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原発問題-2015.8.11川内原発第1号機再稼働を受けて、日本の原子力問題を考える。

                         ( 2015.8.17)
 2015年8月11日、九州電力は、川内原発第1号機を再稼働した。今後、8月14日に発電と送電を開始し、9月上旬には通常運転に復帰する予定だという。
しかし、この再稼働は、「3.11」が示したものを真の意味で裏切るものである。福島の惨劇を忘れていいはずはない。
 あらためて、日本の原子力のあり方について考える。
このことを考える上では、次の三つの視点が必要である。

(1)原子力行政を進めるないしは廃止する上では、「事業者」、「国」、「原子力規制委員会」、「裁判所」、「当該地方公共団体」の各自が責任を負うこと。また、その場合、その責任所在を、それぞれの事業に応じて明確にすること。

(2)一つ目の視点は、日本は、「3.11」が示したものを思考の基底にして、新たに原子力に関する政策を作り出さなければならないということ。
 そこには、まず、「原子力発電所は、電気の生産という社会的には重要な機能を営むものではあるが、原子力の利用は平和目的に限られているから(原子力基本法2条)、原子力発電所の稼動は法的には電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由(憲法22条1項)に属するものであって、憲法上は人格権の中核部分よりも劣位に置かれるべきものである。」(福井地裁判決)という考え方が貫かれなければならない。
 したがって、そこでは、「人格権とりわけ生命を守り生活を維持するという人格権の根幹部分に対する具体的侵害のおそれがあるときは、人格権そのものに基づいて侵害行為の差止めを請求できることになる。」(福市最判決)ということが恒久的に保障されなければならない。
 つまり、「3.11」の提起した問題の帰結はここに到達しなければならなかったはずである。
この視点は、日本における原子力のあり方を、たまには事故が発生することも仕方がないと捉えるのではなく、福島原発事故のような重大事故を絶対に避けるべきと考えることことである。
 原子力のあり方を考えるとは、まさしく命の問題として、このことを捉えるということなのである。

(3)二つ目の視点は、原子力のあり方を考える時、一人ひとりの自己決定権が充分保障されたものになっているか、ということが重要になる。
 というのは、「3.11」を考えるとは、福島第1号機の原発事故が示したものを考えることである。例えば、福島県内への避難者62.892人(2015年7月31日現在)・福島県外避難者45.241人(2015年7月16日)にいたった原発事故における「避難者」の問題の存在が、自己決定権が否定された「事実」を証明している。
 
 この三の視点を基本に、次のことが明確にされなければ、日本における原子力の運営は実施されてはいけない。もちろん、再稼働も当然許さされない。

(1)福島第1号機の原発事故が提起した次の問題を責任問題の中で明確にする。
①「事故原因」と「責任問題」の明確化
②「廃炉作業」への対応と責任の所在の明確化
③「高レベル放射性廃棄物の最終処分場の問題」への対応と責任の所在の明確化
(2)福島第1号機の原発事故が提起した、事故が起きた時の具体的な対応とその責任の所在のあり方を明確にする。
①放射線被曝への対応と責任の所在の明確化
②「汚染水」の処理への対応と責任の所在の明確化
③原子力災害対策特別措置法に基づくシイタケなどの野菜類や肉、海産物等の「出荷制限」への対応と責任の所在の明確化
④「避難者」への対応と責任の所在の明確化
⑤除染で出た指定廃棄物の処分場への対応と責任の所在の明確化
(3)川内原発第1号機再稼働までに明らかになった問題の具体的な対応とその責任の所在のあり方を明確にする。
①福井地裁と鹿児島地裁で判断が分かれている「新規性基準」の取り扱いの矛盾の整合性
 これは、「新規性基準」が、たまには事故が発生することも仕方がないと捉えるのではなく、福島原発事故のような重大事故を絶対に避けるべきと捉えているかということ。
②実効性の担保のない「住民避難」への対応と責任の所在の明確化
③立地自治体と周辺自治体で扱いの「自治体の同意」の格差 への対応と責任の所在の明確化
④「安保関連法案」のいくえ、「テロ対策」への対応と責任の所在の明確化
 「安保関連法案」について、水島朝穂は「緊急直言」のなかで、次のように指摘している。
「北朝鮮や中国との関係では、『もし万一攻められたらどうする…』ということばかりが語られますが、いま重要なことは『もし万一日本が攻めてしまったら』ということのリアリティでしょう。安全保障の中心は、『攻められない』ようにする条件をどう作るかにあります。安倍首相は集団的自衛権の行使が限定的だといいますが、『日本が北朝鮮を攻めてしまった結果、日本が北朝鮮に攻められてしまう』のが集団的自衛権行使の帰結です。」
 このように、「テロ」という問題だけに限らず、「安保関連法案」のいくえによっては、原子力発電所が攻撃対象になる可能性があることにより、このことへの対応と責任の所在の明確化が必要になる。
⑤「火山対策」への対応と責任の所在の明確化
 これは、モニタリングによる巨大噴火の発生予測を可能としている点や、巨大噴火の発生間隔予測に用いた噴火の恣意的な選択は、極めて大きな問題であることによる。
⑥「活断層対策」への対応と責任の所在の明確化問題
⑦「集中立地」への対応と責任の所在の明確化
⑧老朽化問題
 ここでは、わたしたちが福島第一原発事故で学んだ「緩い規制はもはや許されない」という基準が適用されなければならない。
(4)原子力規制委員会の「新規制基準」の見直し問題
①新規制基準の要件に、過酷事故が起きた際の避難計画の策定をいれること。
 例えば、このことについて毎日新聞は、「国際原子力機関(IAEA)は原子力事故対策で『5層の防護』を定めている。その内訳は、3層目までが過酷事故の防止▽4層目が過酷事故が起きた時の対策▽5層目が放射性物質が敷地外に漏れ出た場合の防災対策−−となっている。例えば、米国では、原子力規制委員会(NRC)が防災対策について認可をしないと原発は動かせない。」と、伝えている。
②新規制基準の要件に、アメリカ原子力委員会の勧告「事故時にECCRを停止してはならない」を取り入れる必要があること。(「川内原発民間規制委員会・かごしま」のパンフ参照)


by asyagi-df-2014 | 2015-08-17 05:47 | 書くことから-原発 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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