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「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」、とはあんまりだ。

 毎日新聞は2017年5月3日、標題に関して、「安倍晋三首相は3日、憲法改正推進派の民間団体が東京都内で開いた集会に自民党総裁としてビデオメッセージを寄せ、『2020年を新しい憲法が施行される年にしたいと強く願っている』と表明した。憲法9条をあげ、戦争放棄をうたった1項と戦力不保持を定めた2項を堅持した上で、自衛隊の存在を明記する条文を加えるよう主張。改憲による高等教育までの教育無償化にも前向きな考えを示した。」、と報じた。
 また、その安倍晋三首相のビデオメッセージの発言骨子について、「①国会議員が憲法改正の発議案を国民に提示するための具体的な議論を始めなければならない時期だ、②9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む考え方は国民的な議論に値する、③教育は極めて重要なテーマ。高等教育も全ての国民に開かれたものとしなければならない、④2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」、と伝えた。
 この問題について、沖縄タイムス、毎日新聞、信濃毎日新聞の各社説を基に考える。


 まずは、この時期に、改憲派の民間団体に向けたメ-セ-ジの中での表明という安部晋三政権の手法について、考えてみる。信濃毎日新聞でも、「『2020年を新しい憲法が施行される年にしたい』と初めて具体的な時期を示している。なぜ、それほど急ぐのか。唐突な決意表明である。」、と指摘される問題部分である。
 このことについて、沖縄タイムスは2017年5月4日付けの社説で、次のように指摘する。


 「安倍首相は、読売新聞の3日付朝刊1面に掲載された単独インタビューでも、同じことを語っている。北朝鮮危機やテロの不安など、内外の政治状況を計算し尽くした上で、憲法施行70年という節目の日に合わせ、今後の憲法論議の方向性について自らアジェンダ(議題)を設定し、国民に示した。極めて巧妙なやり方である。ビデオメッセージで首相は、教育無償化にも前向きな姿勢を示した。これは日本維新の会が強い意欲を示している改正項目だ。公明党の引き込み、維新の会の協力、民進党の分裂、野党の足並みの乱れを一挙に誘う。そんな意図がメッセージに込められているのは明らかである。」


 こうした安部晋三政権の姑息な手法について、毎日新聞は「国会軽視の姿勢も問題だ。衆院の憲法審査会は参政権や国と地方などの課題を巡り有識者を呼んで議論している。自民党は野党第1党の民進党との調整を重視している。改憲案を審議する権限は憲法審査会にしかない。その頭越しで公明党などの改憲容認勢力さえ固めればいいという話ではないだろう。」、と批判する。
 したがって、「改憲派の会合での一方的なメッセージである。見過ごすことはできない。首相は自身の考えを国会できちんと説明する必要がある。」(信濃毎日新聞社説-2017年5月4日)、ということをきちんと行わさせなければならない。


 さて、このメ-セ-ジの本質的問題についてである。
 まず、沖縄タイムスは次の疑問を挙げる。


(1)政府の9条解釈では、自衛隊は憲法9条にうたわれた「戦力」には該当せず、「自衛のための必要最小限度の実力組織」と位置づけている。その解釈はどうなるのか。
(2)戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認を定めた9条1項、2項を変えずに、自衛隊の根拠規定だけを新たに追加することは、まっとうに考える限りほとんど不可能だ。
このような「ヌエ的な9条改正」が実現すれば、いずれ集団的自衛権もなし崩しで拡大されていくに違いない。
(3)日本の安全保障は「9条プラス日米安保」で成り立っている。沖縄県民は復帰後も、この日本特有の安保体制の負担を強いられてきた。これほど長期にわたって安全保障の負担と犠牲を一地域だけに過剰に強いる例は、ほかにない。9条改正によって、日米安保条約はどうなるのか。沖縄に常駐する地上兵力の海兵隊は撤去されるのか。そのような根本的な議論もないまま、「9条は改正するが、安保・地位協定・米軍基地はそのまま」ということになりかねないのである。そうなれば、沖縄の負担が半永久的に固定化し、米軍・自衛隊が一体となった「不沈空母」と化すのは避けられないだろう。


次に、毎日新聞は、次のように押さえる。いささか歯切れの悪い論調であるが。


(1)首相が施行時期を東京五輪開催年に重ねたことだ。両者は何の関係もない。自民党総裁の3選を見据え、任期中に改憲を実現したい思いからの後付けの理屈に聞こえる。
(2)首相は9条改正について1項の戦争放棄と2項の戦力不保持を堅持しつつ「自衛隊を明文で書き込む」ことを提起した。2項を抜本改正し国防軍などを創設するという従来の考え方からは退いたように見える。 自衛隊は政府解釈で合憲とされ、災害派遣や国連平和維持活動(PKO)などを通じて国民に定着し、高く評価されている。にもかかわらず、首相は一部の憲法学者らの「自衛隊違憲論」を引き合いに9条改正を主張した。これは説得力に欠けるのではないか。
(3)今の自衛隊は「自衛のための必要最小限度の実力」を超え、違憲となる「戦力」に相当するという議論もある。明記される自衛隊の位置付けが戦力不保持の規定とどう整理されるか、はっきりしない。
(4)首相が言う「新しい憲法」という表現からは、米国による「押しつけ憲法」から脱却したいことへのこだわりもにじむ。


 信濃毎日新聞は、次のように指摘する。


(1)憲法を尊重し、擁護する義務を負う首相が憲法記念日に改憲を主張する。強い違和感を抱かせる発言である
(2)改憲時期について「半世紀ぶりに夏季のオリンピック、パラリンピックが開催される2020年を未来を見据えながら日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだ」とし、20年施行という目標を明示した。期限をはっきりさせることで論議を加速させたいのか。衆参両院の憲法審査会では各党の主張の隔たりが大きい。改憲項目の絞り込みが進まず、国民的な議論も熟していない状況で3年後に施行とはあまりにも性急な提示だ。
(3)「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と定める2項を残し、どのように書き込もうというのか。専守防衛の枠から自衛隊が踏み出すことにならないか。疑問は尽きない。
(4)安倍政権は一内閣の判断で憲法解釈を変更し、違憲との批判を顧みることなく集団的自衛権行使の安全保障関連法を定めた。立憲主義を軽んじる首相の提案に乗ることはできない。
(5)首相は、未来と国民に責任を持つ政党として憲法審査会での「具体的な議論」をリードし、歴史的使命を果たしていきたいとも述べた。世論調査では、安倍政権下での改憲に過半数が反対と答えている。自身の悲願を果たしたいだけの身勝手な使命感ではないか。


