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『亡国の安保政策』を読む



『亡国の安保政策』を読む
                    (『亡国の安保政策』;岩波書店 柳澤協二)

 この時期に読む本の一冊かなと思っています。どうやら本の紹介記事になりますが。
 例えば、「『国家が国民に優越する』グロテスクな社会に変貌いていくことは予想できる」、という指摘は、現在の政治の危険な方向性を示すものとして共有できますし、「日本防衛を目的とした日本の集団的自衛権行使という論理は成立しない」という論点も、正鵠を得ていると言えます。
 特に、第5章の「『積極的平和主義』の罠」を見てみます。
 定義のない「積極的平和主義」として、次のことを指摘しています。

 「憲法解釈を見直した場合、積極的平和主義がどのように変貌するのかについては、全く説明がない」
 「施政方針演説でも国家安全保障戦略でも、『積極的平和主義とは何か』という定義は、一切説明されず、盛りこまれた具体的な政策メニューも、憲法解釈の見直しがなくとも可能なものばかりだった」

 そして、このように続けます。

 「安倍首相が言う積極的平和主義は、実は国民受けしやすい具体的事例を羅列するだけで、戦略的理念も、戦後史のどこを変えるのかといった歴史的視座もないことが分かる。また、集団的自衛権の行使容認がどのような合意を持つのかについて、責任ある説明もしていないことが判然とするのである」

 そして、結論です。

 「結局のところ、安倍政権の積極的平和主義のスローガンは、憲法解釈変更への国民の抵抗を減らすためのレトリックにすぎない」

 こうした見解は、研究者等にとってはあたりまえのものでしかないと思います。
 また、平和を作っていくためには、まず「戦争を避けるためにはどうすべきか」が大事なはずですが、このことが安倍政権には、完全に喪失しています。
 このことについて、作者は、次のように展開します。

 「戦争を避けるためにはどうするべきか。・・・。問われているのは、『国家の知性である政府』が、国民の過度なナショナリズムをいかに沈静化するかである。・・・、戦争を避ける方向とは逆の方向で行動している。危険の本質はそこにある。」

 この本の最後に書かれていることは、次のことです。

 「戦争は、政治の延長である。より明確に言えば、政治の失敗が本来防げるはずの『無駄な戦争』を引き起こす。その自覚を欠いているとすれば、そのような戦略は、『亡国の安保政策』と言わざるを得ない。」 


さて、安部晋三に対して批判的に書かれた文章の欄外からは、「安部晋三の不思議さ」についてが、ふんわりと伝わってくる気がします。
 このことについて、やはり、徹底的批判が必要だなという気がしています。


by asyagi-df-2014 | 2014-06-17 06:03 | 本等からのもの | Comments(0)

安部晋三総理大臣


安部晋三総理大臣

 安部晋三総理大臣を考える上で、東京新聞の2014年6月16日も「首相『業代ゼロ』に重ねて意欲、将来的に年収要件下げも」という記事が、安部晋三を象徴的に示している。


以下、東京新聞引用。
安倍晋三首相は16日の衆院決算行政監視委員会で、残業代支払いなどの労働時間規制の適用を除外する「ホワイトカラー・エグゼンプション」導入に重ねて意欲を示すとともに、対象者の年収要件を、検討中の「少なくとも1千万円以上」から将来的に引き下げる可能性に含みを残した。

 民主党の山井和則氏が「残業代ゼロだ」と批判したのに対し、首相は「日本人の創造性を解き放って付加価値を高めるには、残業代の概念がないような時間で働く人々が成果を挙げることが大切だ」と導入の狙いを説明した。年収要件については「経済は生き物だ。将来の賃金や物価水準は分からない」と述べた。

 この「経済は生き物だ。将来の賃金や物価水準はわからない」という発言こそが、安倍本人の有り様を示している。

 例えば、ここで、大飯委原発の差し止め判決と比べてみる。


「原子力発電所は、電気の生産という社会的には重要な機能を営むものではあるが、原子力の利用は平和目的に限られているから(原子力基本法2条)、原子力発電所の稼動は法的には電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由(憲法22条1項)に属するものであって、憲法上は人格権の中核部分よりも劣位に置かれるべきものである。」


 この二つの差は歴然としている。判決の言う「人格権」などについての基本手的概念ががあるかないかということに尽きる。
 安部晋三総理大臣には、根本的にこうした基本的概念が欠けている。
立憲主義が何かを知らない。
 働く権利が何かを知らない。
 貧困からの解放が人類の長い懸案であることを知らない。
 基本的人権が何かを知らない。
 
 だからこそ、「集団的自衛権」、「残業代ゼロ」、「原発の再稼働」等々でなのである。
「3.11」を受けた政策の結論が「成長戦略」であるとしたら、あまりにも救いがない。


by asyagi-df-2014 | 2014-06-16 21:18 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

あしゃぎから、「持続可能な社会」とは


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        (決して便利そうには見えない土地での田植え後の様子)



あしゃぎから、「持続可能な社会」とは

 この段々の田植えを終えている田を見て、重い思いに落ちる。一方では、意外にも感嘆の声に近いものまで挙げている自分自身がいる。
 決してまともであるとは言えない、日本の農業政策のなかで、この努力された田んぼの様子は、何を物語っているのか。限界集落に今にもなってしまいそうな九州の片田舎の山間の地区。こうして稲作をすることが、それほど生活の足しにはならないだろう、いやむしろ大変なことの方が多いことが思いやられる。
 では、なぜ。人はどうしてこうしてがんばれるのか。
 第三者的発言として、「農業は、環境保全だけでなく、景観保全という意味でも大きな意味を持つ」と言ってみても、説明にはなっていない。
 わかっていることは、現在のTPP問題を始め、日本の農業政策等の方向性は、こうした現状を破壊してしまうということである。
 現政権が行おうとしている「成長戦略」は、実は、あるべき「規制緩和」という重しをはずし、一握りの収奪者だけに利潤を集中させる構造変換政策に過ぎない。
 だとすると、すでに「持続可能な社会」とは言えない日本の中で、地方の人々や地域に、これからもたらされるものは、「成長戦略」のなかでの、疲弊、荒廃でしかないのではないか


by asyagi-df-2014 | 2014-06-16 06:00 | あしゃぎ | Comments(0)

