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原発問題-田中俊一委員長(2014年11月5日)の記者会見から

日本火山学会原子力問題対応委員会は、 2014年11月2日、「巨大噴火の予測と監視に関する提言」を行った。
特に、「噴火警報を有効に機能させるためには,噴火予測の可能性,限界,曖昧さの理解が不可欠である.火山影響評価ガイド等の規格・基準類においては,このような噴火予測の特性を十分に考慮し,慎重に検討すべきである.」という提言については、原子力規制委員会に大きな不満(影響)を与えたと見え、2014年11月5日の原子力規制委員会田中俊一委員長の記者会見の中で、このことに関してのいささか主観的すぎる反論が行われている。
 この会見の模様については、原子力規制委員会のホームページの「原子力規制委員会記者会見録」を参照されたい。
 この田中委員長の会見について、「抗議声明」というかたちで、批判がなされている。
 ここでは、この「抗議声明」を参考に、田中委員長の記者会見での発言を批判する。

 第一番目に、「火山の専門家の警告を無視していたのは原子力規制委員会」ということについてである。
 記者会見での発言の引用の一部は、次の通りである。

「だから、火山学会が今さらのごとくそんなことを言うのは、私にとっては余り本意ではないですね」
「だから、逆に言うと、とんでもないことが起こるかも知れないということを平気で言わないで、それこそ火山学会を挙げて必死になって夜も寝ないで観測をして、我が国のための国民のために頑張ってもらわないと困るんだよ。」
「言葉尻を捉えてというつもりはないのですが、火山学会が今さらそんなことを言うのは私にとっては本意ではないというのは、少し言い過ぎなのではありませんか。」という質問に対して、「そんなことないと思いますよ。国会で、私が1回このカルデラ噴火のことでいろいろ議論があって、そこから何か急にカルデラ噴火がどうのこうのと騒ぎ出したけれども、そんなに日本にとって非常に極めて大変な1億2,000万人も死んでしまうような状況が起こる自然現象があるのだということであれば、それが相当の確率で起こるということであれば、もっと早急に発信して来るべきではないでしょうか。それが科学者の社会的責任なのですよ。そういう点で、私は委員長としてではなくて、科学者としてそういうところを本意ではないと思うのです。」


 このことについて「抗議声明」は、次のような反論をする。
①原子力規制委員会は、委員にも原子力規制庁にも火山の専門家が一人もいない状況で、火山審査から専門家を排除し、専門家による警告を無視し続けたという事実があること。
②川内原発の適合性審査では、ヒアリングの機会すらなく、審査書案が出た後8月25日になってようやく、火山モニタリング検討チームが開催され、火山学会原子力問題対応委員会石原和弘委員長、火山噴火予知連絡会藤井敏嗣会長、火山ガイド策定時に唯一、専門家としてヒアリングを受けた東大地震研中田節也教授らが招へいされたに過ぎないという事実でしかないこと。

 実は、火山モニタリング検討チームは、8月25日の会議で、川内原発の火山審査について、次のような指摘を行っている。
①運用期間中の破局的噴火の可能性が十分小さいとする原子力規制委員会の判断に疑義があること。
②モニタリングにより噴火の予知・予測は可能であるとする九州電力の主張に根拠がない
こと。
③マグマ供給の変化が地表のモニタリングでは把握できない可能性があり、地下のモニタリングが必要であること。
④カルデラ火山のモニタリングが事業者の手に負えるものではないこと。
⑤前兆が現れるのはせいぜい数ヶ月前であり、核燃料搬出の時間的余裕をもって予測することなど不可能であること。

 この指摘と、「抗議声明」の批判は、規制委員会委員長の会見内容を遙かに超えた整合性を持っている。

 第二番目に、「3ヶ月で核燃料の搬出はできる」ということについてである。
 記者会見での発言の引用の一部は、次の通りである。

「5年前に予測するというのは無理だと皆さんおっしゃっているわけで、そこをできるというのが安全神話なのではないかという批判があるわけです。」という質問に対して、「放射能に汚染されると言うけれども、どの程度の汚染の広がりかということですよ。別にシミュレーションすることもないでしょう。核実験とかいろいろな核爆弾とかそういう経験もあるわけですから、冷静によく考えたらどうですか。」
「これまで伺っていた話だと、年単位、通常であれば5年程度と伺っていたのですけれども、その3ヶ月というのは、具体的にどのようにやったら3ヶ月でできるということなのでしょうか。」とい
いう質問に対して、「余り検討は細かくしたことはないけれども、例えば、そういった使用済燃料をどういうふうに見るかということもありますけれども、国が破滅するような状況のときに、どういうことをやっておくべきだということで、3ヶ月の期間をどう活用したらいいかというのはこれからの課題かも知れないですけれどもね。」

