札幌高裁は、民法や戸籍法の規定が同性婚を認めないことを、違憲だと判断した。(1)
2024年 03月 19日
札幌高裁は、2024年3月14日、民法や戸籍法の規定が同性婚を認めないことは、日本国憲法に違反する、と判断した。
また、札幌高裁は、「付言」で、次のことを求めている。
1.同性間の婚姻を定めることは、国民に意見や評価の統一を求めることを意味しない。根源的には個人の尊厳に関わる事柄であり、個人を尊重するということだ。
2.同性愛者は日々の社会生活で不利益を受け、自身の存在の喪失感に直面しているのだから、その対策を急いで講じる必要がある。
3.喫緊の課題として、同性婚につき、異性婚と同じ婚姻制度を適用することを含め、早急に真摯な議論と対応をすることが望まれる。
まさに、この札幌高裁判断は、「私は私のままで、この国で胸を張って生きていいんだと思えました」(朝日新聞)、との切実な声に答えようとするもの。
この日の札幌高裁判決について、朝日新聞は、次のように報じた。
朝日新聞は2024年3月15日、「同性婚訴訟、高裁判決に喜びの声 『変わっていく、変えていける』(新谷千布美、上保晃平)」、と次のように報じた。-2024年3月15日
1.「私は私のままで、この国で胸を張って生きていいんだと思えました」
2.14日、民法や戸籍法の規定が同性婚を認めないことを、札幌高裁は違憲だと判断した。判決後の集会で、原告の一人、中谷衣里(なかやえり)さん(32)は涙ながらに喜びを語った。
1.原告側が、今回の違憲判決で画期的だったと評価したのは、「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立する」などと婚姻の自由を定めた憲法24条1項についての判断だ。判決は、この条文が同性婚も保障していると認定した。
2.さらに、同性婚が認められていない現状は、同性愛者がアイデンティティーの喪失感を抱く事態を招いているなどとも指摘。そのうえで、民法などの規定が同条違反だと結論づけていた。
3.憲法24条1項について、一審の札幌地裁判決は「異性婚について定めたものであり、同性婚について定めるものではないと解するのが相当」としていた。違憲判決を出した名古屋地裁でも、同様の判断がなされていた。
4.これまでの判決は、家族として生活する法的な保護が無いことに焦点を当てていた。2022年の大阪、東京両地裁判決では、同性カップルの法的承認の手段として、婚姻制度と別の類似制度を創設する方法もあるとしていた。
(「別制度は『二級』と位置づけられる」)
1.こうした別制度の創設について、札幌高裁での控訴審で、弁護団は「同性カップルの関係や同性愛者の存在自体が『二級』であると位置づけられ、差別が固定化される」と指摘した上で、同性カップルの尊厳が著しく損なわれると訴えていた。
2.同性カップルのパートナーシップ制度を導入している自治体は増えており、道内では札幌市や旭川市などで施行されている。ただ、広域自治体の北海道は制度を導入しておらず、居住地が変われば通用しないといった課題もあった。
3.今回の札幌高裁判決は、24条1項について「旧憲法下の家制度の制約を改め、対等な当事者間の自由な意思に基づく婚姻を定める趣旨」だと指摘した。
(高裁「目的をふまえて解釈」)
1.判決は、「両性」という言葉が憲法の制定当時、「同性間の婚姻までは想定されていなかった」とするものの、憲法や法律の解釈をする場合には「文言や表現のみではなく、その目的とするところを踏まえて解釈する」ことが一般的だとして違憲の判断を導いた。
2.中谷さんは、これまでの地裁判決で「(24条1項は)異性婚について定めたもの」といった説明を聞くたび、「私や周りにいる同性同士のカップルがいないようなものにされていると感じていた」と振り返る。「今回の判決には本当にはげまされた」と笑顔を見せた。
(最高裁へ上告する方針)
1.弁護団も「これまでの判決の中で最も進んだ判決だった」と評価。