集団的自衛権を考える-07


集団的自衛権を考える-07

 
自民党は、本気である。
 集団的自衛権を使えるようにするため、自衛権発動の新しい前提条件(新3要件)を公明党に示した。
 この要件を、誰が、どのような基準で、どのような形で決定するというのか。そもそも限定容認そのものが許されるものではない。
 ここでも、公明党応援歌を歌うしかないのか。

 集団的自衛権をめぐる朝日新聞の記事、以下、引用。

集団的自衛権をめぐる考え方
 自民党は13日、集団的自衛権を使えるようにするため、自衛権発動の新しい前提条件(新3要件)を公明党に示した。安倍晋三首相がめざす集団的自衛権行使を認める閣議決定案の柱となる。公明の山口那津男代表も同日、「合意をめざしたい」と述べ、限定的に行使を容認する方向で党内調整を始めた。憲法9条の下で専守防衛に徹してきた日本だが、この枠組みが外れることになる。
 これまで自衛権は、憲法9条のもと日本が直接攻撃を受けた時にだけ反撃できる「個別的自衛権」に限られ、その発動の3要件の一つが「我が国に対する急迫不正の侵害がある」ことだった。

 だが、自民党の高村正彦副総裁が13日の与党協議で示した「新3要件」では、「他国に対する武力攻撃が発生し」た時も自衛権を発動できるとし、集団的自衛権の行使容認を明確にした。

 加えて自民は新3要件の一つに、1972年の政府見解で示された「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがあること」との文言も盛り込んだ。公明がこの72年見解を踏まえ、集団的自衛権を狭く限定する形での容認を検討していることから、公明の理解を得やすくする狙いがある。しかし、72年見解は「集団的自衛権の行使は憲法上認められない」と結論づけており、都合のよい部分だけを切り取ったに過ぎない。

 政府は13日、新3要件を内閣法制局に示し、細かな文言調整をするよう審査を指示した。公明党と合意に至れば、集団的自衛権の行使を認める閣議決定案に盛り込む考えだ。

 ただ、新3要件には、ときの政権の判断で自衛隊の活動範囲を拡大できるようなあいまいな表現がある。

 公明党は朝鮮半島有事での対応など極めて狭い範囲に限って認めることを想定しており、早速、「自衛隊の活動が際限なく広がりかねない」(党幹部)との批判が出ている。今後の協議で文言をめぐる攻防が予想される。(蔵前勝久)

 ■参戦の道、歯止めきかぬ

 《解説》自民党が提示した新3要件は、日本を守る場合に限って武力を使うことを認める「専守防衛」という、戦後日本が長年にわたって守ってきた基本方針を事実上放棄するものだ。新3要件が適用されれば、日本は自分の国への攻撃がなくても、ときの政権の政治判断によって、他国どうしの戦争に参戦できるようになる。

 日本は先の大戦の反省を踏まえ、これまでの3要件では、日本を防衛する目的であっても自衛隊の出動を厳格に抑制してきた。武力行使が可能となるのは、自国が直接攻撃される「急迫不正の侵害」という明確な基準を設けた。さらに、政府は武力行使が可能となる具体的な場面を国会答弁などで例示してきた。

 例えば、北朝鮮を念頭に置いた弾道ミサイル攻撃への対応については、相手国から「東京を火の海にしてやる」という表明があり、発射態勢になった場合などと、具体的に答えている。

 一方、今回の発動要件は「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれ」としており、極めてあいまいだ。ときの政権が「我が国の存立が脅かされるおそれがある」と判断すれば、「地球の裏側」での戦争でも、参戦できるようになる。

 自民党の提案は集団的自衛権の行使を認めているうえ、その歯止めにもならない。行使に慎重姿勢を示してきた公明党は、これにどう向き合うつもりか。「平和の党」を自任する公明党の存在意義が問われている。(園田耕司)

 ◆自民党が集団的自衛権を行使するのに必要とする自衛権発動の「新3要件」

 憲法第9条の下において認められる「武力の行使」については、

 (1)我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがあること

 (2)これを排除し、国民の権利を守るために他に適当な手段がないこと

 (3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと

 という三要件に該当する場合に限られると解する。


by asyagi-df-2014 | 2014-06-15 13:08 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

沖縄から-「世界平和アピール7人委員会」



沖縄から-「世界平和アピール7人委員会」

 世界平和アピール7人委員会からの「私たち世界平和アピール七人委員会は、日米両政府に、沖縄県名護市辺野古に米海兵隊の軍事基地を造る計画を断念するよう要請し、沖縄県外に住むすべての人々に、この問題を真摯に受け止めることを訴えます。」との提言を、真摯に取り組みます。
 以下、世界平和アピール7人委員会のアピール引用。


辺野古に新しい軍事基地を造ってはならない


2014年1月17日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 池田香代子 小沼通二 池内了


 私たち世界平和アピール七人委員会は、日米両政府に、沖縄県名護市辺野古に米海兵隊の軍事基地を造る計画を断念するよう要請し、沖縄県外に住むすべての人々に、この問題を真摯に受け止めることを訴えます。

 同基地計画は、1995年の米兵による少女暴行事件に対する沖縄県民挙げての怒りを受け、日米両政府が宜野湾市の市街地の中心にある米海兵隊普天間飛行場を閉鎖し、辺野古に代替施設を新設することに合意したことに始まります。

 それから17年たっても辺野古移設が成らなかった第一の要因は、沖縄に新たな軍事基地を造らせまいとする沖縄県民の強い意思です。にもかかわらず、これまで沖縄県の自己決定権を奪ってきたことを、日本政府と沖縄県外の人々は直視すべきです。日本全体の面積の0,6%しかない沖縄県に在日米軍基地面積の73,8%が集中するという異常な事態をこれ以上は容認できないとする沖縄県民の思いを、県外の人々は重く受け止めるべきです。

 沖縄は、1609年の薩摩島津藩による琉球侵攻、そして1879年明治政府の「琉球処分」と、ヤマトの横暴に翻弄され続けました。さらに第二次世界大戦末期、沖縄を本土防衛作戦の捨て石とした沖縄戦では、12万人以上の県民が犠牲になりました。

