原発問題- 「事故は防ぐことができた」にたどり着いた結論。そして、原発事故を「わがこと」と捉え、考え、話し合う大切さを世界に発信。
2015年 12月 20日
河北新報は2015年12月18日、「スイス・ジュネーブに世界各国から集まった約130人を前に、日本の若者3人が仲間たちを代表して訴えた。『事故は防ぐことができた』。東京電力福島第1原発事故について、考え、話し合い、たどり着いた結論の一つだった。今月4日にあった国際赤十字・赤新月社連盟総会の関連行事。福島県郡山市の安積高2年の今園柊香さん(17)と関東の高校生、大学生の3人がチームで参加した。タイトルは「What Shall We Change?」(何を変えるべきか)。世界に伝えるべき原発事故の教訓を英語で発表した。3人は国会事故調査委員会の報告書を基に事故の背景を討論する「わかりやすいプロジェクト」のメンバーだ。」、と始まる<話そう原発>という記事を掲載した。
その活動の様子について、「プロジェクトは2012年9月、事故調で調査統括を務めた経営コンサルタント石橋哲さん(51)=川崎市=らが始めた。福島や東京の高校生らが毎年、各地で議論を重ねている。例えば9月18日には福島市の福島高で、1、2年生13人が報告書を読み込んだ。「第5部 事故当事者の組織的問題」に関して疑問や意見を出し合った。旧原子力安全・保安院は津波の危険性を認識していたが、電力業界の抵抗を抑えきれず、指導や監督を怠った。報告書は「行政の不作為」と断じた。「なぜ誰もおかしいと言い出せなかったのか」「なぜ人の命より組織を守ることを優先するのか」。生徒からは当然のように疑問が湧き上がった。議論を進めると「仕事を辞める度胸がないと不正を指摘できない」「無関心の方が得だ」「大人の社会はおかしい」。ついには「国は頼りにならない」「大人になりたくない」と諦めの言葉も出始めた。」、と伝えた。
そして、たどり着いたものは、「再び考える生徒たち。『私たち?』『人災の責任は自分たちにもあるってこと?』。自らに問い掛けるような声が複数上がった。組織の利益や上下関係、周囲の雰囲気、多数意見に流される。そうした習慣が事故を防ぐ芽を摘んでしまった。生徒たちが導き出した結論だ。」、というもの。
また、「各地の若者たちが討論を経てまとめた教訓を、今園さんら3人はジュネーブで発表した。締めくくりに選んだのは赤十字のスローガン。『私たちの世界をよくするのは、あなたたち一人一人の行動です』。原発事故を『わがこと』と捉え、考え、話し合う大切さを世界に発信した。」、と伝えた。
続いての記事では、国会事故調査委員会の委員長を務めた黒川清・政策研究大学院大学客員教授の次の発言を、原発を考えるために、掲載した。
「責任ある立場の人たちが責任を果たさず、規制する側がされる側に操られる『規制のとりこ』に陥っていた。責任回避を最優先し、失敗から学ぼうとしない思考と行動が明らかになり、事故の根底は『人災』だと判断した」
「立法府が行政府をチェックできておらず、民主主義が機能していない。海外では当たり前なのに、日本の立法府が独立委員会を作ったのは国会事故調が憲政史上初だった。民主主義は与えられるものではなく、自分たちでつくっていくという認識が必要だ」
そして、「原発事故後も社会が変わらないのはなぜか。」という根本的な疑問に、黒川清さんは、次のように答えた。
「オリンパスの損失隠しや東芝の不正経理の背景には、東京電力が陥った企業体質と同じ部分がある。国会事故調が指摘した組織の問題から教訓を得ていない。日本のマスコミもそれを追及しない。マスコミ自身が同じ企業体質だからだ。だから何も変わらない」
若い人たちは、やはり、気づきつつある。
ただ、変わらないのは、「国会事故調が指摘した組織の問題から教訓を得ていない。日本のマスコミもそれを追及しない。マスコミ自身が同じ企業体質だからだ。だから何も変わらない」という、若者ではない人たちの基本的姿勢にある。
「3.11」は、「責任ある立場の人たちが責任を果たさず、規制する側がされる側に操られる『規制のとりこ』に陥っていた。責任回避を最優先し、失敗から学ぼうとしない思考と行動」を、乗り越えて初めて、意味をもつものであるにも関わらずである。
例えば、それは、伊方原発再稼働について、「来春準備整う」とする「これまでに経験のない原子力への大きな不安感が広がっている状況下においての非常に重い決断となった」(2015年12月17日愛媛新聞)という伊方町長の恥ずべき決断に表れている。
以下、河北新報及び愛媛新聞の引用。
河北新報-<話そう原発>「なぜ」生徒ら問う-2015年12月18日
原発事故の発生から4年9カ月。東北は、廃炉や再稼働といった原発をめぐる問題を話し合っていくことを避けては通れない。国会事故調の報告書と向き合い「なぜ」を考え始めた若者たちの活動を紹介する。(原子力問題取材班)
◎国会事故調報告書を読んで(上)
スイス・ジュネーブに世界各国から集まった約130人を前に、日本の若者3人が仲間たちを代表して訴えた。
「事故は防ぐことができた」。東京電力福島第1原発事故について、考え、話し合い、たどり着いた結論の一つだった。
