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札幌高裁は、民法や戸籍法の規定が同性婚を認めないことを、違憲だと判断した。(1)

 札幌高裁は、2024年3月14日、民法や戸籍法の規定が同性婚を認めないことは、日本国憲法に違反する、と判断した。
 また、札幌高裁は、「付言」で、次のことを求めている。
1.同性間の婚姻を定めることは、国民に意見や評価の統一を求めることを意味しない。根源的には個人の尊厳に関わる事柄であり、個人を尊重するということだ。
2.同性愛者は日々の社会生活で不利益を受け、自身の存在の喪失感に直面しているのだから、その対策を急いで講じる必要がある。
3.喫緊の課題として、同性婚につき、異性婚と同じ婚姻制度を適用することを含め、早急に真摯な議論と対応をすることが望まれる。
まさに、この札幌高裁判断は、「私は私のままで、この国で胸を張って生きていいんだと思えました」(朝日新聞)、との切実な声に答えようとするもの。

 この日の札幌高裁判決について、朝日新聞は、次のように報じた。

 朝日新聞は2024年3月15日、「同性婚訴訟、高裁判決に喜びの声 『変わっていく、変えていける』(新谷千布美、上保晃平)」、と次のように報じた。-2024年3月15日
1.「私は私のままで、この国で胸を張って生きていいんだと思えました」
2.14日、民法や戸籍法の規定が同性婚を認めないことを、札幌高裁は違憲だと判断した。判決後の集会で、原告の一人、中谷衣里(なかやえり)さん(32)は涙ながらに喜びを語った。
1.原告側が、今回の違憲判決で画期的だったと評価したのは、「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立する」などと婚姻の自由を定めた憲法24条1項についての判断だ。判決は、この条文が同性婚も保障していると認定した。
2.さらに、同性婚が認められていない現状は、同性愛者がアイデンティティーの喪失感を抱く事態を招いているなどとも指摘。そのうえで、民法などの規定が同条違反だと結論づけていた。
3.憲法24条1項について、一審の札幌地裁判決は「異性婚について定めたものであり、同性婚について定めるものではないと解するのが相当」としていた。違憲判決を出した名古屋地裁でも、同様の判断がなされていた。
4.これまでの判決は、家族として生活する法的な保護が無いことに焦点を当てていた。2022年の大阪、東京両地裁判決では、同性カップルの法的承認の手段として、婚姻制度と別の類似制度を創設する方法もあるとしていた。
(「別制度は『二級』と位置づけられる」)
1.こうした別制度の創設について、札幌高裁での控訴審で、弁護団は「同性カップルの関係や同性愛者の存在自体が『二級』であると位置づけられ、差別が固定化される」と指摘した上で、同性カップルの尊厳が著しく損なわれると訴えていた。
2.同性カップルのパートナーシップ制度を導入している自治体は増えており、道内では札幌市や旭川市などで施行されている。ただ、広域自治体の北海道は制度を導入しておらず、居住地が変われば通用しないといった課題もあった。
3.今回の札幌高裁判決は、24条1項について「旧憲法下の家制度の制約を改め、対等な当事者間の自由な意思に基づく婚姻を定める趣旨」だと指摘した。
(高裁「目的をふまえて解釈」)
1.判決は、「両性」という言葉が憲法の制定当時、「同性間の婚姻までは想定されていなかった」とするものの、憲法や法律の解釈をする場合には「文言や表現のみではなく、その目的とするところを踏まえて解釈する」ことが一般的だとして違憲の判断を導いた。
2.中谷さんは、これまでの地裁判決で「(24条1項は)異性婚について定めたもの」といった説明を聞くたび、「私や周りにいる同性同士のカップルがいないようなものにされていると感じていた」と振り返る。「今回の判決には本当にはげまされた」と笑顔を見せた。
(最高裁へ上告する方針)
1.弁護団も「これまでの判決の中で最も進んだ判決だった」と評価。
2.判決が、同性婚の制度を定めることを「喫緊の課題」と付言したことに触れ、「法改正に、もはや一刻の猶予もないことを指し示すもの」とする声明も出した。
3.原告側は今後、最高裁へ上告する方針で、弁護団の綱森史泰弁護士は「ただちに国会が立法をしなければいけないと言い切ってほしい。上告して強調したい」と話した。
(「変えていける 希望を証明」)
1.札幌高裁の判決後に、札幌市内のホテルで開かれた集会。原告の国見亮佑さん(49、仮名)は判決文を見つめて喜びをかみ締めた。
2.「すごいことが書いてあるんですよ。ここに」
3.斎藤清文裁判長が判決内容を説明する間、涙をこらえきれなかった。「誰が聞いても違憲だと言っているなって……」
4.パートナーのたかしさん(52、同)は「いま思うと、提訴からの5年間で自分はかなり(心が)削られていたのかもしれない」と振り返る。「でも、この判決で自分の土台を取り戻せたような気持ちがする。絶望している暇なんかなくて、本当にこれから変わっていく、変えていけるという希望を証明した判決だと思います」
5.亮佑さんは、中学3年で同性愛を自覚。大学卒業後、母親に「話がある」と手紙を出した。母親の反応は「心配しないで大丈夫だからね」。22年前にたかしさんと交際を始めた。
6.この日の高裁判決は、同性婚を認めない民法や戸籍法の規定を違憲とした一方、「国会が立法措置を怠っていたと評価することはできない」と国への損害賠償請求は棄却した。ただ、「同性婚を定めることは、国民の意見の統一を求めることを意味しない。根源的には個人の尊厳に関わる事柄であり、喫緊の課題として、早急に真摯(しんし)な議論と対応をすることが望まれる」と付言した。
7.2人は同性婚の制度化を目指しているが、亮佑さんは「正直、国会議員が同性婚の制度をつくってくれるとは思えない」と話す。「だから司法の役割は本当に大事。このままの勢いで最高裁に行けたらと思っています」
(「変わらないのは国会だけ」)
1.「自分が思っている以上に良い判決でいまだに信じられない」
2.原告の中谷衣里さんのパートナーで、自身も原告である30代の女性=札幌市=は、判決後の会見で声をはずませた。「裁判長の口からもう一回聞きたいぐらいです」と振り返った。
3.中谷さんと交際を始めてから15年以上経つ。雪解けの時期におそろいの靴を買うことが習慣だ。数年前、中谷さんが交通事故にあったときは不安になった。幸い軽傷で、中谷さん本人から「車にはねられた」と連絡が来たが、「これが大きな事故だったら連絡がきたかな、と……」と感じた。
4.5年前の2019年1月、中谷さんと2人で札幌市内の区役所に婚姻届を出した。受理されないとわかっていたが、裁判上の証拠とするための提出だった。
5.当時は「どうせ受理されない」「区役所の人の仕事を増やして申し訳ない」と暗い気持ちだったという。でも、この日の判決を聞いて、当時の自分に「下を向かないで」と声をかけたい思いになったという。
6.「少しずつ、受理される日は近づいているよって」
7.この5年間で、友人らから「なんで結婚できないんだろうね」と声をかけられることが増えたという。社会は前向きに変わっている。だから言いたい。
8.「変わらないのは国会だけです」(新谷千布美、上保晃平)
(https://digital.asahi.com/articles/ASS3G73RLS3GIIPE00B.html?pn=7&unlock=1#continuehere 参照)

