過労死等防止対策推進法案とは。


過労死等防止対策推進法案とは。



 沖縄タイムスの2014年6月3日の記事を読んでいたら、この日の3日付の社説の「『過労死防止法案』「『国の責務』に実効性を」が目に飛び込んできた。
 以下がその社説である。

 長時間労働によって心身がむしばまれ、過労死や過労自殺に至る悲劇をこれ以上繰り返してはならない。

 遺族らの思いを受け止め、超党派の国会議員連盟の「過労死等防止対策推進法案」が衆院本会議で可決された。参院に送られ、今国会で成立する公算が大きくなった。

 法案では過労死を「業務における過重な負荷による脳・心臓疾患や精神障害を原因とする死亡や自殺」と定義。防止対策は「国の責務」と明記したのが特徴だ。

 厚生労働省によると、2012年度に過労死と労災認定されたのは123人で3年連続増加、過労自殺(未遂を含む)は過去最多の93人だった。だが、遺族が立証するには限界があり、泣き寝入りがほとんどといわれる。数字は氷山の一角にすぎない。

 過労死の実態は十分把握されておらず、法案では国による調査研究は定義外のケースを含め幅広く取り扱う。遺族らが求めていたことでもある。「勤労感謝の日」を含む毎年11月を啓発月間とし、調査研究結果や対策の実施状況を毎年、国会へ提出する。

 法案は長時間労働などに対する規制や罰則を定めていない。国は具体的な防止策を盛り込んだ大綱の作成を義務づけられている。長時間労働を抑えるための具体策が提示できるかどうかがポイントだ。遺族や労使代表をメンバーとする「防止対策推進協議会」が意見を出すことになっており、遺族の願いに応える内容を取り入れ、実効性あるものにしてもらいたい。
    ■    ■
 衆院厚生労働委員会で採決があった日、「全国過労死を考える家族の会」の寺西笑子代表が意見陳述した。

 夫は1996年に自殺した。飲食店の店長だった。不況の中、会社の生き残りのため、年間4千時間に及ぶ過重労働を強いられた。会社の業績は回復したが、ノルマには達しなかった。連日パワハラを受け、意に沿わぬ異動を命じられた。うつ病を発症し、投身自殺を図った。

 寺西代表は遺族を代表して「真面目で責任感が強い優秀な人が長時間、過重労働で心身の健康を損ない、命を奪われている」と訴えた。

 中高年だけの問題ではない。若者を過酷な条件下で働かせ、使い捨てにする「ブラック企業」だ。県内でも沖縄労働局が昨年9月、27事業所を抜き打ち調査。過労死のリスクが極めて高い月80時間超の時間外労働は5事業所、100時間超も3事業所あった。
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 日本語の「karoshi」がそのまま英語化していることが象徴するように、日本の労働環境は国際社会から見て人間らしい働き方とかけ離れている。政府は昨年5月、国連社会権規約委員会から過労死や過労自殺への防止策を取るよう勧告を受けている。

 法案の理念と逆行する動きがある。労働時間規制の適用除外とし、残業代を支払わない「ホワイトカラー・エグゼンプション」である。安倍晋三首相が6月の成長戦略の目玉の一つにしようとしている。過労死、過労自殺を生まない長時間労働の是正こそが先でなければならない。

 早速、朝日新聞を検索してみると、2014年5月24日付で、次のような記事がありました。

 働き過ぎで命を失う人をなくそうと、「過労死等防止対策推進法案」が23日、衆議院厚生労働委員会で全会一致により可決された。27日に衆議院を通過し、今国会中に成立する見通しだ。過労死対策は、国に責任があることを初めて法律に明記した。

 超党派による議員立法で、国に対して、過労死の実態や防止策の研究のほか、対策を進めることを求めている。地方公共団体や事業主も協力するように促している。

 具体的には、過労死の実態や対策について報告書(白書)を毎年つくるほか、国や自治体に過労状態の人や家族の相談窓口を設け、過労死問題に取り組む民間団体を支援することなどが盛り込まれている。