今月4日にあった国際赤十字・赤新月社連盟総会の関連行事。福島県郡山市の安積高2年の今園柊香さん(17)と関東の高校生、大学生の3人がチームで参加した。
タイトルは「What Shall We Change?」(何を変えるべきか)。世界に伝えるべき原発事故の教訓を英語で発表した。
3人は国会事故調査委員会の報告書を基に事故の背景を討論する「わかりやすいプロジェクト」のメンバーだ。
<途中諦めも>
プロジェクトは2012年9月、事故調で調査統括を務めた経営コンサルタント石橋哲さん(51)=川崎市=らが始めた。福島や東京の高校生らが毎年、各地で議論を重ねている。
例えば9月18日には福島市の福島高で、1、2年生13人が報告書を読み込んだ。「第5部 事故当事者の組織的問題」に関して疑問や意見を出し合った。
旧原子力安全・保安院は津波の危険性を認識していたが、電力業界の抵抗を抑えきれず、指導や監督を怠った。報告書は「行政の不作為」と断じた。
「なぜ誰もおかしいと言い出せなかったのか」「なぜ人の命より組織を守ることを優先するのか」。生徒からは当然のように疑問が湧き上がった。
議論を進めると「仕事を辞める度胸がないと不正を指摘できない」「無関心の方が得だ」「大人の社会はおかしい」。ついには「国は頼りにならない」「大人になりたくない」と諦めの言葉も出始めた。
「国や政府は誰の意思で動いているのかな」。石橋さんの一言が議論の流れと雰囲気を変える。
<教訓世界へ>
再び考える生徒たち。「私たち?」「人災の責任は自分たちにもあるってこと?」。自らに問い掛けるような声が複数上がった。
組織の利益や上下関係、周囲の雰囲気、多数意見に流される。そうした習慣が事故を防ぐ芽を摘んでしまった。生徒たちが導き出した結論だ。
同じような環境は学校や日常生活にもある。少数意見に耳を傾け、本音で対話を重ねることが、原発事故のような悲劇を繰り返さないことにつながる。
各地の若者たちが討論を経てまとめた教訓を、今園さんら3人はジュネーブで発表した。
締めくくりに選んだのは赤十字のスローガン。「私たちの世界をよくするのは、あなたたち一人一人の行動です」。原発事故を「わがこと」と捉え、考え、話し合う大切さを世界に発信した。
[国会事故調査委員会]立法府が行政府を監視する目的で、国会が憲政史上初めて設置した第三者による独立調査機関。2011年12月に委員10人で発足。事務局も含め行政府の官僚はゼロ。6カ月間で2000点以上の資料、1000人以上の関係者を調べ、1万人以上の被災者や約2400人の原発作業員にアンケートを実施。12年7月、事故を「人災」とする報告書をまとめた。
河北新報-<話そう原発>民主主義が機能せず-2015年12月18日
東京電力福島第1原発事故から4年9カ月余り。未曽有の事故から教訓は学べているのか。国会事故調査委員会の委員長を務めた黒川清・政策研究大学院大学客員教授に聞いた。
<規制のとりこ>
-国会事故調が明らかにしたのは。
「報告書は原発の技術についてではなく、もっと根っこの部分、日本人のマインドの問題を明らかにした。世界でも例外的なタテ社会、部分最適に陥りがちな社会の力学。それを助長する日本人共通の『思い込み』(マインドセット)が事故の背景にあったのではないかと問い掛けた」
「責任ある立場の人たちが責任を果たさず、規制する側がされる側に操られる『規制のとりこ』に陥っていた。責任回避を最優先し、失敗から学ぼうとしない思考と行動が明らかになり、事故の根底は『人災』だと判断した」
-福島の高校生らが報告書を基に考え始めた。
「原発事故を引き起こした『責任ある立場』の人たちと対極にいる。わかりやすいプロジェクトは目覚めた若者たちの活動。原発事故に象徴される『今まで』を作ったわれわれの世代は、世界と共に歩む彼らの未来を支援しなければならない」
<企業体質同じ>
-国会事故調は立法、行政、司法の三権がそれぞれ独立した統治機構として機能していないと指摘した。
「立法府が行政府をチェックできておらず、民主主義が機能していない。海外では当たり前なのに、日本の立法府が独立委員会を作ったのは国会事故調が憲政史上初だった。民主主義は与えられるものではなく、自分たちでつくっていくという認識が必要だ」
-原発事故後も社会が変わらないのはなぜか。
「オリンパスの損失隠しや東芝の不正経理の背景には、東京電力が陥った企業体質と同じ部分がある。国会事故調が指摘した組織の問題から教訓を得ていない。日本のマスコミもそれを追及しない。マスコミ自身が同じ企業体質だからだ。だから何も変わらない」
愛媛新聞-伊方3号再稼働「来春準備整う」 伊方町長-2015年12月17日
四国電力伊方原発が立地する愛媛県伊方町の山下和彦町長は16日、再稼働に同意している伊方3号機について「安全対策工事の最終段階に入り、来年春ごろには一連の手続きを終えて、準備が整うと思われている」と再稼働する時期の見通しを示した。
再稼働を事前了解した10月以降初めて開かれた町議会本会議の招集あいさつで述べた。山下町長は「再稼働容認という判断」に至った経過を説明し「これまでに経験のない原子力への大きな不安感が広がっている状況下においての非常に重い決断となった」などと語った。