 このような苦難の歴史を強いられた上、さらに戦後も沖縄県民は多大な基地負担を押しつけられ、こんにちに至ります。県外に住む私たちは忸怩たる思いで一杯です。今また安倍内閣が、カネの力で仲井眞沖縄県知事に辺野古沖の埋め立てを承認させたことは、まさに「21世紀の琉球処分」です。県外に住む私たちは、歴代日本政府による対沖縄「差別」政策にいたたまれない気持ちでおります。

 辺野古の海はジュゴンやウミガメが生息する、地球に残された貴重な海域です。その海を埋め立てて恒久的な軍事基地を造ることは、75億の人類が共存すべき地球への冒涜です。残された自然環境を守るためにも、辺野古に基地を造ってはなりません。


by asyagi-df-2014 | 2014-06-15 12:12 | 沖縄から | Comments(0)

集団的自衛権を考える-06-「世界平和アピール7人委員会」のアピール


集団的自衛権を考える-06-「世界平和アピール7人委員会」のアピ-ル

  「 黙っているわけにはいきません。今こそ主権者である日本の国民は、自らの考えを発言し、政府に誤りない日本の針路を選ばせるべきときです」
 この提言に沿って、このブログでの発信を続けます。
 以下、「世界平和アピール7人委員会」のアピールを引用。

民主主義を破壊する閣議決定を行わせないために、国民は発言を

2014年6月12日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 小沼通二 池内了

 安倍晋三首相は、「国の交戦権は認めない」と明記している日本国憲法の根幹に反する集団的自衛権の武力行使容認をめざし、憲法を改正しないまま、あいまいな形で速やかに最終的閣議決定を行い、実施を強行しようとしています。私たちはこの動きに強く反対します。
 首相は、米国との絆を絶対視し、日本国内の米軍基地と無関係に日本周辺の米国海軍が攻撃されるとか、米国本土が攻撃されるなどの現実的でない事例を示して限定するかのように見せかけています。ところが、武力行使は対立する一方の考える通りに進むものではないので、空想的な限定は意味を持ちません。最前線だけで戦闘行為が行われる時代ではなく、攻撃と防御は一体化しています。したがって武力行使の範囲が限りなく拡大することを可能にする議論になっています。
 一連の動きに対して、自衛隊員も含めて人を殺すことはいけないという規範の下で生きてきた国民の支持は得られていません。専門家集団である憲法学者は一致して反対しています。それなのに、国会での審議も最短時間に留め、異なる意見には一切耳を傾けようとしていません。与党間協議でさえ十分な検討の時間を割くことなく駆け抜けようとしています。
 国連憲章には確かに集団的自衛権が認められています。しかしこれは安全保障理事会が必要な措置を取るまでの間の臨時的な権利です。権利は義務ではありません。行使しなくても、行使できなくても問題ありません。日本は、1956年の国連加盟以来この点での支障は一度も起きていないのです。国連憲章の本来の原則は、紛争の平和的解決であり、平和に対する脅威、平和の破壊に対する非軍事的措置が優先されています。紛争解決へは、非難の応酬でなく、外交手段と民間交流の推進による信頼醸成の強化、軍備増強でなく軍縮への努力こそ進めなければならないのです。これは日本国憲法の基本的精神に沿う途です。
 首相の言動は、国民主権の下での三権分立に基づく法治国家としての日本を破壊し、日本が攻めてくることはないと信じてきた周辺諸国をはじめとする世界における日本の評価をおとしめ、近隣諸国の軍備増強に口実を与え、日本の危険を増大させるという取り返しのつかない汚点を歴史に残すことになります。
 黙っているわけにはいきません。今こそ主権者である日本の国民は、自らの考えを発言し、政府に誤りない日本の針路を選ばせるべきときです。


by asyagi-df-2014 | 2014-06-15 05:53 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

集団的自衛権を考える-05


集団的自衛権を考える-05

 公明党の揺れは、これまでの与党に参加してきた党のジレンマそのものので、所謂「苦渋の選択」に繋がる。
 「苦渋の選択」という言葉に、酔ってもらっては困る。もっとも、発展的理解に行き着いてもらっても困る。実は、お互いが正念場なのだ。
 公明党の「限定容認論」の様子を、朝日新聞は2014年6月13日で報じている。
 以下、引用。


【政治国政 集団的自衛権、公明に限定容認論 72年見解を根拠に】

 公明党は12日、集団的自衛権を使える範囲を日本周辺の有事に限定したうえで認めるかどうかの検討を始めた。党幹部の中に、集団的自衛権の行使を朝鮮半島有事など極めて狭い範囲に限ることで、党内や支持者の理解が得られないかとの意見が出始めたためだ。ただ、行使容認そのものに慎重な意見もなお根強く、党内がまとまるかは予断を許さない。

72年の政府見解全文
 山口那津男代表、北側一雄副代表ら幹部は12日、国会内などで断続的に集団的自衛権の行使を認めるかどうかを協議した。1972年に自衛権に関する政府見解で「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」に限り自衛措置が認められるとした部分を根拠に、集団的自衛権が使えるか議論することにした。

 与党協議のメンバーの一人は、使える場合を「生命や権利が根底から覆される」という日本人に直接影響が出るケースに限定することで、政府が示した朝鮮半島有事から避難する邦人を乗せた米輸送艦を守る事例だけが容認されるとみる。別の幹部も「首相が想定する米国に向かう弾道ミサイルの迎撃や、中東のホルムズ海峡での機雷除去はできなくなる」と話す。

 だが、72年の政府見解は同時に、「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」と結論づけている。公明が、限定的とはいえ見解を行使の根拠とすれば矛盾することになる。

 安倍晋三首相が集団的自衛権の行使へ、今国会中の閣議決定を指示したことから、公明内には「反対するだけではすまない」(幹部)との声も上がっており、限定的な容認を検討することにした。

 政府・自民内には、公明内に容認に向けた動きが出てきたことから、22日が会期末の今国会中の閣議決定見送りを容認する意見も出ている。


 72年政府見解については、以下、引用。


 国際法上、国家は、いわゆる集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにかかわらず、実力をもって阻止することが正当化されるという地位を有しているものとされており、国際連合憲章第51条、日本国との平和条約第5条、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約前文並びに日本国とソビエト社会主義共和国連邦との共同宣言3第2段の規定は、この国際法の原則を宣明したものと思われる。そして、わが国が国際法上右の集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然といわなければならない。

