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「重要土地等調査及び利用規制法案」を廃案に。(3)

 この問題の本質を捉えるために。
 廃案しかない。

「重要土地調査規制法案に反対する市民団体」による「憲法と国際人権規約に反する『重要土地調査規制法案』の撤回を求めます」、とする「重要土地調査規制法案に関する緊急声明」(2021年5月10日)を掲載します。なお、アンダーラインは筆者。


重要土地調査規制法案に関する緊急声明

憲法と国際人権規約に反する「重要土地調査規制法案」の撤回を求めます
                    重要土地調査規制法案に反対する市民団体

はじめに
 日本の社会における表現の自由の侵害、政府に関する情報の秘匿化などに疑問を持つ多くのNGOが、国連自由権規約委員会へのオルタナティブレポートを提出し、委員会の勧告を求め、その勧告の実現を日本政府に求めていくことを共同の目的として表現の自由と開かれた情報のためのNGO連合(NCFOJ)を結成しました。すでに2020年9月30日に共同レポートの第一弾を自由権規約委員会に提出しています。
 国連自由権規約委員会の日本審査は、世界的な新型コロナ感染拡大のために大幅に遅延しています。そうした中でも、日本社会における表現の自由の侵害、政府に関する情報の秘匿化などの状況は悪化しているといわざるをえません。NCFOJ内部で、追加レポートの作成を検討しています。
 その検討過程で、今般国会に提出された「重要土地調査規制法案」には、人権保障上、特に表現の自由、市民活動の自由、プライバシー権、知る権利との関係において、看過することのできない問題点が含まれていることに気づきました。
 何としてもこの法案は成立させてはならない、その思いから、NCFOJとしての追加レポート作成とは別個に、同様の問題意識をもつNCFOJ内外の市民団体の連名で、急遽、声明を発することとしました。
 法案の撤回と廃案を求める理由を以下に述べます。

第1 立法の経緯と法案の概要
 本年3月26日、日本政府は「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案」(重要土地調査規制法案)を閣議決定し、国会に提出しました。
 この法案は、昨年12月10日に自民党政務調査会がまとめた「安全保障と土地法制に関する特命委員会」の提言をもとに、閣法として提出されたものです。法案提出にあたって、当初は連立与党の公明党は「まるで戦時下を思わせる民有地の規制」(漆原良夫公明党前議員の「うるさん奮闘記」より)などとして強い難色を示していましたが、法案の微修正によって個人情報への配慮条項を付加すること、指定については、「経済的社会的観点」から留意することを法文上に盛り込む方向などが確認されたために、法提案に応じた経緯がありました。
 法案では、基地など安全保障上の「重要施設」周辺概ね千メートルの区域や「国境離島等」を「注視区域」または「特別注視区域」に指定して土地・建物の利用状況を調査し、重要施設や国境離島等の「機能を阻害する行為」に対し行為の中止または「その他必要な措置」を勧告・命令することを定めたものです。命令に従わない場合は懲役刑や罰金刑を課すことができます。「特別注視区域」に指定されると、土地売買等の取引の際は事前に取引の目的等の報告が求められ、虚偽の報告をしたり、報告を怠った者は同じく処罰されます。

第2 立法事実は存在しない。不必要である
 前述のように、法案の提出作成に至ったきっかけは、外国人・外国政府の基地周辺や国境離島での土地取得に規制を求める自治体議員や自民党議員の要望でした。しかし実際には外国人の土地取得によって基地機能が阻害される事実(立法事実)が存在しないことが明らかになっています(2020年2月25日、衆院予算委員会第8分科会)。
 にもかかわらず、法案は広く国が定める「重要施設」周辺の土地・建物の所有者や利用者を監視し、土地・建物の取引や利用を規制するものになりました。この法案に対して、市民の財産権を侵害し土地取引や賃貸を伴う経済活動を停滞させるとの懸念の声があります。
 しかし、本声明では、それにも増して広く市民が監視され、市民の調査活動・監視活動等が萎縮・制限されることにより、表現の自由、市民活動の自由、プライバシーの権利、知る権利が大きく損なわれることに警鐘を鳴らしたいと思います。

第3 法案の核となる概念や定義がいずれも極めてあいまいである
 この法案は、法案中の概念や定義が曖昧で政府の裁量でどのようにも解釈できるものになっています。まず、注視区域指定の要件である「重要施設」のうちの「生活関連施設」とは何をさすのかは政令で定め、「重要施設」の「機能を阻害する行為」とはどのような行為なのかも政府が定める基本方針に委ねています。
 重要施設には自衛隊と米軍、海上保安庁の施設だけでなく、「その機能を阻害する行為が行われた場合に国民の生命、身体又は財産に重大な被害が生ずる恐れのあるもので政令で指定するものを含む」とされており、原発などの発電所、情報通信施設、金融、航空、鉄道、ガス、医療、水道など、主要な重要インフラは何でも入りうる建付けの法案となっています。
 調査の対象者のどのような情報を調べるのかについても政令次第になっています。さらに調査において情報提供を求める対象者としての「その他関係者」とは誰か、勧告・命令の内容である「その他必要な措置をとるべき旨」とはどのような行為を指すのかについては、政令で定めるという規定すらなく総理大臣の判断に委ねられています。市民の自由と基本的人権を阻害する可能性のある、市民に知られては都合の悪い規定は、法文中ではなく政府がつくる基本方針や政令、総理大臣の権限で決められるようにしているのです。刑罰を構成する要件規定が法律に明示されないということは、刑事法の基本原則すら満たしていないものであり、刑罰の構成要件の明確性を求めている憲法31条、自由権規約9条にも違反するものであると言わなければなりません。
 また、刑罰の対象となる行為が明確となっていないため、表現の自由・市民活動の自由に対して萎縮効果を及ぼすこととなり、調査・監視活動が阻害され、憲法21条・自由権規約19条にも違反するおそれがあります。

