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原発問題-伊方原発3号機の「審査書」案了承を考える。

 原子力規制委員会の伊方原発3号機「審査書」案の了承について、考える。
 東京新聞は、その社説で、今回の了承について、「最大の疑問は今回も、有事の際の避難経路と手段である。」と、指摘する。
 このことについて、「伊方原発は半島の付け根にあり、そこから先には約五千人が住んでいる。その人たちに、事故を起こした原発に向かって、どう逃げろというのだろうか。大分側へ船で逃れるという案がある。混乱の中の海上避難は恐らく容易ではないだろう。避難計画が審査の対象になっていないのが、そもそもの間違いなのではないか。」とし、「思い出してもらいたい。なぜ新たな規制基準が必要になったのか。住民の命と暮らしを守るためである。それには、より広範な住民対話も欠かせない。」と、結論づけた。
 高知新聞は、「原発を推進する安倍政権は、新規制基準を『世界で最も厳しい』と安全性を強調する。しかし、福島の惨事を経験した国民には、『脱原発依存』を求める声が根強いままだ。この乖離(かいり)は政府や規制委と、国民の間にある安全性の捉え方の違いに起因していよう。」と、分析する。そして、政府と規制委員会の立場を、「『万が一にも』過酷事故を起こさない厳格さを求め、新規制基準を『合理性がない』と断じている。」とした福井地裁判決に置くべきだをする。そして、「そもそも、30キロ圏内に避難計画を義務付けなければならない施設が本当に必要なのか。再稼働以前に、国や規制委、四電が答えるべき疑問は多い。」と、まとめる。
 地元である愛媛新聞は、「事故への真摯(しんし)な反省がないままに規制委や電力会社が言『「安全』は、県民の『安心』にはつながっていない。県伊方原発環境安全管理委員会などでの議論を通じて、さらなる安全を追求するべきだ。拙速な判断は将来に禍根を残す。取り返しのつかない、あの悲劇を忘れてはならない。」と、説く。

 あらためて、愛媛新聞の指摘する「規制委の田中俊一委員長が『リスクはゼロではない』と繰り返し強調している通り、安全性の担保でも、再稼働の『お墨付き』でもないとくぎを刺しておきたい。」ということを確認する。

 以下、高知新聞・東京新聞、愛媛新聞の引用。







高知新聞社説-【伊方「合格」】原発への不安はなお強い-2015年05月21日


 「原発回帰」の流れが、いよいよ身近に迫ってきた。
 四国電力の伊方原発3号機に関し、原子力規制委員会は「新規制基準を満たしている」と結論付ける「審査書」案を了承した。事実上の審査合格である。保安規定などの認可や地元同意の手続きは残るが、早ければ今冬にも運転を再開する可能性が出てきた。
 福島第1原発事故後に強化されたとはいえ、規制基準が果たして安全を担保するといえるのか。多くの国民が不安を解消できない中での再稼働を、到底容認することはできない。
 原発を推進する安倍政権は、新規制基準を「世界で最も厳しい」と安全性を強調する。しかし、福島の惨事を経験した国民には、「脱原発依存」を求める声が根強いままだ。
 この乖離(かいり)は政府や規制委と、国民の間にある安全性の捉え方の違いに起因していよう。規制委の審査に合格した原発に対する、二つの司法判断がそれを浮き彫りにした。
 九州電力の川内(せんだい)原発について周辺住民らが再稼働の差し止めを求めた仮処分申し立てで、鹿児島地裁は新規制基準を「最新の科学的知見に照らした」と評価した。現時点での科学が求める規制に対応すれば、安全性を認める見解といえる。
 一方、関西電力高浜原発の再稼働を認めなかった福井地裁は、耐震設計の目安を超える地震が2005年以降、全国4原発で5回あった事実を指摘。「万が一にも」過酷事故を起こさない厳格さを求め、新規制基準を「合理性がない」と断じている。
 古里や生活を奪う事故を二度と起こしてはならない―。福島の教訓に照らすなら、世論が求める安全の基準が後者にあるのは明らかだろう。だが政府や規制委、電力会社から前者との差を埋め、不安を解消するだけの説明はいまだにない。
 尾﨑知事は再稼働の条件として「高知県の同意」まで求めていないが、県内でも四万十市や高岡郡梼原町の一部が伊方原発から50キロ圏内に入る。
 過酷事故が起これば、気象条件によっては避難を余儀なくされる事態も想定される。何よりも、日常生活で懸念を抱き続けることになろう。
 そもそも、30キロ圏内に避難計画を義務付けなければならない施設が本当に必要なのか。再稼働以前に、国や規制委、四電が答えるべき疑問は多い。


東京新聞-伊方原発「適合」 課題は置き去りのまま-2015年5月22日


 四国電力伊方原発3号機(愛媛県)が、原子力規制委員会から新規制基準に「適合」と判断された。事故時の住民避難については、今回も置き去りだ。従って、再稼働の“お墨付き”とは呼び難い。