 ところで、政府は、従来から一貫して、わが国は国際法上いわゆる集団的自衛権を有しているとしても、国権の発動としてこれを行使することは、憲法の容認する自衛の措置の限界をこえるものであって許されないとの立場にたっているが、これは次のような考え方に基づくものである。

 憲法は、第9条において、同条にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているが、前文において「全世界の国民が……平和のうちに生存する権利を有する」ことを確認し、また、第13条において「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、……国政の上で、最大の尊重を必要とする」旨を定めていることからも、わが国がみずからの存立を全うし国民が平和のうちに生存することまでも放棄していないことは明らかであって、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。

 しかしながら、だからといって、平和主義をその基本原則とする憲法が、右にいう自衛のための措置を無制限に認めているとは解されないのであって、それは、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るための止(や)むを得ない措置としてはじめて容認されるものであるから、その措置は、右の事態を排除するためとられるべき必要最小限度の範囲にとどまるべきものである。そうだとすれば、わが憲法の下で武力行使を行うことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない。

 
この動きについての反論を、朝日新聞の記事で以下、引用する。


1972年政府見解要旨と自民・公明両党の「解釈変更」案

 集団的自衛権の与党協議で、安倍晋三首相がめざす行使容認の根拠に、1972年の政府見解の一部を引用する案が有力視されている。ただ、見解は行使が憲法上許されないと明記。行使を認める結論を導く際、なぜこの見解を使うのか。背景を読み解く。

 ■元々は「許されぬ」

 政府見解は、田中角栄内閣が72年10月14日、参院決算委員会に資料として提出した。社会党議員が同年9月、集団的自衛権の政府統一見解について、回答を求めたことを受けたものだ。

 社会党は当時、政府が決定をめざす第4次防衛力整備計画に対し「専守防衛の範囲を超える」などと追及。72年見解は「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」と結論づけ、憲法上認められている個別的自衛権を逸脱する意思がないことを強調する狙いがあった。

 見解は冒頭で、集団的自衛権について国連憲章の規定などを踏まえて「有している」としつつ、「国権の発動としてこれを行使することは、憲法の容認する自衛の措置の限界をこえるものであって許されない」と明記。集団的自衛権を「持っているが、使わない」という姿勢を明確に示した。

 さらに戦争を放棄した憲法9条に触れた上で、憲法前文が示した平和的生存権や13条の幸福追求権を引用。「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない」と指摘。日本が直接攻撃された場合を前提に「自衛の措置」つまり個別的自衛権は持っていると定義した。

 ただし、見解はその直後のくだりで「しかしながら、だからといって」と強い逆接の言葉をはさんで、「平和主義を基本原則」とする憲法が「自衛のための措置を無制限に認めているとは解されない」と強調。「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処」する「止(や)むを得ない措置」としてだけ、自衛権を使うことができるとしている。

 歴代内閣は72年見解を一貫して維持。集団的自衛権の行使を禁じた解釈は、81年に鈴木善幸内閣が「行使は憲法上許されない」とする見解を示し、確立された。

 ■自民:「必要な自衛の措置」「最小限度の範囲」なら/公明:「生命・権利が根底から覆される」事態なら

 なぜ、72年見解の一部が、全く逆の行使を認める際の根拠になるのか。

 自民党には、政府見解を一変させることを国民に納得してもらうため、従来の解釈を全否定するわけではないと強調する狙いがある。公明党と交渉する自民党の高村正彦副総裁が「法理を示す」と話すのも、そんな姿勢を反映している。

 自民党が引用するのは、72年見解のうち、戦争を放棄した憲法9条の下でも自衛権をもつとし、「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置」は禁じられないとした部分だ。高村氏は必要な自衛の措置で「必要最小限度の範囲」に含まれるものなら、集団的自衛権を行使しても「今までの政府解釈の法理は受け継ぐことができる」と主張する。

 高村氏は「ほんの一部を変えるだけだ」とも主張。72年から40年超経ち、安全保障環境が変わったため、集団的自衛権を全て禁じた見解の結論だけを「集団的自衛権の一部は必要最小限度の範囲に入る」と変えればいい――との理屈だ。

 一方、閣議決定を急ぐ政府・自民の圧力にさらされている公明党が注目するのは、72年見解のうち必要最小限度の範囲を厳格化し、歯止めを設けた部分だ。

 見解では「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされる」事態に対応することが、憲法上許される自衛権と規定している。集団的自衛権を使わなければ国民の生命や権利が根元から覆るという状況に絞れば、従来の解釈と大きく矛盾することなく行使を認められる可能性もある――との考え方だ。

 公明は、日本人を乗せた米軍の輸送艦を自衛隊が守る事例のように、国民の生命が直接脅かされるケースに限ることを検討。ただ、自民側は、日本人が乗っていない米艦の防護や、海上輸送路(シーレーン)の防衛についても対応が必要と主張。意見は一致していない。

 ただ自民、公明とも、解釈変更が72年見解の結論と矛盾する点については十分な説明をしていない。(鶴岡正寛、蔵前勝久)

 ■まともな理屈でない 元内閣法制局長官・阪田雅裕氏

 72年の政府見解は集団的自衛権を行使できない理由を述べている。結論は明らかにだめだと書いてある。一部を切り取ることが許されるならどんな解釈も可能だが、見解はあくまで全体で判断すべきものだ。そもそも集団的自衛権は、ちょっとだけ使うという便利なものではない。行使は戦争に参加することだから、日本が「必要最小限度の範囲」で武力を使ったつもりでも、相手国にとっては敵国となり、日本の領土が攻撃される恐れもある。

 憲法9条、あるいは前文や13条をどう読んでも、集団的自衛権は否定されているという結論にしかならない。行使を認めるなら、それは憲法解釈とは言えず、憲法の無視だ。政府や自民党は72年見解を持ち出してきているようだが、解釈を変える論理としては耐えられず、まともな法律論ではない。

 公明党が検討中とされる理屈も理解できない。集団的自衛権を使うのは、日本が武力攻撃を受けていない状況が前提になる。日本が攻撃を受けていないのに、国外で起きている事態がどうして「国民の権利を根底から覆す事態」になるのか理解できない。


