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共謀罪」を考える。(7)-東京新聞20170210より-

 東京新聞は2017年1月6日、「安倍晋三首相は五日、犯罪計画を話し合うだけで処罰対象とする「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を二十日召集の通常国会に提出する方針を固めた。」、と報じた。
また、この背景を、「菅義偉(すがよしひで)官房長官は五日の記者会見で、『共謀罪』法案の通常国会への提出に関して、二〇二〇年の東京五輪・パラリンピックに向けテロ対策の強化が必要だと主張し『テロを含む組織犯罪を防ぐことは、国民も望んでいる。これまでの国会審議の意見を踏まえ、最終検討している』と述べた。」、とも伝えた。
 政府は2017年3月21日、「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案を閣議決定した。

 緊急かつ重大な課題である『共謀罪』について考える。

 東京新聞は、2017年2月10日、「政府の『共謀罪』創設理由を疑問視 『現行法でテロ対応可能』」、と次のように報じた。


(1)「共謀罪」と趣旨が同じ「テロ等準備罪」の必要性を巡り、政府が現行法で対応できないテロ対策の穴として示した三事例について、元東京地検検事の落合洋司弁護士は九日、「共謀罪がなければ不十分というわけではなく、取り締まりに穴が生じる状況にもない」と述べ、現行法や法改正で対応できるという見解を示した。民進党法務部門会議で有識者として、共謀罪法案の問題点を指摘した。
(2)落合弁護士は、東京地検公安部に在籍した一九九五年ごろにオウム真理教関連の事件捜査を担当。当時、捜査機関が事前に発生を察知することができなかった経験から「テロは情報がなければ防止できない。共謀罪ができればテロを防げるというのは無理がある」と述べた。政府が、共謀罪創設の必要性として示す三事例のうち、地下鉄サリン事件を想起させる化学薬品テロについて「(殺傷能力の高い化学薬品の原料の一部を)入手した段階で殺人予備罪が適用できる」とみる。他の二事例についても「ハイジャックは殺人予備罪やハイジャック防止法の予備罪などが成立する。サイバーテロは、現行法の改正で対処できる」などと述べた。
(3)政府側が新たな案について「合意に加えて実行のための準備行為があって初めて処罰される」とこれまでの共謀罪との違いを強調するのに対し、「共謀だけで処罰は困難だが、共謀や準備行為らしきものがある段階で捜索や逮捕の令状は発付できる。従来の共謀罪と大きな差はない」と解説。「公安事件は関係先を捜索したり、アジトに入って情報収集したりするなど動くことに意味がある。動くためには事件を探して作らないといけない。共謀罪ができると、起訴は難しくても捜査できる範囲は広がる」と危ぶむ。
(4)テロ対策については「オウム真理教関連事件では情報を入手して生かす体制が不十分だった。東京五輪に向けては、共謀罪ではなく、複数の機関が連携して情報を共有し、生かすことが急務だ」との見方を示した。


 また、東京新聞は同記事で、その関係を次のように図で示した。




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by asyagi-df-2014 | 2017-03-28 07:55 | 共謀罪 | Comments(0)

「共謀罪」の閣議決定、国会提出を考える。(3)-地方紙の社説・論説20170322-

 東京新聞は2017年3月22日、「政府は計画段階での処罰を可能とする『共謀罪』の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を二十一日に閣議決定し、国会に提出した。法案では、処罰対象となる団体や合意の方法、処罰の前提となる『準備行為』の定義がいずれも曖昧で、捜査機関の裁量で、テロと関係のない市民団体などにも適用され、日常的な行為が準備行為と認定される恐れがある。実行後の処罰を原則としてきた刑法体系は大きく変わる。」、と報じた。 
 このことを考える。
 まず、地方紙の社説・論説の見出しは、次のようになっている。


(1)北海道新聞社説-「共謀罪」提案 危険な本質 容認できぬ
(2)河北新報社説-「共謀罪」閣議決定/「監視社会」に向かう危険性
(3)東奥日報社説-基本的人権との摩擦生む/「共謀罪」法案
(4)岩手日報論説-「共謀罪」提出 数で押すのは許されぬ
(5)茨城新聞論説-共謀罪法案 基本的人権と摩擦生む
(6)信濃毎日新聞社説-共謀罪法案 危うさを見極めねば
(7)新潟日報社説-「共謀罪」法案 なぜ必要か疑問に答えよ
(8)京都新聞社説-「共謀罪」法案  内心の自由危うくする
(9)神戸新聞社説-「共謀罪」法案/テロ防止に必要と言うが
(10)山陰中央新報論説- 共謀罪法案/監視の網が広がる恐れも
(11)愛媛新聞社説-「共謀罪」閣議決定 人権脅かす危険法案に反対する
(12)高知新聞社説-【「共謀罪」法案】 国民の不安を拭えるのか
(13)西日本新聞社説-「共謀罪」閣議決定 国会で徹底審議が必要だ
(14)宮崎日日新聞社説-「共謀罪」法案提出
(15)佐賀新聞論説-「共謀罪」が閣議決定 人権侵害の恐れないか
(16)南日本新聞社説-[「共謀罪」提出] 人権を抑圧する武器になりかねない


 上記の各紙はいずれも、社説・論説の見出しに、[共謀罪]を掲げている。このことからも、「テロ準備罪法案 政府は堂々と意義を主張せよ」と「共謀罪」という表現さへ使用しない読売新聞の異様さが際立っている。
 各紙の見出しを次のように並べてみただけで、「共謀罪」法案の問題点が明らかになる。
 「「共謀罪」提案 危険な本質 容認できぬ」、「「監視社会」に向かう危険性」、「基本的人権との摩擦生む」、「数で押すのは許されぬ」、「危うさを見極めねば」、「なぜ必要か疑問に答えよ」、「内心の自由危うくする」、「テロ防止に必要と言うが」、「国民の不安を拭えるのか」、「国会で徹底審議が必要だ」。
 さて、この十六社の社説・論説の主張は次のものである。

Ⅰ.北海道新聞
(1)共謀罪は個人の内心を処罰対象とし、犯罪実行前の幅広い摘発を可能にするものだ。実行後の処罰を原則としてきた刑法の体系を大きく変え、捜査当局の恣意(しい)的な運用を許す恐れが拭えない。改正案が過去3度廃案になったのも、問題が多すぎたからだ。多少の修正を経ても本質は変わらない。国会は徹底審議し、危険性を浮き彫りにすべきである。
(2)政府が意図しなくても、やがては国民生活の隅々に警察の一層の監視の目が光る。そんな社会の到来を許してはならない。