 このことについて「抗議声明」は、次のような反論をする。
①根拠もなく答弁しているに過ぎないこと。
②取り出して3ヶ月では、温度だけでなく放射能のレベルも高く、輸送容器に移すことはできないし、仮に強引に行ったとしても、そのための輸送容器を開発しなければなりません。何より、搬出先を3ヶ月で選定するのはできないこと。
③「放射能に汚染されると言うけれども、どの程度の汚染の広がりかということですよ。別にシミュレーションすることもないでしょう。核実験とかいろいろな核爆弾とかそういう経験もあるわけですから、冷静によく考えたらどうですか。」と述べ、核燃料が燃えても、汚染はたいしたことはないと開き直っただけであること。

 この反論で充分であるが、「国が破滅するような状況のとき」という委員長発言を,規制委員会は、再稼働問題でも根本的な発想と基本とすべきである。

 第三番目に、「火山影響評価ガイドの見直し」についてである。
 このことについては、日本火山学会原子力問題対応委員会の「巨大噴火の予測と監視に関する提言」を、規制委員会として、真摯に受け散ることが必要との立場に立つ必要がある。

 以下、「提言」と「抗議声明」の引用。






巨大噴火の予測と監視に関する提言


 巨大噴火の予測や火山の監視は,内閣府の大規模火山災害対策への提言(平成25年5月16日)や,原子力発電所の火山影響評価ガイド(平成25年6月19日)等により,重要な社会的課題となっている.

• 巨大噴火(≥VEI6)の監視体制や噴火予測のあり方について
‣ 日本火山学会として取り組むべき重要な課題の一つと考えられる.
‣ 巨大噴火については,国(全体)としての対策を講じる必要があるため,関係省庁を含めた協議の場が設けられるべきである.
‣ 協議の結果については,原子力施設の安全対策の向上等において活用されることが望ましい.

• 巨大噴火の予測に必要となる調査・研究について
‣ 応用と基礎の両面から推進することが重要である.
‣ 成果は,噴火警報に関わる判断基準の見直しや,精度の向上に活用されることが重要である.

• 火山の監視態勢や噴火警報等の全般に関して
‣ 近年の噴火事例において表出した課題や,火山の調査・観測研究の将来(技術・人材育成)を鑑み,国として組織的に検討し,維持・発展させることが重要である.
‣ 噴火警報を有効に機能させるためには,噴火予測の可能性,限界,曖昧さの理解が不可欠である.
火山影響評価ガイド等の規格・基準類においては,このような噴火予測の特性を十分に考慮し,慎重に検討すべきである.

日本火山学会原子力問題対応委員会 平成26年11月2日(日)

11月5日原子力規制委員会田中俊一委員長の記者会見での発言について
抗 議 声 明
~川内原発の審査は許可を取消し、火山影響評価ガイドの見直しを~

                          原子力規制を監視する市民の会



 11月5日の記者会見における原子力規制委員会田中俊一委員長の発言は、巨大
噴火による被害を防ぐため、科学者の専門的知見に基づいて発せられた火山影響
評価ガイドの見直しを求める火山学会の提言を無視するばかりでなく、今まで火
山学者や市民団体がこの問題に関して警告を発し続けてきたという経緯(文末表
参照)を無視するものであり、原子力災害を防止するという自らの責務を放棄す
るものです。
 これに強く抗議し、発言の撤回と火山学会及び火山の専門家に対する謝罪を求
めます。
 併せて、川内原発の火山審査について、日本火山学会の専門家からヒアリング
を行うこと、九州電力の設置変更申請の許可を取り消した上で、専門家を交え
て、火山影響評価ガイドの見直しを実施することを求めます。