 具体策をまとめて過労死防止策の大綱もつくる。労使の代表や専門家だけでなく、過労死遺族の代表が加わる協議会をもうけて、大綱をチェックするようにもする。

 過労死防止法は、過労死遺族や支援する弁護士が2010年から成立を求めてきた。13年6月には超党派の議員連盟が発足し、12月に野党が先行して法案を提出。その後、自民党が修正案を詰めていた。

 23日の委員会には、法制定を求めてきた「全国過労死を考える家族の会」の代表、寺西笑子さん(65)が出席。「過労死は今も増え続けており、相談者は絶えない」などとして、過労死対策の必要性を訴えた。(編集委員・沢路毅彦)

■過労死防止法案の主な内容
・国には過労死防止策を効果的に進める責任がある
・11月を過労死防止啓発月間にする
・過労死の状況や対策をまとめた報告書(白書)を毎年つくる
・具体的な防止策を盛り込んだ過労死防止大綱をつくる
・過労死の実態を調査し、効果的な防止策を研究する
・過労死の恐れがある人や家族が相談できる体制を国や地方自治体が整える
・過労死問題に取り組む民間団体を支援する
・労働者や経営者の代表、専門家、過労死遺族でつくる過労死等防止対策推進協議会をもうける
・必要があるときは、過労死防止のための法制上・財政上の対策をとる

 続いて、毎日新聞は2014年5月27日、「過労死防止法案:衆院で可決、成立へ…傍聴の遺族、喜び」と次のように伝えている。

 過労死や過労自殺の防止対策を国の責務で実施する「過労死等防止対策推進法案」が27日、衆院本会議で可決された。法案は今国会中に成立する見込み。

 法案は超党派の議員連盟が提出。同日の衆院本会議には、家族の遺影を抱いた被害者の遺族ら約30人が傍聴。法案が可決されると抱き合って涙を流した。

 記者会見した過労死防止基本法制定実行委員会の委員長、森岡孝二関西大名誉教授は「法制定で過労死は社会問題であるという意識が生まれる。法制定は極限まで広がっている過労死防止の出発点だ」と訴えた。【東海林智】

 先日の残業代ゼロ問題とからめて、追いかけてみます。


# by asyagi-df-2014 | 2014-06-04 18:00 | 書くことから-労働 | Comments(0)

『月の家』サウンドトラックCDを聞く。

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『月の家』サウンドトラックCDを聞く。

パギヤン(趙博)のホームページのふぁんとつうしん(黄土通信)を覗いたら、『歴史と時代に翻弄されながらも哀しみを抱いたまま大地と共に生き抜く一人の女新宿梁山泊が李麗仙を迎えて描いた忘れてはいけない東アジアの物語サウンド・トラックCDでお届けします。』とのこと、早速購入申し込みをしました。
 6月1日に、CDが届きました。
 どうも、音楽を体で感じるというよりも、活字を拾って頭の中で理解するタイプな者ですから、CDの説明書とパンフレットのイ・ジナさんの文字を追いながら、CDを聞きました。
 それにしても、李麗仙さんの「身世打鈴」をこの目で見たいという思いが募ります。

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# by asyagi-df-2014 | 2014-06-03 18:00 | 新たな経験 | Comments(0)

残業代ゼロ問題を考える


残業代ゼロ問題を考える

 朝日新聞は、2014年5月29日の朝刊で、残業代ゼロ問題について、「政府は28日開いた産業競争力会議で、働いた時間の長さと関係なく、成果に対して賃金を払う新たな制度を導入する方針を決めた。政府の成長戦略の柱に位置づけ、対象とする職種や年収など具体的な検討に入る。だが、労働時間と切り離された働き方は「残業代ゼロ」で長時間労働を強いられ、いったん導入されると「なし崩し」的に対象が広がる恐れもある。」と、報じた。
 また、安倍首相は「働き手の数が限られるなか、成果で評価される新しい労働時間制度の選択肢を示す必要がある」と表明するとともに、28日夕に官邸であった産業競争力会議で、新たな制度の検討を進めるように指示した」と、報じている。
 この日の会合は誰を対象とかが出ず平行線のまま終わっている。
さらに、この残業ゼロ問題の具体的な内容については、次のように報じた。