Ⅱ.河北新報
(1)過去に3度も廃案になった法案と比べると、「テロ等準備罪」へと名称や構成要件が変わり、適用は「組織的犯罪集団」に限られたが、一般人も影響を受けかねない危険な性格は依然残っている。法案も提出されたのだから、国会で徹底的に問題点を議論すべきだ。法案の内容に加え、今後予想される捜査手法についても、歯止め策の検討などが不可欠になる。
(2)共謀(計画)と準備の段階で立件しようとすれば、常識的には私的な通信の傍受や追跡といった捜査が必要。政府内には「通信傍受の対象外」との声があるものの、公権力による監視社会に陥りかねない危険性をはらむことにも十分注意しなければならない。
(3)結局、今回の法案でも国際的なテロ組織の取り締まりに特化しているわけではなく、一般国民に適用されることがないと言い切ることは困難。むしろ導入による「副作用」が心配になる。計画と準備のみで犯罪を摘発しようとすれば、電話やメールの傍受に頼ることになりかねないし、広範囲に移動を監視する必要も出てくる。通信傍受は今やかなりの犯罪で可能だし、衛星利用測位システム(GPS)の端末をひそかに車に取り付ける捜査も実際に行われている。傍受や監視は、容疑者と目される人物の周辺まで及ぶことも十分あり得るだろう。もちろん本人は何も知らないうちに。共謀罪の議論に当たっては、人権やプライバシーが危機にひんしかねないことも決して忘れてはならない


Ⅲ.東奥日報
(1)通信傍受で電話やメールの内容に目を光らせたり、隠し撮りしたり。屋内に送信機を仕掛け日常会話を拾う会話傍受など新たな捜査手法の導入も警察内で検討課題になっている。プライバシーの領域に立ち入ることなしに「内心」を探ることはできず、憲法が保障する基本的人権との摩擦を生むのは避けられない。
(2)政府は閣議決定した法案から「共謀」の2文字を完全に消した。「内心の自由」を侵すと批判を招き、日の目を見なかった過去の共謀罪法案と異なることを強調するためだ。共謀罪ではなく「テロ等準備罪」という罪名を持ち出し、テロ対策を前面に掲げた。
 しかし、いくら字面をいじっても共謀を罰するという本質は変わらない。組織的犯罪集団は「重大な犯罪を実行するために結合する団体」と定義されるが、常習性や反復継続性などの要件はなく、市民団体や会社も対象になるとの懸念は根強い。


Ⅳ.岩手日報
(1)言論弾圧の後ろ盾となった戦前の治安維持法も、国は当初「一般国民は無関係」などと説明していた。なぜ今、法案が必要なのか。「五輪があるから」は説明ではない。野党が有力な学説を引きつつ現行法でもテロ対応は可能と訴えても、政府は「必要」を繰り返すばかり。国際条約加盟に必要―との説明に日弁連などが疑義を挟んでも、まともな反論もない。
(2)法案は人権の問題に直結する。成立すれば「未遂が処罰されず、計画段階で処罰される犯罪が出てくる」との指摘もある。犯罪の実行を処罰対象とする刑事法の原則に関わる重大な局面を政権が厳粛に受け止めるなら、数の力で押すのは決して許されない。


Ⅴ.茨城新聞
(1)通信傍受で電話やメールの内容に目を光らせたり、隠し撮りしたり。屋内に送信機を仕掛け日常会話を拾う会話傍受など新たな捜査手法の導入も警察内で検討課題になっている。プライバシーの領域に立ち入ることなしに「内心」を探ることはできず、憲法が保障する基本的人権との摩擦を生むのは避けられない。
(2)このため「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と適用対象でテロに言及した。しかし、いくら字面をいじっても、共謀を罰するという本質は変わらない。しかも組織的犯罪集団は「重大な犯罪を実行するために結合する団体」と定義されるが、常習性や反復継続性などの要件はなく、市民団体や会社も対象になるとの懸念は根強い。
(3)また犯罪の計画について現実的、かつ具体的でなければならないと政府は繰り返し説明しているものの、条文にそのような記述はない。下見のほか資金や凶器の用意などが例示される準備行為にしても、あいまいだ。


Ⅵ.信濃毎日新聞
(1)「共謀罪と呼ぶのは全くの間違いだ」「一般の人が対象になることはあり得ない」…。政府が国会で繰り返してきた説明は、いずれも論拠を欠いている。本質にある危うさを見極め、法案の審議に厳しい目を向けていかなくてはならない。
(2)内心の動きではなく行為を罰する刑法の基本原則から逸脱し、処罰の枠組みを一気に押し広げる。捜査機関の権限が歯止めなく拡大することになりかねない。
(3)共謀罪の導入は、逮捕や捜索、差し押さえなど強制力を伴う捜査を、早い段階から可能にする。立件はされなくても、権限が乱用され、プライバシーや人身の自由が侵される恐れは高まる。
(4)戦前、治安維持法が制定された際にも、一般の人に累は及ばないと政府は強調した。その後、広範な人々の思想・言論弾圧につながったことは歴史が示している。
(5)憲法は、刑罰権の乱用を防ぐため、刑事手続きについて諸外国に例を見ないほど詳細な規定を置いた。捜査・治安当局の横暴によって著しく人権が侵害された反省を踏まえたものだ。そのことに立ち戻って考えれば、廃案にすべき法案である。政府与党が強引に審議を進めることがあってはならない。


Ⅶ.新潟日報社
(1)政府は「立証には高いハードルがあり乱用する恐れはない」と強調するが、これまでの議論で懸念が払拭(ふっしょく)されたとは言い難い。
(2)政府は当初、条約の規定に基づいて676の犯罪を対象とする方針だったが、公明党などの批判を受け277に絞り込んだ。過去には「犯罪の内容によって選別できない」との答弁書を閣議決定しており、整合性も問われるのではないか。
(3)なぜ「共謀罪」が必要なのか、政府には十分な説明が求められる。「数の力」で採決を強行するようなことがあってはならない。


Ⅷ.京都新聞社
(1)古来、アリの穴から堤も崩れるという。法案に反対である。
(2)安倍政権は今国会での法案成立をめざすが、さまざまな疑問に答えられるのか。国民は議論の行方を注視する必要がある。
(3)これでは歯止めがきかない。思想の自由やプライバシーなどが脅かされる監視社会にならないか。
(4)日弁連は、新たな共謀罪なしでも、日本には条約締結できる法制度があると指摘する。組織犯罪集団による犯罪を未遂前に取り締まれる予備罪・共謀罪が計58あり、刑法の共謀規定も含め実際には広く共謀処罰が可能だという。
 なぜ、それ以上に新たな共謀罪が必要なのか。怖さを感じる。


Ⅸ.神戸新聞社
(1)なぜ必要なのか、よく分からない。同じ思いの人も多いだろう。
(2)政府は、国連の国際組織犯罪防止条約締結のために「共謀罪」を新設する必要があると主張する。だが、日本はもともと「予備罪」や「準備罪」などの形で、犯罪の準備行為を処罰の対象にしてきた。法学者からは、これらの法律を活用すれば条約締結は可能で新たな法整備は必要ない、との指摘がある。そもそも、この条約はマフィアなどの経済的な犯罪の撲滅を目指すもので、テロ対策のために採択されたものではない。国際的なテロへの取り組みでは「テロ資金供与防止条約」などがあるが、日本はすべて締結している。法的な“武器”は相当整備されているのに、政府はさらに強力なものを求めていると映る。
(3)もとより議論を尽くすことなく、与党が採決を強行するようなことはあってはならない。