 結局、今回の動きについては、「憲法9条、あるいは前文や13条をどう読んでも、集団的自衛権は否定されているという結論にしかならない。行使を認めるなら、それは憲法解釈とは言えず、憲法の無視だ。政府や自民党は72年見解を持ち出してきているようだが、解釈を変える論理としては耐えられず、まともな法律論ではない。」ということでしかない。

また、こういう応援歌も来ていることをわすれてはいけない。
琉球新報2014年6月13日の社説を、以下、引用。


 「平和の党」としての公明党の真価が問われている。憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認問題をめぐり、安倍晋三首相から合意を迫られ、連立政権の亀裂を避けるため譲歩に傾いている。
 憲法は権力を縛るという立憲主義に基づいている。主権者の国民の合意形成や国会での徹底論議がないまま、一内閣の解釈だけで憲法の平和主義を空洞化させるのは、主権を国民から奪うという意味で「クーデター」に等しいのではないか。
 公明党は行使容認に前のめりな安倍首相に屈することなく、ブレーキ役を果たすべきだ。
 安倍内閣の憲法解釈の閣議決定原案は、1972年の政府見解を根拠にしている。その見解は「自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置」を認めた上で、その措置は「必要最小限度の範囲にとどまるべきだ」と規定し、集団的自衛権の行使は憲法上許されないと結論付けている。
 これに対し安倍内閣の原案は、これまでの政府見解が認める「自衛のための必要最小限」の武力行使の範囲に、限定的な集団的自衛権の行使が含まれるとして、憲法解釈を変更している。従来の政府見解の前段の主張を引用して、結論部分を逆にしている。牽強付会(けんきょうふかい)そのものだ。
 公明党の立党の原点は「平和の希求」にある。沖縄問題に対し67年8月、「絶対平和主義をつらぬき、すべて国際的紛争の解決は武力によらず平和的外交手段によるべき」だと主張し、即時全面返還と核兵器の撤去を要求した。69年には在沖米軍基地を総点検し、基地経済から脱却させ平和な発展を図るため、強力な政策を実施するよう佐藤内閣に求めた。
 集団的自衛権の行使容認は同党が掲げた「絶対平和主義」と真っ向から対立する。立憲主義を否定し、日米軍事同盟を優先する安倍首相の主張は相いれないはずだ。
 安倍首相が重視する日米軍事同盟の論理は抑止論だ。しかし、抑止力を高めると相手国との緊張を高め、安全保障のジレンマに陥ってしまう。
 公明党が政権与党の座ににとどまるために安易な妥協をすれば、結党の理念を失ってしまう。今年11月に結党50周年を控える。今こそ結党の精神に基づいて、集団的自衛権行使容認の歯止め役として真価を発揮すべきだ。



by asyagi-df-2014 | 2014-06-14 18:30 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

残業代ゼロ問題を考える02


残業代ゼロ問題を考える02

  残業代ゼロ問題は、いよいよ次のステージに進もうとしている。、6月12日の朝日新聞の記事の「『残業代ゼロ』対象は年収1千万円以上、政府が方針決定」は、まさに、そのことを伝えている。
以下その記事。

 
働いた時間と関係なく成果で賃金が決まる新制度について、政府は11日、対象者を「少なくとも年収1千万円以上」の高年収者に限定する方針を決めた。「残業代ゼロ」で長時間労働を強いられる恐れがある働き方が、管理職以外にも導入されることが固まり、「働き過ぎを助長する」との批判が高まりそうだ。

 11日夕、官邸で菅義偉官房長官ら関係大臣が集まり、大筋で合意した。田村憲久厚生労働相は会合後、「少なくとも対象者が年収1千万円を割り込むことはなくなった」と述べた。「職務範囲が明確」「高度な職業能力を持つ」との条件もつける。

 この制度をめぐっては、「全労働者の10%は適用を受けられる制度に」(経団連の榊原定征会長)など経済界や経済産業省が年収を問わず働き手を幅広く対象にするよう主張してきた。一方、労働規制を担当する厚労省は「働き手を守る規制がなくなる」と譲らず、平行線が続いてきた。

 甘利明経済再生相は会合後、「すりあわせをして両方にとって合格点になったのではないか」と語り、規制緩和への道がひらけたことを強調した。

 新制度は、今月末にまとめる成長戦略に盛り込まれる。厚労省は、来年の通常国会での労働基準法改正をめざして、年内をめどに審議会での議論を進める。年収1千万円未満の人についても、現行の裁量労働制の拡大を検討する。

 労働時間と賃金を切り離す働き方は、第1次安倍政権で年収900万円以上を対象に検討され、世論の反発で断念した経緯がある。(山本知弘)


 始めからつるんでいるからこそ、経団連会長が「残業代ゼロ『対象限定せず制度化を』」と応援歌を。朝日新聞2014年6月12日の記事が語る。


 働いた時間と関係なく成果で賃金が決まる新制度の対象を、政府が「少なくとも年収1千万円以上」の働き手に限る方針を決めたことに対し、経団連の榊原定征会長は12日、「あまり限定せず、対象職種を広げる形で制度化を期待したい」と述べた。今後、厚生労働省が詳細を詰めるが、できるだけ幅広い働き手を対象にすべきだとの考えを改めて強調した。

 官邸で報道陣の取材に答えた。榊原氏は9日の会見でも「研究技術職などの専門職やキャリアアップを望む女性らは新しい働き方を希望している。全労働者の10%ぐらいは適用される制度に」と述べ、対象を極力絞り込もうとする厚労省の姿勢を批判していた。

 新制度は、今月末に政府がまとめる成長戦略に盛り込まれる。来年の通常国会での労働基準法改正をめざし、厚労省の審議会で制度の詳細を議論していく。労働界には、「残業代ゼロ」で長時間労働を強いられかねないと反発が強い。(稲田清英)


やはり、ここで反論となるものを掲載する。
 以下、引用。

弁護士 佐々木亮の労働ニュース)


「残業代ゼロ」制度を考える(その2)~年収1000万円は長時間労働地獄へのカウントダウンの始まり
           佐々木亮 | 弁護士・ブラック企業被害対策弁護団代表