 もちろん、この問題の本質は、「憲法を尊重し、擁護する義務を負う首相が憲法記念日に改憲を主張する。強い違和感を抱かせる発言である」、と信濃毎日新聞は主張するが、日本国憲法99条に関わる首相による重大な「憲法違反」であるということに尽きる。


 最後に、「改憲による高等教育までの教育無償化」についてである。
 戦後の長い間の教育条件整備や義務教育費無償化の運動の中で、学校教育法や義務教育費国庫負担法等の改正を要求してはきたが、このことに関しての憲法改正を唱えてきたわけではない。むしろ、日本国憲法にきちんと位置づけられているにもかかわらず、実現できていない行政の側の不作為を追求してきた。
 「2020」を唱えることによって、義務教育費無償化の運動側に対して、常に財源問題を持ち出して「否」としてきた側が、利用できるものはすべて利用するという思惑がはっきり見えている。
 結局、「改憲による高等教育までの教育無償化」は、「できてしまえば、いつでも、自らの手の中で。」、ということに過ぎない。




by asyagi-df-2014 | 2017-05-09 05:55 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

やはり、「緊急事態条項」も。-東京新聞社説20170409より-

 東京新聞は2017年4月9日、「週のはじめに考える 緊急事態条項という罠」、という社説を展開した。まず、「『大災害で国会議員が不在になってもいいのか』。もっともな議論に聞こえますが、憲法改正の道を開く取っ掛かりにしようとの意図が透けて見えます。」、とこの社説を始めます。
東京新聞は、このことについて次のように解説します。


(1) 先月開かれた衆院憲法審査会で「緊急事態条項」を新たに憲法に盛り込むべきか否かが議論になりました。緊急事態条項とは、大規模災害や外国からの武力攻撃などの緊急事態が起きた場合、政治空白をつくらないための手続きを定める項目を指します。
(2)現行の日本国憲法には、そうした条項がないとして、憲法を改正して新たに定める必要がある、と自民党が提唱したのです。現行憲法は衆院議員の任期を四年、参院は六年と定めています。国政選挙の直前に大規模災害などが起きて選挙が行えなくなった場合、国会議員の一部が不在となる可能性はなくはありません。
(3)憲法五四条は、衆院が解散された後に緊急の必要がある場合、内閣は参院の緊急集会を求めることができる、と記していますが、自民党は、衆院解散から特別国会が召集される最大七十日間を想定した制度であり、憲法を改正して国政選挙の延期や議員任期の延長を新たに盛り込む必要があると主張しているのです。
(4)もっともな議論のように聞こえるからこそ、要注意です。
(5)安倍晋三首相(自民党総裁)は三月五日の党大会で「憲法改正の発議に向け、具体的な議論をリードする。この国の背骨を担ってきた自民党の歴史的使命だ」と強調しました。かつては、自らの「在任中に成し遂げたい」と、改正への意欲を述べたこともあります。かといって、自民党が一九五五年の結党以来、訴え続けてきた戦争放棄の九条改正は、国民の間で抵抗感が依然根強く、ハードルが高いのが現実です。
(6)安倍氏の党総裁としての任期は先の党大会での党則改正により、最長で二〇二一年九月まで延長されましたが、自らの在任中に党是である憲法改正を実現するには、九条よりも、緊急事態条項を理由にした方が国民の理解を得られるのではないか、安倍氏がそう考えても不思議はありません。緊急事態条項は、安倍氏が在任中の憲法改正を成し遂げるための手段のようにも受け取れます。


 東京新聞は、「緊急事態条項を定めておかなければ国民が著しい損害をこうむる恐れがあるのならまだしも、改憲の突破口を開くための罠(わな)にされてはたまりません。」、と安部晋三政権の思惑を断罪します。
 また、こう続けます。


(1)それだけではありません。自民党が一二年にまとめた改憲草案では、緊急事態宣言時には国会議員任期の延長に加え、首相に権限を集中させ、内閣が法律と同じ効力を持つ政令を制定できることや一時的な私権制限も可能にすることが盛り込まれています。国会議員任期の延長を理由にしながらも、緊急事態発生時に国会から立法権を奪い、基本的人権を制限することが真の狙いではないのかと勘繰りたくもなります。
(2)全く同じと言いたくはありませんが、かつてのナチス・ドイツでヒトラーが独裁を築いたのも、国家緊急権による基本権の停止と、内閣に無制限の立法権を与えた全権委任法でした。
(3)そもそも緊急事態発生時に選挙はできないのでしょうか。
(4)東日本大震災が起きた一一年に被災地で地方選が延期された例はありますが、太平洋戦争真っただ中の一九四二年四月には衆院で総選挙が行われました。戦争という国家にとって最大の非常時ですら国政選挙が行われた歴史的事実に注目する必要はあるでしょう。
(5)一方、衆院議員の任期は一度だけ延長されたことがあります。旧憲法下の四一年、対米関係が緊迫する中、国民が選挙に没頭するのは適切でないという理由でした。しかし、軍部に批判的な議員が当選する機会を奪う狙いもあったのでしょう。結局、国民が政治に民意を反映させる機会は奪われたまま戦争が始まります。議員任期延長の弊害でもあります。


 東京新聞は、この問題について、このように結論づけます。


(1)憲法は主権者たる国民が権力を律するためにあります。現行憲法に著しい不備があり、国民から改正を求める声が澎湃(ほうはい)と湧き上がっているのならまだしも、そうした状況でないにもかかわらず、改憲を強引に推し進めるのなら「改憲ありき」との誹(そし)りは免れません。
(2)大災害や戦争を理由にされるとその方向に誘導されがちですが、自民党が主張する緊急事態条項の本質を見抜き、主権者として正しく判断しなければなりません。
(3)戦前、戦中には非常時を理由に国家総動員体制が敷かれ、国民の権利や自由が奪われました。その結果が無謀な戦争への突入です。今を生きる私たちが、同じ轍(てつ)を踏むわけにはいかないのです。





by asyagi-df-2014 | 2017-04-12 07:29 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