Ⅹ.山陰中央新報
(1)プライバシーの領域に立ち入ることなしに「内心」を探ることはできず、憲法が保障する基本的人権との摩擦も予想される。
(2)政府は2020年の東京五輪・パラリンピックに向けテロ対策を強化するのに不可欠とする。過去に批判を浴び、法案が3度も廃案になったときの共謀罪と全く違い、構成要件が厳格で一般の人が対象になることはあり得ないと言う。だが法案の条文から、それは読み取れない。
(3)また犯罪の計画について現実的、かつ具体的でなければならないと政府は繰り返し説明しているものの、条文にそのような記述はない。下見のほか資金や凶器の用意などが例示される準備行為にしても、あいまいだ。


ⅩⅠ.愛媛新聞
(1)「共謀罪と呼ぶのは全くの間違い」「(改正案を成立させ国際組織犯罪防止条約を締結できなければ)東京五輪を開けないといっても過言ではない」。安倍晋三首相は声高に繰り返したが、改正案を見る限りその認識こそ「全くの間違い」と断じざるを得ない。国民にとって極めて危険で、にもかかわらず疑問だらけのずさんな法案を強硬に成立させることは許されない。なぜ今必要なのか、徹底論議と抜本見直しを国会に求めるとともに、何度でも強く反対する。
(2)適用対象や要件を狭めたように見せて、恣意(しい)的な運用や拡大解釈の余地は残ったまま。広く一般人、つまりは捜査機関が怪しいとにらんだ相手なら誰でも、心の動きを罪とした逮捕が可能になる。監視強化や、政府方針と異なる意見を持つ国民の萎縮は避けられず、新設に前のめりな国の本音を危惧する。
(3)国民の人権を揺るがす法案の重大性に比して、政府の説明はあまりに拙速かつ稚拙。やはり容認はできない。諦めず、反対の声を上げ続けねばならない。


ⅩⅡ.高知新聞
(1)今回の改正案は「組織的犯罪集団」に適用すると規定し、対象となる犯罪も絞った。とはいえ、根強い懸念を解消できるのか。国会審議を通じ、問題点を浮き彫りにしなければならない。
(2)政府は適用対象を「組織的犯罪集団」と位置付けるが、一方では「正当な活動をする団体も目的が一変すれば組織的犯罪集団となる」と説明している。「一変」したかどうかの基準も「具体的な事情を考慮して総合的に判断する」(金田法相)という曖昧さだ。捜査機関側がいかようにも判断しかねない。
(3)構成要件とする犯罪の準備行為にしても、同様の懸念が浮かぶ。現場の下見や資金調達などを挙げるが、犯罪の準備とどう認定するのか。拡大解釈の余地があれば、乱用の歯止めになるまい。市民による集会やデモへの抑圧につながらないか。
(4)政府の前のめり姿勢とは裏腹に、国民が抱える懸念を表しているといってよい。現行法や個別の犯罪に関する予備罪などの検討で、なぜ対応できないのか。国民の人権に大きく関わる問題だけに、数の力で押し切ることは許されまい。国民が納得できるだけの説明を求める。


ⅩⅢ.西日本新聞
(1)私たちは慎重な対応を繰り返し政府に求めてきたが、政府はまず制定ありきの姿勢を崩さず法案づくりを優先させた。拙速で泥縄式の対応と言わざるを得ない。
(2)政府は国際組織犯罪防止条約の締結に必要とも説明するが、現行法で対応できるとの意見は根強い。対象犯罪の絞り込みが適正なのか、納得のいく説明もない。
(3)この世論を肝に銘じて、国会は審議を尽くしてほしい。


ⅩⅣ.宮崎日日新聞
(1)捜査機関は計画段階の犯罪をあぶり出すため、社会に監視の網を広げようとするだろう。プライバシーの領域に立ち入ることなしに「内心」を探ることはできず、憲法が保障する基本的人権との摩擦を生むのは避けられない。
(2)過去に批判を浴び、法案が3度も廃案になったときの共謀罪と違い、構成要件が厳格で一般の人が対象になることはあり得ないと政府は言う。だが法案の条文から、そうしたことは読み取れない。
(3)このため「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と適用対象でテロに言及した。しかし字面をいじっても、共謀を罰するという本質は変わらない。
(4)そもそもなぜ、この法案が必要なのか。政府は「テロの未然防止」を強調。航空機乗っ取りなどの事例をいくつか挙げて「現行法では的確に対処できない」とする。野党が有力な学説を引き「ハイジャック防止法の予備罪を適用できる」と指摘しても「予備罪に当たらないこともある」と繰り返すばかりだ。具体的に現行法のどこに不備があるのか説明しない。どこまでいっても、この法案にはあいまいさと危うさがつきまとう。


ⅩⅤ.佐賀新聞
(1)過去に廃案となった「共謀罪」を取り入れた組織犯罪処罰法改正案が閣議決定され、今国会に提出された。政府は東京五輪を控えてのテロ対策を強調するが、法が恣意(しい)的に運用されれば、国民のあらゆる行為に捜査の目が向けられる恐れがある。基本的人権を侵害することはないのか、慎重な法案審議が求められる。
(2)テレビの取材で女性が「まだ起きていない犯罪に、自分が関与していないことをどう証明できるのか」と話したが、詳細に検証しないと不安が尽きない法案だ。
(3)国会は今、政治家の関与が疑われている森友学園への国有地払い下げ問題で揺れている。自民党は全容を知る官僚の国会招致を拒み続ける。政官癒着の疑惑解明を棚上げして、権力による監視で国民の萎縮を招く恐れがある「共謀罪」の審議をすることは許されるのか。混乱に乗じて法案を成立させようという意図も感じられる。
(4)基本的人権は一度後退すれば、元に戻すのは簡単ではない。後悔をしないためにも、法案審議は時間にとらわれず、慎重に進めるべきだ。


ⅩⅥ.南日本新聞
(1)日本を監視社会に変え、市民生活を息苦しくするようなことはないのか。政府の意に沿わない市民活動などにも幅広く法の網をかけ、取り締まることはないのか。人権や自由を侵害する恐れが解消されない中での見切り発車と言わざるを得ない。
(2)テロは断じて容認できない。だが、法整備の必要性を十分に説明できないまま、国民生活に重大な影響を及ぼしかねない法案の成立を急ぐことは到底許されない。国会は「成立ありき」ではなく慎重に論議すべきだ。
(3)というのも、政府は一般の団体が組織的犯罪集団に「一変した」と認定すれば処罰対象になると説明しているからだ。だが、どこで「一変した」かを見極めるのは極めて難しい。一変したと認めるためには、それ以前からの監視が必要ではないか。誰が、いつ、どこで何を企てるのか。そのために監視や盗聴、密告などが横行する恐れが懸念されている。
(4)政府は過去に、条約の規定を理由に、共謀罪の対象範囲は減らせないとの答弁書を閣議決定している。今回の改正案との整合性はどうとるのか。納得できる説明が求められる。野党などは現行法でテロ対策は可能と主張している。政府がそれでは不十分というなら、国民に丁寧に説明する必要がある。できなければ、問題のある法案は撤回すべきだ。
(5)日弁連は「未遂はおろか予備にすら至っていない段階で犯罪が成立することになり、刑法体系を根底から変容させるものとなる」と危惧している。そのことも忘れてはならない。