 また、朝日新聞は同日、「同性婚訴訟、札幌高裁判決(要旨)」、とこの高裁判決の要旨を報じた。
1.同性婚を認めない民法や戸籍法の規定は憲法に違反すると判断した14日の札幌高裁の判決要旨は以下の通り
(憲法13条(幸福追求権)に違反するか)
1.性的指向は、生来備わる性向であり、社会的には異性愛者と同性愛者それぞれの取り扱いを変える本質的な理由がない。人が個人として尊重される基礎であり、人格権の一内容を構成し得るものだ。
2.しかし、性的指向や同性間の婚姻の自由にかかる人格権の内容は憲法上、一義的にとらえられるべきものではなく、法制度との関係で初めて具体的にとらえられる。
3.憲法24条は文言上、異性間の婚姻を定める。これに基づいて定められた各種の法令、社会の状況などを踏まえて検討すると、憲法13条が人格権として性的指向または同性婚の自由を保障しているとは直ちに言えない。本件規定が憲法13条に違反すると認めることはできない。
4.もっとも、性的指向及び同性間の婚姻の自由は重要な法的利益として、憲法24条における立法裁量の検討にあたって考慮すべき事項である。
(憲法24条(婚姻の自由や両性の本質的平等)に違反するか)
1.憲法24条1項は文言上、両性間の婚姻を定めている。旧憲法下の家制度の制約を改め、個人の尊重がより明確に認識されるようになったとの背景のもとで解釈することが相当だ。1項は、婚姻について当事者間の自由かつ平等な意思決定に委ねられるべきだという趣旨を明らかにしている。2項は、婚姻及び家族に関する事項の立法にあたり、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべきだと定める。
2.性的指向及び同性間の婚姻の自由は、個人の尊重及びこれに係る重要な法的利益だ。1項は、人と人との間の自由な結びつきとしての婚姻をも定める趣旨を含むもので、異性間の婚姻のみならず、同性間の婚姻についても、異性間の場合と同じ程度に保障していると考えるのが相当だ。
3.同性愛者は、婚姻による社会生活上の制度の保障を受けられていない。不利益の程度が著しいだけでなく、アイデンティティーの喪失感を抱いたり、自身の存在意義を感じられなくなったりするなど、個人の尊厳をなす人格が損なわれる事態となっている。
4.他方、同性婚を定めた場合の不利益、弊害の発生はうかがえない。同性婚を可能とする国は多く、国連自由権規約人権委員会は、同性婚を享受できるよう指摘している。国民への調査でも同性婚を容認する割合はほぼ半数を超える。パートナーシップ制度は自治体の制度という制約があり、同性婚ができないことによる不利益が解消されているということはできない。
5.本件規定は、少なくとも現時点では国会の立法裁量の範囲を超え、24条に違反する。
(憲法14条1項(法の下の平等)に違反するか)
1.問われるのは、本件規定が同性婚を定めていないため、異性愛者は異性と婚姻することができるのに、同性愛者は同性と婚姻ができないという婚姻制度での区別が、合理的理由のない差別的取り扱いに当たるか否かだ。
2.同性愛者は、異性愛者の場合に異性との婚姻によって享受できる様々な制度が適用されない、という著しい不利益を様々な場面で受けている。
3.国会の立法裁量を考慮しても、本件規定が異性愛者には婚姻を定めているのに、同性愛者には婚姻を許していないことは、現時点では合理的な根拠を欠く差別的取り扱いであり、14条1項に違反する。
(国会の立法不作為にあたるか)
1.国会には立法の裁量があるが、同性婚を許さない本件規定について、国会の議論や司法手続きで憲法違反が明白になっていたとはいえない。立法の在り方には多種多様な方法が考えられ、設けるべき制度の内容が一義的に明確であるとはいい難い。同性婚に対する法的保護に否定的な意見や価値観を持つ国民も存在し、議論を経る必要がある。
2.国会が正当な理由なく、長期にわたって本件規定の改廃などの立法措置を怠っていたとは評価できない。国家賠償法上、違法とは認められない。
(付言)
1.同性間の婚姻を定めることは、国民に意見や評価の統一を求めることを意味しない。根源的には個人の尊厳に関わる事柄であり、個人を尊重するということだ。
2.同性愛者は日々の社会生活で不利益を受け、自身の存在の喪失感に直面しているのだから、その対策を急いで講じる必要がある。
3.喫緊の課題として、同性婚につき、異性婚と同じ婚姻制度を適用することを含め、早急に真摯な議論と対応をすることが望まれる。
(https://digital.asahi.com/articles/DA3S15887414.html?pn=3&unlock=1#continuehere 参照)

 さらに、朝日新聞は同日、この高裁判決内容に関して、「(時時刻刻)多様な愛、社会も司法も 24条、趣旨は「人と人の自由な婚姻」 同性婚訴訟」(田中恭太、村上友里、根岸拓朗、遠藤隆史、二階堂友紀、笹川翔平)、と踏み込んで報じた。
1.一連の同性婚訴訟で初の高裁判断となった札幌高裁判決は、憲法24条1項の婚姻の自由について「同性婚も保障する」と初めて踏み込んだ。パートナーシップ制度が広がり、社会が変わりつつあるが、政治の動きは鈍い。
2.「憲法24条1項は人と人との自由な結びつきとしての婚姻をも定める趣旨で、同性婚も保障している」
3.14日午後の札幌高裁判決は、同日午前の東京地裁までの6件の地裁判決が認めなかった24条1項違反に踏み込んだ。
4.同項は「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」と定める。憲法に「両性」と明記されているため、地裁はいずれも、文字通り「異性間の婚姻」を指し、同性婚を保障しているとは言えない、と解釈してきた。
5.これに対し、札幌高裁は「文言上、異性間の婚姻を定めている」と認めつつも、法令を文言・表現だけでなく、目的を踏まえて解釈することは一般的で、「憲法解釈でも同様だ」とした。
6.その上で、同項の目的としては、家族や結婚の仕組みが「家」中心だった明治憲法下の制約を改め、対等な個人が自由な意思で婚姻することを定めた、と指摘。「個人の尊厳がより明確に認識されるようになった」時代の変化も踏まえれば、条文は同性婚も保障しているとの見解を導いた。
7.地裁レベルの6判決では、「合憲」は1件にとどまり、「違憲」が2件、「違憲状態」が3件だった。
8.違憲・違憲状態の5件のうち4判決は、「婚姻や家族に関する法律は個人の尊厳に立脚されなければならない」と定めた憲法24条2項に照らして判断した。
9.法律婚をすれば社会保障や税などで優遇措置がある。2人の関係が社会的にも「公証」される。同性カップルがこうした利益を一切得られないのは「人格的利益の侵害」などという理屈だ。
10.ただ、これら4判決は、異性間の婚姻とは別に、同性カップル向けの類似の制度作りが選択肢になり得ると示唆していた。24条1項を「異性間だけの婚姻の保障」と捉えた限界とも言える。
11.一方、札幌高裁は、現行制度が同項に加え、「法の下の平等」を定めた憲法14条にも違反すると述べ、こうした立場をとらなかった。
12.弁護団は「同性間の婚姻の自由を異性間と同程度に保障しなければならないとした、最も進んだ判決だ」と評価した。(田中恭太)
(法より先に、パートナー制度急拡大)
1.同性婚の国際的な状況に詳しい明治大学の鈴木賢教授(比較法)によると、世界では2001年にオランダが初めて同性婚を法制化し、現在は37カ国・地域で法的に認められている。欧州連合(EU)では、加盟27カ国のうち、16カ国ですでに法制化された。
2.アメリカや台湾では、裁判の判断が法制化の流れを作った。19年にアジアで最初に法制化した台湾は憲法裁判所にあたる大法官会議が17年、同性婚を認めないのは違憲との解釈を示していた。
3.鈴木教授は、世界での動きについて「法制化する流れは後戻りできない地点まで来ている」と指摘する。
4.主要7カ国(G7)で同性カップルへの法的保障がないのは日本だけ。一方、自治体が同性カップルの関係を公的に認める「パートナーシップ制度」は急速に広がる。
5.パートナーとして公営住宅に入居したり、公立病院での病状説明を受けたりできる。民間でも、生命保険金の受け取り▽住宅ローンの「収入合算」や「ペアローン」▽携帯電話の「家族割」などで活用されている。
6.同性婚の法制化を求める公益社団法人「Marriage For All Japan」によると、19年3月の導入自治体は11だったが、20年以降に急増。今月1日現在では397となり、人口の8割余りをカバーする。
7.都道府県レベルでも、基礎自治体でも導入がない「空白県」は宮城県だけだったが、仙台市が24年度中の導入を表明し、空白県はなくなる。同法人の森あい弁護士は「当事者らの活動や訴訟により、首長や地方議員の間で課題が広く知られるようになった」とみる。
8.後押しする動きは企業にも広がる。同性婚の法制化への賛同を募るキャンペーン「Business for Marriage Equality」には、今月7日時点で477の企業・団体が賛同を表明している。
9.2月に賛同を表明した武田薬品工業は、4月から福利厚生制度の「配偶者」に同性カップルも含むと明記する。性的少数者らの理解や支援のために活動する従業員グループの金生竜明(かのおたつひろ)さん(47)は「全ての従業員と、薬を使う患者さんが尊重され、自分らしく生きられる環境を作ることはビジネスの成長にもつながる」と言う。(村上友里、根岸拓朗)
(性的少数者の権利擁護、最高裁前向き)
1.性的少数者をめぐる訴訟で、司法は近年、権利擁護に前向きな姿勢を相次いで示している。象徴的だったのが、生まれた時の性別とは異なる性別で生きるトランスジェンダーをめぐり、昨年10月に最高裁大法廷が下した決定だ。戸籍上の性別を変えるための「性同一性障害特例法」について、生殖能力を失わせる手術を求める要件は憲法違反だと判断。自認する性別で法的に扱われることは「重要な法的利益だ」と指摘した。
2.トランスジェンダーの経済産業省職員が職場でのトイレ使用を制限されたと訴えた訴訟でも、最高裁第三小法廷が昨年7月、職員の逆転勝訴とする判決を出した。さらに、犯罪被害者の遺族を対象にした給付金を同性パートナーが受け取れるかが争われている訴訟では、同小法廷が今月26日の判決で、「同性パートナーは対象外」とした二審の判断を見直す可能性がある。
3.あるベテラン裁判官は「大きな流れとして、最高裁が性的少数者の権利擁護に前向きなのは確かだ」と話す。
4.こうした訴訟の「本丸」とも位置づけられているのが同性婚訴訟だ。「同性婚を認めないのは違憲」という司法判断が確定すれば、同性同士でも結婚による法的保護を受けられるようになり、性的少数者の権利状況は大きく前進する。
5.高裁で審理中の訴訟は札幌のほかに四つあり、東京高裁では4月に東京1次訴訟が結審する見通しだ。ただ、政治が立法による解決を図らない限り、最終的に最高裁に判断が委ねられるのは必至で、結論が出るまでには、さらに年単位の時間がかかるとみられる。
6.民法の歴史的変革に司法は踏み込むのか。別の裁判官は話す。「最高裁が判断を示すのは、高裁判決がある程度集まってからだろう。高裁の結論が割れる可能性もある。最高裁にとっても、過去に例がないほど難しい判断になる」(遠藤隆史)
(取り残される政治 自民「同性婚、相容れず」)
1.社会の価値観は大きく変わり、司法判断も前に進んでいるが、政治の動きは依然として鈍い。
2.岸田文雄首相は1月31日の衆院本会議で、同性婚導入について「国民一人一人の家族観とも密接に関わるものであり、国民各層の意見、国会における議論の状況、同性婚に関する訴訟の状況についても注視していく必要がある」と述べた。
3.安倍晋三首相(当時)が2015年2月の参院本会議で「わが国の家族のあり方の根幹に関わる問題で、極めて慎重な検討を要する」と答弁して以降、政府は消極的な姿勢をとり続けてきた。
4.自民党は安倍政権下の16年、特命委員会で基本的な考え方をまとめ、パンフレットを作った。その中で「同性婚容認は相容(あいい)れません」「『パートナーシップ制度』についても慎重な検討が必要」とした。その後、党としての見解は更新されていない。
5.ただ、変化の兆しがないわけではない。昨年11月の参院法務委員会で、同性婚の課題を問われた小泉龍司法相は「女性同士が結婚した時、一方の女性が出産した子について、他方の女性が2人目の母になるのか、あるいは新たな概念を作り出す必要があるのか、検討が必要」と答弁した。
6.質問した立憲民主党の石川大我氏は「具体の話が出てきたのは初めてだと思う」と評価した。
7.自民党最大派閥だった安倍派が裏金事件を受けて解散を決めたことも、今後の議論に影響する可能性がある。同性婚などに慎重な保守系議員が多く、LGBT理解増進法に関する党内議論の際、安倍氏を中心に反対論を形成した経緯がある。安倍派のベテラン議員は「反対派の政治的な影響力は弱まっている」と話す。
8.林芳正官房長官は14日の会見で、札幌高裁と東京地裁の判決について「確定前の判決で、他の裁判所に同種の訴訟が係属していることから、その判断も注視していきたい」と述べた。そのうえで同性婚の導入について「親族の範囲やそこに含まれる方々の間にどのような権利義務関係を認めるか、といった国民生活の基本にかかわる問題だ」と指摘。「地方自治体におけるパートナーシップ制度の導入状況などを引き続き注視していく」とした。(二階堂友紀、笹川翔平)
(https://digital.asahi.com/articles/DA3S15887357.html?pn=3&unlock=1#continuehere 参照)

