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内橋克人を読む。(2)

「世界」2015年1月号の内橋克人の「アベノミクスは『国策フィクション』である」から、安部晋三政権への「否」を考える。2回目は、労働問題に関わって。

 内橋は、こう書き進める。

「ある特定の地域を指定し,その地域内で大胆な規制緩和を先行実施する。安部晋三首相が自ら主導し、『世界で一番ビジネスのしやすい環境を作る』と執念を燃やす『国家戦略特区』構想が現実のものになろうとしている。」

 内橋は、この雇用特区で起きることは次のものであると、説明する。

「この中では「構想の核となる『雇用特区』では従業員の解雇事由、労働時間の上限規制の緩和・撤廃、残業代ゼロ制度の導入・・・・と、経団連をはじめとする経済書きの宿願が達せられる。特区内に本社をおけば,全国どの地方支店でも同じ『例外権』を行使できる。」

 したがって、内橋は、このことを鋭く批判する。

「だが、日本国憲法は『労働条件法定主義』(二七条二項)を原則としてきた、この原則に基づいて戦後早い時期に騒動基準法が生まれた。労基法、労働組合法、労働関係調整法の三法は『普通立法』である。この普通法に例外権の穴を穿つ雇用特区が、大都市圏に忽然と姿を現す。労働基準法で守られる人と、そうでない人を分かつ労働の分断・解体が人びとの意表を突く政治手法で進む。『憲法番外地』のその先に国民生活の安寧は可能だろうか。」

 また、内橋は、この労働問題にからめて、経済団体とそれにすり寄る安部晋三政権を強く批判する。

「すでに形骸化しつつあるとはいえ、一日八時間・週四〇時間と定めた『法定労働時間』(労基法)の縛りは現存する。これを超える労働には残業代という対価を支払わねばならない。また従業員の解雇を縛る『解雇ルール』の遵守が求められる。すなわち真に人員削減に迫られてのことか、解雇を避ける努力はなされたのか、解雇対象者の選定は合理的かなど、『判例』に則る要件が満たされていなければならない。
 言葉を換えていえば、被雇用者は『合理的な理由なしに解雇されない』権利(労働契約法)をもつ。そこに、『労働条件法定主義』の神髄があった。それらが廃棄され、金銭的解決などの姑息な術を代償に、『企業行動の自由=解雇の自由』が拡大される。経団連はじめ雇用側が抱いてきた長年の欲望に安倍政権は一も二もなく即応の構えだ。筆者には異様な光景と写る。アベノミクスによって日本社会の格差拡大は必然となる。国家戦略特区は一例に過ぎない。」

 安部晋三政権の国家戦略特区等を理由とした「成長戦略」は、日本社会にかってない格差社会をもたらす。


by asyagi-df-2014 | 2014-12-14 13:00 | 本等からのもの | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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