 やはり、南日本新聞が自問自答しているように、「日本を監視社会に変え、市民生活を息苦しくするようなことはないのか。政府の意に沿わない市民活動などにも幅広く法の網をかけ、取り締まることはないのか。」、と問わなくてはならない。
 なぜなら、依然として、「なぜ必要なのか、よく分からない。同じ思いの人も多いだろう。」(神戸新聞)、というのが実態だから。
 ここでは、愛媛新聞の主張を再掲する必要があるだろう。。


(1)「共謀罪と呼ぶのは全くの間違い」「(改正案を成立させ国際組織犯罪防止条約を締結できなければ)東京五輪を開けないといっても過言ではない」。安倍晋三首相は声高に繰り返したが、改正案を見る限りその認識こそ「全くの間違い」と断じざるを得ない。国民にとって極めて危険で、にもかかわらず疑問だらけのずさんな法案を強硬に成立させることは許されない。なぜ今必要なのか、徹底論議と抜本見直しを国会に求めるとともに、何度でも強く反対する。
(2)適用対象や要件を狭めたように見せて、恣意(しい)的な運用や拡大解釈の余地は残ったまま。広く一般人、つまりは捜査機関が怪しいとにらんだ相手なら誰でも、心の動きを罪とした逮捕が可能になる。監視強化や、政府方針と異なる意見を持つ国民の萎縮は避けられず、新設に前のめりな国の本音を危惧する。
(3)国民の人権を揺るがす法案の重大性に比して、政府の説明はあまりに拙速かつ稚拙。やはり容認はできない。諦めず、反対の声を上げ続けねばならない。


 私たちは、「政府が意図しなくても、やがては国民生活の隅々に警察の一層の監視の目が光る。そんな社会の到来を許してはならない。」(北海道新聞)。
 確かに、この法案は、「憲法は、刑罰権の乱用を防ぐため、刑事手続きについて諸外国に例を見ないほど詳細な規定を置いた。捜査・治安当局の横暴によって著しく人権が侵害された反省を踏まえたものだ。そのことに立ち戻って考えれば、廃案にすべき法案」
(信濃毎日新聞)に違いない。





by asyagi-df-2014 | 2017-03-27 06:49 | 共謀罪 | Comments(0)

「共謀罪」の閣議決定、国会提出を考える。(2)-朝日・毎日・東京・読売日経の各社説20170322-

 東京新聞は2017年3月22日、「政府は計画段階での処罰を可能とする『共謀罪』の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を二十一日に閣議決定し、国会に提出した。法案では、処罰対象となる団体や合意の方法、処罰の前提となる『準備行為』の定義がいずれも曖昧で、捜査機関の裁量で、テロと関係のない市民団体などにも適用され、日常的な行為が準備行為と認定される恐れがある。実行後の処罰を原則としてきた刑法体系は大きく変わる。」、と報じた。
 このことを考える。
 朝日新聞は「『共謀罪』法案 疑問尽きない化粧直し」、毎日新聞は「『共謀罪』法案 説明の矛盾が多過ぎる」、東京新聞は「『共謀罪』閣議決定 刑法の原則が覆る怖さ」、読売新聞は「テロ準備罪法案 政府は堂々と意義を主張せよ」、日本経済新聞は「十分な審議が必要な『共謀罪』」、とそれぞれ見出しを掲げている。
 今回の組織的犯罪処罰法の改正案について、「共謀罪」と位置づけることができるかが、重要な観点であるが、この四社の中では、読売新聞だけが、この位置づけをしていない。 いつものこととは言え、読売の突出ぶりがよく見える。逆に、この法案を[共謀罪]として認識できない理由は何なのだろうか、と疑念を抱かざるを得ない。
 さて、この五社の社説の要約は次のものである。


Ⅰ.主張
(朝日新聞)
(1)かつて3度廃案になった「共謀罪」を創設する法案が、化粧直しをして組織的犯罪処罰法改正案として閣議決定された。先立つ与党審査では、当初案になかった「テロリズム集団」という言葉を条文に書きこむ修正がされた。テロ対策の法案だと世間にアピールするのが狙いで、法的に特段の意味はない。
 化粧直しのポイントは、
ⅰ.取り締まる団体を「組織的犯罪集団」に限定する
ⅱ.処罰できるのは、重大犯罪を実行するための「準備行為」があった場合に限る
ⅲ.対象犯罪を組織的犯罪集団のかかわりが想定される277に絞る
――の三つだ。
 だが、いずれにもごまかしや疑問がある。
(2)犯罪が実行されて初めて処罰するという、刑法の原則をゆるがす法案である。テロ対策の名の下、強引に審議を進めるようなことは許されない。


(毎日新聞)
(1)政府はかつて「共謀罪」新設の関連法案を3度提出したが、廃案になった。名称を変えた今回の法案も、組織犯罪が計画段階で幅広く処罰可能となる本質は変わらない。
(2)法整備は、国際組織犯罪防止条約の締結に欠かせないと政府はいう。確かに条約締結には意義がある。国際社会が手を結ぶことは必要だ。
 最大の焦点は、締結のためにテロ等準備罪の創設が必要かどうかだ。
(3)条約は、重大な犯罪の合意(共謀)を処罰できる法整備を締結国に求めている。だが、こうした処罰の規定は人の内心に踏み込む。捜査側の対応次第で国民生活も脅かされる。日本の刑法は、犯罪行為に着手した時点で処罰の対象とするのが原則だ。例外的に殺人の予備や内乱の陰謀など重大な犯罪では未遂以前の行為を罰せられる。だが、その数は70程度に限られている。今回の法案は従来の原則からかけ離れている。
(4)条約は各国の国内法の原則に従って法整備することを認めている。ならば現行法で条約締結は可能だというのが民進党など野党の主張だ。一方、政府はそれでは締結に不十分だという。政府が国会に提出した資料では、経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国のうち、条約締結時に共謀罪などを新設したのは4カ国で、残りはもともとの国内法で対応した。これをどう見るか。なぜ法整備が条約締結のための必要条件なのか。法学者ら専門家の見解も分かれる。まずは政府が丁寧に説明し、議論の土台とすべきだ。
(5)共謀罪から絞り込んだ要件にも懸念が出ている。組織的犯罪集団に市民が入る余地はないのか、といった点などだ。政府は「共謀罪とは別物だ」との説明を繰り返してきたが、明らかに共謀罪の延長線上にある。