「4月に新制度を提案した民間議員の長谷川閑史(やすちか)・経済同友会代表幹事らが追加案を示した。(1)年収1千万円以上の高年収者(2)労使で合意した一般社員――を対象とする当初案を具体化させ、対象となる層について、中核・専門職種で働く「幹部候補」などとすると明示した。
 一方、労働規制を所管する厚生労働省は28日、「世界レベルの高度専門職」に対象者を限るとする対案を提示した。転職先を見つけやすい為替ディーラーなど高年収者を対象とする。長谷川氏らが適用を求める「幹部候補」には、労働時間を想定し賃金を支払う裁量労働制を拡充することで対応できると主張した。

 しかし、こうした対象者を限定することで矛先を躱そうとする遣り方は姑息である。
 対象者を限定し、慎重姿勢を崩さない厚労省に対しては、出席した民間議員や閣僚から、「一握りでは意味がない」「労働政策が変わるというメッセージを出すべきだ」といった再考を迫ったという記事が示しているように、隠されたその真意がやがては牙をむくことになることははっきりしているのではないか。

 実は、小泉政権を引き継いだ第一次安部政権において、「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入が画策された。当時、諸々の取り組みの中で、これは阻止された。
 この時の主な反対の論点を、日本労働弁護団(以下、弁護団とする)の決議表明等にみてみる。
 弁護団は、2006年11月11日の総会で、「新・適用除外制度(日本版エグゼンプション)はワーク・ライブ・バランスに逆行する。この制度は、オフのスイッチを労働者から奪う。この制度は、仕事が順調なときも仕事が苦しいとき、上手く行かないときも、労働者を成果がでるまで働き続けるロボットにする。自分のため、家族のために早く帰宅することなど望むべくもない」とまとめている、
 また、安倍首相の推進する成果主義については、「『成果も出さない奴に金が払えるか』と言い放つ成果主義。労働者を気持ちよく働かせて成果を出すのが経営者ではないか。成果主義は経営者の無能宣言だ。成果主義は、成果がでないリスクを厚顔にも労働者に押し付ける」と、成果主義の問題点を指摘している。
 そして、ホワイトカラー・エグゼンプションの構造的問題点を、「この制度導入の合唱団員は、経営者とその取り巻きばかり。当の労働者は、誰も参加していない。当の労働者はというと、過労とストレスで、そのようなことを考える時間もゆとりもない。」と、切り込んで見せた。

 今回の残業代ゼロ問題の動向について弁護団は、2014年4月30日付で、「それは、2007年に『残業代ゼロ法案』『過労死促進法案」として世論の批判を浴び葬り去られたホワイトカラーエグゼンプションの再来であるどころか、それよりもさらに労働者の長時間労働に対する保護を後退させる最悪の「残業代ゼロ」「過労死促進」提案にほかならない。」と、警告を出している。
 また、「労働基準法の定める労働時間規制は、長時間過重労働から労働者を守る最低基準であり、最後の砦である。同法のもとですら労働者は、産業、業種、職種、雇用形態を問わず、長時間かつ過重な労働にさらされているが、『新しい労働時間制度』は、労働時間の最低基準を画する労基法を無視し、長時間労働傾向をさらに悪化させる重大な危険を有するものである。それは、労働者の健康も破壊し、個人と企業の健全な成長も阻害して、ひいては日本の社会と経済に重大な害悪を生じさせるものである。」と、鋭く問題点を指摘している。