第4 法案の具体的な問題点
 この法案が成立するとどのようなことが起こりうるか、問題点を以下にあげます。

1.法案7条により、重要施設周辺の土地・建物利用者の個人情報はことごとく収集され監視されることになる
 「施設機能」を阻害する行為やそれをするおそれがあるかどうかを判断するためには、その者の住所氏名などだけでなく、職業や日頃の活動、職歴や活動歴、あるいは検挙歴や犯罪歴、交友関係、さらに思想・信条などの情報が必要となります。すなわち、重要施設の周辺にいる者はことごとくこれらの個人情報を内閣総理大臣に収集され、監視されることになるのです。法案3条は、「個人情報の保護への十分な配慮」「必要最小限度」などと規定していますが、これらの気休めともいえる規定が実効性のある歯止めとなる保証はどこにもありません。このような法案は思想・良心の自由を保障した憲法19条、プライバシーの権利を保障した憲法13条、自由権規約17条に反すると言えます。

2.具体的な違法行為がなくても特定の行為を規制できる
 「重要施設」の周囲や国境離島に住んでいるか仕事や活動で往来している者に対して、政府の意向で調査でき、「機能を阻害する恐れ」があるとの理由で行動を規制できるようになります。しかもその規制は命令に従わなければ懲役刑を含む罰則も含むという苛烈なものです。このような法案は、居住・移転の自由を定めた憲法22条、表現の自由を保障した憲法21条、自由権規約19条に反するものと言えます。また、刑罰の明確性の原則(憲法31条、自由権規約9条)にも違反することとなります。

3.「関係者」に密告を義務付け、地域や活動の分断をもたらす
 法案8条は「重要施設」周辺や国境離島の土地・建物の所有者や利用者の利用状況を調査するために、利用者その他の「関係者」に情報提供を義務付けています。「関係者」は従わなければ処罰されますので、基地や原発の監視活動や抗議活動をする隣人・知人や活動協力者の個人情報を提供せざるを得なくなります。これは地域や市民活動を分断するものであり、市民活動の著しい萎縮、自己規制にも繋がります。このような法案は、憲法19条と自由権規約18条が絶対的なものとして保障している思想・良心の自由を侵害するものです。また、市民の団結を阻害するという意味において、集会結社の自由(憲法21条、自由権規約21条・22条)に対する侵害のおそれもあります。

4.事実上の強制的な土地収用である
 法案11条によれば、勧告や命令に従うとその土地の利用に著しい支障が生じる場合、当該所有者から総理大臣に対して買い入れを申出ることができ、総理大臣は特別の事情がない限り、これを買い入れるものとされています。命令に従わなければ処罰されることになり、やむなく買い入れを申出なければならないのであれば、これは、法案10条3項による土地収用法の適用ともあいまって、重要施設周辺の土地の事実上の強制収用であると言えます。土地収用法は戦前の軍事体制の反省に立ち、平和主義の見地から、土地収用事業の対象に軍事目的を含めていませんでした。軍事的な必要性から私権を制限する法案は憲法前文と9条によって保障された平和主義に反し、さらには憲法29条によって保障された財産権をも侵害するものです。

5.不服申立ての手段がない
 権利制限を受ける市民は、本来それらの指定や勧告・命令に対して不服申立てができるようにすべきですが、法案にはそのような不服申し立ての手段や方法は定められておらず、憲法31条に定められた適正手続きの保障すら著しく侵害するものです。

第5 法案成立が及ぼす影響―私たちは、この法案の撤回と廃案を求めます

1.膨大な量の個人情報の入手・蓄積・分析のために情報機関が強化される
 この法案が成立した場合には、実際の調査では、聞き込み、張り込みはもちろん、警備公安警察が現地で調査し収集して所有する個人情報も入手されることになるでしょう。その収集や分析には相当な人手が必要であり、内閣情報調査室などの市民監視のための情報機関の大幅な拡充や機能強化につながっていく恐れがあります。

2.基地や原発の調査・監視行動も規制の対象とされる
米軍機による騒音や超低空飛行、米兵による犯罪に日常的に苦しめられている沖縄や神奈川などの基地集中地域では、市民が自分たちの命と生活を守るために基地の監視活動や抗議活動に長年取り組んできました。また、ジャーナリストやNGOもこれらの施設について調査活動を行い、その問題点を社会に明らかにしてきました。自衛隊のミサイル基地や米軍の訓練場が新たに作られたり、作られようとしている先島諸島や奄美、種子島でも同じ状況に置かれています。このような、自分たちの命と生活を守る当たり前の基地調査行動・監視行動ですらこの法案は規制の対象にしているといえます。
また、その規制は南西諸島や基地周辺に限らないことは前述したとおりです。重要施設は、原発をはじめ放送局、金融機関、鉄道、官公庁、総合病院などの重要インフラの周辺にまで拡大される可能性があります。大都市圏に住むほぼすべての人が監視と規制の対象となる可能性を含んでいるのです。
このような法案は、市民の多様な表現の自由及び市民の知る権利を保障した憲法21条、自由権規約19条に反するものと言えます。

3. 法案は戦前の「要塞地帯法」の拡大版の再来であり、憲法と国際人権法を著しく侵害するもの。廃案・撤回するしかない
 すなわちこの法案は、憲法改悪の「緊急事態条項」を先取りする形で市民の監視と権利制限を日常化、常態化させる法律なのです。そのような意味で、この法律は、戦前の社会を物言えない社会に変えた軍機保護法・国防保安法とセットで基地周辺における写真撮影や写生まで厳罰の対象とした要塞地帯法(明治32年7月15日法律第105号)の拡大版の再来だといえるでしょう。この法律が成立すれば、市民と市民団体の活動に対する萎縮は限りない連鎖を生み、戦前のように、日本社会を沈黙の支配する社会へと国が変えてしまうことが再現されることすら予想されます。安保関連施設を厚いベールで隠し、一切の批判を封じることから、戦争に向かう政策を補強する戦争関連法の一環であると言わざるをえません。このような法案は決して成立させてはなりません。私たちは政府に対して、日本国憲法と国際人権規約に真っ向から反する、問題の多いこの人権侵害法案を撤回するよう求めます。