 ついに「新しい労働時間制度」の政府案が明らかになりました。
 「残業代ゼロ」対象は年収1千万円以上 政府が方針決定
上記の朝日新聞の報道によると、田村憲久厚生労働相は会合後、「少なくとも対象者が年収1千万円を割り込むことはなくなった」と述べた。「職務範囲が明確」「高度な職業能力を持つ」との条件もつける。
とのことです。
「な~んだ。年収1000万円か。オレ、関係ねえや。よかったぜ。ふぅ。」とか思う方もおられるやもしれません。
しかし!
安心してはいけません。1000万円なんて最初だけです。
「ちょ、待てよ。お、お前、まさか田村厚生労働大臣様が言ってることを、信じないって言うのか?! 正気か?!」とか思う方もおられるやもしれません。
ここで、山井和則衆議院議員のツイートをどうぞ。

残業代ゼロ制度「年収要件が1000万円以上との議論があるが3年、5年後も変わらないのか」と私。田村大臣は「年収要件が永遠に変わらないことはない」と答弁。1度、残業代ゼロ法案が成立すれば、簡単に年収要件は引き下げられます。

ほら。このように、年収要件なんて、簡単に下がっていくのですよ。どうですか。もうお分かりでしょう。
「いや、まさか、そんなはずはない。お、お、俺たちの安倍内閣が、そんなご無体なことをするはずがない。そうだ! 年収要件は上がる方に変わるんだよ。そうに違いない。よかった。やっぱり、よかった。ふぅ。とにかく、ふぅ。」とか思う方もおられるやもしれません。
ここで、2005年の経団連のレポートをどうぞ。

ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言(2005年)
ホワイトカラーエグゼンプションとは、今、まさに議論されている「残業代ゼロ」制度のことです。
彼らの考えている年収はというと・・・
当該年における年収の額が 400万円(又は全労働者の平均給与所得)以上であること。

・・・400万円。ボーナスなしだと額面で1カ月33万円。手取りだと20万円台半ばから後半といったところでしょうか。
平均以上の所得だと、もう残業代は出さなくてもいいんだ、というのが経団連のお歴々の本音なのでしょう。
「で、でも・・・。まさか、平均より下なら、大丈夫だよね? いくらなんでも平均より下なら大丈夫でしょ。よ、よかった。ふ、ふぅ。強引に、ふぅ。」と思う方もおられるやもしれません。
ここで産業競争力会議の出している「新しい労働時間制度」をどうぞ。
個人と企業の持続的成長のための働き方改革
ここには、「職務・成果に応じた適正な報酬確保、効率的に短時間で働いて報酬確保」とあるだけで、なんと年収要件さえないのです・・・。
そうです。本音は、年収なんかで区分けしたくもないのです。
結局、本当の狙いは年収に関係なく残業代を払わなくてもよい労働者層を作り出すことです。
初めは1000万円でも3000万円でも何でもいいのです。
あとはカウントダウンを始めればいいのですから。

絶対に実現させてはならない
残業代の制度は長時間労働をささやかに規制するものです。
この程度では長時間労働が規制しきれていないのは、多くの過労死・過労自殺が発生している悲しい事実が証明しています。
このささやかな規制さえも外そうというのでしょうか。
労働法制の規制緩和は、まずはアリの一穴から入り、そこからじわじわ広げて、いつの間にか原則・例外が逆転するというのがパターンです。これは派遣法の改正の歴史を見ればよく分かります。
ですから、1000万円というところに惑わされないで、収入がそれに達しない人もみんなで反対しないと、気づいたら自分も「残業代ゼロ」制度の対象だった・・・なんてことは、冗談ではなく起こり得ると思います。

ですので、こんな制度を絶対に実現させてはなりません。
ぜひ、皆様も、このような制度を実現させないために、声を上げていただければと思います。

このことについては、朝日新聞は2014年6月13日の社説で、一定の反論を加えている。
以下、引用。


[働き方と賃金―長時間労働は許されぬ]

 年収が高いからといって、健康を損なうような長時間労働をさせていいはずがない。それが大原則だ。

 働いた時間と関係なく賃金を決める制度の新設が決まった。新制度では、残業代という考え方がなくなる。政府の産業競争力会議で民間議員の経営者が提案し、厚生労働省も同意した。

 対象は、最低でも年収1千万円以上で、職務内容がはっきりしている人。労使が参加する審議会で議論し、年内にも具体的な制度を決める。

 今の法律では、上級の管理職をのぞくと、労働時間を厳格に把握することが企業に求められている。高い能力を持つホワイトカラーの働き方にそぐわない面があることは確かだ。

 しかし、議論の過程には疑問が残る。会議に労働界の代表はおらず、民間議員の提案も目的や効果がはっきりしなかった。

 最初の提案には二つのタイプがあった。導入が決まった「高収入型」と、見送られた「労働時間上限型」だ。

 後者は、労使合意で労働時間の上限を決める方式。女性や高齢者、若者の活用がうたわれたが、一般労働者まで会社が一方的に上限や賃金を決めてしまう恐れがあった。後に対象は「幹部候補」に変わったものの、若者を使いつぶすブラック企業に乱用される不安がぬぐえなかった。見送りは当然だ。

 では、「高収入型」には問題はないのだろうか。

 新制度で、働く人の職務内容が明確化されるのは望ましい。ただ、「残業代をなくせば長時間労働がなくなる」という主張は根拠が薄い。企業側に仕事量を決める権限があるなら、長時間労働を余儀なくされる。

 新制度の対象は、仕事量を決める裁量があり、会社と交渉する力がある労働者に限るべきだ。休日を強制的にとらせるといった規制も欠かせない。

 いったん制度ができれば、なしくずしに対象が広がる心配も残る。年収1千万円超の勤労者は全体の4%未満とされるが、経団連会長が「全労働者の10%程度は適用を」と発言するなど、経済界には対象拡大の思惑がにじむ。簡単に変更できないよう、年収条件を法律で決めることも必要だろう。

 今ある制度との整合性も考えてほしい。例えば、残業代がいらない管理職は「管理監督者」と呼ばれ、本来は経営者に近い立場の管理職に限られている。ところが、経営側に恣意(しい)的に使われる「名ばかり管理職」の問題が絶えない。廃止を検討していいのではないか。


by asyagi-df-2014 | 2014-06-14 06:05 | 書くことから-労働 | Comments(0)