(東京新聞)
(1)政府が閣議決定した組織犯罪処罰法改正案の本質は「共謀罪」だ。二百七十七もの罪を準備段階で処罰できる。刑事法の原則を覆す法案には反対する。
(2)盗みを働こうと企(たくら)む二人組がいたとしよう。だが、人間というのは犯罪を共謀したからといって、必ず実行に移すとは限らない。現場を下見に行ったとしても、良心が働いて「やっぱり悪いことだからやめよう」と断念する、そんなことはいくらでもある。共謀罪が恐ろしいのは、話し合い合意するだけで罰せられることだ。この二人組の場合は共謀し、下見をした段階で処罰される。そんな法案なのだ。何も盗んではいないのに…。
(3)共謀罪の考え方は、日本の刑事法の体系と全く相いれない。日本では既遂を処罰する、これが原則である。心の中で考えただけではむろん犯罪たり得ない。犯罪を実行して初めて処罰される。未遂や予備、陰謀などで処罰するのは、重大事件の例外としてである。
だから、この法案は刑事法の原則を根本からゆがめる。しかも、二百七十七もの罪に共謀罪をかぶせるというのは、対象犯罪を丸暗記していない限り、何が罰せられ、何が罰せられないか、国民には理解不能になるだろう。
(4)「五輪が開けない」とは国民に対する明白な誤導である。本質は共謀罪の創設なのだ。
(5)危惧するのは、この法案の行く末である。犯罪組織の重大犯罪を取り締まるならともかく、政府は普通の市民団体でも性質を変えた場合には適用するとしている。米軍基地建設の反対運動、反原発運動、政府批判のデモなどが摘発対象にならないか懸念する。
(6)専門家によれば、英米法系の国ではかつて、共謀罪が労働組合や市民運動の弾圧に使われたという。市民団体の何かの計画が共謀罪に問われたら…。全員のスマートフォンやパソコンが押収され一網打尽となってしまう。もはや悪夢というべきである。
 実は捜査当局が犯行前の共謀や準備行為を摘発するには国民を監視するしかない。通信傍受や密告が横行しよう。行き着く先は自由が奪われた「監視社会」なのではなかろうか。


(読売新聞)
(1)テロ対策の要諦は、事前に犯行の芽を摘むことである。政府は、法案の早期成立に万全を期さねばならない。
(2)2020年東京五輪を控え、テロ対策は喫緊の課題だ。改正案が成立すれば、国際組織犯罪防止条約への加入が具体化する。締約国間で捜査共助や犯罪人の引き渡しが円滑にできるようになるなど、メリットは計り知れない。
(3)今国会の審議では、共謀罪法案との違いを際立たせようと腐心する政府の姿勢が目立つ。共謀罪法案を3度も提出したのは、必要性が高かったからだろう。差異を付けることを優先するあまり、今回の改正案が捜査現場にとって使い勝手の悪いものになっては、本末転倒である。


(日本経済新聞)
(1)今回の法案では、適用の対象を「組織的犯罪集団」に限定した。処罰するためには重大な犯罪を計画したことに加え、現場の下見といった準備行為が必要となるような見直しも行った。法律の乱用を防ぐといった観点から、こうした修正は評価できる。しかしこの法案の必要性や意義について、そもそも国民の間に理解が深まっているとは言いがたい。国会審議の場では成立を急ぐことなく、十分な時間をかけて議論を尽くす必要がある。
(2)テロも組織犯罪の一形態とは言えるが、国会審議ではまず、資金洗浄や人身売買、薬物取引など条約がうたう「本来」の組織犯罪対策のあり方などについて十分に議論すべきではないか。現に日本は暴力団犯罪など組織犯罪の脅威にさらされている。
(2)テロ対策も2020年の東京五輪をにらんで欧米並みに取り組むのであれば、この条約に便乗するだけでは中途半端に終わってしまいかねない。テロを正面から定義することからはじめ、海外と比べて法制度や捜査手法の面でどのような問題、課題があるのかを分析し、国民に問うていく。こうした作業が必要なはずだ。





Ⅱ.疑問点等
(朝日新聞)
(1)旧来の共謀罪についても、政府は「組織的な犯罪集団に限って成立する」と言ってきた。だとすればⅰ.は新たな縛りといえない。安倍首相の「今度は限定している。共謀罪との大きな違いだ」との国会答弁は、国民を誤導するものに他ならない。
(2)ⅱ.の「準備行為」も何をさすのか、はっきりしていない。
(3)殺人や放火などの重大犯罪には「予備をした者」を罰する規定が既にあるが、これと「準備行為」はどこがどう違うのか。準備行為である以上、犯罪が実際に着手される前に取り押さえることになるが、それまでにどんな捜査が想定されるのか。わかりやすい説明が必要だ。
(4)共謀罪は組織犯罪防止の国際条約に加わるために必要とされた。そして条約の解釈上、重い刑が科せられる600超の犯罪に一律に導入しないと条件を満たせないというのが、政府の十数年来の主張だった。ⅲ.はこれを一転、半減させるというものだ。融通無碍(むげ)、ご都合主義とはこのことだ。
(5)現時点で政府が「市民生活に影響は及ばない」と説いても、状況次第で法律の解釈適用をいかようにも変えられると、身をもって示しているに等しい。
(6)そもそも条約をめぐっては、これほど大がかりな立法措置を求めておらず、現行法のままで加盟可能との異論も以前からある。何らかの手当てが必要だとしても、277の罪が妥当かの精査は当然必要となろう。条約を締結できないことで、これまでにどんな支障が生じ、締結したらいかなるメリットがあるのか。この点についても、政府から説得力のある具体的な説明はなされていない。

 犯罪が実行されて初めて処罰するという、刑法の原則をゆるがす法案である。テロ対策の名の下、強引に審議を進めるようなことは許されない。


(毎日新聞)
(1)それにしても、これまでの政府の説明には矛盾が目立つ。
(2)最大のほころびは対象犯罪数だ。条約が法整備を求める4年以上の懲役・禁錮の刑を定める犯罪数は676あり、選別はできないと政府は説明してきた。だが、公明党の意見をいれ、今回の法案では対象犯罪を277に絞り込んだ。これでは過去の説明と整合しない。法案の再提出に当たり、唐突にテロ対策の看板を掲げたことも理解できない。条約はマフィアによる犯罪収益の洗浄などへの処罰を目的としたものだ。
(3)安倍晋三首相が、東京五輪・パラリンピックのテロ対策を理由に「法整備ができなければ開催できないと言っても過言ではない」などと発言するに至っては、まさに首相が批判する印象操作ではないか。