 九州電力川内原発(鹿児島県)、関西電力高浜原発(福井県)、そして伊方原発と、3・11以前への回帰がそれこそ粛々と、進んでいるように感じてしまう。

 福井地裁は先月、高浜原発再稼働差し止めの仮処分決定で、地震の揺れに対する規制委の評価の甘さを指摘した。伊方原発の場合も、そうではないか。

 伊方原発の敷地のすぐ北側の海底を中央構造線が走っている。関東から九州まで、長さ千キロに及ぶ、日本最大級の断層帯だ。阪神大震災も、その近くで発生した。

 一八五四年十二月二十三日から翌日にかけ、安政東海(M8・4)、安政南海(M8・4)の巨大地震が連動して発生した。南海トラフ巨大地震だ。二日後に、伊方原発がある佐田岬半島西端を震源とする伊予西部地震(M7・3~7・5)が起きている。

 南海トラフと中央構造線。原発の近くに並行して巨大地震の巣が横たわる。ところが規制委は、四国電力が想定される地震の揺れを当初より一割強引き上げただけで、よしとした。住民の不安は、それで解消されるのか。

 最大の疑問は今回も、有事の際の避難経路と手段である。

 伊方原発は半島の付け根にあり、そこから先には約五千人が住んでいる。その人たちに、事故を起こした原発に向かって、どう逃げろというのだろうか。

 大分側へ船で逃れるという案がある。混乱の中の海上避難は恐らく容易ではないだろう。

 避難計画が審査の対象になっていないのが、そもそもの間違いなのではないか。

 思い出してもらいたい。なぜ新たな規制基準が必要になったのか。住民の命と暮らしを守るためである。それには、より広範な住民対話も欠かせない。

 電力会社だけではなく、住民の不安や疑問も十分くみ取った上で、判断を試みるべきではないか。

 審査書案公表後の住民説明会なども、限られた人々を対象とした通り一遍のものとしか思えない。司法の指摘に耳を傾ける気配もない。まるで3・11前である。

 「適合」判断三例目。規制委自身、その審査姿勢を一度よく、振り返ってみるべきではないか。


愛媛新聞社説-伊方原発審査書案了承 再稼働の「お墨付き」ではない- 2015年05月21日

 原子力規制委員会が四国電力伊方原発3号機について、新規制基準に適合すると認める「審査書案」を了承した。四電は年内の再稼働を目指すとしている。
 しかし、新規制基準は、東京電力福島第1原発事故を受けて設けられた、原発の安全性を高めるための最低限のハードルの一つにすぎない。規制委の田中俊一委員長が「リスクはゼロではない」と繰り返し強調している通り、安全性の担保でも、再稼働の「お墨付き」でもないとくぎを刺しておきたい。
 四電は規制委の指摘を受けて、想定される最大規模の揺れ(基準地震動)を申請時の570ガルから最大650ガルに引き上げ、耐震補強工事などの追加対策を進めてきた。
 ただ、引き上げられた数値でも「不十分」とする専門家がいる。想定を上回る地震は過去に全国で何度も発生し、基準地震動も引き上げられてきた。650ガルは現時点での知見に基づく基準であり、委員会がそれ以上の規模の地震が絶対に起こらないと保証してくれたわけではない。
 また、先に了承された関西電力高浜原発3、4号機(福井県)については、福井地裁が先月、再稼働を認めない仮処分決定を行い、関電が申し立てた仮処分の執行停止も今月18日に却下した。福井地裁は新規制基準自体「合理性を欠く」と指摘している。示された懸念は当然、伊方原発にも当てはまる。
 地元同意という大きなハードルもある。地元の範囲をめぐっては、特に福島事故以降「広げるべきだ」との要望が周辺自治体から強くなっている。避難計画策定が義務付けられた30キロ圏でも不十分という意見も根強い。
 九州電力川内原発1、2号機では、周辺自治体の不安をよそに、立地する薩摩川内市と鹿児島県だけの同意で「地元の同意」とした。同様に、八幡浜市や大洲市など伊方原発の周辺自治体住民の意向が無視されるようなことがあってはならない。
 県民の拒否反応も依然として大きい。愛媛新聞が2~3月に行った世論調査では、69.3%の県民が再稼働に否定的で、福島事故以降8回の調査で最も高くなった。安全性への不安を訴える回答も89.5%に達した。
 これまで、再稼働について「白紙」としてきた中村時広知事にとっても、無視できない数字だろう。事故への真摯(しんし)な反省がないままに規制委や電力会社が言う「安全」は、県民の「安心」にはつながっていない。県伊方原発環境安全管理委員会などでの議論を通じて、さらなる安全を追求するべきだ。拙速な判断は将来に禍根を残す。取り返しのつかない、あの悲劇を忘れてはならない。


by asyagi-df-2014 | 2015-05-22 11:55 | 書くことから-原発 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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