◆火山の専門家の警告を無視していたのは原子力規制委員会の側
 田中俊一委員長は、日本火山学会の提言について、「火山学会が今更のごとく
そんなことを言うのは、私にとっては本意ではない」と述べ、さらに、「極めて
大変な状況が起こる自然現象が相当の確率で起こるということであれば、もっと
早急に発信して来るべきではないでしょうか。それが科学者の社会的責任なので
すよ」、「とんでもないことが起こるかも知れないということを平気で言わない
で、それこそ火山学会を挙げて必死になって夜も寝ないで観測をして、我が国の
ための国民のために頑張ってもらわないと困るんだよ。」などと述べました。
火山の専門家は、新聞やテレビ、科学雑誌他のメディアを通じ、早くから巨大噴
火の前兆を捉えることの困難さを指摘し、噴火の予知・予測を前提とした火山ガ
イドの問題点を指摘し続けてきました。日本火山学会が原子力問題対応委員会を
立ち上げたのは4月29日であり、既に予知・予測の困難等の問題を指摘していま
した(文末表)。
 遡れば、火山影響評価ガイドができる以前の2013年5月には、内閣府の検討会
において提言をまとめ、「巨大噴火については知見も研究体制も不十分」とした
うえで、「巨大噴火のメカニズムや国家存続方策の研究体制の整備」の必要性を
指摘していました。
 「原子力規制を監視する市民の会」等の市民団体も、川内原発の適合性審査に
際して、専門家を入れて検討すべきだと繰り返し要請してきました。原子力規制
委員会は、委員にも原子力規制庁にも火山の専門家が一人もいない状況で、火山
審査から専門家を排除し、専門家による警告を無視し続けたのです。
 川内原発の適合性審査では、ヒアリングの機会すらなく、審査書案が出た後8
月25日になってようやく、火山モニタリング検討チームが開催され、火山学会原
子力問題対応委員会石原和弘委員長、火山噴火予知連絡会藤井敏嗣会長、火山ガ
イド策定時に唯一、専門家としてヒアリングを受けた東大地震研中田節也教授ら
が招へいされました。
 この場で専門家らは、川内原発の火山審査における、運用期間中の破局的噴火
の可能性が十分小さいとする原子力規制委員会の判断に疑義があること、モニタ
リングにより噴火の予知・予測は可能であるとする九州電力の主張に根拠がない
こと、マグマ供給の変化が地表のモニタリングでは把握できない可能性があり、
地下のモニタリングが必要であること、カルデラ火山のモニタリングが事業者の
手に負えるものではないこと、前兆が現れるのはせいぜい数ヶ月前であり、核燃
料搬出の時間的余裕をもって予測することなど不可能であること等々の指摘を行
いました。さらに、火山影響評価ガイドの見直しも提起しました。
 これらをことごとく無視し、放置したのは、原子力規制委員会の側です。
 これに業を煮やし、日本火山学会が、火山ガイドを見直すべきとの提言を行っ
たのは、まさに「科学者の社会的責任」を果たしたものと言えるでしょう。それ
を「今更のごとくそんなことを言う」「もっと早急に発信してくるべき」とは、
あまりにも自身の対応を顧みない言動ではないでしょうか。 火山の専門家は、
巨大噴火による甚大な被害を防ぐためにも、国を挙げてモニタリングをしっかり
やることを提言しています、それでも、前兆が出るのはせいぜい数か月前かもし
れず、その場合、人の避難は間に合っても、核燃料の避難は間に合わないかもし
れません。ゆえに、原子力規制委員会に対し、火山影響評価ガイドを見直すよう
要請しているのです。