# by asyagi-df-2014 | 2021-05-30 06:40 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

沖縄-辺野古-高江から-2021年5月29日

 琉球新報が報じる「沖縄を狙い撃ち」とは、すぐに我が身であるということを指す。
 「自衛隊や米軍の基地など安全保障上重要な施設周辺の土地利用を規制する法案が衆院内閣委員会で可決され、来月1日にも衆院を通過する運びとなった。基地機能を『阻害する行為』が規制対象だが、調査対象は外国人だけでなく自国民にも及び、市民の活動が規制される恐れも指摘されている。新基地建設に抗議する人々は怒りの声を上げた。『なし崩し的に可決された』。基地に反対してきた土木技術者の奥間政則さん(55)はため息をつく。『ドローン規制法もそうだが、いったん可決されると国は恣意(しい)的に解釈し、国策に反対する市民運動を排除する』と指摘し、『辺野古新基地建設や離島の自衛隊基地、原発再稼働に対する反対運動も国が好ましくないと判断すれば排除したり、思想信条を調査したりする権限を国に与えることになってしまう。もっと危機意識を持つべきだ』と強調した。」、と琉球新報。


 沖縄で起こっていること、その現場の事実をきちんと確認すること。
 何よりも、自らが沖縄から受け取るものを明確にするために。
 2021年も、琉球新報と沖縄タイムスの記事を、「沖縄-辺野古-高江-から」を、報告します。


(1)沖縄タイムス-「安全保障環境は厳しい」「沖縄県民を監視」と賛否 土地規制法案 衆院委員会で可決-2021年5月29日 09:40


 沖縄タイムスは、表題について次のように報じた。


1.【東京】衆院内閣委員会は28日、安全保障上重要な施設周辺の土地利用を規制する法案を自民、公明両党と日本維新の会、国民民主党の賛成多数で可決した。立憲民主党は審議不十分とし、採決に反対した。与党は来月1日の衆院本会議での可決と、今国会での成立を目指す。反対した野党は、基地の周辺で暮らす沖縄県民を監視対象にする法案だと批判した。
2.私権制限への配慮や、運用に際し国会や自治体が関与することを盛り込んだ付帯決議案も、与党などの賛成多数で可決した。
3.反対討論に立った塩川鉄也氏(共産)は「米軍占領下の土地強奪で、基地周辺での生活を余儀なくされた沖縄県民を、監視と処罰の対象にするなど断じて容認できない」と批判し、廃案を求めた。
4.足立康史氏(維新)は「安全保障環境は厳しくなっており、民主的統制を法制度として埋め込んだ上で、必要な権限を政府に付与すべきことはいうまでもない」と述べ、修正部分を除く原案に賛成した。
5.法案は、自衛隊基地など重要施設の周囲約1キロや国境離島を「注視区域」に指定できる。土地の利用状況の調査や、施設機能を妨げる行為への中止勧告・命令を可能にする内容。従わない場合には罰則も科せる。
6.司令部機能を持つ自衛隊基地など、特に重要な施設周辺を「特別注視区域」に指定し、一定面積以上の土地売買には利用目的の事前届け出を義務付ける。
7.政府は特別注視区域の指定候補として、与那国島と宮古島に所在する防衛関係施設を挙げている。尖閣諸島周辺で領海警備を担う第11管区海上保安本部(那覇市)と、石垣海上保安部も指定される可能性が高い。
8.法案は、自衛隊基地や国境離島などを外国資本に押さえられ、日本の安全保障が脅かされる事態を防ぐ狙いがある。一方、野党は私権制限の観点から懸念を示している。


(2)沖縄タイムス-ジュゴン絶滅 国が否定 防衛省有識者委員の論文と異なる見解-
2021年5月29日 08:30


 沖縄タイムスは、表題について次のように報じた。


1.【東京】沖縄県名護市辺野古の新基地建設で環境対策を助言する防衛省有識者会議の一部の委員らが、沖縄のジュゴンが「2019年に絶滅した」との論文を英科学誌に投稿した問題で、防衛省の担当者は28日、沖縄のジュゴンの生息状況について「環境省のレッドリストにおいて、絶滅危惧種に指定されているものと承知している」と述べ、絶滅を否定した。環境省の担当者は「生息に期待している」と述べ、いずれも論文と異なる見解を示した。
2.環境団体「ジュゴン保護キャンペーンセンター」との面談で答えた。センターの蜷川義章共同代表は「防衛省が任命した委員であり、責任が問われる」などと追及したが、担当者は「研究者個人の活動として執筆されたもので、お答えする立場にない」とした。
3.沖縄防衛局は昨年、辺野古沖でのジュゴン生息調査で「鳴音」を観測している。蜷川氏らは「論文を書いた委員に鳴音のデータを提供したか」と質問。担当者は「委員との個別のやりとりには、お答えを差し控える」と明言を避けた。
4.環境省の担当者は、昨年度の生息調査で、古宇利島(今帰仁村)や来間島(宮古島市)などでジュゴンの食み跡が見つかったとし「生息しているのではないかと期待しており、引き続き調査する」と話した。
5.センターの吉川秀樹氏は「論文を読み込み、(訂正の申し入れなど)何らかの対応をすべきではないか」と訴えたが、担当者は「査読中ということもあり、個々の論文に対して意見を出すことはできない」と述べるにとどめた。