 あわせて、朝日新聞は同日、「【そもそも解説】同性婚が『認められない』日本、どんな不利益が?」(田中恭太)、と解説した。
1.同性婚が認められないのは憲法違反だと2019年に起こされた5つの訴訟で、最後となる福岡地裁判決が8日、言い渡され、「違憲状態」と判断した。同性婚をめぐる日本や世界の状況はどうなっているのか。
2.Q-日本では同性婚(こん)が「認められていない」と言われる。禁止されているのか。
3.A:憲法や法律に同性婚をはっきりと禁じる規定はない。ただ、民法や戸籍(こせき)法は「夫婦」や「夫」「妻」といった言葉を使う。実務上、同性同士の婚姻はできない。
4.Q-同性カップルが法律婚ができないことの不利益は。
5.A:様々な不都合がある。例えば、税金の配偶者(はいぐうしゃ)控除(こうじょ)はないし、相手の法定相続人にもなれない。子どもの親権は共同で持てず、パートナーが病気になっても家族ではないとして病状の説明を断られることもある。外国人パートナーに配偶者ビザは出ない。
6.Q-同性愛についての考え方はどう変わってきた?
7.A:かつては精神疾患(しっかん)や障害とされたが、現在は病気などではなく、本人の意思では変えられないとの知見が確立している。
8.Q-外国ではどうなっているのか。
9.A:NPO「EMA日本」によると、2001年のオランダに始まり、34の国・地域が同性婚の制度を持つ(今年2月現在)。主要7カ国(G7)で、同性カップルに対して国として法的な権利を与(あた)えていないのは日本だけだ。
10.Q-日本で広がる「パートナーシップ制度」とは。
11.A:自治体が同性カップルを結婚に相当する関係と認めて証明書を発行する制度だ。公益社団法人「Marriage For All Japan」によると、少なくとも323の自治体が導入している(今年6月現在)。自治体によって様々だが、家族向けの公営住宅への入居ができるなどの対応がとられている。民間でも、証明書があれば配偶者として扱(あつか)う保険会社などがある。しかし、法的な効果はなく、法律婚と同じとは言えない。
12.Q-国内の理解は進んだ?
13.A:最近の調査では、同性婚制度に肯定(こうてい)的な意見が、否定的な意見を上回っている。朝日新聞の今年2月の世論調査では、同性婚を法律で「認めるべきだ」が72%で、「認めるべきではない」は18%にとどまった。(田中恭太)
(https://digital.asahi.com/articles/ASR68457RR66UTIL01Y.html?pn=5&unlock=1#continuehere 参照)




# by asyagi-df-2014 | 2024-03-19 12:09 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

 沖縄-辺野古-高江から-2024年3月19日

 沖縄の基地問題は、一人一人の人々の生活の幅そのもの。
 「『子どもたちにとって不安な場所になってほしくない』。東山(あがりやま)で生まれ育った新垣宣道(よしつね)さん(36)と名嘉真幸人さん(36)は自分たちの幼少期を今の子どもたちの姿に重ねる。昨年12月、防衛省がうるま市石川のゴルフ場跡地に陸上自衛隊の訓練場を整備するという計画が突如として持ち上がった。予定地のすぐ近くには、2人が「何度も遊んだ」という東山ふれあい公園がある。『地元のために何かできないか」。2人は初めて署名運動に取り組んだ。』、と琉球新報。
 また、「地元の旭区自治会は1月14日に住民の全会一致で計画への反対を決議した。その後、計画断念を求める署名活動を開始。これまで自治会活動などに関わりのなかった住民が署名を自治会に届けにくるなど、住民の断念を求める声が顕在化してきた。住民の声に押され、周辺自治会が相次いで反対を決議。2月1日には石川地区自治会長連絡協議会が反対を表明した。反対の声が石川地区に波及する中、防衛省は2月11日に住民説明会を開いた。新垣さんは『全然納得できなかった』と説明会を振り返る。防衛省は住民からの質問に『回答していない。住民の意見を取り入れてほしい』と疎外感は残ったままだ。『(訓練場を)許してしまったらどんどん危険性の高いものが入ってくる』と不安は募る。」(琉球新報)、と。

 沖縄で起こっていること、その現場の事実をきちんと確認すること。
 何よりも、自らが沖縄から受け取るものを明確にするために。それは、捉え直しとして。
 2024年度も、改めて琉球新報と沖縄タイムスの記事を、「沖縄-辺野古-高江-から」を、報告します。

(1)琉球新報-自分たちの幼少期といまを重ね 整備予定地、公園に接近 幼なじみ2人で署名活動<日常を守る・うるま陸自訓練場断念を求めて>上(金盛文香)-2024年03月17日 14:58