 今回の残業代ゼロの問題は、日本労働弁護団の4月30日の「警告」を参考にして次のように整理できる

(1)新たな労働時間制度の適用を、労働者の同意にかからせているとするが、労使の交渉力格差がある中で、使用者から制度の適用を迫られた労働者がこれを拒否することは事実上不可能に近い。結局は、「この制度導入の合唱団員は、経営者とその取り巻きばかり。当の労働者は、誰も参加していない」状況は、労働方規制緩和の中でより強化されている。
(2)結局、提案は広範な労働者を対象に、労働基準法所定の1日8時間、1週40時間、週休1日の労働時間の上限を緩和ないし撤廃し、長時間労働に対する直接的規制をなくすとともに、「時間外労働」「深夜労働」「残業代」などという概念そのものをなくし、長時間労働に従事させた労働者に対する労基法で義務づけられている賃金の支払いを免除するものである。
(3)それは、2007年に「残業代ゼロ法案」「過労死促進法案」として世論の批判を浴び葬り去られたホワイトカラーエグゼンプションの再来であるどころか、それよりもさらに労働者の長時間労働に対する保護を後退させる最悪の「残業代ゼロ」「過労死促進」提案にほかならない。
(4)労働基準法の定める労働時間規制は、長時間過重労働から労働者を守る最低基準であり、最後の砦である。同法のもとですら労働者は、産業、業種、職種、雇用形態を問わず、長時間かつ過重な労働にさらされているが、「新しい労働時間制度」は、労働時間の最低基準を画する労基法を無視し、長時間労働傾向をさらに悪化させる重大な危険を有するものである。それは、労働者の健康も破壊し、個人と企業の健全な成長も阻害して、ひいては日本の社会と経済に重大な害悪を生じさせるものである。

 結局、この残業代ゼロは、現在の「成長戦略」を目標に据える諸々の政策は、この間の規制改革路線と同様な流れの中で、新自由主義敵政策の徹底化を念頭に置いた、一握りの享受者だけを豊かにすることを目指したものである。多くの労働者・市民にとっては多くの犠牲を強いられるものでしかない。
 現在において、残業代ゼロが達成されることは、新自由主義の政策の基に行われてきた規制緩和のあしき到達点になってしまう。

 一方、前回の「ホワイトカラー・エグゼンプション」の画策がつぶされたにもかかわらず、こうして再提案されてくるにはどのような理由があるのか。
 そのためには、現在の状況をまずは把握する必要がある。それは、「不平等社会」日本の実態を把握することである。
日弁連は、人権擁護大会の決議(2013年10月4日)- 貧困と格差が拡大する不平等社会の克服を目指す決議-のなかで、「不平等社会」日本の実態を、「我が国では、貧困と格差の拡大・所得の二極化が進行し続けている。」と描き出している。
 その日本の実態は、「労働者の賃金は1997年をピークに減少傾向にあり、全雇用労働者のうちに占める非正規労働者の割合も38%を超えるなど、不安定・低賃金労働が蔓延している。また、生活保護利用者は増加し続け、経済・生活問題を理由とする自殺は依然として年間5000人を超え、餓死・孤独死の報道も後を絶たない。このように拡大する貧困問題に対しては、税と社会保障による所得再分配機能の重要性が高まる。しかしながら、社会保障制度改革は、社会保障費を抑制する方向で行われており、国民の生活や老後に対する不安は高まっている」と。

 残念ながら、この決議で示されたように、前回の提示当時と比べても状況はより厳しさを増している。
 このことに加えて「20011年3月11日」の「経験」は、すでに、日本は持続可能な社会では無いことを晒してしまった。
 本来的には、「20011年3月11日」を招いた者としての深い問い直しをしなければならないはずであるににもかかわらず、「成長戦略」をあくまで追求するその姿勢は、自らの瑕疵を覆い隠すために、「成長戦略」の柱としての残業代ゼロのかけ声をより大きくしていると言える。繰り返すことになるが、残業代ゼロは、一握りの享受者だけを豊かにすることを目指したものであり、多くの労働者・市民にとっては多くの犠牲を強いられるものでしかない。