(3)琉球新報-首里城火災の損害算定額は84億円 保険金は上限の70億円支払い 美術品修復へ-2021年5月29日 10:48


 琉球新報は、表題について次のように報じた。


1.2019年の首里城火災に伴う損害保険金の支払を巡り、沖縄総合事務局と沖縄美ら島財団は28日、保険会社が算定した損害額が計84億4002万円だったと明らかにした。被害額の算定終了に伴い、損害保険金として保険契約上の上限額となる70億円を保険会社から受け取った。被害額の内訳は正殿、北殿など国所有部分が75億9340万円、美術工芸品など美ら島財団所有部分が8億4662万円だった。
2.同局と同財団、県が28日に発表した。損害保険金70億円に加えて、臨時費用500万円も支払われた。支払いは24日付。
3.保険金と臨時費用の計70億500万円のうち、沖縄総合事務局が63億232万円、沖縄美ら島財団が7億267万円を受け取った。沖縄総合事務局の受け取り分は国庫収入となり、財団の受け取り分は美術工芸品などの修復に充てられる。
4.沖縄戦で焼失した首里城を再建した前回の復元事業では、正殿や南殿、北殿などを国が約73億円をかけて復元整備した。国は2026年の首里城正殿再建を目標に掲げている。正殿は本年度中に実施設計、22年度に発注を計画しており、再建にかかる費用は今後確定する。沖縄総合事務局の担当者は「必要額は国の責任で確保していきたい」と語る。
5.首里城の損害保険は、沖縄美ら島財団があいおいニッセイ同和損害保険と契約していた。補償内容の一部として、今年2月に残存物片付け費用約3億8900万円が国に支払われていた。今後、修理付帯費用(上限5千万円)が支払われ、支払い完了となる。
6.保険会社とは別に、那覇市消防局は今年3月までに、首里城火災の被害額を52億8576万円と算出していた。保険会社の算定額との違いは、算出法の違いによるものとみられる。
7.首里城の再建には個人や企業、団体などからの寄付も寄せられている。28日までに県の「首里城火災復旧・復興支援寄付金」には52億6294万円、沖縄美ら島財団の首里城基金には2億5966万円が集まっている。
8.県の寄付金は復旧用の木材・瓦などの費用、同財団の基金は美術工芸品などの復元などに用いられる予定。


(4)琉球新報-基地周辺の土地利用規制の法案 衆院通過へ 内閣委可決 候補一覧は開示拒否-2021年5月29日 05:10


 琉球新報は、表題について次のように報じた。


1.衆院内閣委員会は28日、自衛隊や米軍基地など安全保障上重要な施設周辺の土地利用を規制する法案を自民、公明、日本維新、国民民主各党の賛成多数で可決した。共産党は法案に反対し、立憲民主は審議が不十分だとしてこの日の採決自体に反対したが、自民の木原誠二委員長が職権で採決に踏み切った。一方、同日の審議では規制の対象区域の候補となる自衛隊施設の一覧提出を防衛省側が拒否し、反発が広がった。6月1日の本会議で可決され衆院を通過する見込み。与党は今国会中の成立を目指す。
2.小此木八郎領土問題担当相は質疑で、日本が門戸を開いたことで外国資本が入り、この数十年で環境が変わったと指摘。「善意と悪意が入り交じった時に生じる不安を解消するため調査する」と述べ、法案の必要性を強調した。
3.共産の赤嶺政賢氏は規制対象となる「機能阻害行為」として政府が例示した「機能を阻害する構造物」の具体例を求めた。防衛省は過去3年の間に航空法に基づく高さ制限を超える建物を除去した例はないと答弁した。赤嶺氏は「現行法で対応できており、新法は必要ない」と訴えた。
4.立民の阿部知子氏は、土地の利用状況を調査する主体を明示するよう要求。政府側は、重要施設を所管する省庁に協力を求めると答弁した。
5.法案は、重要施設の周囲約1キロや国境離島を「注視区域」に指定し、所有者の調査や、妨害行為への中止命令を可能にする。司令部機能を持つ基地周辺などは「特別注視区域」とし、一定面積以上の売買に利用目的の事前届け出を義務付ける。


(5)琉球新報-国の「裁定的関与」見直しを 沖縄副知事、辺野古問題受け 全国知事会特別委-2021年5月29日 14:00


 琉球新報は、表題について次のように報じた。


1.全国知事会地方分権推進特別委員会が28日、オンラインで開催され、国への提言書の案について話し合った。謝花喜一郎副知事は名護市辺野古の新基地建設を巡る国との裁判闘争を念頭に、「沖縄では基地問題を巡って過去に知事の処分が取り消されたことがある。地方自治の保障の観点から問題だ」と訴えた。国が自治体の判断を直接否定できる「裁定的関与」のあり方を見直すよう、国に求めることを提案した。
2.謝花副知事は沖縄では関与に関する問題が現実化しているとした上で「憲法が定める地方自治の本旨に基づいた、本来あるべき地方自治を実現するために国への提言にも見直しを盛り込んでほしい」と求めた。辺野古関連では、県が判断した埋め立て承認の取り消しや撤回について、国土交通相が沖縄防衛局の審査申し出を認めて県の決定を取り消している。
3.全国知事会の提言案では当初、裁定的関与について「検討を深める事項」として記載されていた。謝花副知事の提案を受けて要請事項として見直しを明記することになった。
4.全国知事会は2008年に裁定的関与のあり方について見直しを求めている。来月の全国知事会として提言を最終決定し、夏ごろをめどに国に提出する。