2.判決が、同性婚の制度を定めることを「喫緊の課題」と付言したことに触れ、「法改正に、もはや一刻の猶予もないことを指し示すもの」とする声明も出した。
3.原告側は今後、最高裁へ上告する方針で、弁護団の綱森史泰弁護士は「ただちに国会が立法をしなければいけないと言い切ってほしい。上告して強調したい」と話した。
(「変えていける 希望を証明」)
1.札幌高裁の判決後に、札幌市内のホテルで開かれた集会。原告の国見亮佑さん(49、仮名)は判決文を見つめて喜びをかみ締めた。
2.「すごいことが書いてあるんですよ。ここに」
3.斎藤清文裁判長が判決内容を説明する間、涙をこらえきれなかった。「誰が聞いても違憲だと言っているなって……」
4.パートナーのたかしさん(52、同)は「いま思うと、提訴からの5年間で自分はかなり(心が)削られていたのかもしれない」と振り返る。「でも、この判決で自分の土台を取り戻せたような気持ちがする。絶望している暇なんかなくて、本当にこれから変わっていく、変えていけるという希望を証明した判決だと思います」
5.亮佑さんは、中学3年で同性愛を自覚。大学卒業後、母親に「話がある」と手紙を出した。母親の反応は「心配しないで大丈夫だからね」。22年前にたかしさんと交際を始めた。
6.この日の高裁判決は、同性婚を認めない民法や戸籍法の規定を違憲とした一方、「国会が立法措置を怠っていたと評価することはできない」と国への損害賠償請求は棄却した。ただ、「同性婚を定めることは、国民の意見の統一を求めることを意味しない。根源的には個人の尊厳に関わる事柄であり、喫緊の課題として、早急に真摯(しんし)な議論と対応をすることが望まれる」と付言した。
7.2人は同性婚の制度化を目指しているが、亮佑さんは「正直、国会議員が同性婚の制度をつくってくれるとは思えない」と話す。「だから司法の役割は本当に大事。このままの勢いで最高裁に行けたらと思っています」
(「変わらないのは国会だけ」)
1.「自分が思っている以上に良い判決でいまだに信じられない」
2.原告の中谷衣里さんのパートナーで、自身も原告である30代の女性=札幌市=は、判決後の会見で声をはずませた。「裁判長の口からもう一回聞きたいぐらいです」と振り返った。
3.中谷さんと交際を始めてから15年以上経つ。雪解けの時期におそろいの靴を買うことが習慣だ。数年前、中谷さんが交通事故にあったときは不安になった。幸い軽傷で、中谷さん本人から「車にはねられた」と連絡が来たが、「これが大きな事故だったら連絡がきたかな、と……」と感じた。
4.5年前の2019年1月、中谷さんと2人で札幌市内の区役所に婚姻届を出した。受理されないとわかっていたが、裁判上の証拠とするための提出だった。
5.当時は「どうせ受理されない」「区役所の人の仕事を増やして申し訳ない」と暗い気持ちだったという。でも、この日の判決を聞いて、当時の自分に「下を向かないで」と声をかけたい思いになったという。
6.「少しずつ、受理される日は近づいているよって」
7.この5年間で、友人らから「なんで結婚できないんだろうね」と声をかけられることが増えたという。社会は前向きに変わっている。だから言いたい。
8.「変わらないのは国会だけです」(新谷千布美、上保晃平)
(https://digital.asahi.com/articles/ASS3G73RLS3GIIPE00B.html?pn=7&unlock=1#continuehere 参照)
また、朝日新聞は同日、「同性婚訴訟、札幌高裁判決(要旨)」、とこの高裁判決の要旨を報じた。
1.同性婚を認めない民法や戸籍法の規定は憲法に違反すると判断した14日の札幌高裁の判決要旨は以下の通り
(憲法13条(幸福追求権)に違反するか)
1.性的指向は、生来備わる性向であり、社会的には異性愛者と同性愛者それぞれの取り扱いを変える本質的な理由がない。人が個人として尊重される基礎であり、人格権の一内容を構成し得るものだ。
2.しかし、性的指向や同性間の婚姻の自由にかかる人格権の内容は憲法上、一義的にとらえられるべきものではなく、法制度との関係で初めて具体的にとらえられる。