(東京新聞)
(1)今回の法案では二人以上の計画と準備行為の段階で摘発できる。準備行為とは「資金または物品の手配、関係場所の下見その他」と書いてある。ずいぶん漠然としてはいないか。「その他」の文字が入っているから、捜査当局にどのように解釈されるか分からない心配もある。
(2)犯行資金をATMで下ろすことが準備行為に該当すると政府は例示するが、お金を引き出すというのはごく日常的な行為である。それが犯罪なのか。どう証明するのか。疑問は尽きない。
(3)安倍晋三首相は国会答弁で「東京五輪のために必要な法案だ」という趣旨の発言をした。これは明らかな詭弁(きべん)というべきである。そもそも日本はテロに対して無防備ではない。テロ防止に関する十三もの国際条約を日本は締結している。ハイジャック防止条約、人質行為防止条約、爆弾テロ防止条約、テロ資金供与防止条約、核テロリズム防止条約…。同時に国内法も整備している。例えば爆発物に関しては脅迫、教唆、扇動、共謀の段階で既に処罰できる。サリンなど化学物質などでも同じである。
 むしろ、政府は当初、「テロ等準備罪」の看板を掲げながら、条文の中にテロの定義も文字もなかった。批判を受けて、あわてて法案の中に「テロリズム集団」という文字を入れ込んだ。本質がテロ対策でない証左といえよう。
(4)確かに国連の国際組織犯罪防止条約の締約国は百八十七カ国・地域にのぼる。だが、そのために共謀罪を新設した国はノルウェーやブルガリアなどだけだ。むしろ国連は「国内法の基本原則に従って必要な措置をとる」ことを求めている。「共謀罪がなくとも条約の締結は可能だ」とする日弁連の意見に賛同する。
 そもそもこの条約は国境を越えて行われるマフィアの犯罪がターゲットだ。麻薬やマネーロンダリング(資金洗浄)、人身売買などで、テロ対策の条約ではない。少なくともこの条約締結のために、刑事法の大原則を覆してしまうのは本末転倒である。


Ⅲ.メリット及び課題


(読売新聞)
(1)法案化の過程で、対象となる「組織的犯罪集団」が「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」に修正された。テロの文言がなく、与党の批判を招いたためだ。組織的犯罪集団は「共同の目的が一定の犯罪を実行することにあるもの」と定義される。修正により、テロ対策という立法の趣旨は、より明確になったと言える。
(2)「その他」に想定されるのは、暴力団や振り込め詐欺集団だ。犯罪の抑止効果が期待できよう。テロ等準備罪の成立には、犯行計画に加え、資金調達などの準備行為の存在が不可欠だ。要件を満たさない限り、裁判所は捜索や逮捕に必要な令状を発付しない。
(3)適用範囲が恣意しい的に拡大される、といった民進党などの批判は当たるまい。「一般市民も対象になりかねない」という指摘も殊更、不安を煽あおるものだ。対象犯罪について、政府は当初の676から、組織的犯罪集団の関与が現実的に想定される277に絞り込んだ。「対象の団体を限定した結果、犯罪の絞り込みも可能になった」との見解を示す。公明党が「対象犯罪が多すぎる」と主張したことにも配慮した。理解を広げるために、一定の絞り込みは、やむを得ない面もある。政府は過去に「条約上、対象犯罪を限定することは難しい」と説明している。これとの整合性をどう取るかが課題だ。
(4)金田法相の答弁は不安材料だ。要領を得ない受け答えが多く、「成案を得てから説明する」と繰り返してきた。緊張感を持って、審議に臨んでもらいたい。


(日本経済新聞)
 共謀罪の制定は、国際組織犯罪防止条約を締結するため各国に課せられた義務の一つである。だが廃案が続いたこともあり、今回政府は国民が理解しやすいテロを前面に出して必要性を訴えてきた。当初の法案の中に「テロ」の文言がなく、与野党から指摘を受け慌てて盛り込むことになった背景にもこうした事情がある。


 さて、日本経済新聞は、「この法案の必要性や意義について、そもそも国民の間に理解が深まっているとは言いがたい。国会審議の場では成立を急ぐことなく、十分な時間をかけて議論を尽くす必要がある。」、と主張する、
 ごく当たり前の考え方である。まず、必要なことである。
 最後に、東京新聞はこのように投げかけている。深く心臓部を抉る。


Ⅰ. この法案は「キメラ」のようでもある。
Ⅱ.「五輪が開けない」とは国民に対する明白な誤導である。本質は共謀罪の創設なのだ。
Ⅲ.行き着く先は自由が奪われた「監視社会」なのではなかろうか。




by asyagi-df-2014 | 2017-03-26 10:59 | 共謀罪 | Comments(0)

「共謀罪」の閣議決定、国会提出を考える。(1)-沖縄タイムス及び琉球新報社説20170322-

 東京新聞は2017年3月22日、「政府は計画段階での処罰を可能とする『共謀罪』の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を二十一日に閣議決定し、国会に提出した。法案では、処罰対象となる団体や合意の方法、処罰の前提となる『準備行為』の定義がいずれも曖昧で、捜査機関の裁量で、テロと関係のない市民団体などにも適用され、日常的な行為が準備行為と認定される恐れがある。実行後の処罰を原則としてきた刑法体系は大きく変わる。」、と報じた。
 このことを考える。
沖縄タイムスと琉球新報は2017年3月22日にそれぞれ、「『共謀罪』閣議決定人権軽視の懸念拭えず」、「『共謀罪』国会提出 無用で害悪、即刻廃案に」、と論評した。
 この二社の社説の要約は次のものである。


Ⅰ.主張


(沖縄タイムス)
(1)犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案が閣議決定された。看板は変わっても、過去3度廃案になった共謀罪と本質的に変わりはない。内心の自由や表現の自由を脅かしかねず、強く反対する。
(2)戦時中に戻るような嫌な空気が漂うのは、国家が国民の心の中に踏み込む「監視の網」が広がろうとしているからだ。
(3)特定秘密保護法の制定と通信傍受の拡大を柱とした改正刑事訴訟法の成立、今回の共謀罪は密接に関係している。民主主義社会の根幹である基本的人権を軽視し、市民生活に深刻な影響を及ぼす法律をつくる必要はない。


(琉球新報)
(1)無駄なことの例えに「屋上屋を重ねる」という言葉がある。政府が国会に提出した組織犯罪処罰法改正案、いわゆる「共謀罪」法案はまさにその典型だ。現在ある法に基づいて対応できるのに、なぜ無用の法を加える必要があるのか。
(2)捜査機関の恣意(しい)的な運用で市民監視社会に道を開きかねない悪法でもある。無駄どころか害悪でしかない。

(3)東村高江でのヘリパッド建設に対する抗議活動で本来なら立件すら疑わしい事案を公務執行妨害などとして起訴し、政権批判を封じるのが現政権の体質であり、司法も追認する。犯罪集団と認定される危険性は誰にでもあるが、現政権で歯止めはないに等しい。市民社会の自由が奪われる前に即刻廃案にすべきだ。