最高裁は、令状なしGPS捜査について、「プライバシー侵害」で違法と判断。(2)

標題について、小口幸人弁護士は、2017年3月15日、そのブログで、「司法は生きていた」「GPS捜査は、現在の法制下では原則禁止」と評価し、判決要旨を紹介している。


Ⅰ.GPS違法判決の内容は素晴らしいものでした。最高裁判事15人全員一致です。判決の要旨部分を貼り付けておきます。久しぶりに嬉しい司法判断です。是非ご一読下さい。
※新聞記者のみなさま。見出しは「GPS捜査禁止」でいいと思います

・憲法35条には、私的領域に「侵入」されることのない権利が含まれている。
・令状なしで行ったGPS捜査は違法。
・GPS捜査は事前の令状呈示が想定できないなど特殊な性質を有しているから、令状発付には新たな立法が必要。
・(補足意見)立法措置がされるまでの間、「ごく限られた極めて重大な犯罪捜査」の場合にまで令状発付が全く否定されるということではないが、認められるのは、「ごく限られた極めて重大な犯罪捜査」のためGPS捜査を行う高度の必要性が要求されるという極限られた特別の場合だけ。

http://www.courts.go.jp/…/f…/hanrei_jp/600/086600_hanrei.pdf

(1) GPS捜査は,対象車両の時々刻々の位置情報を検索し,把握すべく行われるものであるが,その性質上,公道上のもののみならず,個人のプライバシーが強く保護されるべき場所や空間に関わるものも含めて,対象車両及びその使用者の所在と移動状況を逐一把握することを可能にする。このような捜査手法は,個人の行動を継続的,網羅的に把握することを必然的に伴うから,個人のプライバシーを侵害し得るものであり,また,そのような侵害を可能とする機器を個人の所持品に秘かに装着することによって行う点において,公道上の所在を肉眼で把握したりカメラで撮影したりするような手法とは異なり,公権力による私的領域への侵入を伴うものというべきである。

(2) 憲法35条は,「住居,書類及び所持品について,侵入,捜索及び押収を受けることのない権利」を規定しているところ,この規定の保障対象には,「住居,書類及び所持品」に限らずこれらに準ずる私的領域に「侵入」されることのな い権利が含まれるものと解するのが相当である。そうすると,前記のとおり,個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって,合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であるGPS捜査は,個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして,刑訴法上,特別の根拠規定がなければ許容されない強制の処分に当たる(最高裁昭和50年(あ)第146号同51年3月16日第三小法廷決定・刑集30巻2号187頁参照)とともに,一般的には,現行犯人逮捕等の令状を要しないものとされている処分と同視すべき事情があると認めるのも困難であるから,令状がなければ行うことのできない処分と解すべきである。

(3) 原判決は,GPS捜査について,令状発付の可能性に触れつつ,強制処分法定主義に反し令状の有無を問わず適法に実施し得ないものと解することも到底できないと説示しているところ,捜査及び令状発付の実務への影響に鑑み,この点に ついても検討する。
 GPS捜査は,情報機器の画面表示を読み取って対象車両の所在と移動状況を把握する点では刑訴法上の「検証」と同様の性質を有するものの,対象車両にGPS端末を取り付けることにより対象車両及びその使用者の所在の検索を行う点において,「検証」では捉えきれない性質を有することも否定し難い。仮に,検証許可状の発付を受け,あるいはそれと併せて捜索許可状の発付を受けて行うとしても,GPS捜査は,GPS端末を取り付けた対象車両の所在の検索を通じて対象車両の使用者の行動を継続的,網羅的に把握することを必然的に伴うものであって,GPS端末を取り付けるべき車両及び罪名を特定しただけでは被疑事実と関係のない使用者の行動の過剰な把握を抑制することができず,裁判官による令状請求の審査を要することとされている趣旨を満たすことができないおそれがある。さらに,GPS捜査は,被疑者らに知られず秘かに行うのでなければ意味がなく,事前の令状呈示を行うことは想定できない。刑訴法上の各種強制の処分については,手続の公正の担保の趣旨から原則として事前の令状呈示が求められており(同法222条1項,110条),他の手段で同趣旨が図られ得るのであれば事前の令状呈示が絶対的な要請であるとは解されないとしても,これに代わる公正の担保の手段が仕組みとして確保されていないのでは,適正手続の保障という観点から問題が残る。
 これらの問題を解消するための手段として,一般的には,実施可能期間の限定,第三者の立会い,事後の通知等様々なものが考えられるところ,捜査の実効性にも配慮しつつどのような手段を選択するかは,刑訴法197条1項ただし書の趣旨に照らし,第一次的には立法府に委ねられていると解される。仮に法解釈により刑訴法上の強制の処分として許容するのであれば,以上のような問題を解消するため,裁判官が発する令状に様々な条件を付す必要が生じるが,事案ごとに,令状請求の審査を担当する裁判官の判断により,多様な選択肢の中から的確な条件の選択が行われない限り是認できないような強制の処分を認めることは,「強制の処分は,この法律に特別の定のある場合でなければ,これをすることができない」と規定する同項ただし書の趣旨に沿うものとはいえない。
 以上のとおり,GPS捜査について,刑訴法197条1項ただし書の「この法律に特別の定のある場合」に当たるとして同法が規定する令状を発付することには疑義がある。GPS捜査が今後も広く用いられ得る有力な捜査手法であるとすれば,その特質に着目して憲法,刑訴法の諸原則に適合する立法的な措置が講じられることが望ましい。

(4) 以上と異なる前記2(2)の説示に係る原判断は,憲法及び刑訴法の解釈適用を誤っており,是認できない。

4 しかしながら,本件GPS捜査によって直接得られた証拠及びこれと密接な関連性を有する証拠の証拠能力を否定する一方で,その余の証拠につき,同捜査に密接に関連するとまでは認められないとして証拠能力を肯定し,これに基づき被告人を有罪と認定した第1審判決は正当であり,第1審判決を維持した原判決の結論に誤りはないから,原判決の前記法令の解釈適用の誤りは判決に影響を及ぼすものではないことが明らかである。
よって,刑訴法410条1項ただし書,414条,396条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官岡部喜代子,同大谷剛彦,同池上政幸の補足意見がある。