◆根拠も示さずに「3ヶ月で核燃料の搬出はできる」と
 「核燃料の搬出に間に合うのか」という記者の問いに対する回答も驚くべきも
のでした。
 これまでは、田中俊一氏は、「冷却に5年かかる」と自ら発言していました。
今回は、驚いたことに、
「3ヶ月前ということが分かれば、3ヶ月前にすぐ止めて、その準備をして、容
器に少しずつ入れて遠くに運べばできますよ」 と発言しました。しかし別の記
者にその具体的な中身を問われると、「3ヶ月というのもどういう根拠で言って
いるか分かりませんけれども、そういうときにはそれなりに急いでやるというこ
ともあるし、いろいろな方法を考えなければいけないと思いますよ。」と根拠も
なく答弁しました。
 取り出して3ヶ月では、温度だけでなく放射能のレベルも高く、輸送容器に移
すことはできないし、仮に強引に行ったとしても、そのための輸送容器を開発し
なければなりません。何より、搬出先を3ヶ月で選定するのはできないでしょう。
 さらに、「放射能に汚染されると言うけれども、どの程度の汚染の広がりかと
いうことですよ。別にシミュレーションすることもないでしょう。核実験とかい
ろいろな核爆弾とかそういう経験もあるわけですから、冷静によく考えたらどう
ですか。」と述べ、核燃料が燃えても、汚染はたいしたことはないと開き直った
のです。

◆川内原発の審査は許可を取消して火山影響評価ガイドの見直しを
 火山学者は巨大噴火のリスクについてとやかく言わず、黙って観測だけやって
おけといわんばかりの田中俊一氏の発言は、およそ科学的でも技術的でもなく、
原子力の安全規制のトップとしての見識や資質を疑わざるをえないものです。科
学者の警告を無視し、原子力の規制を厳格に行うという自らの責任をも果たして
いません。謝罪した上で職を辞していただきいと思います。
 原子力規制委員会は、審査書案のパブリック・コメントに対する考え方など
種々の文書において、巨大噴火の時期や規模の予測は困難であること、ドルイッ
ト論文は一事例にすぎないことを認めています。田中俊一氏の発言は、原子力規
制委員会のこうした見解からも逸脱するものです。
 モニタリングと核燃料搬出の方針については、今後、保安規定の審査で検討さ
れることになっていますが、九州電力は具体的中身を出せずにいます。
 他方で九州電力は、7月1日、9月30日の県議会において、「巨大噴火の前兆は
数十年前に現れるので核燃料搬出は可能だ」との発言を行っています。この九州
電力の誤った見解が修正されることなく、県議会はあまりにも拙速に11月7日、
再稼働に同意の決議を行ったのです。川内原発の火山審査については、許可を取
消し、火山学会の提言に従い、火山影響評価ガイドの見直しを実施すべきです。
それまでは再稼働をすべきではありません。

※現在までの経緯
2013年5月16日 大規模火山災害対策への提言(内閣府「広域的な火山防災対策に
係る検討会」)
2013年6月28日 火山影響評価ガイド
2013年7月16日 川内原発適合性審査会合(川内原発の審査開始)
2013年12月22日 毎日新聞「原発リスク:巨大噴火の影響大…泊、川内など 学者
が指摘」
2014年1月 雑誌科学1月号 特集 日本を襲った巨大噴火
2014年4月29日 日本火山学会原子力問題対応委員会会合
2014年5月16日 川内原発適合性審査会合(火山影響評価について最後の検討)
2014年5・6月 新聞各紙・雑誌・テレビ報道等で火山の専門家が警告
2014年7月16日 川内原発適合性審査 原子炉設置変更申請の審査書案確定
2014年8月25日 火山モニタリング検討チーム第一回会合
2014年9月2日 火山モニタリング検討チーム第二回会合
2014年9月10日 川内原発適合性審査 審査書確定 原子炉設置変更申請許可
2014年10月21日 川内原発適合性審査 火山モニタリングを含む保安規定の審査開始
2014年11月3日 日本火山学会による提言
2014年11月5日 田中俊一・原子力規制委員長、日本火山学会の提言に不快感
2014年11月5日 鹿児島県臨時議会はじまる。複数の議員が、巨大噴火の予知につ
いて質問
2014年11月7日 鹿児島県議会において、川内原発再稼働同意

11月5日(火)原子力規制委員会記者会見録
https://www.nsr.go.jp/kaiken/data/h26fy/20141105sokkiroku.pdf
11月5日(火)田中原子力規制委員長会見発言補足及び訂正資料
https://www.nsr.go.jp/kaiken/data/h26fy/20141105siryo.pdf

原子力規制を監視する市民の会 
東京都新宿区下宮比町3-12明成ビル302号
問合せ090-8116-7155(阪上)


by asyagi-df-2014 | 2014-11-10 18:01 | 書くことから-原発 | Comments(0)

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