 琉球新報は、表題を次のように報じた。

1.「子どもたちにとって不安な場所になってほしくない」。東山(あがりやま)で生まれ育った新垣宣道(よしつね)さん(36)と名嘉真幸人さん(36)は自分たちの幼少期を今の子どもたちの姿に重ねる。昨年12月、防衛省がうるま市石川のゴルフ場跡地に陸上自衛隊の訓練場を整備するという計画が突如として持ち上がった。予定地のすぐ近くには、2人が「何度も遊んだ」という東山ふれあい公園がある。「地元のために何かできないか」。2人は初めて署名運動に取り組んだ。
2.「生まれた時から東山」という2人。東山ふれあい公園は「地元の子が集まる場所」だ。併設する旭区公民館ではサークル活動も盛ん。14歳からブレイクダンスを始めた2人は、同公民館で練習することもあった。
3.公園や公民館は訓練場予定地からはわずか200~300メートルほどしか離れていない。今も子どもたちは公園を駆け巡る。「子の遊び場が危険であってはいけない」と名嘉真さんは思いを話した。
4.「何かできることはないか」。2人はダンスを通して、若い世代へ認知を広げようと旭区公民館でイベントを開催した。計画の断念を求める署名も同時に集めると、一日で約100筆が集まった。名嘉真さんは「問題は深刻だけど、楽しみながら知ってもらえたらいい」と行動の継続を力強く語る。(金盛文香)
5.うるま市の石川ゴルフ場跡地で計画されている陸上自衛隊の訓練施設整備について、白紙撤回を求める声が地元から市全体、全県へと広がり大きなうねりとなっている。20日に市民集会が開催されるにあたり、住民の思いを聞く。
6.「は?」思わず声が出た。東山(あがりやま)に住む新垣宣道(よしつね)さん(36)は市石川のゴルフ場跡地に防衛省が陸上自衛隊の訓練場を整備する計画を、テレビのニュースで知った。「住民は無視されている感じがする」と疎外感を口にした。急に自分の近くにやってきた訓練場計画。「人ごとではない」と新垣さんの意識はこれまでと大きく変わった。
7.「政治には興味なかったし、署名もしたことがなかった」。苦笑いしながらそう語る新垣さんだが、地元の人と会話するうち、計画への危機感が募ってきた。「若い人に知ってほしい。自分たちで声を上げていこう」。幼なじみの名嘉真幸人さん(36)と若い世代を意識したイベントを開き、断念を求める署名を集めた。
8.地元の旭区自治会は1月14日に住民の全会一致で計画への反対を決議した。その後、計画断念を求める署名活動を開始。これまで自治会活動などに関わりのなかった住民が署名を自治会に届けにくるなど、住民の断念を求める声が顕在化してきた。
9.住民の声に押され、周辺自治会が相次いで反対を決議。2月1日には石川地区自治会長連絡協議会が反対を表明した。反対の声が石川地区に波及する中、防衛省は2月11日に住民説明会を開いた。
10.新垣さんは「全然納得できなかった」と説明会を振り返る。防衛省は住民からの質問に「回答していない。住民の意見を取り入れてほしい」と疎外感は残ったままだ。「(訓練場を)許してしまったらどんどん危険性の高いものが入ってくる」と不安は募る。
11.訓練場予定地に隣接し、石川岳のふもとにある県立石川少年の家では宿泊学習をした記憶もある。友達と石川岳を登ったこともある。新垣さんは宮森小学校出身。1959年に同小学校で起きた米軍ジェット機墜落事故の話も頭をよぎる。
12.自分ごととして問題に直面し、新垣さんの意識は大きく変わった。これまで「年配の方がやるもの」だった抗議行動。生まれ育ち、思い出の詰まった地元を「不安な場所にしたくない」と立ち上がった。子どもたちにとって地元を守る行動が「当たり前になってくれるといい」と前を向く。(金盛文香)
(https://ryukyushimpo.jp/news/national/entry-2905333.html 参照 2024年3月18日)
(https://ryukyushimpo.jp/news/national/entry-2905359.html 参照 2024年3月18日)

(2)琉球新報-議場で「うそ」問われる資質 議会の監視能力に批判も 南城市長セクハラ疑惑 沖縄(上江洲仁美、南彰)-2024年03月18日 05:00

 琉球新報は、表題を次のように報じた。

1.古謝景春南城市長のセクハラ疑惑を巡り、市役所内のハラスメントに関する特別委員会を設置した市議会は18日、2月議会の最終日となる。市長は「(議場で)うそをついた」と言って説明を変えたり、被害を訴えた女性の個人情報を暴露したり、公人としての資質を疑われる言動を重ねた。市民からは、市長の姿勢だけでなく、議会の行政監視能力への批判も出ている。
2.市長が「うそをついた」と言い出したのは14日午後0時半ごろ。午前中の議会で「(県警から)事情聴取を受けている」と答弁した内容を確認する取材に対してだった。記者から「議場でうそをついたということですか」と問われると、「うそをついた。ははは」と笑いながら、市長室に入っていった。
3.午後の本会議で「弁護士に事情を話している」と発言を訂正したが、県警から事情聴取を受けていることが関係者への取材で明らかになっている。
4.市長は元運転手の女性が市に被害を申告した当初は「すみませんでした」「私はいつでも辞める覚悟です」と女性にメッセージを送っていた。現在は疑惑を否定し「自分が被害者と思っている」と主張、発言が変遷している。
5.3月12日の議会では、市長は質問者から聞かれていない女性の経歴などを一方的に公表。2月末にはSNSにも投稿し、識者から「人権問題で、声を上げようとする人への脅し」と批判されている。市議会特別委員会が投稿の削除を要請したが、削除を拒否した。
6.古謝市長を巡っては、市議有志が1月に公表した職員アンケートで「市長からセクハラを受けた」という回答が複数寄せられた。
7.市議会特別委で新たな職員アンケートを実施する方向だが、市長は「前市長時代と私の市政時のアンケートを早急に調査する事を確認しました。前市政の恐ろしさが確認されます」とSNSに投稿。特別委の調査への介入を示唆し、特別委の調査の公平性に疑問が生じている。
8.一方で、市内外の有志でつくる「ハートのまち南城 人権ファーストの会」が提出した第三者委員会の設置を求める陳情は11日、特別委の安谷屋正委員長の判断で採択が見送られた。
9.同会メンバーは「市長をかばおうとしてるとしか見えない」「二元代表制を自覚しているのか」と抗議したが、安谷屋委員長は「本人がやってないと言うものをわれわれは疑うわけにはいきません」と語った。
10.同会は18日午前9時から市役所前で抗議のスタンディングを実施する。(上江洲仁美、南彰)
(https://ryukyushimpo.jp/news/politics/entry-2906658.html 参照 2024年3月18日)


# by asyagi-df-2014 | 2024-03-19 06:14 | 沖縄から | Comments(0)

自衛隊の集団参拝を考える。(1)

 陸上自衛隊及び海上自衛隊の自衛官らによる靖国神社への集団参拝が明らかになった。
もちろん、このことは、日本国憲法が規定する「政教分離」に抵触する。

 どういうことが引き起こされていたのか。
 まずは、経過の確認。

 このことに関して、朝日新聞の2024年2月22日、「海自練習艦隊の靖国集団参拝、木原防衛相『事実関係の確認進める」(里見稔)、と次のように報じた。
1.海上自衛隊練習艦隊司令官らによる昨年5月の靖国神社(東京・九段)への集団参拝について、木原稔防衛相は22日の記者会見で「事実関係の確認は進めていきたい」と述べた。「研修の休憩時間に隊員個々の自由意思により、玉串料は私費で支払った私的参拝だったと聞いている」としつつ、「誤解を招く行動は避けなければならない」と語った。
2.海上幕僚監部によると、練習艦隊の実習幹部165人を対象に昨年5月17日、九段下周辺の史跡などをめぐる研修を行った際、休憩時間に当時の今野泰樹(やすしげ)司令官ら「多くの人間」(酒井良海幕長)が参拝した。酒井氏は20日の記者会見で「強制されたものではない」として「部隊参拝」や参加の強制を禁じている1974年の防衛事務次官通達に抵触しないとの認識を示した上で、「問題視することもなく、調査する方針もない」と主張していた。
3.一方で木原氏は「詳細な事実関係については確認をしている」とした。次官通達に抵触するか否かの調査については「現在は差し控えさせて頂く」と述べるにとどめた。(里見稔)
(https://digital.asahi.com/articles/ASS2Q4W63S2QUTFK005.html?iref=pc_ss_date_article 参照)