 裁判官岡部喜代子,同大谷剛彦,同池上政幸の補足意見は,次のとおりである。
 私たちは,GPS捜査の特質に着目した立法的な措置が講じられることがあるべき姿であるとの法廷意見に示された立場に賛同するものであるが,今後立法が具体的に検討されることになったとしても,法制化されるまでには一定の時間を要することもあると推察されるところ,それまでの間,裁判官の審査を受けてGPS捜査を実施することが全く否定されるべきものではないと考える。
 もとより,これを認めるとしても,本来的に求められるべきところとは異なった令状によるものとなる以上,刑訴法1条の精神を踏まえたすぐれて高度の司法判断
として是認できるような場合に限定されよう。したがって,ごく限られた極めて重大な犯罪の捜査のため,対象車両の使用者の行動の継続的,網羅的な把握が不可欠であるとの意味で,高度の必要性が要求される。さらに,この場合においても,令状の請求及び発付は,法廷意見に判示された各点について十分配慮した上で行われなければならないことはいうまでもない。このように,上記のような令状の発付が認められる余地があるとしても,そのためには,ごく限られた特別の事情の下での極めて慎重な判断が求められるといえよう。





by asyagi-df-2014 | 2017-03-19 06:37 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

最高裁は、令状なしGPS捜査について、「プライバシー侵害」で違法と判断。

 標題について、朝日新聞は2017年3月16日、次のように報じた。


(1)裁判所の令状をとらずに捜査対象者の車にGPS(全地球測位システム)端末を設置して行動確認する「GPS捜査」について、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は15日、プライバシーを侵害しており、令状なしの実施は違法とする初判断を示した。今後のGPS捜査について、『新たな法律をつくることが望ましい』とも述べた。」
(2)判決で大法廷は、憲法35条が定める「令状なく住居や所持品に侵入、捜索を受けることのない権利」について検討。住居だけでなく、「これらに準ずる私的領域に侵入されない権利が含まれる」との新解釈を示した。その上でGPS捜査について「プライバシーが守られるべき場所も含めた移動を継続的、網羅的に把握することが可能」と指摘。憲法35条の権利への「公権力の侵入」にあたり、裁判所の令状が必要な「強制捜査」だと判断した。
(3)さらに、現在の刑事訴訟法の規定にある令状でGPS捜査が可能かについても検討。犯罪と関係のない行動まで把握できるうえ、事前に令状を対象者に示せないことなどから「令状を出すとしたら、裁判官が様々な条件をつける必要がある」と述べ、現在の令状では疑問があり、「立法措置が望ましい」と言及した。
(4)岡部喜代子裁判官ら3人は、補足意見で「法制化までは時間がかかり、それまでGPS捜査がすべて否定されるべきでない」と指摘。ただ、「ごく限られた重大な犯罪捜査」に限った上で、慎重に判断すべきだとした。
(5)GPS捜査が強制捜査か、令状なしにできる「任意捜査」かをめぐっては、各地の裁判で判断が分かれていた。この日、判決が言い渡されたのは車で侵入盗などを繰り返したとして窃盗罪などに問われた岩切勝志被告(45)。GPS捜査で集めた証拠の採用が争われたが、一審、二審ともに懲役5年6カ月の有罪とし、最高裁も維持した。
(6)GPS捜査は、違法な高速走行などで尾行逃れを繰り返す相手への対策として、有効性が高かった。犯罪捜査には一定のプライバシー侵害がつきもので、全く許されないわけではない。新しい技術を使って捜査機関が情報を得ることは、自白重視から客観証拠重視へと変わりつつある刑事裁判の流れにもかなう。それでも最高裁大法廷は、位置情報を網羅的に把握できるGPS技術の特性を重視。法律に根拠がなければ侵害できない「私的領域」を従前より広くとらえる踏み込んだ憲法解釈を示して立法を促し、捜査機関の乱用に警鐘を鳴らした。GPSに限らず、メールや防犯カメラ映像など、技術の進歩で個人が様々なデータを残すことは避けられない。憲法で保障された人権を守りつつ、捜査機関は明文化されたルールのもとで情報を扱うことが求められる。(千葉雄高)





by asyagi-df-2014 | 2017-03-16 22:47 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

日本学術会議の「安全保障と学術に関する検討委員会」は、、軍事研究を拒否した過去2回の声明を「継承する」新たな声明案をまとめた。

 毎日新聞は2017年3月7日、標題について次のように報じた。


(1)軍事研究を巡る声明を半世紀ぶりに見直してきた科学者の代表機関・日本学術会議の「安全保障と学術に関する検討委員会」が、軍事研究を拒否した過去2回の声明を「継承する」新たな声明案をまとめたことが分かった。防衛省が防衛装備品に応用できる先端研究を大学などに委託する公募制度に対しては「政府の研究への介入が著しい」として懸念を表明。研究の適切さを審査する制度を各大学などに設けるよう求める。
(2)表題は「軍事的安全保障研究に関する声明案」。7日の検討委最終会合で議論し、内容が修正される可能性もある。合意すれば全会員が出席する4月の総会で決議される見通し。声明に拘束力はないが、大学などの方針への影響が予想される。
(3)科学者が戦争協力した反省から、学術会議は1950年と67年に戦争目的と軍事目的の研究を拒否する声明を決議している。今回の声明案は、軍事研究という言葉を避けて「軍事的安全保障研究」という独自の用語を使った上で、「学術の健全な発展と緊張関係にある」と指摘した。一方、軍事研究自体の是非や防衛省の研究制度への応募の可否は明記しておらず、幅広く解釈できる余地も残る。
                                 




by asyagi-df-2014 | 2017-03-07 12:30 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

学校法人大阪朝鮮学園が大阪府と大阪市を相手取り、補助金不交付処分の取消しなどを求めた裁判で、大阪地方裁判所第7民事部は、大阪朝鮮学園の請求を全て却下、棄却する判決を言い渡した。