 最後に、「20011年3月11日」の克復は、「成長戦略」の真摯な反省の中でしか達成されないことを指摘する。


# by asyagi-df-2014 | 2014-06-02 18:00 | 書くことから-労働 | Comments(0)

梁塵窯の門馬さんのたまごの一輪ざしを


梁塵窯の門馬さんのたまごの一輪ざしを


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 先日のJAZZ&珈琲いとうさんで開かれた梁塵釜の門馬さんの個展で購入した作品です。
 たまごの一輪ざし(10.5×8×8cm)です。
 わかってもらえると思いますが、これしか、いやこれを購入しました。
 どんなところに置くと映えるかなと、あしゃぎの大地の中に置いてみました。

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 これは、あしゃぎのテーブルの上に置いてみました。
 問題は、花を活けないで撮ってしまったということです。
 
 個展に行ったら気をつけること。それは、めぼしい物は早めに購入するということ。
 門馬さんからは、「欲しい物があったら早く購入しなけりゃ」と言われたました。
 話に夢中になっていると、私のような程度の者が気に入った作品は、恐らく誰が見てもよい作品のはずで、早めに買われてしまいます。
 今回も、たまごの一輪ざしは3点展示されていましたが、購入したのは、順番的には私が3番手だなと決めた物でした。


 

祖母の山里にたたずむ陶芸工房   梁塵窯  

是非訪れてみてください。
交流が狭い私ですが、門馬さんの作品は、私にも、「センスとは」ということを感じさせます。 



# by asyagi-df-2014 | 2014-06-01 08:00 | 新たな経験 | Comments(0)

あしゃぎから-始まりを田植えとともに-

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    (あしゃぎ窓越しの田植え後のたんぼ)

あしゃぎから-始まりを田植えとともに-

 
実は2013年7月に、新築の離れを作りました。
  私にとって、冒険的な試みだったのですが、動き出した物が、行き着くところまで行った結果、木造建築の離れができあがりました。
 この離れを、あしゃぎと、名付けました。
 このあしゃぎのことやあしゃぎにまつわることがらを画像とともに少しずつ書き込んでみたいと思います。

 今日は、田植えでした。
 実際の米作りは、親戚にお願いしているので、夫婦二人で、手伝いをほぼ一日にかけて汗を流してきました。
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 この画像、わかりますか。田植え前の水を張った田んぼに侵入したイノシシの足跡です。

 最近は、イノシシよりも、鹿の被害のほうが大きいと聞きます。電柵を近日中に用意するとも聞きました。本当にこれからは、電柵に人間の生活が守られる日常が始まること
になります。
 私たちは、都市部に生活をし、母一人がいなかに住むということになっていますので、
いろいろなことを考えさせられます。








# by asyagi-df-2014 | 2014-05-31 22:19 | あしゃぎ | Comments(0)

大飯原発差し止め判決を考える(2)


大飯原発差し止め判決を考える(2)-2014年5月29日


 もう一度、大飯原発差し止め判決を考えてみます。
 日弁連は会長説明(2014年5月21日)で、この判決を高く評価しました。
 これを参考に、今回の判決の持つ意味をまとめてみます。やはり、それだけの価値のある判決だと考えています。


 まず、判決は「このような原子力発電所に関する従来の司法判断の枠組みからではなく、技術の危険性の性質やそのもたらす被害の大きさが判明している場合には、その性質と大きさに応じた安全性が認められるべきとの理に基づき、裁判所の判断が及ぼされるべき」としています。そのうえで、「大飯原発に係る安全技術及び設備は万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず、むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しの下に初めて成り立ちうる脆弱なものとし、運転差止めを認めた」と結論づけています。
 この結論は、人間の命の問題に深く関わって判断したものであると言えます。


