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「日の丸・君が代訴訟」で「裁量権の逸脱」の2回の断罪

 個人的理由でネットを見られない間に、大きな判決が出されていました。
 根津公子さんも、「須藤典明裁判長『「主文を読み上げ、その後理由を言います』 と言い、『主文 控訴人らの敗訴部分を取り消す。』 と言った時に、 河原井さんの損害賠償請求が認められたんだとしか、 受け取ることができませんでした。」と、報告しています。
 また、根津公子さんは、「判決文には目障りな文言が散見されますし、完全勝訴ではありませんが、 2012年最高裁判決に立ったこの判決は、最高裁が都教委の『上告』 を受理しにくいような骨組みになっています。政治的判断を悪く働かせない限り、最高裁はこの判決を否定できないと思います。 同一の「過去の処分歴等』 (『等』は不起立前後の態度等を含む)を繰り返し使い、 例外的に根津だけに累積加重処分を適法としてきた判決や田中聡史さんへの累積加重処分などに、 多少でも歯止めをかけることになるとも思います。」と、まとめています。

 ここでは、週刊金曜日1045号(2015年6月26日)の「『日の丸・君がと訴訟』 都教委にあびせたダブルパンチ!」から記事を抜粋する。

(1)2007年の卒業式の「君が代」斉唱時に起立せず、都教委から停職6ヶ月の懲戒処分を受けた市立中学校(当時)の元教師・根津公子さんが処分取り消しを求めていた訴訟で、東京高裁は、5月28日、裁量権の逸脱を認め、一審判決を取り消し、慰謝料10万円の支払を都に命じた。
(2)須藤典明裁判長は、1回目で戒告、2回目以降は減給、停職と処分を機械的に加重していくとついには免職になり、「思想信条を捨てるか、それとも教職員としての身分を捨てるかの二者択一 の選択を迫られる」ことになり、「思想・良心の自由の実質的な侵害につながる」と判示した。
(3)一緒に提示していた都立養護学校(当時)の元教師・河原井純子さんについては一審の停職処分の取り消しに加えて、慰謝料10万円の支払を都に命じた。
(4)根津さんは、「この判決は、思想・良心の『間接的制約』になるとした最高裁判決を越える。少なくとも処分は停職3ヶ月までで、免職は違法と歯止めをかけたことがうれしい」と喜びを語った。

(5)5月25日、定年後の再雇用を拒否された都立高校の元教師22人が損害賠償を求めた裁判の判決があり、東京地裁の吉田徹裁判長も都教委の裁量権逸脱、濫用を認め、都に総額5370万円の損害賠償を命じた。
(6)吉田裁判長は、学習指導要領で国旗国歌条項が他の特別行事より特段区別した位置づけが与えられていないのに都教委は不規律のみを不当に重く扱う一方、定年退職者の生活保障と教職経験者の経験の活用という再雇用制度の趣旨にも反する賭した。そして、原告17人の「定年後の生活の糧を奪い去るという非常さに全身の力が抜ける感覚を覚え、何より教師としての自分を全否定された屈辱感にさいなまされた」などの「精神的損害」を例示した上で損害額を算定した。

(7)都教委は、両訴訟に上告、控訴した。

 週刊金曜日の「2008年3月、根津公子さんは免職の危機にあったが、応援の市民らと約3週間都教委と交渉を続け、免職を食い止めた。当時の教育長が教育長室で『根津をクビにできない!』と叫んだと教育庁関係者から根津さんは聞いたという。」との記事と生徒に挨拶をする根津さんの写真は、この間の闘いの様子を熱く語りかけてくれる。

 今は、根津さん、河原井さんたちの闘いに、感謝するのみである。

 以下、根津さんの報告の引用。






まさか!の勝利判決 2007年「君が代」不起立停職6ヶ月処分取り消し控訴審
                                        根津公子