集団的自衛権を考える-04


集団的自衛権を考える-04

 「安部晋三首相は、15日の会見では、言いたいことを言えなかったかもしれないが、すでに決めていた『いいたいこと』については、強引に推し進めることにしている」と前に書いたが、6月12日の朝日新聞の次の記事は、まさしくこのことを説明するものになっている。
以下、引用。


 安倍晋三首相は11日、今国会初の党首討論で、他国を武力で守る集団的自衛権を使えるようにする憲法解釈の変更について「政府として立場を決定し閣議決定する」と明言した。ただ、なぜ憲法解釈の変更で使えるようにするかには正面から答えなかった。一方、公明党は閣議決定に応じない考えを崩していない。
 民主党の海江田万里代表は、憲法解釈の変更で行使を認めることは「許されない」と批判。憲法改正ではなく解釈変更で認める理由をただした。
 首相は朝鮮半島有事を念頭に日本人を乗せた米艦艇を自衛隊が守る事例を挙げ、「今までの解釈では守れない」と指摘。「憲法の前文、13条に平和生存権があり、国民の幸福追求権がある。いま挙げた事例で、憲法が国民の命を守る責任を果たさなくていいと言っているとは、私にはどうしても思えない」と反論した。しかし、憲法9条には一切触れず、なぜ9条の解釈変更が必要で、どのように変えるのかも説明しなかった。
 海江田氏はまた、中東のペルシャ湾・ホルムズ海峡での機雷除去を挙げ、「戦闘中で、自衛隊員の命が失われる可能性がある。そういう時も首相は命を捨てろというのか」と質問。首相は「確かに機雷の掃海は危険な任務だ」と認めた。一方で「ホルムズ海峡で機雷が敷設され、封鎖された際、経済パニックが起きる。日本は決定的にその被害を受ける」と指摘。日本が責任を果たす必要があるとの考えを示した。
 首相は「みんなの党や(日本)維新の会の諸君は、あえてしっかりと国民の皆様に(行使容認の)立場を表明している」とも述べた。(鶴岡正寛)
 ■公明難色「論点多く残っている」
 安倍首相が改めて閣議決定を明言したが、公明党は「まだ議論すべき点は多く残されている」と難色を示す。「22日の今国会会期末までの閣議決定」に向け、攻防が激しくなっている。
 自民党の高村正彦副総裁と公明党の北側一雄副代表は11日朝、東京都内で秘密裏に会談した。高村氏は閣議決定文案を示しつつ「13日の与党協議でこの原案を配り、検討に入ることを認めてほしい」と求めたが、北側氏は「集団的自衛権は、まだ党内議論にも入っておらず難しい」と拒否した。
 別の場所でも自公両党の幹事長・国会対策委員長が意見交換しており、自民党の石破茂幹事長は記者団に「公明党は(閣議決定について)『難しい』とは言うが『できない』とは言っていない」と合意への期待感を示した。政府関係者は「与党幹部には12日に閣議決定案を説明する。もう妥協の余地はない。あとは公明党が集団的自衛権を認めるか、認めないかだ」と語り、公明に合意へ決断を迫る構えだ。飯島勲内閣官房参与も10日、米国での講演で、公明党と支持母体・創価学会との「政教分離」の関係に触れ、公明党に揺さぶりをかけた。
 両党間で、こうした水面下の動きが先行する一方、最も立場の開きがあるとされる両党首の会談はまだ行われていない。
 党首討論では、公明の山口那津男代表は与党党首のため質問せず、首相の左後方席で議論を見守った。集団的自衛権の行使に極めて慎重な山口氏は硬い表情のまま首相の発言にペンを走らせ、周囲の自民党議員が首相に拍手しても同調しなかった。終了後、記者団に感想を聞かれると、「全体的な印象としてはかみ合っていない」と物足りなさすら口にした。首相も討論では公明との協議に触れず、両党首の溝の深さが際だった。(冨名腰隆、岡村夏樹)


 では、これからどうするか。
 ここでは、2014年6月11日の毎日新聞の社説を-集団的自衛権、理屈通らぬ閣議決定案-を引用する。


 政府・自民党は、集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈変更の閣議決定の原案を、今月13日にも与党協議で示し、今国会中の閣議決定を目指す方針を明確にした。
 これまでに明らかになった原案の内容をみると、歴代政権が過去40年以上、積み重ねてきた憲法解釈の一部をつまみ食いして都合良く解釈し直しており、理屈が通っていない。
 原案は、1972年に田中内閣が参院決算委員会に示した政府見解を根拠にしている。
 政府見解は「自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置」を認めたうえで、「その措置は必要最小限度の範囲にとどまるべき」だとして、「集団的自衛権の行使は憲法上、許されない」と結論づけた。
 原案は、この見解が認める「自衛のための必要最小限度」の武力行使の範囲に、限定的な集団的自衛権の行使が含まれると憲法解釈を変更するのが柱だ。政府見解を根拠にしながら、結論だけを全く逆のものにひっくり返している。
 これほどの安全保障政策の大転換をするなら、憲法改正を国民に問うしかないと私たちは主張してきた。だが政府・自民党は、憲法の解釈変更で突破する道を選択し、その根拠を探してきた。
 最初は、米軍駐留の合憲性などが争われた59年の砂川事件最高裁判決を根拠に「最高裁は個別的、集団的の区別をせずに必要最小限度の自衛権を認めている」と主張した。だが、公明党などから「判決は個別的自衛権を認めたものだ」と批判を受けて、代わりに持ってきたのが72年の政府見解だ。
 政府高官はこう解説する。
 政府見解が展開した基本論理は正しい。ただ「集団的自衛権の行使は許されない」という結論が間違っていた。だから「行使は許される」という結論を「当てはめる」−−。
 こんな説明に納得できる人が果たしてどれほどいるのだろうか。
 公明党は、閣議決定の原案の協議に入ることに難色を示している。政府・自民党は、公明党の理解を得るため、原案の表現を「集団的自衛権を行使するための法整備について今後検討する」などぼかすことも検討しているようだが、実質的には憲法解釈変更を閣議決定するのと変わらない。
 10日の与党協議では、政府が集団的自衛権の行使容認が必要とする8事例について、初めて本格的議論が行われた。個別的自衛権や警察権で対応できるという公明党と、集団的自衛権でなければ対応できないという自民党の主張は平行線だった。議論は始まったばかりだ。こんな生煮え状態で閣議決定すべきでない。