(6)琉球新報-「沖縄狙い撃ちだ」 市民活動も制限の恐れと懸念 基地周辺土地規制法案-2021年5月29日 11:09


 琉球新報は、表題について次のように報じた。


1.自衛隊や米軍の基地など安全保障上重要な施設周辺の土地利用を規制する法案が衆院内閣委員会で可決され、来月1日にも衆院を通過する運びとなった。基地機能を「阻害する行為」が規制対象だが、調査対象は外国人だけでなく自国民にも及び、市民の活動が規制される恐れも指摘されている。新基地建設に抗議する人々は怒りの声を上げた。
2.「なし崩し的に可決された」。基地に反対してきた土木技術者の奥間政則さん(55)はため息をつく。「ドローン規制法もそうだが、いったん可決されると国は恣意(しい)的に解釈し、国策に反対する市民運動を排除する」と指摘し、「辺野古新基地建設や離島の自衛隊基地、原発再稼働に対する反対運動も国が好ましくないと判断すれば排除したり、思想信条を調査したりする権限を国に与えることになってしまう。もっと危機意識を持つべきだ」と強調した。
3.ヘリ基地反対協議会の安次富浩共同代表は「集会の自由を妨げる“人権規制”の法案だ。沖縄を狙い撃ちしている」と憤った。同時に「国民も法案に対する反対の声が弱い。自分の身に降り掛からないと思っているからだろうか」と述べ、県外との温度差も懸念した。


# by asyagi-df-2014 | 2021-05-29 17:53 | 沖縄から | Comments(0)

沖縄-辺野古-高江から-2021年5月28日

 こうしたことが許されていいはずはない。
 「米軍嘉手納基地内に、米陸軍の地対空誘導弾パトリオット・ミサイル(PAC3)などのミサイル保管庫が完成したことが27日、分かった。19日に同基地内で式典が行われた。米軍はミサイル配備の迅速化が狙いだとしている。周辺自治体には事前の連絡はなかった。さらなる基地機能強化となれば、地元住民からの反発は必至だ。PAC3は中国をにらんだ米軍戦略で、2006年10月、在日米軍再編合意に基づき嘉手納飛行場と嘉手納弾薬庫地区に配備された。本紙は米陸軍や沖縄防衛局に機能や設置目的など施設の詳細を問い合わせたが、現時点で回答はない。」、と琉球新報。


 沖縄で起こっていること、その現場の事実をきちんと確認すること。
 何よりも、自らが沖縄から受け取るものを明確にするために。
 2021年も、琉球新報と沖縄タイムスの記事を、「沖縄-辺野古-高江-から」を、報告します。


(1)琉球新報-米軍嘉手納基地内にミサイル保管庫新設 周辺自治体に連絡なく-2021年5月28日 06:20


 琉球新報は、表題について次のように報じた。


1.米軍嘉手納基地内に、米陸軍の地対空誘導弾パトリオット・ミサイル(PAC3)などのミサイル保管庫が完成したことが27日、分かった。19日に同基地内で式典が行われた。米軍はミサイル配備の迅速化が狙いだとしている。周辺自治体には事前の連絡はなかった。さらなる基地機能強化となれば、地元住民からの反発は必至だ。
2.PAC3は中国をにらんだ米軍戦略で、2006年10月、在日米軍再編合意に基づき嘉手納飛行場と嘉手納弾薬庫地区に配備された。
3.本紙は米陸軍や沖縄防衛局に機能や設置目的など施設の詳細を問い合わせたが、現時点で回答はない。
4.在日米陸軍の公式ホームページなどによると、新設された施設は米陸軍工兵隊日本地区を中心とした共同建設事業の一環で、日本の工業規格や材料を用いた革新的なものだとしている。敷地内に二つの主要な施設があり、ミサイルは最新鋭の冷却および湿度監視システム下で保管される。展開が必要な際、ミサイル配備が迅速かつ円滑にできるようになるほか、ミサイル保管の安全性を強化できるとしている。
5.沖縄市、嘉手納町、北谷町でつくる「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」の会長・野国昌春北谷町長は「情報がまだ入ってきていない。嘉手納基地の機能強化には反対だが、正式な発表があればその時にコメントしたい」と述べた。
(https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1329037.html 参照 2021年5月28日)


(2)琉球新報-沖縄、4月の入域観光客26万2600人 コロナ前から69%減 外国客13カ月連続ゼロ-2021年5月28日 06:40


 琉球新報は、表題について次のように報じた。


1.沖縄県文化観光スポーツ部は27日、4月の入域観光客数が前年同月比239・7%(18万5300人)増の26万2600人だったと発表した。新型コロナウイルス感染拡大の第1波が猛威を振るった昨年4月と比べると増加したが、コロナ禍以前の2019年4月比では69・2%(58万8800人)減となった。外国客は13カ月連続でゼロだった。ゴールデンウイーク期間中(4月29日~5月9日)の推計入域観光客数は10万4千人だった。
2.航空会社の減便も続き、4月の沖縄発着の航空路線は運航計画より18%(763便)減の3480便となった。5月は現時点で32・7%(1403便)減の2893便となっている。
3.県は観光業を含む売り上げが大幅に減少した事業者への支援策として、1事業者につき最大30万円を順次給付する。対象は1万1600事業者。緊急事態宣言の解除後には、おきなわ彩発見バスツアーの再開や、観光施設やアクティビティー事業者を支援するおきなわ観光体験支援事業を打ち出し、県内旅行の需要喚起策を実施していく。
4.宮城嗣吉部長は「観光事業者に速やかに支援金を届けられるようにする。まずは感染対策を徹底して、夏には(感染者を)抑えて観光客を迎えたい」と話した。
(https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1328995.html 参照 2021年5月28日)


