労働問題-沖縄の非正規問題を考える
2014年 09月 15日
沖縄における非正規労働者の問題を、琉球新報の社説から考える。
琉球新報は、このことについて「今ほど広がったことはかつてなかったのではないか。」との認識を示す。
沖縄の実態は、「2013年度の新規求人のうち、非正規雇用は71・7%に及ぶ。全国平均は59・5%だから12ポイントも高い。」とされ、その実態は大きな課題となっている。
こうした沖縄の状況は、「県内で正社員の求人が少ないのは産業構造も要因の一つ」、「県内企業は利益率が低いから、人件費抑制の動因も働く」、といった構造的問題として捉えられる。
この結果、「現状の放置は、人材、特に若年層の人材の活用が乏しい社会を招いてしまう。その意味で社会的にも大きな損失だ。」と。
また、「非正規は雇用関係が不安定だから、職種に応じた職業能力の形成が難しい。沖縄は、若年層で失業率が高く、非正規が多い特徴がある。職業能力形成が特に重要な若年層で、その形成が難しいのは沖縄社会にとっても損失だ。」とも。
非正規労働者の問題は、特に、若年者の非正規労働化は、「雇用の流動化」といった言葉に乗せられるのではなく、社会の損失に繋がるという認識がまずは必要である。
以下、琉球新報の引用。
琉球新報社説-求人7割非正規 雇用のミスマッチ解消を-2014年9月12日
県内における雇用のミスマッチ(不適合)は数十年前から指摘される古くて新しい課題だが、今ほど広がったことはかつてなかったのではないか。
県内の公共職業安定所に寄せられた2013年度の新規求人のうち、非正規雇用は71・7%に及ぶ。全国平均は59・5%だから12ポイントも高い。近年改善されたとはいえ、失業率の高さは依然、沖縄の大きな課題だ。一方で人手不足が深刻化しているのも事実である。雇う側と雇われる側で希望する雇用形態に食い違いがあることが原因だろう。
現状の放置は、人材、特に若年層の人材の活用が乏しい社会を招いてしまう。その意味で社会的にも大きな損失だ。ミスマッチを改善するよう行政の強力な働き掛けが望まれる。企業側の取り組みにも期待したい。
県内で正社員の求人が少ないのは産業構造も要因の一つだ。県内は3次産業の割合が全国より格段に高く、県内総生産の9割に及ぶ。特に観光関連などは繁忙期とそうでない時期の隔たりが比較的大きく、繁忙期のみ雇うという形態が生じる。加えて、県内企業は利益率が低いから、人件費抑制の動因も働く。
他方、求職者の側は、非正規を望む人も一部いるとはいえ、やはり正社員を希望する人が圧倒的に多い。賃金や保険など待遇面での違いを考えれば当然だろう。
結果として、正社員を望みながら不本意に非正規雇用で働くか、失業しているかの二者択一になりがちだ。非正規は雇用関係が不安定だから、職種に応じた職業能力の形成が難しい。沖縄は、若年層で失業率が高く、非正規が多い特徴がある。職業能力形成が特に重要な若年層で、その形成が難しいのは沖縄社会にとっても損失だ。
半面、建設業や福祉、飲食業などで人手不足が深刻化している。人手が足りないので新規出店や業務受注ができないという話は多い。「人手不足倒産」の危険すらささやかれている。
ミスマッチの解消が求人・求職の双方で求められるのは間違いない。全国的にもさまざまな業種で非正規の正社員化が進んでおり、県内の事業所が人材を奪われるのを避ける意味でも、こうした流れに遅れを取るのは避けたい。人手不足から待遇改善が図られる自然調整を待つのでなく、先手を打った取り組みも求められよう