 どんなに考えても、閣議決定に正当性はない。
 では、どうすれば。


by asyagi-df-2014 | 2014-06-13 18:00 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

沖縄から-「訓練水域」の変更


沖縄から-「訓練水域」の変更

 今回の辺野古埋立手続きの策動について、気になる記事があります。
 沖縄タイムスは、2014年5月28日、「シュワブ沖、立入禁止水域拡大へ」と報じています。
 その記事は、次のようなものです。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向け、防衛省が漁船操業制限法に基づき、キャンプ・シュワブ周辺の米軍提供水域内での漁業や航行について制限する手続きを始めたことが27日、分かった。埋め立て工事区域がすっぽり入る範囲で、移設に反対する住民らを締め出し、作業を円滑に進める狙いがあるとみられる。

 防衛相から農林水産相をへて、県水産課が27日、名護市と漁業権を持つ名護漁協、県漁連に意見照会の文書を出した。6月5日までの回答を求めている。

 地元の意向を踏まえ、農水相は防衛相に6月18日までに意見を提出する。関係者によると、防衛省は制限の設定について米軍とも調整しており、7月上旬をめどに官報での告示を目指しているという。

 移設予定地のキャンプ・シュワブ沖は、米軍の提供水域が5区域に分かれており、それぞれに制限がある。沿岸部に接する第1、2区域は米軍の排他的使用が認められ、漁業や立ち入りを常時禁止。その外側の第3区域は船舶の停泊、係留、投錨、潜水、その他のすべての継続的行為を禁止するが、航行や立ち入りに制限はない。

 2004年の海底ボーリング調査では、第3区域で反対派が作業員と衝突し、調査を中断に追い込んだ経緯がある。

 防衛省は第3区域の大半にかかる埋め立て予定水域で、漁業や航行を制限する。漁業経営上の損失がある場合、名護漁協に補償金が新たに支払われる見通しだ。

 名護市の担当者は「市内でこれまでに米軍への提供水域にからむ制限が変更されたことはない。詳しい内容を確認しながら、調整したい」と話した。


 「辺野古浜通信」は、このことについて、次のように述べています。

 
日米地位協定に基づく沖縄県内の米軍基地の使用についての合意(5.15メモ)の「訓練水域」の変更を行い「第1水域」(一般船の通行不可)を陸岸から50㍍を2000㍍に拡大することと日米安保に基づく「アメリカ合衆国軍の水面使用に伴う漁船の操業制限等に関する法律」の「第一種区域」(常時漁船の操業を禁止する)の拡大を同様に行い、県民を建設予定地から閉め出そうと画策しています。

 県との交渉の中で明らかになったことは、日本政府が法律にも違反して、水域の制限を拡大をして、沖縄県民の抗議行動を弾圧しようとしていることです。このことによって、辺野古・大浦湾を活用している全ての県民に大きな被害を被らせることになります。常時操業が禁止される水域が沿岸から50㍍が2,000㍍に拡大することです。実質的にその分基地が拡大することになります。

 今回のことで一番問題なのは、沖縄県民の抗議行動を弾圧するために、法律の主旨を逸脱して、権力者が勝手に「改定」しようとしていることです。つまり、法律は「『米軍』が水面を使用する場合において、必要があるときは、農水大臣の意見を聞き、一定の区域及び期限を定めて、漁船の操業を制限し、又は禁止することができる」ことになっています。しかし、今回の「『告示』の一部改正」は「米軍が水面を使用する場合」での変更ではなくて、防衛省の工事のためでしかありません。このような法律違反の「改正」できないし、許されません。

 今回の「辺野古埋立」手続きで際だっていることは、名護市への対応を含めて、安倍政権が平気で法律を無視して手続きを進めていることです。これはまさに地方自治を破壊し民主主義を否定するファシズムの手法そのものです。


 また、沖縄タイムスは、2014年5月28日、「辺野古反対住民ら締め出す狙いか」、と次のように解説しています。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐり、防衛省はキャンプ・シュワブ周辺の提供水域で漁業や立ち入りの制限を見直し、海上部分での排他的区域を広げることで、移設に反対する住民を作業現場に近寄らせない手法に出た。

 工期短縮を至上命令としており、2004年の海上ボーリング調査での失敗を教訓に「打てる手はすべて打つ」(同省幹部)という姿勢を鮮明にしている。

 シュワブ沿岸部にV字形滑走路を建設する計画では、米軍の管理する基地内の陸上部分に比べ、海上部分での対策が課題となっていた。埋め立て予定水域を網羅する形で立ち入りなどを制限することで、反対派のシーカヤックやボートを使った阻止行動を締め出す狙いがあるとみられる。

 シュワブ周辺の提供水域では陸上施設の保安や水陸両用訓練での使用を目的に、漁業や立ち入りを制限している。工事を目的に制限の範囲を拡大することには政府内で慎重論も出たが、警備を担当する省庁などからの要望が強かったという。

 防衛省は海底ボーリング調査を7月にも実施し、結果を踏まえ、設計、本体工事の発注へと移る。同調査は、その後の進捗(しんちょく)を占う試金石になるとみて、万全を期す構えだ。

 また、調査や工事の区域を明示するためのブイを海上に設置し、侵入行為を厳しく取り締まる方針を確認、全国から省職員を沖縄へ派遣し、人員を強化することも検討している。
 あの手この手を尽くし、反対派の対策を講じるほど、地元の頭越しに移設を強行する難しさが浮かび上がっている。(政経部・福元大輔)

 
この訓練水域の変更についての問題点は、「辺野古浜通信」の指摘する、「今回のことで一番問題なのは、沖縄県民の抗議行動を弾圧するために、法律の主旨を逸脱して、権力者が勝手に『「改定』しようとしていること」であることは確かです。この手法は、集団的自衛権の解釈変更を姑息な手段で図ろうとするやり方そのものです。
 ただ、一方では、「あの手この手を尽くし、反対派の対策を講じるほど、地元の頭越しに移設を強行する難しさが浮かび上がっている」との沖縄タイムスの見解についても、よくわからないところもありますが、冷静に視ておく必要があります。


by asyagi-df-2014 | 2014-06-13 05:40 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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