 標題について、朝日新聞は2017年1月26日、次のように報じた。


(1)学校法人「大阪朝鮮学園」(大阪市東成区)が、大阪府と同市による補助金の不支給決定の取り消しなどを求めた裁判の判決で、大阪地裁(山田明裁判長)は26日、決定は「裁量の範囲内」と認め、請求を棄却した。学園側は控訴の意向を明らかにした。朝鮮学校に対する自治体の補助金不支給をめぐる司法判断は初めて。
(2)補助金支給に際し、橋下徹府知事(当時)は2010年3月、「朝鮮総連と一線を画すこと」「北朝鮮指導者の肖像画の撤去」など4要件を提示。学園側は応じ、10年度分は支給された。しかし12年3月、生徒の訪朝が問題化。朝鮮総連との関係が疑われたため、府は11年度の補助金8080万円の不支給を決定。市も2650万円を不支給とした。
(3)判決は、補助金は憲法や関連法令からも、学園側に受給する法的権利があるわけではないと指摘。「ほかの学校と補助金に差異があっても直ちに平等原則には反しない」とした。不支給になれば「学習環境の悪化などが懸念される」と言及したが、府の要件を満たしていない以上、「支給を受けられなくてもやむを得ない」と述べた。また、支給先選びや要件提示について「府の裁量の範囲内」と認定。学園側が「教育への不当な政治介入で違法・無効だ」と主張した点については「学園を狙い撃ちした措置ではない」と退けた。さらに市の不支給についても「違法な手続きはない」とした。
(4)京都大大学院教育学研究科の駒込武教授(教育史)は「民族的少数者が自国の言語や文化を学ぶことは子どもの権利条約で保障されているのに、府は4要件で国同士の関係を教育に持ち込んだ。明らかな狙い撃ちだが、判決はそれを追認してしまった」と批判。「行政に一定の裁量があるのは事実だが、恣意(しい)的な判断では行政への信頼が失われる」と話した。
(5)判決を受け、大阪府の松井一郎知事は「府の主張が認められた。今後とも私立学校の振興に努める」とコメント。大阪市の吉村洋文市長は会見で「朝鮮学校に補助金支給は考えていないので極めて妥当な判決。今後も方針は変わらない」と話した。


 この判決について、「大阪朝鮮学園・補助金裁判不当判決に抗議する研究者有志」は2017年2月1日、声明を発表し、抗議した。
 この「声明」を要約する。


Ⅰ.判決の経過(背景)


(1)大阪朝鮮学園に対する補助金交付は、大阪府からは1974年度以来40年近くにわたって、また大阪市からも1990年度以来20年以上も継続された事業でした。ところが2010年3月、当時の橋下徹大阪府知事は突如、大阪朝鮮学園に対し、学習指導要領に準じた教育活動を行うこと、特定の政治団体と一線を画すこと、特定の政治指導者の肖像画を教室から外すこと、などのいわゆる「四要件」を補助金交付の条件として一方的に提示しました。
(2)2011年の秋には、教室だけでなく職員室からも肖像画を外すよう大阪府の要求がエスカレートしていきます。そして2012年3月、大阪府が交付要綱を「四要件」に即して改悪したのち、毎年恒例の平壌での迎春公演に朝鮮学校の児童・生徒が参加している旨を『産経新聞』が報道すると、大阪府はこれが「四要件」に抵触するとして補助金全額の不交付を決定しました。続いて大阪市も大阪府の決定に追随し不交付を決めました。大阪市が交付の根拠となる要綱を改定したのは不交付決定後のことでした。


Ⅱ.判決の問題点


(1)大阪府が日朝関係の悪化を背景に定めた「四要件」が、朝鮮学校を標的とする政治的意図をもっていたことは明らかです。「学習指導要領に準じた教育」を求めることも、教室や職員室における掲示物の適否を云々することも、行政による裁量の範囲を逸脱した干渉です。しかし判決文はこの「四要件」を含む要綱も「地方公共団体内部の事務手続」を定めたものであるから問題はなく、朝鮮学校を狙い撃ちにしたとは言えないと大阪府を擁護しました。
(2)さらに補助金不交付による児童・生徒の学習環境悪化、保護者の経済的負担増大などの悪影響については、補助金が学校法人への助成という枠組みを前提としている以上やむを得ない、とさえ述べています。判決文に司法の独立性を担保するような判断はまったく見られず、形式的な議論に終始することによって行政の不当な措置を追認し、正当化するだけのものとなっています。
(3)大阪府前知事の「四要件」提示を発端とする大阪での動きは、文部科学省の「高校無償化」制度からの朝鮮学校排除とあいまって、他の地方公共団体による補助金の打ち切りや減額を誘発しました。2016年3月には、文部科学省が朝鮮学校への補助金を交付してきた28都道府県の知事あてに、制度の再チェックを求める通知を発したため、各地方公共団体は対応を余儀なくされました。こうした日本政府・地方公共団体による朝鮮学校に対する狙い撃ち的な差別政策が、事実上、朝鮮学校は排除してもよいのだという排外主義的な思想を「上から」流布、扇動する機能を果たし、民族教育に対する風評被害をもたらしてきたのです。かかる状況を振り返るとき、わたしたちは、「人権の砦」であるはずの司法がこれに「お墨付き」を与えたことを、きわめて深刻な事態として捉えざるを得ません。
(4)今回の不当判決によって無残な形で否定されたのは、大阪朝鮮学園の訴えだけではありません。日本社会の良識であり、民主主義であり、人権意識であり、植民地主義を克服しようとする歴史認識なのです。
(5)教育の機会均等実現や民族教育の保障は、憲法をはじめとする国内法規や国際人権法に定められ、政府・地方自治体として実行しなければならない責務でもあります。実際に2014年9月には、国連の人種差別撤廃委員会が日本政府に対して、朝鮮学校への「高校無償化」制度の適用とともに、地方自治体の補助金の再開・維持を要請するよう勧告しています。しかし今回の不当判決は、憲法や国際人権法などが「補助金の交付を受ける権利を基礎付けるもの」ではないとして、このような勧告に明らかに逆行する判断を示しました。