3.憲法24条は文言上、異性間の婚姻を定める。これに基づいて定められた各種の法令、社会の状況などを踏まえて検討すると、憲法13条が人格権として性的指向または同性婚の自由を保障しているとは直ちに言えない。本件規定が憲法13条に違反すると認めることはできない。
4.もっとも、性的指向及び同性間の婚姻の自由は重要な法的利益として、憲法24条における立法裁量の検討にあたって考慮すべき事項である。
(憲法24条(婚姻の自由や両性の本質的平等)に違反するか)
1.憲法24条1項は文言上、両性間の婚姻を定めている。旧憲法下の家制度の制約を改め、個人の尊重がより明確に認識されるようになったとの背景のもとで解釈することが相当だ。1項は、婚姻について当事者間の自由かつ平等な意思決定に委ねられるべきだという趣旨を明らかにしている。2項は、婚姻及び家族に関する事項の立法にあたり、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべきだと定める。
2.性的指向及び同性間の婚姻の自由は、個人の尊重及びこれに係る重要な法的利益だ。1項は、人と人との間の自由な結びつきとしての婚姻をも定める趣旨を含むもので、異性間の婚姻のみならず、同性間の婚姻についても、異性間の場合と同じ程度に保障していると考えるのが相当だ。
3.同性愛者は、婚姻による社会生活上の制度の保障を受けられていない。不利益の程度が著しいだけでなく、アイデンティティーの喪失感を抱いたり、自身の存在意義を感じられなくなったりするなど、個人の尊厳をなす人格が損なわれる事態となっている。
4.他方、同性婚を定めた場合の不利益、弊害の発生はうかがえない。同性婚を可能とする国は多く、国連自由権規約人権委員会は、同性婚を享受できるよう指摘している。国民への調査でも同性婚を容認する割合はほぼ半数を超える。パートナーシップ制度は自治体の制度という制約があり、同性婚ができないことによる不利益が解消されているということはできない。
5.本件規定は、少なくとも現時点では国会の立法裁量の範囲を超え、24条に違反する。
(憲法14条1項(法の下の平等)に違反するか)
1.問われるのは、本件規定が同性婚を定めていないため、異性愛者は異性と婚姻することができるのに、同性愛者は同性と婚姻ができないという婚姻制度での区別が、合理的理由のない差別的取り扱いに当たるか否かだ。
2.同性愛者は、異性愛者の場合に異性との婚姻によって享受できる様々な制度が適用されない、という著しい不利益を様々な場面で受けている。
3.国会の立法裁量を考慮しても、本件規定が異性愛者には婚姻を定めているのに、同性愛者には婚姻を許していないことは、現時点では合理的な根拠を欠く差別的取り扱いであり、14条1項に違反する。
(国会の立法不作為にあたるか)
1.国会には立法の裁量があるが、同性婚を許さない本件規定について、国会の議論や司法手続きで憲法違反が明白になっていたとはいえない。立法の在り方には多種多様な方法が考えられ、設けるべき制度の内容が一義的に明確であるとはいい難い。同性婚に対する法的保護に否定的な意見や価値観を持つ国民も存在し、議論を経る必要がある。
2.国会が正当な理由なく、長期にわたって本件規定の改廃などの立法措置を怠っていたとは評価できない。国家賠償法上、違法とは認められない。
(付言)
1.同性間の婚姻を定めることは、国民に意見や評価の統一を求めることを意味しない。根源的には個人の尊厳に関わる事柄であり、個人を尊重するということだ。
2.同性愛者は日々の社会生活で不利益を受け、自身の存在の喪失感に直面しているのだから、その対策を急いで講じる必要がある。
3.喫緊の課題として、同性婚につき、異性婚と同じ婚姻制度を適用することを含め、早急に真摯な議論と対応をすることが望まれる。
(https://digital.asahi.com/articles/DA3S15887414.html?pn=3&unlock=1#continuehere 参照)