 あわせて、朝日新聞は同日、「靖国で噴出する「旧軍意識」 宗教社会学者が見る自衛隊の集団参拝」(聞き手・里見稔)、とこのことの問題の核心について報じた。
1.陸上自衛隊や海上自衛隊の幹部が部下と一緒に靖国神社(東京・九段)に集団で参拝している実態が次々と明らかになった。自衛隊は「自由意思による私的参拝」とし、「部隊参拝」ではないと主張している。戦後憲法のもとで旧日本軍とは制度的に断絶したはずの自衛隊と靖国神社の密接な関係をめぐり、上越教育大の塚田穂高准教授(宗教社会学)に問題点を聞いた。
2.Q―今年1月には陸上幕僚副長ら22人、昨年5月には海自練習艦隊司令官ら「多くの人間」(海幕)が靖国神社に集団参拝した。
3.A:軍人や軍属の戦死者らをまつる靖国神社は戦前、国の管轄下にあったが、今は民間の宗教法人であることは争いようがない。陸幕副長らは休暇を取ったとはいえ、事前に「実施計画」を作り、参加者を募った。参拝という宗教行為を陸自として組織的に行ったように見える。個人の信教の自由は誰にでもあるが、国や公的機関が特定の宗教法人と特別な関わり方を持つことは慎まなければならない。:海自は制服姿で集団参拝をしている。公人としての性格が増すので、公私混同と言える。靖国神社の社報には、明らかに組織的に参拝した様子が載っている。もし違うのであれば、本来海自は靖国神社に抗議しなければならない話だ。
4.Q―自衛隊側は次官通達の禁じる「部隊参拝」ではなく、「自由意思に基づく私的参拝」だと主張する。
5.A:ごまかし、詭弁(きべん)ではないか。事前に組織的に参加者を募ったのだから、部隊として参拝の手はずを整えたとしか言いようがない。組織の中では上下関係もある。行かなければ「特殊な考え方を持っているのでは」と勘ぐられるかもしれない。「参加は自由でも参拝するのが普通だ」という同調圧力が働きかねない。
(旧軍とつなぐシンボリックな存在)
1.Q―自衛隊員が靖国神社に集団参拝している背景をどう考えるか。
2.A:靖国神社は戦後、連合国軍総司令部(GHQ)の占領政策の結果、民間の一宗教法人としてしか生き残ることができなかった。だが、先の大戦の多くの戦没者がまつられている特殊さは続いている。民間の宗教法人が多くの戦没者をまつるねじれた状態が起こってしまった。その掛け違いが未解決なまま続いている。               一方、自衛隊には戦前と連続性を持った「旧軍意識」があるのではないか。自衛隊は少なくとも制度的には旧軍と断絶されている。しかし、自分たちのルーツは旧軍だと見なし、その戦没者がまつられている靖国神社に参拝するのは当然なんだというメンタリティーがあると言える。靖国神社は、戦前と戦後、旧軍と自衛隊を精神的につなげるシンボリックな存在と言えるのではないか。戦後、政教分離が憲法に盛り込まれたにもかかわらず、「靖国神社は特別だ」という開き直りもあるように見える。こうした意識が靖国神社をめぐって度々噴出していると言える。
 政教分離は信教の自由を保障するための重要な憲法の原則だ。公的機関の自衛隊が靖国神社と特別な関わり方をすれば、この原則に抵触する。組織的な関わりを疑われるような行動自体を慎むべきだ。(聞き手・里見稔)
(https://digital.asahi.com/articles/ASS2P6S9YS2PUTFK00F.html?pn=6&unlock=1#continuehere 参照)

 こうした朝日新聞の記事から、「『部隊参拝』ではなく、『自由意思に基づく私的参拝』だと主張」についての問題点の把握。
1.「個人の信教の自由は誰にでもあるが、国や公的機関が特定の宗教法人と特別な関わり方を持つことは慎まなければならない。」(朝日新聞)、ということ。
2.「海自は制服姿で集団参拝をしている。公人としての性格が増すので、公私混同と言える。」(朝日新聞)、ということ。
3.「靖国神社は、戦前と戦後、旧軍と自衛隊を精神的につなげるシンボリックな存在と言える」(朝日新聞)、ということ。
 結局、こうした陸上自衛隊及び海上自衛隊の自衛官らによる靖国神社への集団参拝は、「政教分離は信教の自由を保障するための重要な憲法の原則だ。公的機関の自衛隊が靖国神社と特別な関わり方をすれば、この原則に抵触する。」(朝日新聞)、ということになる。
 そして、それは、「新しい戦前」を進めようとする側の「自衛隊には戦前と連続性を持った『旧軍意識』」(朝日新聞)、という意図が問題なのである。


# by asyagi-df-2014 | 2024-03-18 19:49 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

 沖縄-辺野古-高江から-2024年3月18日

 沖縄タイムスが[心のお陽さま 安田菜津紀]で、ジェノサイドと不条理を伝える。
 「窓の大きなアトリエには、柔らかな日差しが降り注いでいた。絵の具の香りが漂う室内には、大小さまざまなキャンバスが立てかけてある。ふと、赤く染まった空の絵に目が留まる。コンクリートの壁の上には、白い布に包まれた何かが浮かんでいた。「遺体だ」とすぐに分かる。この布に包まれて埋葬される人々、それさえもできず瓦礫(がれき)に埋まったままの人々が、パレスチナ・ガザ地区で絶えないことが、昨年10月以降、報じられ続けているからだ。」、と沖縄タイムス。
 それは、「ラニさんの絵は『一見、美しく見えるもの』として人を引きつける。けれどもそこに描かれているのは、日頃は可視化されない不条理だった。」(沖縄タイムス)、と。

 沖縄で起こっていること、その現場の事実をきちんと確認すること。
 何よりも、自らが沖縄から受け取るものを明確にするために。それは、捉え直しとして。
 2024年度も、改めて琉球新報と沖縄タイムスの記事を、「沖縄-辺野古-高江-から」を、報告します。

(1)沖縄タイムス-占領の不条理を可視化 キャンバスの死んだ魚[安田菜津紀エッセイ]-2024年3月17日 8:30-[心のお陽さま 安田菜津紀](27)

 沖縄タイムスは、表題を次のように報じた。

1.窓の大きなアトリエには、柔らかな日差しが降り注いでいた。絵の具の香りが漂う室内には、大小さまざまなキャンバスが立てかけてある。ふと、赤く染まった空の絵に目が留まる。コンクリートの壁の上には、白い布に包まれた何かが浮かんでいた。「遺体だ」とすぐに分かる。この布に包まれて埋葬される人々、それさえもできず瓦礫(がれき)に埋まったままの人々が、パレスチナ・ガザ地区で絶えないことが、昨年10月以降、報じられ続けているからだ。
2.「この絵も、死に覆われたガザを思って描いたんです」。そう語るのは、アーティストのラニ・シャラバティさんだ。彼のアトリエはパレスチナ・ヨルダン川西岸のヘブロンにある。ここはワークショップなどの拠点としての機能のほか、アーカイブ作業にも力を入れているという。「ガザですべてが破壊されてしまったように、パレスチナでは、残す作業がとても大切なんです」とラニさんは話す。
3.巨大な壁と、そこに浮かぶ骨になりかけの魚の絵を指しながら、ラニさんが続ける。「ヘブロンとガザは昔、ものを2時間で運ぶことができて、魚も新鮮なまま持っていくことができたんです。ところがその後はアパルトヘイトウォール(分離壁)に阻まれ、1週間、いや1カ月もかかるようになりました。だから、死んでしまった魚を描いたんです」
4.イスラエルによる長年の占領の実態は、ときに伝わりづらいものだ。パレスチナの人々の尊厳を奪っているのは、「イスラエル市民の安全のため」という名目で立ちはだかる分離壁だけではない。大切な水源を入植地などに奪われ、近くから水をひけない農家は、仕事に行き詰まる。そして代々手渡されてきた農地を切り売りすることになる。じわじわと首を絞め続けられるように生きなければならない場所を、やむをえず去る。そんな人々をしり目に、占領者たちは「われわれは出て行けと強いていない」と白を切るのだろう。
5.ラニさんの絵は「一見、美しく見えるもの」として人を引きつける。けれどもそこに描かれているのは、日頃は可視化されない不条理だった。(認定NPO法人Dialogue for People副代表/フォトジャーナリスト)
(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1326416 参照 2024年3月17日)

(2)沖縄タイムス-道路工事で見つかった5インチ艦砲弾 3月19日に不発弾処理 沖縄・南城市大里 周辺市道を午前9時から交通規制-2024年3月17日 8:10

 沖縄タイムスは、表題を次のように報じた。

1.沖縄県南城市大里大里の空き地で19日午前9時、米国製5インチ艦砲弾1発の不発弾処理作業が行われる。
2.処理現場から半径88メートルが立ち入り禁止となる。避難対象は24世帯59人。周辺の市道などで同午前9時から交通規制が始まり、正午までに終了予定。現地対策本部と避難場所を南風原区公民館に設ける。
3.不発弾は2月7日、空き地近くの道路工事現場で見つかった。
(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1326393 参照 2024年3月17日)