Ⅲ.主張


(1)わたしたち研究者有志は、これを子どもの学習権や民族教育の意義を一顧だにしない不当判決と捉え、強く抗議します。
(2)わたしたちは今回の大阪地裁判決を決して認めることができません。
(3)朝鮮学校への補助金制度を維持している各地方公共団体には、大阪地裁の不当判決を補助金交付見直しの口実としないよう、そして既に補助金を停止している地方公共団体にはこの判決を自己正当化のために悪用しないよう求めます。
(4)わたしたちは地方公共団体が、歴史的経緯と国際基準に照らして民族教育の権利を保障し、朝鮮学校への補助金交付を維持、発展させることを求めます。
(5)あわせて政府・地方公共団体の文教政策において、朝鮮学校に対するレイシズム(人種・民族差別)をただちに中断するよう求めます。


 私たちは、「大阪朝鮮学園・補助金裁判不当判決に抗議する研究者有志の声明」が説く次の指摘をあらためて再認識しなければなりません。


Ⅰ.今回の不当判決によって無残な形で否定されたのは、大阪朝鮮学園の訴えだけではありません。日本社会の良識であり、民主主義であり、人権意識であり、植民地主義を克服しようとする歴史認識であること。
Ⅱ.2014年9月には、国連の人種差別撤廃委員会が日本政府に対して、朝鮮学校への「高校無償化」制度の適用とともに、地方自治体の補助金の再開・維持を要請するよう勧告している。しかし今回の不当判決は、憲法や国際人権法などが「補助金の交付を受ける権利を基礎付けるもの」ではないとして、このような勧告に明らかに逆行する判断を示したものであること。



 以下、朝日新聞及び「大阪朝鮮学園・補助金裁判不当判決に抗議する研究者有志の声明」の引用。






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by asyagi-df-2014 | 2017-02-07 11:50 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

大学や民間研究機関の軍事転用可能な研究や技術に防衛省が助成する制度を巡り、軍学共同反対連絡会は2017年1月31日、助成制度に応募しないよう求める二千六百筆超の署名が集まったと発表。

 東京新聞は2017年2月1日、標題について次のように報じた。


(1)大学や民間研究機関の軍事転用可能な研究や技術に防衛省が助成する制度を巡り、研究者らでつくる軍学共同反対連絡会は三十一日、都内で記者会見し、助成制度に応募しないよう求める二千六百筆超の署名が集まったと発表した。署名は昨年十二月から集め、今後は全国の大学に提出する予定だ。
(2)助成制度は二〇一五年度に始まり、一六年度は応募が半分以下の四十四件にとどまった。しかし、政府は一六年度六億円だった予算を、来年度以降五年間で百十億円に急増させた。
(3)連絡会共同代表の池内了(さとる)名古屋大名誉教授は会見で「このような資金が研究に流れ込めば、研究の自由、学問の自由が担保されるのか。危機感を覚える」と訴えた。一橋大大学院の鵜飼哲(さとし)教授は「殺される側の人々の立場から、物事を見る知識と想像力がいまこそ求められている。文系理系の枠を超えた立場で話し合いを行うことが必要だ」と話した。
(4)全国の大学では助成制度への応募を認めない動きが出ている。京大は部局長会議で、防衛省の研究費を受けることは好ましくないという指針を確認。昨年十二月以降、関西大、明治大、法政大が相次いで、制度に応募しないとする声明を発表した。


 この助成制度への応募を認めないという各大学の姿勢を、強く支援します。





by asyagi-df-2014 | 2017-02-03 12:23 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

山城博治沖縄平和運動センター議長の長期拘束が3カ月。明らかに人権蹂躙だ。

 山城博治沖縄編和運動センター議長の長期勾留について、沖縄タイムスは2017年1月18日に「[山城議長勾留3カ月]権限濫用の人権蹂躙だ」、琉球新報は2017年1月19日に「山城氏拘束3カ月 国際批判招く人権侵害だ」、とその社説でそれぞれが批判した。
まずは、二紙の主張をまとめる。


Ⅰ.主張
(沖縄タイムス)
 山城議長は大病を患っており、長期の勾留による健康への影響が心配だ。家族との接見すら認められておらず、人権蹂躙(じゅうりん)としか言いようがない。ただちに釈放すべきだ。
(琉球新報)
(1)那覇地方裁判所、那覇地検は国内外からの「人権侵害」の批判を深刻に受け止めるべきだ。
(2)基地反対運動の中心人物を長期拘束することで「反対運動を萎縮させる」政治弾圧の意図を疑っている。


Ⅱ.事実
(沖縄タイムス)
(1)東村高江のヘリパッド建設や名護市辺野古の新基地建設に対する抗議行動で、公務執行妨害などの容疑で逮捕された沖縄平和運動センターの山城博治議長の勾留が3カ月に及ぶ。
(2)逮捕容疑は3件ある。まず、昨年10月17日、米軍北部訓練場の侵入防止のために沖縄防衛局が設置していた有刺鉄線をペンチで2カ所切断したとして、器物損壊の疑いで準現行犯逮捕された。同月20日には、公務執行妨害と傷害の容疑で逮捕された。8月25日に北部訓練場の工事用道路で、侵入防止フェンスを設置していた防衛局の職員の肩をつかみ激しく揺さぶる行為などで、頸椎(けいつい)捻挫と右腕打撲のけがを負わせた疑いだ。これらで起訴された後の11月29日、今度は辺野古の新基地建設を巡る抗議行動に関連して威力業務妨害の疑いで逮捕された。1月28日から30日の間、キャンプ・シュワブ工事用ゲート前でコンクリートブロック約1400個を積み上げるなど、防衛局の工事業務を妨害した疑い。12月20日に追起訴された。
(琉球新報)
 米軍北部訓練場のヘリパッドや辺野古新基地建設の反対運動の先頭に立つ山城博治沖縄平和運動センター議長の長期拘束に対する抗議と釈放要求が相次いでいる。釈放を要求する国内外4万人の署名が地裁に提出された。英字紙ジャパンタイムズに寄稿があり、「人権後進国」が発信される事態となった。