さらに、朝日新聞は同日、この高裁判決内容に関して、「(時時刻刻)多様な愛、社会も司法も 24条、趣旨は「人と人の自由な婚姻」 同性婚訴訟」(田中恭太、村上友里、根岸拓朗、遠藤隆史、二階堂友紀、笹川翔平)、と踏み込んで報じた。
1.一連の同性婚訴訟で初の高裁判断となった札幌高裁判決は、憲法24条1項の婚姻の自由について「同性婚も保障する」と初めて踏み込んだ。パートナーシップ制度が広がり、社会が変わりつつあるが、政治の動きは鈍い。
2.「憲法24条1項は人と人との自由な結びつきとしての婚姻をも定める趣旨で、同性婚も保障している」
3.14日午後の札幌高裁判決は、同日午前の東京地裁までの6件の地裁判決が認めなかった24条1項違反に踏み込んだ。
4.同項は「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」と定める。憲法に「両性」と明記されているため、地裁はいずれも、文字通り「異性間の婚姻」を指し、同性婚を保障しているとは言えない、と解釈してきた。
5.これに対し、札幌高裁は「文言上、異性間の婚姻を定めている」と認めつつも、法令を文言・表現だけでなく、目的を踏まえて解釈することは一般的で、「憲法解釈でも同様だ」とした。
6.その上で、同項の目的としては、家族や結婚の仕組みが「家」中心だった明治憲法下の制約を改め、対等な個人が自由な意思で婚姻することを定めた、と指摘。「個人の尊厳がより明確に認識されるようになった」時代の変化も踏まえれば、条文は同性婚も保障しているとの見解を導いた。
7.地裁レベルの6判決では、「合憲」は1件にとどまり、「違憲」が2件、「違憲状態」が3件だった。
8.違憲・違憲状態の5件のうち4判決は、「婚姻や家族に関する法律は個人の尊厳に立脚されなければならない」と定めた憲法24条2項に照らして判断した。
9.法律婚をすれば社会保障や税などで優遇措置がある。2人の関係が社会的にも「公証」される。同性カップルがこうした利益を一切得られないのは「人格的利益の侵害」などという理屈だ。
10.ただ、これら4判決は、異性間の婚姻とは別に、同性カップル向けの類似の制度作りが選択肢になり得ると示唆していた。24条1項を「異性間だけの婚姻の保障」と捉えた限界とも言える。
11.一方、札幌高裁は、現行制度が同項に加え、「法の下の平等」を定めた憲法14条にも違反すると述べ、こうした立場をとらなかった。
12.弁護団は「同性間の婚姻の自由を異性間と同程度に保障しなければならないとした、最も進んだ判決だ」と評価した。(田中恭太)
(法より先に、パートナー制度急拡大)
1.同性婚の国際的な状況に詳しい明治大学の鈴木賢教授(比較法)によると、世界では2001年にオランダが初めて同性婚を法制化し、現在は37カ国・地域で法的に認められている。欧州連合(EU)では、加盟27カ国のうち、16カ国ですでに法制化された。
2.アメリカや台湾では、裁判の判断が法制化の流れを作った。19年にアジアで最初に法制化した台湾は憲法裁判所にあたる大法官会議が17年、同性婚を認めないのは違憲との解釈を示していた。
3.鈴木教授は、世界での動きについて「法制化する流れは後戻りできない地点まで来ている」と指摘する。
4.主要7カ国(G7)で同性カップルへの法的保障がないのは日本だけ。一方、自治体が同性カップルの関係を公的に認める「パートナーシップ制度」は急速に広がる。
5.パートナーとして公営住宅に入居したり、公立病院での病状説明を受けたりできる。民間でも、生命保険金の受け取り▽住宅ローンの「収入合算」や「ペアローン」▽携帯電話の「家族割」などで活用されている。
6.同性婚の法制化を求める公益社団法人「Marriage For All Japan」によると、19年3月の導入自治体は11だったが、20年以降に急増。今月1日現在では397となり、人口の8割余りをカバーする。
