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労働問題-「高度プロフェッショナル制度」に反対し、労働基準法の一部改正法案を廃案に。

 2015年6月30日に、「日本再興戦略」改訂2015及び「規制改革実施計画」が閣議決定された。
このことに対して、日本弁護士連合会は、2015年8月7日、「『日本再興戦略』改訂2015」における労働規制緩和に反対する会長声明を発表した。
この「声明」を基に、このことを考える。

(1)経過
2015年6月30日付け「日本再興戦略」改訂2015(以下「改訂戦略」という。)及び「規制改革実施計画」が閣議決定された。これらにおいては、雇用規制緩和に関して、「働き過ぎ防止のための取組強化」を提言する一方で、今国会に提出している労働基準法等の一部改正の早期成立を図るとするとともに、「高度プロフェッショナル制度」の早期創設を提唱するなどしている。
(2)「高度プロフェッショナル制度」
 改訂戦略が働き過ぎ防止のための取組強化を提言していることは首肯できる。「高度プロフェッショナル制度」は、この「働き過ぎ防止」の方向性と矛盾する。長時間労働の蔓延、過労死及び過労自殺が後を絶たない深刻な現状においてこの制度を導入すれば、適用対象者における長時間労働を抑制する法律上の歯止めがなくなる等、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた際限のない長時間労働が助長され、労働者の心身の健康悪化や、過労死・過労自殺の増加を助長することにもなりかねない。
(3)「労働基準法等の一部改正法」
労働基準法の一部改正法案には、企画業務型裁量労働制(いわゆる「みなし労働時間」)の対象業務の拡大が盛り込まれている。しかし、対象業務の要件とされている「運営に関する事項」、「企画、立案、調査及び分析」、「成果の活用」、「実施を管理」及び「実施状況の評価」等の文言は非常に抽象的であり、対象業務がどこまで拡大されることになるのか極めて不明確であって、しかも、高度プロフェッショナル制度と異なり、適用対象者の年収要件による限定もない。裁量労働性においては、労働の量や期限は使用者によって決定されるので、命じられた労働が過大である場合、労働者は事実上長時間労働を強いられ、しかも時間に見合った賃金は請求し得ないという事態が生じるという問題が存在するのであり、その対象業務の拡大には極めて慎重な審議が必要である
(4)主張
 「経済成長は、全ての国民の暮らしを豊かにするための手段にすぎないのであり、国民を犠牲にする経済成長など本末転倒」であって、「雇用規制の緩和を経済成長の手段とするべきではない」と批判し、労働者の生活と健康を維持するため、労働時間規制の安易な緩和を進めないよう求めている。
 よって、当連合会は、「高度プロフェッショナル制度」の早期創設等の労働規制緩和の内容を含む改訂戦略に対して反対するとともに、そこにおいて早期成立を図るとされている労働基準法の一部改正法案についても廃案とすることを求める。


 このことは、この「声明」でも指摘する「国民を犠牲にする経済成長など本末転倒」な安倍晋三政権の「成長戦略」に「否」を突きつける必要があるということである。
 「日本再興戦略」改訂2015及び「規制改革実施計画」に基づく、「高度プロフェッショナル制度」に反対し、労働基準法の一部改正法案を廃案にしなければならない。

 以下、日弁連会長声明の引用。






「『日本再興戦略』改訂2015」における労働規制緩和に反対する会長声明


2015年6月30日付け「日本再興戦略」改訂2015(以下「改訂戦略」という。)及び「規制改革実施計画」が閣議決定された。これらにおいては、雇用規制緩和に関して、「働き過ぎ防止のための取組強化」を提言する一方で、今国会に提出している労働基準法等の一部改正の早期成立を図るとするとともに、「高度プロフェッショナル制度」の早期創設を提唱するなどしている。

確かに、改訂戦略が働き過ぎ防止のための取組強化を提言していることは首肯できる。しかし、その内容は「有給休暇の確実な取得」や「労使の話合いによる働き方・休み方の見直し促進」など、実効性が不明であったり、長時間労働の明確な歯止めにならなかったりするものであり、「働き過ぎ防止」の策としては不十分と言わざるを得ない。

その一方、改訂戦略で早期創設が提唱されている「高度プロフェッショナル制度」は、この「働き過ぎ防止」の方向性と矛盾する。すなわち、当連合会の2014年11月21日付け「労働時間法制の規制緩和に反対する意見書」においても指摘したとおり、長時間労働の蔓延、過労死及び過労自殺が後を絶たない深刻な現状においてこの制度を導入すれば、適用対象者における長時間労働を抑制する法律上の歯止めがなくなる等、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた際限のない長時間労働が助長され、労働者の心身の健康悪化や、過労死・過労自殺の増加を助長することにもなりかねない。

さらに、改訂戦略において早期成立を図るとされている労働基準法の一部改正法案には、企画業務型裁量労働制(いわゆる「みなし労働時間」)の対象業務の拡大が盛り込まれている。しかし、対象業務の要件とされている「運営に関する事項」、「企画、立案、調査及び分析」、「成果の活用」、「実施を管理」及び「実施状況の評価」等の文言は非常に抽象的であり、対象業務がどこまで拡大されることになるのか極めて不明確であって、しかも、高度プロフェッショナル制度と異なり、適用対象者の年収要件による限定もない。裁量労働性においては、労働の量や期限は使用者によって決定されるので、命じられた労働が過大である場合、労働者は事実上長時間労働を強いられ、しかも時間に見合った賃金は請求し得ないという事態が生じるという問題が存在するのであり、その対象業務の拡大には極めて慎重な審議が必要である。

当連合会は、2013年7月18日付け「『日本再興戦略』に基づく労働法制の規制緩和に反対する意見書」を公表し、「経済成長は、全ての国民の暮らしを豊かにするための手段にすぎないのであり、国民を犠牲にする経済成長など本末転倒」であって、「雇用規制の緩和を経済成長の手段とするべきではない」と批判し、労働者の生活と健康を維持するため、労働時間規制の安易な緩和を進めないよう求めている。

よって、当連合会は、「高度プロフェッショナル制度」の早期創設等の労働規制緩和の内容を含む改訂戦略に対して反対するとともに、そこにおいて早期成立を図るとされている労働基準法の一部改正法案についても廃案とすることを求める。

  2015年(平成27年)8月7日
                   日本弁護士連合会      
                            会長 村 越   進 


by asyagi-df-2014 | 2015-08-09 05:30 | 書くことから-労働 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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