Ⅲ.問題点
(沖縄タイムス)
(1)容疑の内容を見る限り、3カ月もの勾留には強い違和感を覚える。反対派リーダーを何が何でも長期間拘束し、政府に盾突く抗議行動を萎縮させようという思惑が透けて見えるのだ。
(2)10カ月前の行動まで持ち出して逮捕を繰り返し、起訴後も証拠隠滅の恐れがあるなどとして釈放が認められていない。機動隊員が抗議する市民を力ずくで強制排除し、市民側からけが人が出ても、おとがめなしなのとは対照的だ。
(3)辺野古を巡り政府と県の対立が続く中、沖縄の民意を力でねじ伏せようとする動きに危機感が高まっているのだ。
(4)警察法は、警察の責務の遂行に当たり「不偏不党かつ公平中正」を旨とし、「権限を濫用(らんよう)することがあってはならない」と定めている。警察は自らこれに背いているとしか見えず、まさに「警察国家」へと突き進もうとしている。政治的弾圧に司法までもが追随し、極めて危険だ。
(5)山城議長は大病を患っており、長期の勾留による健康への影響が心配だ。家族との接見すら認められておらず、人権蹂躙(じゅうりん)としか言いようがない。ただちに釈放すべきだ。
(琉球新報)
(1)山城議長は逮捕後の身体拘束が3カ月に達した。がんを患い病状悪化が懸念されるが、家族の面会すら認められず、靴下の差し入れも拒まれた。政府は「靴下の差し入れが認められない事例はない」と不当な対応を認めている。家族によると「昨年12月の血液検査で白血球値が下がり感染症の恐れがあり、腕立て伏せで体を鍛え納豆を口にしている」という。山城議長の公判は3月以降とされる。これ以上、勾留が長期化すると、さらに体調の悪化が危惧される。那覇地検、地裁は必要な医療や健康維持に留意した上で、早急な釈放を判断すべきだ。
(2)ジャパンタイムズに寄稿した米国の弁護士で明治大特任教授のローレンス・レペタ氏は、山城議長の長期拘束を「国際人権法」および、日本も批准する「国際人権規約」に反すると指摘している。
(3)山城議長はヘリパッド建設現場で有刺鉄線1本を切った器物損壊容疑で逮捕され、別件の逮捕、起訴を含め拘留が長期化している。レペタ氏は刑法学者らの指摘を踏まえ「このような微罪が仮に有罪となっても刑務所収監には至らない」と疑問視する。3カ月に及ぶ身体拘束は、判決を上回る刑罰に等しいと見ているのである。
(4)国内の刑法学者らは個別事件では異例の「釈放要求」声明を出した。共通するのは「必要性のない拘束」であり「政治的表現を制限するもの」との批判である。いずれも基地反対運動の中心人物を長期拘束することで「反対運動を萎縮させる」政治弾圧の意図を疑っている。レペタ氏は山城議長の長期拘束を国際人権規約に反する「恣意(しい)的な逮捕、拘束」と見なし、「独裁的な国家が反対派を黙らせる常とう手段」になぞらえている。


Ⅳ.広がる批判
(沖縄タイムス)
(1)異様な事態に、国内外から批判が上がっている。
(2)17日には、市民団体が早期釈放を求める3万9826人分の署名を集め、那覇地裁へ提出した。地裁前での集会では、約200人(主催者発表)が「一日も早く釈放せよ」と訴えた。
(3)県内外の刑事法の研究者41人は緊急声明を発表した。抗議行動に絡んだ起訴事実は政治的表現行為だとし、捜査が終わり証拠隠滅の恐れがないことから「速やかに解放すべきだ」と長期勾留を批判した。
(4)日本国際法律家協会や環境NGOのネットワークも声明で釈放を求めた。海外識者10人は、連名による声明で「基地を沖縄に強要し続ける国家に逆らい、諦めない姿勢そのものが最大の罪とされている」と断じた。
(琉球新報)
 山城議長の人権侵害の批判は、警察、検察、司法を従わせ、民意を力でねじ伏せる政府の横暴に向けられていると知るべきだ。


 山城博治さんの拘束は、2016年10月17日以来、何と3カ月を過ぎるものとなった。
 このことについて、「那覇地方裁判所、那覇地検は国内外からの『人権侵害』の批判を深刻に受け止めるべきだ。」(琉球新報)。
 また、このことは、「基地反対運動の中心人物を長期拘束することで『反対運動を萎縮させる』政治弾圧の意図」、を充分に疑わせるものである。
 さらに、「山城議長は大病を患っており、長期の勾留による健康への影響が心配だ。家族との接見すら認められていない」(沖縄タイムス)、という状況がある。
 こうした状況は、人権蹂躙としか言いようがない。ただちに釈放すべきだ。




by asyagi-df-2014 | 2017-01-20 08:27 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

刑法学者に、「法律を学び、教える者として無力感におそわれる。」とまで言わせた山城氏の違法な逮捕・勾留。

 緊急声明を行った刑法学者は2016年12月28日、緊急声明の前に、次のようなプレスリリースを行っている。


 日本政府は、民主的に表明される沖縄の民意を国の力で踏みにじっておきながら、日本は法治国家であると豪語する。法律を学び、教える者として無力感におそわれる。まことに残念ながら刑事司法もこれに追随し、非暴力平和の抗議行動を刑法で抑え込もうとしている。平和を守ることが罪になるのは戦時治安法制の特徴である。しかし、今ならば引き返して「法」をとり戻すことができるかもしれないので、刑事法学の観点から、山城氏の逮捕・勾留こそが違法であり、公訴を取消し、山城氏を解放すべきであることを説明する必要があった。
 10日前に海外識者らの「山城博治氏らの釈放を求める声明」が発表され、その後、沖縄県内の二紙が、勾留中の山城氏の「県民団結で苦境打開を」「未来は私たちのもの」とする声を伝えた。日本の刑事法研究者としても、刑事司法の側に不正がある、と直ちに応じておかねばならないと考え、別紙のとおり、「山城博治氏の釈放を求める刑事法研究者の緊急声明」(2016.12.28)を発表する。


 刑法学者に、「法律を学び、教える者として無力感におそわれる。」とまで、言わさせた日本の現状と、これに「今ならば引き返して『法』をとり戻すことができるかもしれない」と対抗しようとする「山城博治氏の釈放を求める刑事法研究者の緊急声明」について、考える。
 「声明」をまとめると次のようになる。