(3)琉球新報-「沖縄のジュゴン絶滅」論文投稿 防衛省有識者会議の委員ら-2021年5月28日 02:00


 琉球新報は、表題について次のように報じた。


1.沖縄県名護市辺野古の米軍基地建設で環境対策を助言する防衛省有識者会議の一部の委員らが、沖縄のジュゴンが「2019年に絶滅した」と記した論文を英科学誌に投稿したことが27日、分かった。
2.ジュゴンの痕跡を確認したとする環境省の最新調査結果などと食い違う内容。環境団体は論文への疑問に加え、有識者会議でジュゴンへの工事の影響や保全策を検討する際に、適切な議論がなされるのかどうか懸念を示している。
3.論文は国内研究者5人のグループが投稿した。筆頭著者の茅根創・東京大教授ら3人は、防衛省沖縄防衛局が設置し、環境保全策の科学的助言をする環境監視等委員会の委員を務める。
(https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-1329052.html 参照 2021年5月28日)


(4)琉球新報-沖縄の米軍基地50%以下に 玉城知事、政府に初の要請-2021年5月28日 05:10


 琉球新報は、表題について次のように報じた。


1.【東京】沖縄県の玉城デニー知事は27日、東京都内で加藤勝信官房長官や岸信夫防衛相らと面談し、6項目からなる米軍基地の整理・縮小策の実現を求めた。沖縄の日本復帰から来年50年を迎えるのに合わせ、全国の米軍専用施設のうち沖縄にある施設が占める割合を現在の約70%から「50%以下」とすることが訴えの柱で、新たな要請に基づく政府幹部との面談は初となった。加藤官房長官は「現在決まっていることを着実に進める」と述べるにとどめ、現行の再編計画以上のさらなる削減には慎重な姿勢を示した。
2.米軍専用施設の50%以下への削減の求めに対し、岸防衛相も現行計画を進める国の立場を強調した。米軍普天間飛行場の移設計画の見直しについては、「辺野古移設が唯一の解決策だ」と改めて語った。
3.面談後、玉城知事は記者団に「初めての要請であり、きょうからスタートだ」と強調した。今後、全駐留軍労働組合沖縄地区本部(全駐労)や軍用地主会などとも意見交換を行い、「さらなる基地返還に向けた知見を構築したい」と述べ、基地負担軽減策の具体化を図る考えを示した。
4.要請は、米軍専用施設の比率を50%以下とすることのほか、日米地位協定の抜本的な見直しなどを求めた。訓練水域・空域の削減も初めて国に求めた。
5.玉城知事によると、普天間飛行場などで増加する外来機の飛来に、加藤官房長官は「地元の負担になっており、米軍と引き続き調整する」と話したという。
6.在日米国大使館で面会したニコラス・ヒル首席公使は、米軍基地で働く日本人従業員へ米側がワクチン接種を進めたいが日本側から返答がないとして、玉城知事に協力を求めた。
7.玉城知事は加藤氏、岸氏、ヒル氏のほか、宇都隆史外務副大臣、内閣府の藤井比早之副大臣、岡下昌平政務官と面会した。河野太郎沖縄担当相にも電話で、ワクチン接種などで財政支援を求めた。
(https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1329036.html 参照 2021年5月28日)


(5)沖縄タイムス-「なぜ。理解に苦しむ」 世界遺産の候補地 西表島の登山道で6カ所に落書き-2021年5月28日 11:56


 沖縄タイムスは、表題について次のように報じた。


1.世界自然遺産への登録が勧告された竹富町西表島(沖縄県)の登山道などで複数の落書きが見つかっていたことが28日、分かった。アカギの根っこの部分や砂岩、公共看板の裏側などに油性ペンでアルファベットの4文字が書かれていたという。西表島カヌー組合のガイドが23日に発見し、八重山署など関係機関に通報した。山本英典組合長は「モラルに欠ける行為だ。自然を楽しみに来ているはずなのに何で落書きをするのか。理解に苦しむ」と話している。
2.同組合によると「ピナイサーラの滝」に向かう登山道で、周辺の木や岩、案内板など計6カ所で落書きが見つかった。いずれも「MDMA」と黒で書かれ、縦5センチ、横20センチほどの大きさだったという。
3.現場は林野庁が管轄する国有林で、環境省の西表石垣国立公園にも指定されている。自然遺産の推薦区域でもあり、警察や関係省庁の関係者が24日、現地の状況を確認した。今後についても連携しながら対応を協議する方針。
4.林野庁によると、ガイドを付けずにこの登山道に入る場合は後の安否確認のため、入山届が必要。同組合によると、落書きが書かれたとみられる23日昼すぎ、レンタカーで乗り付けた観光客の男女3人がガイドを付けずに登山道へ入っていく姿が目撃されている。
(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/761173 参照 2021年5月29日)


(6)沖縄タイムス-政府、指定候補に与那国と宮古島を想定 自衛隊の駐屯地か 土地規制法案-2021年5月28日 09:02


 沖縄タイムスは、表題について次のように報じた。


1.【東京】安全保障上重要な施設周辺の土地利用を規制する法案を巡り、政府が特に重要性が高い「特別注視区域」の指定候補として、与那国島と宮古島に所在する施設を想定していることが27日、分かった。陸上自衛隊の与那国・宮古島両駐屯地が念頭にあるとみられる。内閣官房が26日、衆院内閣委員会の理事会で示した。
2.実際の区域指定は法案成立後、閣議決定する基本方針で指定の考え方を決定し、審議会の意見を踏まえて判断されるため、現時点で確定していない。
3.政府は一定面積以上の売買に利用目的の事前届け出を義務付ける「特別注視区域」として、約百数十カ所の防衛関係施設を検討対象に想定。警戒監視・情報機能を有する施設に与那国島、離島に所在する施設に宮古島を例示した。
4.全国174カ所ある海上保安庁の施設では、尖閣諸島周辺で領海警備を担う第11管区海上保安本部(那覇市)と石垣海上保安部を候補に挙げた。政府は2施設について「対象区域として指定する必要性、緊急性が高い」としている。
5.また、政府は27日の参院外交防衛委員会で、注視区域の規制範囲を施設周辺のおおむね1キロとした理由について「銃器の有効射程距離なども参考としている」と説明した。小西洋之氏(立民)への答弁。
(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/760967 参照 2021年5月29日)