Ⅱ.法案の疑問点


(沖縄タイムス)
(1)政府は2020年の東京五輪に向けた「テロ対策」として法案の必要性を強調している。適用対象はテロ組織や暴力団など「組織的犯罪集団」で、2人以上で犯罪を計画し、うち1人でも資金の手配や関係場所の下見など「準備行為」をしたときに、計画に合意した全員が処罰される。対象となる犯罪を当初の半分以下の277に絞り込んだとはいえ、範囲は広い。
 話し合っただけで処罰されるというのは、犯罪実行後の「既遂」を原則としてきた日本の刑法体系を根本から覆す。思想及び良心の自由を保障した憲法にも反する。
(2)とりわけ世論の批判が強いのは、市民がその対象となり、監視社会への道を開く恐れである。政府は「一般市民が対象となることはない」と繰り返し説明する。しかし組織的犯罪集団の概念はあいまいで、「正当な活動をする団体でも目的が一変すれば処罰の対象となる」との見解を示している。一変したかどうかを見極める捜査機関の恣意(しい)的な運用への懸念が消えない。
(3)改正案が反基地運動を展開する市民をターゲットにしているのではとの批判の声も根強い。米軍基地周辺での抗議行動が刑事特別法の「軍用物などの損壊」の下見と見なされたり、座り込みなどの呼び掛けが組織的威力業務妨害罪の「共謀」とされる可能性の指摘だ。
 法律の拡大解釈や過剰な取り締まりは、市民運動を萎縮させる。
(4)反基地運動のリーダーが微罪にもかかわらず約5カ月にもわたって勾留されたことと背景が似ている。自分たちにとって不都合な声を封じ、排除しようとするのが安倍政権のやり方なのか。
(5)政府は共謀罪ではなく「テロ等準備罪」との罪名を持ち出しテロ対策を前面に掲げるが、当初与党に示した案には「テロ」の表記がなかった。もちろんテロを未然に防ぐことは重要である。だがすでに一定の重大な犯罪には共謀罪、予備罪などが整えられている。政府が法改正の根拠とする国際組織犯罪防止条約も現行法のままで締結できる。


(琉球新報)
(1)法案の柱は犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の新設だ。現行刑法は犯罪の結果である「既遂」に対する処罰を原則としている。犯罪の前段階である「未遂」「予備」「陰謀」は、それぞれ殺人や内乱など引き起こされる結果の重大性によって厳密に適用される範囲が定められている。計画段階での処罰を可能にすることは「既遂」を原則とする刑法の体系をも根幹から揺るがす。
(2)政府は「共謀罪」の必要性に関してテロ防止を前面に掲げ、法案成立を急務とする。だが化学兵器や病原体などの使用、犯罪による収益に関する事実の隠匿など、テロ行為につながる準備段階の行為は、現行法でも処罰できる。
(3)テロ防止が目的だとしても、犯罪行為を計画段階で察知するには、捜査機関にさらなる権限を与えることが予想される。手段としては盗聴、尾行、潜入(おとり)捜査などが考えられる。これらが日常的に実行されれば、まさに警察による監視社会の実現だ。
(4)米軍基地周辺で行われる抗議活動が兵器や弾薬などの損壊行為に向けた下見と見なされ、「共謀罪」の適用対象になるという懸念は与野党にかかわらず存在する。
(5)安倍晋三首相は1月の国会答弁で、処罰対象は「そもそも犯罪を犯すことを目的とする集団」としていたが、2月には「そもそもの目的が正常でも、一変した段階で一般人であるわけがない」と説明を変えた。労働組合など正当な目的の団体であっても、捜査機関が「組織的犯罪集団」として認定すれば処罰対象にすると受け止められる。


 さて、沖縄タイムスと琉球新報の指摘だけでも、この法案は次の問題点が挙げられる。


Ⅰ.思想及び良心の自由を保障した憲法にも反する。
Ⅱ.現在ある法に基づいて対応できるのに、なぜ無用の法を加える必要があるのか。
Ⅲ.捜査機関の恣意(しい)的な運用で市民監視社会に道を開きかねない悪法でもある。無駄どころか害悪でしかない。
Ⅳ.計画段階での処罰を可能にすることは「既遂」を原則とする刑法の体系をも根幹から揺るがす。
Ⅴ.法律の拡大解釈や過剰な取り締まりは、市民運動を萎縮させる。


 確かに、「市民社会の自由が奪われる前に即刻廃案にすべきだ。」(琉球新報)が正しい判断だ。





by asyagi-df-2014 | 2017-03-25 07:43 | 共謀罪 | Comments(0)

共謀罪」を考える。(6)-「共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明」より-

 東京新聞は2017年1月6日、「安倍晋三首相は五日、犯罪計画を話し合うだけで処罰対象とする「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を二十日召集の通常国会に提出する方針を固めた。」、と報じた。
また、この背景を、「菅義偉(すがよしひで)官房長官は五日の記者会見で、『共謀罪』法案の通常国会への提出に関して、二〇二〇年の東京五輪・パラリンピックに向けテロ対策の強化が必要だと主張し『テロを含む組織犯罪を防ぐことは、国民も望んでいる。これまでの国会審議の意見を踏まえ、最終検討している』と述べた。」、とも伝えた。
 政府は2017年3月21日、「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案を閣議決定した。

 緊急かつ重大な課題である『共謀罪』について考える。


 共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者が、2017年2月1日、呼びかけ人7名と賛同者130名の計137名で、「共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明」を発表しました。
 この「声明」についてまとめてみます。


Ⅰ.主張
(1)この立法は以下に述べるように、犯罪対策にとって不要であるばかりでなく、市民生活の重大な制約をもたらします。
(2)こうした多くの問題にかんがみ、私たちは、「テロ等準備罪」処罰を名目とする今般の法案の提出に反対します。


Ⅱ.反対の根拠


Ⅰ. テロ対策立法はすでに完結。
Ⅱ. 国連国際組織犯罪防止条約の締結に、このような立法は不要。
Ⅲ. 極めて広い範囲にわたって捜査権限が濫用されるおそれ。
Ⅳ. 日本は組織犯罪も含めた犯罪情勢を改善してきており、治安の悪い国のまねをする   必要ない。
Ⅴ. 武力行使をせずに、交渉によって平和的に物事を解決していく姿勢を示すことが、   有効なテロ対策。


Ⅲ.反対の根拠の詳細


Ⅰ. テロ対策立法はすでに完結。

 テロ対策の国際的枠組みとして、「爆弾テロ防止条約」や「テロ資金供与防止条約」を始めとする5つの国連条約、および、その他8つの国際条約が採択されています。日本は2001年9月11日の同時多発テロ後に採択された条約への対応も含め、早期に国内立法を行って、これらをすべて締結しています。


