが、核兵器の原料として利用される懸念が拭えていないのだ。
 10〜14年、内閣府の原子力委員会委員長代理を務め、現在は長崎大核兵器廃絶研究センター長の鈴木達治郎教授は危機感をあらわにする。
 「被爆国の日本が軍事転用を防止する条件さえ認めさせられないようでは、核軍縮、核不拡散外交で日本の立場は弱くなるばかりです」。今回の協定を巡り、日本にはインドとの関係強化を望む声もあるが、鈴木さんは核不拡散の姿勢を貫くべきだと訴える。「インドが他国と結んだ協定よりも厳しい条件にすべきです。インドの核兵器開発に歯止めをかけるよう、全ての核燃料再処理施設で国際査察を受け入れるくらいの条件を求めてもよかった」


 この毎日新聞の「東日本大震災後、福島第1原発の原子炉建屋の爆発の場面を目の当たりにした私たちは、原発の怖さを実感した。親日国インドの国民の中に強い反対があるにもかかわらず、自国の利益のために原発を売ることは本当に正しいことなのか。」、という投げかけを、どのように受け止めるのかが問われている。


 以下、毎日新聞の引用。








毎日新聞-「忘災」の原発列島 インドで「アベさん、帰れ!」 日印原子力協定に反対運動-2016年1月28日 東京夕刊


 安倍晋三首相は就任以来、海外での原発セールスに積極的だ。昨年12月にはインドでモディ首相と会談、原子力協定を締結することで合意し、原発輸出に道を開いた。安倍首相は成果を強調するのだが、インドは核拡散防止条約(NPT)に加盟していない。日本は唯一の被爆国であり、核兵器廃絶が国是であることをお忘れなのだろうか。【小林祥晃】

住民ら「フクイチが終わっていない」 NPT空洞化させる恐れも

 「ミスターアベ、ゴーバック!」(安倍さんは帰れ!)

 インド西部の町、ジャイタプールで昨年12月12日、原発建設の反対集会が開かれた。集まった農民や漁民ら2000人以上が冒頭のシュプレヒコールを何度も繰り返したという。インド政府は、この地で最大で6基の原子炉を建設する計画を進めているのだ。

 安倍首相はこの日、ニューデリーでモディ首相と会談、日印原子力協定を締結することで原則合意した。これに反対する集会がインド各地で開かれ、中部のナーグプルでは掲げられた横断幕にこう記されていた。「フクイチ(東京電力福島第1原発事故)が終わっていない。インドに原発売ってる場合か!」

 インド国民の反発をよそに、なぜ日本は原発を輸出しようとしているのか。まず、国際環境NGO「FoEジャパン」スタッフの深草亜悠美(あゆみ)さんが、インドの原発事情を解説する。「稼働中の原発は21基ですが、政府は『急増する電力需要に対応する』などとして、さらに原発を増やす方針です。具体的には建設中が6基、計画中が24基。いずれの予定地でも住民の反対運動が起きており、特に福島第1原発事故後に激しくなりました」。2011年にはデモ隊に治安当局が発砲し、死者を出した事件も発生。政府が強硬に原発建設を進めている構図が改めて浮かび上がった。

 原発建設を担っているのは米仏露のメーカーで、米仏企業は原子炉格納容器など重要な資機材に日本製を採用している。そもそも東芝は米ウェスチングハウスを子会社にしており、日立製作所は米ゼネラル・エレクトリック、三菱重工業は仏アレバと、それぞれ関係が深い。原発ビジネスは1基当たり5000億円規模と言われる。日本企業にとっても資機材の輸出によって莫大(ばくだい)な利益を得るチャンスなのだ。

 原発輸出を成長戦略と位置づける安倍首相は第2次政権発足以降、インド首脳とのトップ外交を繰り広げてきた。その動きを批判するのは、市民団体「原子力資料情報室」のスタッフ、松久保肇さん。「インドには原発事故時、メーカーに賠償責任を負わせる『原子力損害賠償法』があることから、インド進出に二の足を踏む米国企業もある。日本はそのリスクを承知して、原発輸出を考えているのか」