# by asyagi-df-2014 | 2021-05-29 10:05 | 沖縄から | Comments(0)

「重要土地等調査及び利用規制法案」を廃案に。(5)

 この問題の本質を捉えるために。
 廃案しかない。

信濃毎日新聞は2021年5月26日、「土地規制法案 無理押しは許されない」、と社説背論評した。
「廃案」の意味を、信濃毎日新聞(以下、「信毎」)で捉える。
 「信毎」の指摘は、次のもの。
1.土地利用を規制する法案を、衆院内閣委員会が審議している。「重要土地等調査法案」と称される。自由な土地の売買や利用を制限するだけでない。規制対象の土地に関わる人々の個人情報を国が際限なく収集し、基地や原発に反対する市民運動を萎縮させかねない内容だ。
2.今月21日に実質審議が始まったばかりなのに、与党は今週中の採決強行も辞さない構えでいる。
3.立法根拠は乏しく、国民への十分な説明もない。数の力で押し通してはならない。
 何が問題なのか。
1.政府は、外国資本による土地買収が、安全保障上重要な施設の周辺に及ぶのを防ぐとする。
2.自衛隊基地や原発、海上保安庁施設などの周囲1キロと国境の離島を「注視区域」に指定。土地所有者らの氏名や住所、国籍、利用状況を国が調査する。妨害が判明すれば中止を勧告、命令し、応じなければ懲役や罰金を科す。
3.自衛隊司令部周辺と無人の離島は特に重要な「特別注視区域」とし、土地・建物の売買で、利用目的の事前届け出を義務付ける。場合によっては、国が買い取るとの規定も設けた。
4.注視区域は四百数十カ所、特別注視区域は百数十カ所に上る。内閣府に新設する組織が、土地取引に関する情報収集や所有者らの調査に当たる。個人情報の一元管理は一層強まるだろう。
5.政府・与党は、長崎県や北海道の自衛隊施設周辺を外国資本が取得した例を挙げる。が、自衛隊に具体的な支障が生じた事態は確認されていない。
6.中国をはじめ外国資本による土地買収の問題が指摘されてはいる。政府はまず、その実態を明らかにし、現行法では対処できない根拠を示す必要がある。
7.原発のような施設の周りまで規制対象とする例は、他国にも見られない。米軍施設については「米側との協議で検討」と先送りしている。政府による調査項目は政令で定めるとしており、恣意(しい)的運用の懸念も拭えない。
 「信毎」は、最後に、次のようにまとめる。
 「立憲民主党は、基地や原発への反対運動が規制対象の「妨害」になりかねないとする。市民団体の自由な活動を確保し、罰則は撤廃するよう修正を求めている。日本維新の会や国民民主党も修正案を提出している。各党の条件だけでなく、私権を制約される国民に周知し、広く意見を聴かなくてはならない。国会会期末は6月16日に迫っている。十分な審議ができないのなら、成立自体、見送るべきだ。」
(https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021052600158 参照 2021年5月27日)

 また、「構造的沖縄差別」のもとで、この法案によって大きな影響を受ける沖縄からの「異論」。
 沖縄タイムスは2021年5月27日、「[土地規制法案]懸念だらけ 廃案にせよ」、と社説を展開した。
 沖縄タイムス(以下、「タイムス」)の「私権を制限し、正当な経済活動にも影響を及ぼしかねない内容である。あやふやな部分が多く、恣意的な運用が危惧される。あまりにも問題が多い。政府は法案を取り下げ廃案にすべきだ。」、とのこの法案の問題点の指摘は次のもの。
1.法案は、重要施設の周囲1キロや国境の離島を「注視区域」に指定し、所有者らの情報を収集、分析する権限を政府に与える。施設の「機能阻害行為」に対しては中止勧告や命令を出せ、罰則も科せる。
2.さらに自衛隊司令部周辺や領海の基点となる無人の国境離島などは、特に重要な「特別注視区域」に指定し、一定面積以上の売買には利用目的の事前届け出が義務付けられる、というものだ。
3.政府は土地取引に関する情報や、土地利用者への聴取は内閣府に新設する組織が担い、情報を一元管理する、と説明している。
4.26日の審議で、収集した情報を内閣情報調査室などと共有する可能性について、小此木八郎領土問題担当相は「関係機関の協力を得ながら、必要な分析をすることはあり得る」と認めた。土地の所有者や利用者がどんな人で、施設の機能を阻害する恐れがあるのかどうか。その判断材料として、収集される情報が名前や住所、国籍、土地の利用状況にとどまらず思想・信条や所属団体、交友関係、海外渡航歴など際限なく広がる恐れがある。
 つまり、「日常的に市民が監視され、人権侵害につながる懸念が払拭できない。」(「タイムス」)。と。
 「タイムス」は、この指摘の根拠について、「2年前のドローン規制法の改正によって基地周辺の空域が規制された。次は陸域の規制ということだ。沖縄の基地抗議運動への影響も懸念される。」、と次のように示す。
1.沖縄弁護士会は法案に反対する会長声明を発表した。沖縄は県土そのものが国境離島で、米軍基地も多く抱え「県民誰もが調査規制対象となってもおかしくない」と訴えた。
2.弁護士会として反対声明を出し廃案を求めたのは、法案が沖縄へ及ぼす影響の大きさを示すものである。
3.自民党の杉田水脈議員は法案審議で、名護市辺野古の新基地建設に対する抗議活動に参加する市民が食べる弁当のごみが、米軍基地の機能を阻害する恐れがあると指摘した。
4.県民が基地の過重負担によってどれほど苦しみ続けてきたのか理解が及ばぬ発言である。
 さらに、「タイムス」は、問題の核心を突く。
1.法案は、そもそも肝心の「機能阻害行為」とは何か、が明らかにされていない。
2.どのような行為が該当するのかは、法成立後に閣議決定される「基本方針」などで規定するという。罰則も設けられた厳しい措置にもかかわらず、国会の承認を必要としないのは疑問だ。
3.自民、立憲民主両党は運用に関し国会や自治体の関与と、私権制限に配慮することを求める付帯決議に大筋で合意した。だが、この程度では政府に歯止めはかけられない。やはり廃案しかない。
(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/760315 参照 2021年5月27日)