 この差し止め判決の意義は、まずは、「福島第一原発事故の深い反省の下に、国民の生存を基礎とする人格権に基づき、国民を放射性物質の危険から守るという観点から、司法の果たすべき役割を果たした」ものであったことにあります。 また、この判決で示された判断の多くは、他の原子力発電所にも当然あてはまるものであることから、原発の再稼働の問題も含めて、これからの原発のあり方に広く影響していくことになります。このことの意味は、非常に大きいと言えます。


 「2011.3.11」で顕わになった日本という国の限界を克復するためには、これをもたらしたものを徹底的に分析するなかで批判尽くすしか無いという立脚点に立つことが求められたはずでした。しかし、にもかかわらず、すでにこのことが忘れられ、というよりも一瞬黙ったふりをしていた勢力は「成長戦略」という合言葉を、また再び振りかざしてきています。それも前よりも強い調子で。


 だとするならば、この判決は、毅然として、真の実践を私たちに見せてくれています。
 

資料【福井地裁大飯原発3、4号機差止訴訟判決に関する会長声明】

 福井地方裁判所は、2014年5月21日、関西電力株式会社に対し、大飯原子力発電所(以下「大飯原発」という。)から半径250km圏内の住民の人格権に基づき、同原子力発電所3号機及び4号機の原子炉について、運転の差止めを命じる判決を言い渡した。本判決は、仮処分決定を除くと、2011年3月の福島第一原発事故以降に言い渡された原発訴訟の判決としては初めてのものである。

 従来の原子力発電所をめぐる行政訴訟及び民事訴訟において、裁判所は、規制基準への適合性や適合性審査の適否の視点から、行政庁や事業者の提出する資料を慎重に評価せず、行政庁の科学技術的裁量を広く認めてきた。また、行政庁や事業者の原子力発電所の安全性についての主張・立証を緩やかに認めた上で、安全性の欠如について住民側に過度の立証責任を課したため、行政庁や事業者の主張を追認する結果となり、適切な判断がなされたとは言い難かった。

 これに対し本判決は、このような原子力発電所に関する従来の司法判断の枠組みからではなく、技術の危険性の性質やそのもたらす被害の大きさが判明している場合には、その性質と大きさに応じた安全性が認められるべきとの理に基づき、裁判所の判断が及ぼされるべきとしたものである。その上で、原子力発電所の特性、大飯原発の冷却機能の維持、閉じ込めるという構造の細部に検討を加え、大飯原発に係る安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず、むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しの下に初めて成り立ちうる脆弱なものとし、運転差止めを認めたものである。本判決は、福島第一原発事故の深い反省の下に、国民の生存を基礎とする人格権に基づき、国民を放射性物質の危険から守るという観点から、司法の果たすべき役割を見据えてなされた、画期的判決であり、ここで示された判断の多くは、他の原子力発電所にもあてはまるものである。

 当連合会は、昨年の人権擁護大会において、いまだに福島第一原発事故の原因が解明されておらず、同事故のような事態の再発を防止する目処が立っていないこと等から、原子力発電所の再稼働を認めず、速やかに廃止すること等を内容とする決議を採択したところである。本判決は、この当連合会の見解と基本的認識を共通にするものであり、高く評価する。

 政府に対しては、本判決を受けて、従来のエネルギー・原子力政策を改め、速やかに原子力発電所を廃止して、再生可能エネルギーを飛躍的に普及させるとともに、原子力発電所の立地地域が原子力発電所に依存することなく自律的発展ができるよう、必要な支援を行うことを強く求めるものである
                2014年(平成26年)5月21日
                  日本弁護士連合会
                        会長 村 越   進


# by asyagi-df-2014 | 2014-05-29 19:05 | 書くことから-原発 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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