(3)沖縄タイムス-自衛隊機で起きたことがなかった「未知の現象」 陸自ヘリの宮古島沖墜落事故の調査結果 特定できていない根本原因 「点検で防げた」との指摘も(東京報道部・新垣卓也)-2024年3月17日 6:40

 沖縄タイムスは、表題を次のように報じた。

1.【東京】昨年4月に宮古島沖で起きた陸上自衛隊UH60JAヘリコプターの墜落事故を巡り、陸自は14日に事故調査結果を公表した。ヘリに乗っていた陸自幹部ら10人全員が死亡した事故の根本的な原因は特定できなかった。陸自は考えられる原因に対策を打ち、全面的に飛行を再開する。一方、事故原因の一つと推定される片方のエンジンの異常は「未然に防げたのではないか」(自民党国防族)と指摘する声もある。(東京報道部・新垣卓也)
2.事故当時、二つあるエンジンのうち右側で、徐々に出力が下がる「ロールバック」という現象が突如発生したと推定されている。それから37秒後、今度は左側の出力も低下し始めた。
3.片方のエンジンのみで飛行できる仕様だが、両エンジンに異常が起きた段階で高度は300メートルからどんどん下がった。飛行記録装置に残るデータの最後の時点では、高度約95メートル。そこから一気に海面へ墜落したとみられる。高度を維持しようと、隊員が操作の切り替えなど対処法を話し合う音声記録も残っていたという。自衛隊幹部は「未知の現象だったからか、混乱する様子はなく、割と落ち着いた声だった」と明かす。
4.ロールバックはエンジン制御装置へ空気を送る管に、詰まりや漏れなどがあった場合に発生する。
5.自衛隊機で過去に起きたことはなく、事故調査の過程で、米国での事例が判明した。陸自もヘリの関連企業も「未知の現象」で、対処手順に記載がなかった。
6.自衛隊幹部は「事例のない現象に対応しろというのは酷な話」と主張。調査結果の説明を受けた自民党国防族の一人は「管の点検を頻繁にしていれば防げたかもしれない」と強調する。
7.一方、左エンジンでは(1)エンジンを制御する電気系統の異常(2)操縦席のレバーとエンジンをつなぐケーブルの不具合(3)パイロットによる出力調整レバー誤操作-の可能性が残ったが、どれも明確な証拠がなかった。陸自関係者は「生存者の証言があれば究明できたかもしれない」と話す。
8.1997年導入のUH60JAは、人員や物資の輸送などに使う多用途ヘリ。全国7カ所に計39機配備され、陸自那覇駐屯地の機体は急患輸送の任務にも当たる。陸自は今後、エンジン制御系統などの点検機会を増やし、ロールバックやエンジン停止時の対処手順を改める。携帯用救命無線機を導入したり、全機に緊急時の浮具(フロート)も搭載したりする。
9.陸自トップの森下泰臣陸幕長は14日の記者会見で「一人の犠牲者も出さぬ決意で再発防止に全力を挙げ、飛行の安全に万全を期す」と述べた。
(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1326322 参照 2024年3月17日)

(4)沖縄タイムス-核密約 米側意図を了承 60年安保改定時の経緯判明 日本政府 圧力かわせず 米が公文書-2024年3月17日 5:00

 沖縄タイムスは、表題を次のように報じた。

1.核兵器を搭載した米軍艦船・軍用機の日本への寄港や着陸を日米間の事前協議なしで認める核密約が1959年、秘密交渉を経て成立する新たな経緯が16日、米公文書から判明した。米国は60年の日米安全保障条約改定後も核艦船寄港の自由を死守しようと交渉を主導し、この点を非公開文書で確認するよう要求。日本は当初反対したが米国の強硬姿勢をかわせず、米側の意図を了承した上で文書作成に応じていた。
2.核密約は旧民主党政権下の2010年、日本政府が存在を認めた。ただ根拠となった外務省調査でも一連の経緯は解明されず、初めて全容が分かった。冷戦後、米軍核艦船は日本に寄港していないが、日米は今も密約を正式に破棄していない。
3.米公文書は信夫隆司・日本大名誉教授が国家安全保障公文書館(ワシントン)から入手した。
4.米国務省は1958年9月29日付公電でマッカーサー駐日大使に、安保改定で新設される事前協議の対象は核の陸上配備に限られ「(既に行われている)核搭載艦船の日本領海・港湾への進入は従来通り続け、対象としない」との交渉方針を伝達。事前協議は旧安保条約で制限のなかった日本への核持ち込みに対し、日本の発言権確保を狙った安保改定の目玉だった。
5.これを受け大使は同10月4日、岸信介首相と藤山愛一郎外相に会い「米軍艦船の日本領海・港湾への進入を含む現行の手続きは(安保改定後も)継続される」と伝えた。
6.59年4月9日付公電によると、藤山外相は米軍艦船寄港など「現行の手続き」を事前協議の対象外とする米側要求を口頭で了解。5月に入ると大使は日本の後継政権も拘束しようと、この了解事項を明記した非公開文書の作成を提案した。
7.しかし同6月9日、将来の国会追及を恐れて文書化に後ろ向きの外相は「(協議対象は)核のイントロダクション(持ち込み)のみ」と記すにとどめるよう逆提案するが、核艦船寄港継続を確実にしたい大使は「全く受け入れられない」と拒絶、米案受諾を改めて求めた。それでも外相は賛同せず大使は「再考を迫った」(同11日付公電)。
8.大使は同10日、山田久就外務事務次官と妥協案を模索。最終的に艦船寄港を事前協議の対象外とする「討議の記録」という文書に外相も同意し、翌年1月にイニシャルで署名。米国の思惑通りとなった。
(驚きの発見 再研究を)
1.中島琢磨・九州大教授(日本政治外交史)の話 
2.驚きの発見だ。安保改定時に日米は「討議の記録」という非公開文書を作ったが、藤山愛一郎外相が「現行の手続き」という言葉の明記に反対し、削除を求めていた経緯が初めて明らかになった。
3.米国は将来も核搭載艦船を日本に寄港させるため、艦船寄港を巡る「現行の手続き」に変更がないとの一文を「討議の記録」に盛り込んだ。外相は交渉中「艦船に積む兵器の種類を明かさない」との米軍の考え方を聞かされており、この一文が核艦船寄港を認める意味になると気付き文書化を嫌ったのではないか。
4.法的に国家の意思を代表できる立場の外相が米側の文意を認識した上で反対し、最後に合意していたなら、その意味は大きい。密約再研究の必要性を示しており他の関連文書公開が求められる。
(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1326408 参照 2024年3月17日)

(5)琉球新報-石垣港「特定利用」指定へ 防衛強化目的に政府 今月末、那覇空港も(明真南斗、照屋大哲、友寄開)-2024年03月17日 05:00

 琉球新報は、表題を次のように報じた。

1.政府が防衛力強化を目的に防衛省・自衛隊や海上保安庁のニーズに基づいて民間の空港や港湾を整備・拡充する事業で、3月末に「特定利用空港・港湾」として県内では石垣港と那覇空港を指定する方向で調整していることが16日、複数の関係者への取材で分かった。指定は初めて。政府は月末に関係閣僚会議を開いて第1弾として県内外の複数施設を指定する予定。
2.石垣港は機能強化に向けて計画を検討する。国管理で自衛隊と共用している那覇空港では、2本の滑走路をつなぐ誘導路を増設する計画。政府は県内12カ所を指定候補に挙げ、昨年9月末から関係自治体に打診してきた。管理者の意向や費用対効果を踏まえて今回は石垣港と那覇空港を指定する方向で進めている。2024年度から整備に向けて調査などが始まる見通し。
3.関係者によると、石垣市は国側に指定に前向きな考えを伝えた。自衛隊などが円滑に港を利用できるように調整の枠組みを設定することが条件となっており、政府と市は協議を始めている。
4.那覇空港以外の県内空港は県管理。県は24年度の予算要望を見送っており、県管理の施設は今回指定されない。宮古島市の平良港は市管理だが、市幹部によると今回の指定は見送る考え。(明真南斗、照屋大哲、友寄開)
(https://ryukyushimpo.jp/news/politics/entry-2905329.html 参照 2024年3月17日)