7.都道府県レベルでも、基礎自治体でも導入がない「空白県」は宮城県だけだったが、仙台市が24年度中の導入を表明し、空白県はなくなる。同法人の森あい弁護士は「当事者らの活動や訴訟により、首長や地方議員の間で課題が広く知られるようになった」とみる。
8.後押しする動きは企業にも広がる。同性婚の法制化への賛同を募るキャンペーン「Business for Marriage Equality」には、今月7日時点で477の企業・団体が賛同を表明している。
9.2月に賛同を表明した武田薬品工業は、4月から福利厚生制度の「配偶者」に同性カップルも含むと明記する。性的少数者らの理解や支援のために活動する従業員グループの金生竜明(かのおたつひろ)さん(47)は「全ての従業員と、薬を使う患者さんが尊重され、自分らしく生きられる環境を作ることはビジネスの成長にもつながる」と言う。(村上友里、根岸拓朗)
(性的少数者の権利擁護、最高裁前向き)
1.性的少数者をめぐる訴訟で、司法は近年、権利擁護に前向きな姿勢を相次いで示している。象徴的だったのが、生まれた時の性別とは異なる性別で生きるトランスジェンダーをめぐり、昨年10月に最高裁大法廷が下した決定だ。戸籍上の性別を変えるための「性同一性障害特例法」について、生殖能力を失わせる手術を求める要件は憲法違反だと判断。自認する性別で法的に扱われることは「重要な法的利益だ」と指摘した。
2.トランスジェンダーの経済産業省職員が職場でのトイレ使用を制限されたと訴えた訴訟でも、最高裁第三小法廷が昨年7月、職員の逆転勝訴とする判決を出した。さらに、犯罪被害者の遺族を対象にした給付金を同性パートナーが受け取れるかが争われている訴訟では、同小法廷が今月26日の判決で、「同性パートナーは対象外」とした二審の判断を見直す可能性がある。
3.あるベテラン裁判官は「大きな流れとして、最高裁が性的少数者の権利擁護に前向きなのは確かだ」と話す。
4.こうした訴訟の「本丸」とも位置づけられているのが同性婚訴訟だ。「同性婚を認めないのは違憲」という司法判断が確定すれば、同性同士でも結婚による法的保護を受けられるようになり、性的少数者の権利状況は大きく前進する。
5.高裁で審理中の訴訟は札幌のほかに四つあり、東京高裁では4月に東京1次訴訟が結審する見通しだ。ただ、政治が立法による解決を図らない限り、最終的に最高裁に判断が委ねられるのは必至で、結論が出るまでには、さらに年単位の時間がかかるとみられる。
6.民法の歴史的変革に司法は踏み込むのか。別の裁判官は話す。「最高裁が判断を示すのは、高裁判決がある程度集まってからだろう。高裁の結論が割れる可能性もある。最高裁にとっても、過去に例がないほど難しい判断になる」(遠藤隆史)
(取り残される政治 自民「同性婚、相容れず」)
1.社会の価値観は大きく変わり、司法判断も前に進んでいるが、政治の動きは依然として鈍い。
2.岸田文雄首相は1月31日の衆院本会議で、同性婚導入について「国民一人一人の家族観とも密接に関わるものであり、国民各層の意見、国会における議論の状況、同性婚に関する訴訟の状況についても注視していく必要がある」と述べた。
3.安倍晋三首相(当時)が2015年2月の参院本会議で「わが国の家族のあり方の根幹に関わる問題で、極めて慎重な検討を要する」と答弁して以降、政府は消極的な姿勢をとり続けてきた。
4.自民党は安倍政権下の16年、特命委員会で基本的な考え方をまとめ、パンフレットを作った。その中で「同性婚容認は相容(あいい)れません」「『パートナーシップ制度』についても慎重な検討が必要」とした。その後、党としての見解は更新されていない。
5.ただ、変化の兆しがないわけではない。昨年11月の参院法務委員会で、同性婚の課題を問われた小泉龍司法相は「女性同士が結婚した時、一方の女性が出産した子について、他方の女性が2人目の母になるのか、あるいは新たな概念を作り出す必要があるのか、検討が必要」と答弁した。
6.質問した立憲民主党の石川大我氏は「具体の話が出てきたのは初めてだと思う」と評価した。
