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本からのもの-琉球独立論

著書名;琉球独立論
著作者;松島泰勝
出版社;ハジリコ株式会社

 この本から受け取ったものは、沖縄(琉球)の未来に関わってのなぜ今独立なのかということについてでした。
 私自身はこれまで、ここ数年の沖縄の独立という言葉については、この本の中で批判されている新崎盛暉の言う「居酒屋」的放論的な物ではないかとどこかでは考えてきました。 
 松島は、沖縄の独立を理論的に説明します。 何故、沖縄が独立しなければならないかについて。
 なお、松島は、「固有名詞」としての沖縄を琉球と位置づけています。

 まず、沖縄の現状については、次のように分析します。

 第1に、琉球では「復帰」後四〇年以上も日本との地域格差問題が続いているという琉球経済の現状があること。
 第2に、琉球が「基地の島」と呼ばれることが「異常」な状況であること。
 第3に、上記のことについて日本人は恬として恥じ入ることがないこと。

 また松島は、独立に関わって、むしろ現状を維持することのほうが弊害を生み出していることについて次のように説明します。

「誤解を恐れずにいうなら、琉球が日本の一部である限りにおいて、日本政府の措置は日本国という国家の論理からすると『正しい』わけです。また、『本土の』の大企業による琉球における経済搾取も、大都市を抱える自治体以外の大半の地方と同様の構造であり特殊なものではないといわれればそれまでです。まり、琉球固有の『民族問題』は無視され、他の地方自治体と同列に位置づけられている。そして、だからこそ琉球にとっては日本国の一自治体であること自体が深刻な問題なのです。」

 さらに、このような現在の沖縄の状況を「植民地」として位置づけ、次のように説明します。

「オスプレイ配備に対して、琉球のすべての県市町村議会が反対決議をし、全自治体の首長が反対しているにも関わらず、配備を強行する行為は、琉球人を還元不可能な他者として認識し、宗主国の絶対的な軍事的優位性を強化しようとするものだといえます。・・・琉球は、形式上、沖縄県という日本の一自治体ですが、琉球固有の領土は奪われ、琉球人の政治的地位を決める自己決定権の行使も認められませんでした。つまり、琉球は植民地です。」
※この植民地主義の定義を、「植民地主義は帝国主義全般の特別な一形態と見なせるものだが、その核心は植民地された人民を自らに還元不可能な他者として捉え、かつ宗主国のS絶対的な軍事的優位性を前提とした統治であったという点にある」(アルノ・ナンタ)に求めています。

 こうした状況の中で、沖縄人が、次のような考え方にたどり着くのは、当然の流れであるとします。

 第1に、琉球が日本国の一部であることによって多くの犠牲を背負わされるのならば、自らの国家を作るという選択肢を琉球人が真剣に考えても当然なのではないかということ。
 第2に、在琉米軍は、日米地位協定によって守られている。こうした環境下における米軍の琉球人に対する所業を、俗に「奴隷扱い」という。この二一世紀に誰が奴隷でいたいなどと思うのかということ。

 したがって、松島は、最終的に、沖縄の独立が必要な理由を次のようにまとめます。

 第1に、琉球人は、ごく一般的な意味で一つの「民族」として定義される必要かつ充分な要件を満たしており、固有の歴史を育んできた一つの民族国家であること。
 第2に、琉球史、特に、薩摩藩の侵略から現在に至る近現代史は琉球にとって苦難、災厄の歴史であり、それ自体が「琉球独立」の最大の根拠となっていること。
 第3に、植民地としての琉球から脱却する必要があること。 
 第4に、琉球の未来に関わって、現状の維持こそが「弊害」であること。
 第5に、琉球は、二度と他者の戦争に巻き込まれたくないということ。

 松島のこうした考え方をについては、2010年4月6日の人種差別撤廃委員会最終見解の「21.ユネスコは沖縄の固有の民族性、歴史、文化、伝統並びにいくつかの琉球語を認めている(2009年)ことを強調するとともに、委員会は、沖縄の特色に妥当な認識を示そうとする締約国の姿勢を遺憾に思い、沖縄の人々が被る持続的な差別について懸念を表明する。さらに、委員会は、沖縄における軍事基地の不均衡な集中は、住民の経済的、社会的及び文化的権利の享受に否定的な影響があるという現代的形式の差別に関する特別報告者の分析を改めて表明する(第2条及び第5条)。」という見解が実証しています。

 最後に、松島は、「琉球独立の土台となるのは『自治』という理念」であるとし、この自治の理念について、「日本による侵略・併合と植民地化の清算を掲げた『琉球独立論』は何よりも内なる『帝国主義的感性』を克復したものでなければなりません。そして、それを社会制度的に担保するための鍵となるのが『自治』という理念です。」と、しっかり押さえています。


by asyagi-df-2014 | 2014-10-31 18:35 | 本等からのもの | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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