(6)琉球新報-沖縄・与那国の新港湾「白紙に」 自衛隊使用想定の「特定重要拠点」 地元女性らが議会に陳情(中村万里子)-2024年03月14日 05:00

 琉球新報は、表題を次のように報じた。

1.自衛隊などの使用を想定し政府が整備する「特定重要拠点」として、与那国町の湿地帯・樽舞(たるまい)湿原で新たな港湾建設が計画されていることについて、町在住の女性9人は8日、与那国町議会の崎元俊男議長宛てに、計画を白紙に戻して議論を尽くすよう求める陳情を提出した。陳情は受理され、3月の町議会定例会最終日の19日に審議される見通し。
2.与那国町が国に提出した計画では、新たな港湾は樽舞湿原一帯をしゅんせつし、全長1・2キロ、幅約300メートルに上る。樽舞湿原は開発が及んでおらず、環境省の「生物多様性の観点から重要度の高い湿地500」に登録されているほか、一部が鳥獣保護区にも指定。琉球列島最大規模の湿地帯で、希少な野生動植物種が数多く生息している。
3.陳情は代表の植埜(うえの)貴子さんら町内の女性9人が提出した。陳情書では、新港湾建設は島の文化的な要素や重要な自然の循環、観光資源の喪失につながると指摘。「住民、議会そっちのけで計画が急速に進んでいる。島を後世の子どもたちに力強く生きていける場所として残せるかどうかを含め、一度白紙に戻して再度議論を尽くしてほしい」と訴えている。(中村万里子)
(https://ryukyushimpo.jp/news/national/entry-2896834.html 参照 2024年3月17日)

(7)琉球新報-御後絵捜索、きっかけ作る 元米総領事館職員の高安藤さん 沖縄県、FBIに盗難美術品申請(座波幸代)-2024年03月17日 05:00

 琉球新報は、表題を次のように報じた。

1.「琉球の大事な文化財を見つけるきっかけになれた。本当にうれしい」。戦時中に沖縄から流出し、所在が分からなくなっていた琉球国王の肖像画「御後絵(おごえ)」などの文化財が米国で見つかり、沖縄県に返還された。県が2001年に米連邦捜査局(FBI)の盗難美術品ファイルに登録申請をするきっかけをつくったのが、元米国総領事館・広報文化担当補佐官の高安藤(たかやすふじ)さん(80)=ぬちまーす副社長=だった。
2.2000年の沖縄サミットでのクリントン米大統領来沖を前に、広報文化担当の高安さんは文化的な取り組みとして二つの提案をした。一つは沖縄から持ち出された御後絵など文化財の捜索・返還。もう一つは米国内にある琉球の文化財の里帰り展を開催することだった。当時の稲嶺恵一知事らにも伝え、米国務省や大使館も積極的に動いたが、実現はかなわなかった。
3.その後も流出した文化財を探す方法を米国で調べてほしいと取り組み、首里城復元や調査研究などに尽力した故真栄平房敬さんら3人を沖縄から米国に招へいした。FBIや国際刑事警察機構(インターポール)を通して探す方法を知ったメンバーは沖縄に戻り、県がFBIに盗難美術品ファイルの登録申請した。
4.当時、真栄平さんは80歳。戦前の首里城や尚家関係の行事などを実際に見聞した経験や強い思いがあったからこそ、今回の発見・返還につながったと高安さんは考える。 5.安さん自身も沖縄から米国に渡った文化財の研究に取り組み、琉球大大学院で学びながら沖縄の文物の所在とその移動の背景などを調べた。
6.沖縄戦から80年近くがたつ。戦争で多くの工芸品が戦利品として流出した。「御後絵が戻るのに何十年もかかったが、劣化もそれほどなく修復できるのではないか。文化財への知識や理解がある人が大事に保管していたのだろう」とし、「あの時提案して良かった」とほっとした様子で話した。(座波幸代)
(https://ryukyushimpo.jp/news/national/entry-2905389.html 参照 2024年3月17日)

(8)琉球新報-【記者解説】有事の「足場」確保狙う 攻撃目標の懸念拭えず、米軍使用の可能性も 特定空港・港湾指定(明真南斗)-2024年03月17日 15:10

 琉球新報は、表題を次のように報じた。

1.政府が「特定利用空港・港湾」を指定して優先的に予算措置をする事業を進めるのは、有事にできる限り多くの「足場」を確保して運用の幅を広げたいと考えているためだ。主に「台湾有事」などで自衛隊の活動が想定される県内の空港や港湾を念頭に始めた事業で、平時から訓練などで使用できる環境づくりを目指している。
2.政府は当初、指定するインフラの呼称を「特定重要拠点空港・港湾」としていた。政府関係者によると、大規模な施設を設ける印象を持たれるのを避けるため、名称から「拠点」を省いた。
3.自衛隊が利用できるようになることで、有事の際に攻撃対象となる懸念も指摘されるが、政府は各施設を利用するのは年数回ほどとした上で「平素の利用に大きな変化はなく、当該施設が攻撃目標とみなされる可能性が高まるとは言えない」と否定する。
4.だが、軍事目標以外の「民用物」への攻撃を禁止するジュネーヴ諸条約は、施設が軍事活動に資すると判断されれば「軍事目標」として扱うことを定めており、懸念は拭えていない。
5.政府はこの事業の対象に米軍の利用は入っていないと説明しているが、物理的に利用しやすくなれば米軍の使用にもつながる恐れがある。
6.3月11~13日に石垣港に寄港した米軍のミサイル駆逐艦は、船の深さが規定を上回ったために岸壁に着けることができず、沖に停泊して小型船で行き来する形を取った。大型の船舶まで着岸できるようになれば米軍にとっても好都合であることは間違いない。米軍の港湾利用は日米地位協定で認めらており、日本側に拒否する権限はないとするのが政府の立場だ。
7.国が港湾管理権を一元的に有していた戦前の反省を踏まえ、港湾法は自治体に強い権限を与えているとされる。その趣旨を踏まえ、事業が「有事ありき」になっていないか、慎重に実態を見極める必要がある。(明真南斗)
(https://ryukyushimpo.jp/news/politics/entry-2905258.html 参照 2024年3月17日)

(9)沖縄タイムス-FBIが捜査した屋根裏部屋 隠されていた沖縄戦で略奪された美術品 米国退役軍人の遺品から発見 遺族が申し出る(学芸部・知念清張)-2024年3月17日 5:30

 沖縄タイムスは、表題を次のように報じた。

1.沖縄に返還された文化財22点は、米東部マサチューセッツ州にある退役軍人の私邸の屋根裏部屋に隠されていた-。歴代琉球国王肖像画の「御後絵(おごえ)」などが見つかったことを巡り、米連邦捜査局(FBI)は、捜査の経緯をホームページで明らかにした。退役軍人の死後、遺品の整理をしていた家族が申し出た。FBIは沖縄戦で略奪されたことを裏付けるものと断定。盗まれた可能性がある美術品を認識した場合には通報するよう呼びかけている。(学芸部・知念清張)
2.FBIによると、第2次世界大戦の退役軍人だった父親の遺品を整理中に家族が発見した。ただ、亡くなった退役軍人は太平洋地域に従軍したことはないという。遺品と共に手紙も見つかっており、これが沖縄戦で略奪された文化財であることを裏付ける内容だったと説明している。
3.通報を受け、FBIは2023年1月に捜査を開始した。同年3月、高解像度の写真を県教育委員会に提供。県教委は、沖縄戦で米国に持ち去られた可能性が極めて高いとして県への返還を求めた。
4.米国務省は00年、県職員を米国に招き、流出文化財をFBIの盗難美術品ファイルに登録する支援をしている。それが生かされた形だが、登録された13点のうち返還されたのは尚敬王、尚育王の御後絵の2点にとどまる。
5.FBI美術犯罪チームのジェフリー・J・ケリー特別捜査官は「その国の文化的アイデンティティーは、まさに工芸品と歴史に集約され、それが文化をつくる。それがなければ、歴史を奪うことになる。元の場所へ返すためにできる限り努力をすることが重要だ」と述べ、略奪品の返還に協力するよう訴えた。
6.今回の琉球王国時代の文化財の返還は、米国内のメディアでも報道された。
7.県は有識者委員会を設置し鑑定を行い、文化財の損傷の状況に応じて公開の機会を検討する。
8.[ことば]御後絵(おごえ、ウグイ):死後に描かれた琉球国王の肖像画。尚家の菩提(ぼだい)寺の円覚寺に壁画として描かれ、掛け軸に模写したと考えられている。表現形式はほぼ一定しており、中心の国王が巨大に描かれ、従者とみられる人物がその左右に小さく配される。 
(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1326375 参照 2024年3月17日)