# by asyagi-df-2014 | 2021-05-29 07:10 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

「しかし、多くの課題を積み残し、不安や疑問が解消されないまま開催を強行すれば、禍根を残すことになりかねない。」-西日本新聞社説からー

信濃毎日新聞は、2021年5月25日、「東京五輪・パラ 理解得られぬなら中止を」、と社説を展開した。
東京五輪・パラ大会の中止を掲げたその主張を掲載する。
西日本新聞は、「国民に重い犠牲を強いてまで五輪は開催しなければならないのか、と私たちは問いたい。」。と。


 東京五輪の開会予定日である7月23日まで2カ月を切った。新型コロナウイルスのまん延は収まらず、10都道府県が緊急事態宣言下にある。医療提供体制は逼迫(ひっぱく)し、経済の停滞で多くの人々の暮らしが困窮している。昨年3月に開催延期を決めた時より状況が悪化しているのは誰の目にも明らかだ。
 それでも政府は予定通り「安心安全」に五輪を実施するという。ならば、どうやってそれを実現するのか、説明してほしい、と私たちは訴え続けてきた。だが、菅義偉首相をはじめとする政府の言葉はあまりに乏しい。
 実際は、ワクチン頼みで、国民を納得させる手だてなどないのではないか、具体的な対策を示さず、引き返せなくなるまでなし崩しに推し進めていくつもりではないか。そんな疑念も拭えない。
 これでは、各種の世論調査が示す通り、東京五輪・パラリンピックの開催に多くの賛同は広がるまい。国民の理解と協力が得られないのであれば、開催中止もしくは再延期すべきである。

 改めて言う。できるものなら、五輪を開催したい。鍛錬を重ねてきた選手たちの成果を見たい。支えてきた人たちの努力もたたえたい。しかし、多くの課題を積み残し、不安や疑問が解消されないまま開催を強行すれば、禍根を残すことになりかねない。
■拭えぬ医療への懸念
 国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ調整委員長は、東京が緊急事態宣言下でも五輪は開催できるとの認識を示した。
 緊急事態宣言は感染者が増え、医療現場が緊迫している非常事態である。感染拡大を防ぐために国民は我慢を求められ、幅広い業種が休業要請の痛みに耐えている。
 コーツ氏の発言は「五輪は特別」と聞こえ、それを容認するIOC、東京五輪・パラの組織委員会、政府、東京都は、どんな状況であっても五輪を強行するという意思表示のように思える。
 世論調査によれば「再延期」や「中止」を求める声が「予定通り開催」を大幅に上回る。五輪を楽しみにしていた人でも、生命や暮らしに不安があってはもろ手を挙げて歓迎できまい。
 菅首相や政府、組織委のリーダーは「安全安心な大会」という決まり文句を繰り返すばかりで、国民の不安や疑問に向き合わない。何度問われても具体的な説明を避ける姿は不誠実だ。

 とりわけ心配なのは医療だ。
 組織委の橋本聖子会長は、大会期間中に必要な医師や看護師の数は発表したが、全員を確保する見通しは立っていない。選手を除き7万8千人の関係者が来日する。どのような体制で感染対策を行うのか、詳しい説明もない。IOCは競技別のテスト大会で問題はなかったとするが、本番と規模が違い過ぎて話にならない。
 地域医療へのしわ寄せも気掛かりだ。選手用の病床提供を求められた東京周辺の県の知事は一様に否定的な見解を示した。それぞれ医療崩壊の危機にさらされている。無理もない反応だ。
 7月の感染状況は予測できないが、ワクチン接種は始まったばかりだ。医療現場は厳しい状況が続くだろう。五輪が医療を圧迫する要因になってはならない。
■開催の理念はどこへ
 そもそも東京五輪・パラリンピックの理念とは何か。
 招致段階から掲げていた「復興五輪」や「コンパクト五輪」はもはや現実と懸け離れてしまった。政府が唱えた「人類がウイルスに打ち勝った証し」も尻すぼみとなり、今では「世界の団結の象徴」に変わってしまった。
 スローガンが上滑りする一方、明確な理念がないまま、なりふり構わず開催する印象が強いのは、日本国民にも各国の選手にも不幸なことだ。ましてや大会放映権料などビジネスの話や、国内の選挙に弾みをつけたいといった政治の思惑がちらつくようでは、国民はしらけるばかりである。
 五輪・パラリンピックはアスリートにとって最高の舞台だ。練習環境に恵まれた国、そうでない国からも選手が集い、同じ場所で競い合う。そこに至る選手たちの物語はスポーツの魅力を伝える。
 ただ、現在の世界各国の感染状況が「公正な大会」の前提となるのか、という視点も大切だ。
 何より開催国・都市の最大の責務は国内外の選手が安心して力を発揮できる環境をつくることだ。それを果たすためには、医療従事者、ボランティアを含む国民の理解と支援が欠かせない。
 IOCのバッハ会長は、コロナ禍では「誰もが犠牲を払わないといけない」と述べた。国民に重い犠牲を強いてまで五輪は開催しなければならないのか、と私たちは問いたい。
(https://www.nishinippon.co.jp/item/n/744008/ 参照 2021年5月27日)


# by asyagi-df-2014 | 2021-05-28 12:02 | コロナ禍を生きる | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人