Ⅰ.山城博治沖縄平和運動センター議長に関する事実
(1)沖縄平和運動センターの山城博治議長(64)が、70日間を超えて勾留されている。(2)山城氏は次々に3度逮捕され、起訴された。接見禁止の処分に付され、家族との面会も許されていない
(3)①2016年10月17日、米軍北部訓練場のオスプレイ訓練用ヘリパッド建設に対する抗議行動中、沖縄防衛局職員の設置する侵入防止用フェンス上に張られた有刺鉄線一本を切ったとされ、準現行犯逮捕された。同月20日午後、那覇簡裁は、那覇地検の勾留請求を棄却するが、地検が準抗告し、同日夜、那覇地裁が勾留を決定した。これに先立ち、②同日午後4時頃、沖縄県警は、沖縄防衛局職員に対する公務執行妨害と傷害の疑いで逮捕状を執行し、山城氏を再逮捕した。11月11日、山城氏は①と②の件で起訴され、翌12日、保釈請求が却下された(準抗告も棄却、また接見禁止決定に対する準抗告、特別抗告も棄却)。さらに山城氏は、③11月29日、名護市辺野古の新基地建設事業に対する威力業務妨害の疑いで再逮捕され、12月20日、追起訴された。
(4)以上の3件で「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(犯罪の嫌疑)と「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」があるとされて勾留されている(刑訴法60条)。


Ⅱ.反論
(1)犯罪の嫌疑についていえば、以上の3件が、辺野古新基地建設断念とオスプレイ配備撤回を掲げたいわゆる「オール沖縄」の民意を表明する政治的表現行為として行われたことは明らかであり、このような憲法上の権利行為に「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」があるのは、その権利性を上回る優越的利益の侵害が認められた場合だけである。
(2)政治的表現行為の自由は、最大限尊重されなければならない。いずれの事件も抗議行動を阻止しようとする機動隊等との衝突で偶発的、不可避的に発生した可能性が高く、違法性の程度の極めて低いものばかりである。
(3)仮に嫌疑を認めたとしても、次に、情状事実は罪証隠滅の対象には含まれない、と考えるのが刑事訴訟法学の有力説である。
(4)法的に理由のない勾留は違法である。その上で付言すれば、自由刑の科されることの想定できない事案で、そもそも未決拘禁などすべきではない。
(5)山城氏は健康上の問題を抱えており、身体拘束の継続によって回復不可能な不利益を被るおそれがある。しかも犯罪の嫌疑ありとされたのは憲法上の権利行為であり、勾留の処分は萎縮効果をもつ。したがって比例原則に照らし、山城氏の70日間を超える勾留は相当ではない。


Ⅲ.反論の詳細
(1)上記「Ⅰ.の(3)」について、①で切断されたのは価額2,000円相当の有刺鉄線1本であるにすぎない。②は、沖縄防衛局職員が、山城氏らに腕や肩をつかまれて揺さぶられるなどしたことで、右上肢打撲を負ったとして被害を届け出たものであり、任意の事情聴取を優先すべき軽微な事案である。そして③は、10か月も前のことであるが、1月下旬にキャンプ・シュワブのゲート前路上で、工事車両の進入を阻止するために、座り込んでは機動隊員に強制排除されていた非暴力の市民らが、座り込む代わりにコンクリートブロックを積み上げたのであり、車両進入の度にこれも難なく撤去されていた。実に機動隊が配備されたことで、沖縄防衛局の基地建設事業は推進されていたのである。つまり山城氏のしたことは、犯罪であると疑ってかかり、身体拘束できるような行為ではなかったのである。
(2)②の件を除けば、山城氏はあえて事実自体を争おうとはしないだろう。しかも現在の山城氏は起訴後の勾留の状態にある。検察は公判維持のために必要な捜査を終えている。被告人の身体拘束は、裁判所への出頭を確保するための例外中の例外の手段でなければならない。もはや罪証隠滅のおそれを認めることはできない。以上の通り、山城氏を勾留する相当の理由は認められない。


Ⅳ.結論
(1)山城氏のこれ以上の勾留は「不当に長い拘禁」(刑訴法91条)であると解されねばならない。
(2)山城氏の長期勾留は、従来から問題視されてきた日本の「人質司法」が、在日米軍基地をめぐる日本政府と沖縄県の対立の深まる中で、政治的に問題化したとみられる非常に憂慮すべき事態である。私たちは、刑事法研究者として、これを見過ごすことができない。山城氏を速やかに解放すべきである。


 刑法学者は、「日本の刑事法研究者としても、刑事司法の側に不正がある、と直ちに応じておかねばならないと考え、別紙のとおり、『山城博治氏の釈放を求める刑事法研究者の緊急声明』(2016.12.28)を発表する。」、とまさに「良心宣言」を行っている。
 つまり、今の日本は「良心宣言」を行わなけねばならない状況にすでに陥ってしまっているということだ。
 じっと見ているだけでは、もう悪くなるだけである。
 それならば、この「声明」に、それぞれの現場で繋がろう。

まずは、山城博治氏の釈放を求める。


 以下、「山城博治氏の釈放を求める刑事法研究者の緊急声明」とプレスリリースの引用。





by asyagi-df-2014 | 2017-01-03 08:46 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)に、憲法学者101人が反体声明を発表。

 朝日新聞は、標題について次のように報じた。


(1)南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)をめぐり、憲法学者が9日、101人の連名で、安全保障関連法に基づく新任務「駆けつけ警護」などが付与された陸上自衛隊の部隊派遣に反対する声明を発表した。
(2)名を連ねたのはいずれも憲法の研究者で、飯島滋明・名古屋学院大教授、成沢孝人・信州大教授ら。声明では、自衛隊が南スーダンで武器使用に踏み切れば憲法9条が禁じる武力行使にあたるとして、部隊の派遣反対と撤収を訴えた。
(3)
 事務局を務める清水雅彦・日本体育大教授は同日、東京都内で記者会見を開き、「憲法研究者として黙って見てはいられない」と話した。石川裕一郎・聖学院大教授は「(内戦状態の地域では)武器使用と武力行使の区別ができるのか疑問だ」と指摘した。


 以下、朝日新聞の引用。






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by asyagi-df-2014 | 2016-12-09 20:57 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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