(10)沖縄タイムス-埋め立て工事で失われたもの 海中撮影を続けて(伊禮健・写真部長)-2024年3月17日 15:00

 沖縄タイムスは、表題を次のように報じた。

1.報道写真に携わって34年余り。数多くの事件・事故やスポーツの現場を取材してきた。まさに沖縄の歴史に立ち会ってきた。だが、振り返ってみると基地問題だけを伝えてきたような気がする。それは、沖縄タイムス創刊から続いていることかもしれない。
2.1995年にも米兵による暴行事件をきっかけに、県民の怒りが頂点に達し大きなうねりとなった。10月21日の県民大会では8万5千人が抗議の声を上げた。
3.1996年、普天間飛行場返還に日米両政府が合意。名護市辺野古に海上ヘリ基地建設計画が浮上した。1997年に行われた名護市民投票では建設反対が過半数を上回ったが、当時の市長が受け入れを表明し辞任。抗議行動は四半世紀を過ぎてもいまだに続いている。
3.辺野古には、ジュゴンのすむ豊かな海が広がっている。ジュゴンの水中撮影を試みたことがある。上空からヘリで探し出し、船で近づく作戦だ。上空からはすぐに発見できたが、船を走らすとスッーと逃げ出し、水中撮影は失敗に終わった。今では、その餌場の海草藻場は埋め立てられ消失した。
4.軟弱地盤が問題になっている大浦湾は、マングローブを流れる川からつながる干潟があり、そして沖合のリーフにはサンゴが広がる。亜熱帯・沖縄の海の生態系が凝縮している場所だ。クマノミの集団やアオサンゴの大群落など潜るたびに違った表情を見せてくれる。このまま工事が進めば生き物たちに大きな影響が出るだろう。
5.豊穣(ほうじょう)の海を壊してまで新基地は必要なのか疑問に思う。いつまで続く沖縄の基地問題。「基地のない平和な島」はいつなのか。
(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1323703 参照 2024年3月17日)


# by asyagi-df-2014 | 2024-03-18 06:32 | 沖縄から | Comments(0)

本当に、武器輸出緩和なの。(1)

 武器輸出緩和に向けた、自民・公明両党による議が再開された。
 この問題を考える上で、一連の朝日新聞の記事で考える。

 朝日新聞は2023年12月22日、「政府は、武器輸出を制限する『防衛装備移転三原則』を見直し、殺傷能力のある武器の輸出制限の大幅緩和に踏み出します。第2次世界大戦後、武器の輸出を半世紀にわたり原則禁止してきたこともある日本の平和国家としての歩みを解説します。」、と日本の武器輸出をめぐる解説(「【そもそも解説】日本の武器輸出規制とは?平和国家としての歩みは?」(長崎潤一郎))を掲載した。
 解説は以下のもの。
1.Q-日本はどのように武器輸出を規制してきたの?
2.A:日本では戦後、連合国軍総司令部(GHQ)により武器製造が一時禁じられたが、1950年に朝鮮戦争が始まると、米軍の発注に応じ弾薬などの生産を再開。67年に佐藤栄作内閣が①共産圏②国連決議で禁じられた国③国際紛争当事国またはその恐れのある国――への武器輸出を禁じる「武器輸出三原則」を表明。ハト派の三木武夫内閣が76年、憲法前文の平和国家の理念を重視し、事実上の全面禁輸を決めた。
3.Q-全く輸出してこなかったの?
4.A:武器輸出三原則ができた後は、官房長官談話などで個別ケースを例外的に認める対応を続けたが、2011年に野田佳彦内閣が緩和。平和貢献・国際協力や国際共同開発・生産であれば、相手国と取り決めを結び輸出を認めるとした。そして、保守色が強い安倍晋三内閣が14年に「武器輸出三原則」を撤廃し、新たに「防衛装備移転三原則」を定めた。
5.Q-「防衛装備移転三原則」って何?
6.A:武器輸出を可能とする原則のことだ。①紛争当事国などを除く②輸出を認める場合を限定し厳格に審査③目的外使用や第三国移転に事前同意を義務づける――を満たせば、日本は他国に武器を輸出できると定めた。
7.Q-日本は武器をどんどん輸出できるようになったの?
8.A:そうでもない。14年以来、完成品の輸出はフィリピンへの警戒管制レーダー1件のみ。政府は「運用指針」の規制が厳しすぎると考え、今回大幅見直しに踏み切る。
9.Q-なぜ政府は武器輸出の拡大を図っているの?
10.A:安全保障環境が厳しくなったからだと政府は説明している。輸出先の有力候補は、米国とその同盟国・友好国である「同志国」だ。とくに東南アジアの「同志国」への輸出を重視し、中国への抑止力になることを期待している。また、国内の防衛産業の強化につなげる狙いもある。(長崎潤一郎)
(https://digital.asahi.com/articles/ASRDQ4R5CRDQULFA00Z.html?pn=5&unlock=1#continuehere 参照)

 また、朝日新聞は同日、この問題を考えるための視点(「【視点】日本は米国の武器弾薬『下請け』に 輸出管理に国会関与必要」(編集委員・佐藤武嗣))を報じる。
 朝日新聞の視点は以下のもの。
1.防衛装備移転三原則を大幅に緩和し、殺傷能力のある武器輸出に踏み切るのは、米国からの強い要請を受けたものだ。米軍の武器・弾薬の在庫不足分を日本が補?(ほてん)する「下請け」の役割を担うと同時に、米国の要請で、米国以外の国への殺傷兵器の直接輸出も可能となる。
2.米国は、ウクライナへ多様な砲弾や兵器システムを大量に供与、最近ではイスラエルにも砲弾を提供しており、米メディアは「米国の武器・弾薬の備蓄が枯渇するリスクがある」と報じている。
3.実際、バイデン米政権は数カ月前から、日本政府に対し、水面下で武器・弾薬の輸出拡大を強く働きかけていた。
4.新たな指針を受け、輸出第一弾となる地対空ミサイル「パトリオット」の米国供与に関する閣議決定でも「米国政府からの要請を踏まえ」、「米軍の在庫を補完する」のが目的だと明記された。
5.米国の要請に応じた背景にあるのは、米国による「見捨てられ」への懸念だ。政府内には「米軍の武器・弾薬が底をつけば、日本周辺の有事対応にも影響がでる」(防衛省幹部)との声があり、そうした懸念は一定程度理解できる。
6.ただ、米軍の武器・弾薬を補うため、米国からライセンスが付与され、日本で生産した武器について、こうした米国への「還流」が常態化し、パトリオット以外の殺傷兵器を含む武器の種類や量も拡大しかねない。
7.米国が紛争国へ武器を輸出し、日本が対米輸出によって、その米軍の在庫不足を補う「玉突き輸出」は、他国から見れば、日本による間接的な紛争国への武器輸出と映るだろう。
8.また、日本でのライセンス生産品に関し、米の要請があれば、米国を経由せずに非紛争国への直接輸出が可能になる。日本が「日本の安全保障上の必要性を考慮して特段の事情」があると判断すれば、紛争国にも殺傷兵器を直接供与する余地も残すなど、紛争を助長するリスクをはらむ。
9.いま国際社会では、欧米と中ロ朝を軸とした二極対立が深まり、連携国・友好国間での武器・弾薬を融通する姿も目立つ。今回、「侵略を受けた国」に非殺傷兵器を供与できるよう枠組みを拡大したのもこうした背景がある。ただ、「侵略を受けた国」をどう認定するのか、内閣官房幹部は「こうだという基準はない」と語る。
10.米国では武器輸出管理法で武器輸出に米議会への報告・承認が原則必要と定めている。日本がかつてのように、武器の原則禁輸なら国会の関与は不要だろうが、あいまいな解釈を含んだまま、殺傷兵器を含む武器輸出が拡大するのであれば、審査プロセスも見直しが必要だ。
11.政府の一存で決めるのではなく、米国同様、その都度、是非を審査・判断する国会の関与を検討する必要があるだろう。(編集委員・佐藤武嗣)
(https://digital.asahi.com/articles/ASRDQ5JF5RDQULZU001.html?pn=4&unlock=1#continuehere 参照)


 日本の安全保障について、全体的に捉え直す必要がある。
 この朝日新聞からの「防衛装備移転三原則を大幅に緩和し、殺傷能力のある武器輸出に踏み切るのは、米国からの強い要請を受けたものだ。米軍の武器・弾薬の在庫不足分を日本が補?(ほてん)する『下請け』の役割を担うと同時に、米国の要請で、米国以外の国への殺傷兵器の直接輸出も可能となる。」、との提起は、まさしく日本現状を突くものである。


# by asyagi-df-2014 | 2024-03-17 19:15 | 安全保障 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人