 「過去の処分歴」を理由に06年停職3ヶ月処分を適法とした2012年最高裁判決。そして、その後、05年の減給6ヶ月・停職1ヶ月処分も、さらには本件地裁判決も「過去の処分歴」で処分を適法とされてきた私は、 生きているうちに勝利判決を手にすることができるとは考えてもいませんでした。
 法廷で冒頭、須藤典明裁判長が「主文を読み上げ、その後理由を言います」 と言い、「主文 控訴人らの敗訴部分を取り消す。」 と言った時に、 河原井さんの損害賠償請求が認められたんだとしか、 受け取ることができませんでした。続けて裁判長は、 「控訴人根津に対してした平成19年3月30日付け処分を取り消す。 被控訴人(都教委)は、控訴人河原井に対し、 10万円及びこれに対する平成19年3月30日から支払い済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 被控訴人は、 控訴人根津に対し、 10万円及びこれに対する平成19年3月30日から支払い済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。被控訴人の控訴を棄却する。」と言ったのですが、 それでも、 聞き間違い?と半信半疑で、 弁護士たちの顔を覗き込みました。 でも、弁護士3人も喜びの表情ではありませんでした。 裁判長は続けて、 判決の理由を法廷内の人たちの顔を見渡しながら平易な言葉で丁寧に説明しました。 10分以上の時間だったでしょうか。処分取り消しになったんだよね、 と自分に確認しながら裁判長の話を聞きましたが、 閉廷後、弁護士たちも裁判長の言葉をにわかには信じることができなかったと言っていました。
 この裁判は2007年河原井さん・停職3ヶ月処分損害賠償請求(処分自体は地裁で取り消し)と、根津・停職6ヶ月処分の取り消しと損害賠償請求の控訴事件です。 地裁は根津の処分については「過去の処分歴等」 を使って適法としたものでした。

この判決を一言で言うならば、「職務命令は合憲」「根津に対する停職3ヶ月処分は適法」とした2012年最高裁判決を基本に据えて、 「過去の処分歴」 という理由があったから停職3ヶ月は適法だが、06年停職3ヶ月処分から本件停職6ヶ月処分までの1年間に累積加重処分をすべき理由はなく、 したがって、処分は停職3ヶ月に留めるべきであり、停職6ヶ月処分は裁量権の濫用で違法となる。損害賠償金各10万円の支払いを命じたのは、 「処分取り消しによる返金でいい」 と都教委は言うが、 それでは精神的苦痛は慰謝されない、 というものでした。
判決文には目障りな文言が散見されますし、完全勝訴ではありませんが、 2012年最高裁判決に立ったこの判決は、最高裁が都教委の「上告」 を受理しにくいような骨組みになっています。政治的判断を悪く働かせない限り、最高裁はこの判決を否定できないと思います。 同一の 「過去の処分歴等」 (『等』は不起立前後の態度等を含む)を繰り返し使い、 例外的に根津だけに累積加重処分を適法としてきた判決や田中聡史さんへの累積加重処分などに、 多少でも歯止めをかけることになるとも思います。
「自己の歴史観や世界観を含む思想等により忠実であろうとする教員にとっては、 自らの思想や信条を捨てるか、それとも教職員としての身分を捨てるかの二者択一の選択を迫られることとなり、…日本国憲法が保障している個人としての思想及び良心の自由に対する実質的な侵害につながる」 との判示は、 これまでの最高裁判決が、思想・良心の「間接的制約」としてきたことを超えるものです。免職だけでなく、免職の恐れを持たせることを違法としています。 田中聡史さんや「3回目は免職もある」 と記した大阪の 「警告書」交付に警告を与え、少なくとも処分は停職3ヶ月以下にとどまらせることになります。そのことが最もうれしいことです。2015年に減給6ヶ月・停職1ヶ月処分を受けたときから、とりわけ、停職6ヶ月処分を受けた2007年から定年退職の201 1年まで私は免職の恐れに脅かされ続けてきたので、免職はない、最低限の収入があるということは、精神的にどんなにか救われると思うのです。
これで初めて、 私は減給以上の処分が取り消しになった人たちとほぼ同じ地点に立てることになり、 「起立を求める職務命令自体が違憲違法」 であることに主張の力点を移すことができます。
この判決を最高裁で覆させないよう、主張し働きかけをしていきたいと思います。NHKが報道したことは、世論を読むだろう最高裁への働きかけになったかも・・・と思います。


by asyagi-df-2014 | 2015-07-01 05:53 | 書くことから-労働 | Comments(0)

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