 問題は原発輸出に伴うリスクだけではなさそうだ。松久保さんは「インドは核兵器の保有国ですが、イスラエル、パキスタンなどと同様、NPT非加盟国であることを忘れてはなりません」と批判する。NPTを空洞化させてしまう恐れもあると指摘するのだが、どういうことなのだろう。

 インドがNPTに加盟していないのは「米英仏露中の5カ国だけに核の保有を認め、非核国には国際原子力機関(IAEA)による査察を義務づけているNPTは不平等だ」との立場を取っているからだ。1974年と98年には核実験を行い、国際社会から原子力分野の技術協力やウラン燃料の取引を禁止された。

 その後、独自に核開発を進めてきたが、00年代に入り、風向きが変わった。「中国に次ぐ巨大市場としての可能性、そして力を強める中国へのけん制役として注目されるようになり、米国がインドとの関係改善に乗り出したのです」(松久保さん)。05年の米印原子力協力の合意に続き、08年には日本など原子力関連貿易を行う48カ国でつくる原子力供給国グループが、インドを「例外扱い」とし、停止していた貿易を再開。これによって、インドは事実上、米英仏露中に並ぶ地位を手にした。

 松久保さんは話す。「米国は『インドを孤立させるより、国際社会の枠組みの中に引き入れることが重要』という理屈で関係改善を進めました。日本も同じ論理で臨んでいます」。確かに安倍首相は、日印原子力協定の意義をこう強調している。「国際的な不拡散体制にインドを実質的に参加させることにつながる。不拡散を推進する日本の立場に合致する」と。しかし、松久保さんは「非核国の日本がこの協定を結ぶことは、インドの『核軍拡』を容認することになってしまう。それでも核不拡散体制に引き込んだと言えるのでしょうか」と、政府の理屈は成り立たないと断じた。

 日本がNPT非加盟国と協定を結ぶのは初となるだけに、「非核」を国是とする日本にとって望ましくないという声は根強い。両首脳が合意した日に、広島市の松井一実市長と、長崎市の田上富久市長は「交渉中止を政府に要請していたが、被爆地の要請が考慮されず誠に遺憾」などと批判した。原水爆禁止日本国民会議、原水爆禁止日本協議会も「核兵器の拡散につながる」などと、それぞれ抗議声明を発表している。

 さらに重大な問題がある。この協定では「原子力の平和利用」の確約が不十分だということだ。両国の交渉で、日本側は「核実験を実施した場合は協力を停止する」との規定を盛り込むことにこだわったが、核開発の制約を受けたくないインドは難色を示していた。

 「核実験で協力停止」という条件を巡って、安倍首相は「モディ首相に伝え、理解を得られた」と胸を張った。だが、首脳同士で交わした覚書にはこの記述はない。関係者によると、協定関連文書には明記される見込みだが、どんな文言になるかはまだ不明だ。

 使用済み核燃料の再処理をどこまで認めるかについても不明確なままだ。簡単に説明すると、日本製の資機材で作られた原発から出た核のごみが、核兵器の原料として利用される懸念が拭えていないのだ。

 10〜14年、内閣府の原子力委員会委員長代理を務め、現在は長崎大核兵器廃絶研究センター長の鈴木達治郎教授は危機感をあらわにする。

 「被爆国の日本が軍事転用を防止する条件さえ認めさせられないようでは、核軍縮、核不拡散外交で日本の立場は弱くなるばかりです」。今回の協定を巡り、日本にはインドとの関係強化を望む声もあるが、鈴木さんは核不拡散の姿勢を貫くべきだと訴える。「インドが他国と結んだ協定よりも厳しい条件にすべきです。インドの核兵器開発に歯止めをかけるよう、全ての核燃料再処理施設で国際査察を受け入れるくらいの条件を求めてもよかった」

 東日本大震災後、福島第1原発の原子炉建屋の爆発の場面を目の当たりにした私たちは、原発の怖さを実感した。親日国インドの国民の中に強い反対があるにもかかわらず、自国の利益のために原発を売ることは本当に正しいことなのか。


by asyagi-df-2014 | 2016-02-02 06:27 | 書くことから-原発 | Comments(0)

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