7.自民党最大派閥だった安倍派が裏金事件を受けて解散を決めたことも、今後の議論に影響する可能性がある。同性婚などに慎重な保守系議員が多く、LGBT理解増進法に関する党内議論の際、安倍氏を中心に反対論を形成した経緯がある。安倍派のベテラン議員は「反対派の政治的な影響力は弱まっている」と話す。
8.林芳正官房長官は14日の会見で、札幌高裁と東京地裁の判決について「確定前の判決で、他の裁判所に同種の訴訟が係属していることから、その判断も注視していきたい」と述べた。そのうえで同性婚の導入について「親族の範囲やそこに含まれる方々の間にどのような権利義務関係を認めるか、といった国民生活の基本にかかわる問題だ」と指摘。「地方自治体におけるパートナーシップ制度の導入状況などを引き続き注視していく」とした。(二階堂友紀、笹川翔平)
(https://digital.asahi.com/articles/DA3S15887357.html?pn=3&unlock=1#continuehere 参照)
あわせて、朝日新聞は同日、「【そもそも解説】同性婚が『認められない』日本、どんな不利益が?」(田中恭太)、と解説した。
1.同性婚が認められないのは憲法違反だと2019年に起こされた5つの訴訟で、最後となる福岡地裁判決が8日、言い渡され、「違憲状態」と判断した。同性婚をめぐる日本や世界の状況はどうなっているのか。
2.Q-日本では同性婚(こん)が「認められていない」と言われる。禁止されているのか。
3.A:憲法や法律に同性婚をはっきりと禁じる規定はない。ただ、民法や戸籍(こせき)法は「夫婦」や「夫」「妻」といった言葉を使う。実務上、同性同士の婚姻はできない。
4.Q-同性カップルが法律婚ができないことの不利益は。
5.A:様々な不都合がある。例えば、税金の配偶者(はいぐうしゃ)控除(こうじょ)はないし、相手の法定相続人にもなれない。子どもの親権は共同で持てず、パートナーが病気になっても家族ではないとして病状の説明を断られることもある。外国人パートナーに配偶者ビザは出ない。
6.Q-同性愛についての考え方はどう変わってきた?
7.A:かつては精神疾患(しっかん)や障害とされたが、現在は病気などではなく、本人の意思では変えられないとの知見が確立している。
8.Q-外国ではどうなっているのか。
9.A:NPO「EMA日本」によると、2001年のオランダに始まり、34の国・地域が同性婚の制度を持つ(今年2月現在)。主要7カ国(G7)で、同性カップルに対して国として法的な権利を与(あた)えていないのは日本だけだ。
10.Q-日本で広がる「パートナーシップ制度」とは。
11.A:自治体が同性カップルを結婚に相当する関係と認めて証明書を発行する制度だ。公益社団法人「Marriage For All Japan」によると、少なくとも323の自治体が導入している(今年6月現在)。自治体によって様々だが、家族向けの公営住宅への入居ができるなどの対応がとられている。民間でも、証明書があれば配偶者として扱(あつか)う保険会社などがある。しかし、法的な効果はなく、法律婚と同じとは言えない。
12.Q-国内の理解は進んだ?
13.A:最近の調査では、同性婚制度に肯定(こうてい)的な意見が、否定的な意見を上回っている。朝日新聞の今年2月の世論調査では、同性婚を法律で「認めるべきだ」が72%で、「認めるべきではない」は18%にとどまった。(田中恭太)
(https://digital.asahi.com/articles/ASR68457RR66UTIL01Y.html?pn=5&unlock=1#continuehere 参照)
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by asyagi-df-2014
| 2024-03-19 12:09
| 書くことから-憲法
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