Ⅱ. 国連国際組織犯罪防止条約の締結に、このような立法は不要。

(1)2000年に採択された国連国際組織犯罪防止条約は、国際的な組織犯罪への対策を目的とし、組織的な犯罪集団に参加する「参加罪」か、4年以上の自由刑を法定刑に含む犯罪の「共謀罪」のいずれかの処罰を締約国に義務づけているとされます。しかし、条約は、形式的にこの法定刑に該当するすべての罪の共謀罪の処罰を求めるものではありません。
(2)本条約についての国連の「立法ガイド」第51項は、もともと共謀罪や参加罪の概念を持っていなかった国が、それらを導入せずに、組織犯罪集団に対して有効な措置を講ずることも条約上認められるとしています。
(3)政府は、同条約の締約国の中で、形式的な基準をそのまま適用する共謀罪立法を行った国として、ノルウェーとブルガリアを挙げています。しかし、これらの国は従来、予備行為の処罰を大幅に制限していたり、捜査・訴追権限の濫用を防止する各種の制度を充実させたりするなど、その立法の背景は日本とは相当に異なっています。ほとんどすべての締約国はこのような立法を行わず、条約の目的に沿った形で、自国の法制度に適合する法改正をしています。
(4)国内法で共謀罪を処罰してきた米国でさえ、共謀罪の処罰範囲を制限する留保を付した上で条約に参加しているのです。このような留保は、国会で留保なしに条約を承認した後でも可能です。
(5)日本の法制度は、もともと「予備罪」や「準備罪」を極めて広く処罰してきた点に、他国とは異なる特徴があります。上記のテロ対策で一連の立法が実現したほか、従来から、刑法上の殺人予備罪・放火予備罪・内乱予備陰謀罪・凶器準備集合罪などのほか、爆発物取締罰則や破壊活動防止法などの特別法による予備罪・陰謀罪・教唆罪・せん動罪の処罰が広く法定されており、それらの数は70以上にも及びます。一方、今般検討されている法案で「共謀罪」が新設される予定の犯罪の中には、大麻栽培罪など、テロとは関係のない内容のものが多数あります。そもそも、本条約はテロ対策のために採択されたものではなく、「共謀罪」の基準もテロとは全く関連づけられていません。本条約は、国境を越える経済犯罪への対処を主眼とし、「組織的な犯罪集団」の定義においても「直接又は間接に金銭的利益その他の物質的利益を得る」目的を要件としています。


Ⅲ. 極めて広い範囲にわたって捜査権限が濫用されるおそれ。

(1)政府は、現在検討している法案で、(1)適用対象の「組織的犯罪集団」を4年以上の自由刑にあたる罪の実行を目的とする団体とするとともに、共謀罪の処罰に(2)具体的・現実的な「合意」と(3)「準備行為」の実行を要件とすることで、範囲を限定すると主張されています。しかし、(1)「目的」を客観的に認定しようとすれば、結局、集団で対象犯罪を行おうとしているか、また、これまで行ってきたかというところから導かざるをえなくなり、さしたる限定の意味がなく、(2)概括的・黙示的・順次的な「合意」が排除されておらず、(3)「準備行為」の範囲も無限定です。
(2)「共謀罪」の新設は、共謀の疑いを理由とする早期からの捜査を可能にします。およそ犯罪とは考えられない行為までが捜査の対象とされ、人が集まって話しているだけで容疑者とされてしまうかもしれません。
(3)大分県警別府署違法盗撮事件のような、警察による捜査権限の行使の現状を見ると、共謀罪の新設による捜査権限の前倒しは、捜査の公正性に対するさらに強い懸念を生みます。これまで基本的に許されないと解されてきた、犯罪の実行に着手する前の逮捕・勾留、捜索・差押えなどの強制捜査が可能になるためです。とりわけ、通信傍受(盗聴)の対象犯罪が大幅に拡大された現在、共謀罪が新設されれば、両者が相まって、電子メールも含めた市民の日常的な通信がたやすく傍受されかねません。将来的に、共謀罪の摘発の必要性を名目とする会話盗聴や身分秘匿捜査官の投入といった、歯止めのない捜査権限の拡大につながるおそれもあります。実行前の準備行為を犯罪化することには、捜査法の観点からも極めて慎重でなければなりません。


Ⅳ. 日本は組織犯罪も含めた犯罪情勢を改善してきており、治安の悪い国のまねをする   必要ない。

(1)公式統計によれば、組織犯罪を含む日本の過去15年間の犯罪情勢は大きく改善されています。日本は依然として世界で最も治安の良い国の1つであり、膨大な数の共謀罪を創設しなければならないような状況にはありません。今後犯罪情勢が変化するかもしれませんが、具体的な事実をふまえなければ、どのような対応が有効かつ適切なのかも吟味できないはずです。具体的な必要性もないのに、条約締結を口実として非常に多くの犯罪類型を一気に増やすべきではありません。
(2)そればかりでなく、広範囲にわたる「共謀罪」の新設は、内心や思想ではなく行為を処罰するとする行為主義、現実的結果を発生させた既遂の処罰が原則であって既遂に至らない未遂・予備の処罰は例外であること、処罰が真に必要な場合に市民の自由を過度に脅かさない範囲でのみ処罰が許されることなどの、日本の刑事司法と刑法理論の伝統を破壊してしまうものです。


Ⅴ. 武力行使をせずに、交渉によって平和的に物事を解決していく姿勢を示すことが、   有効なテロ対策。

 イスラム国などの過激派組織は、米国と共に武力を行使する国を敵とみなします。すでに、バングラデシュでは日本人農業家暗殺事件と、日本人をも被害者とする飲食店のテロ事件がありました。シリアではジャーナリストの拘束がありました。安保法制を廃止し、武力行使をしない国であると内外に示すことこそが、安全につながる方策です。


 確かに、今回の共謀罪法案は、「広範囲にわたる『共謀罪』の新設は、内心や思想ではなく行為を処罰するとする行為主義、現実的結果を発生させた既遂の処罰が原則であって既遂に至らない未遂・予備の処罰は例外であること、処罰が真に必要な場合に市民の自由を過度に脅かさない範囲でのみ処罰が許されることなどの、日本の刑事司法と刑法理論の伝統を破壊してしまうものです。」、というものです。
 この「声明」は、共謀罪法案の問題点を確認させます。
 あらためて、次の理由により共謀罪法案に強く反対します。


Ⅰ. テロ対策立法はすでに完結。
Ⅱ. 国連国際組織犯罪防止条約の締結に、このような立法は不要。
Ⅲ. 極めて広い範囲にわたって捜査権限が濫用されるおそれ。
Ⅳ. 日本は組織犯罪も含めた犯罪情勢を改善してきており、治安の悪い国のまねをする必要ない。
Ⅴ. 武力行使をせずに、交渉によって平和的に物事を解決していく姿勢を示すことが、有効なテロ対策。


 以下、「共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明」の引用。




by asyagi-df-2014 | 2017-03-24 11:48 | 共謀罪 | Comments(0)

「共謀罪」を考える。(5)-東京新聞20170131より-

 東京新聞は2017年1月6日、「安倍晋三首相は五日、犯罪計画を話し合うだけで処罰対象とする「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を二十日召集の通常国会に提出する方針を固めた。」、と報じた。
また、この背景を、「菅義偉(すがよしひで)官房長官は五日の記者会見で、『共謀罪』法案の通常国会への提出に関して、二〇二〇年の東京五輪・パラリンピックに向けテロ対策の強化が必要だと主張し『テロを含む組織犯罪を防ぐことは、国民も望んでいる。これまでの国会審議の意見を踏まえ、最終検討している』と述べた。」、とも伝えた。
 政府は2017年3月21日、「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案を閣議決定した。

 緊急かつ重大な課題である『共謀罪』について考える。


 東京新聞は2017年1月31日、「『共謀罪』めぐり野党反論 ハイジャック目的の航空券予約『現行法で摘発可能』」と、次のように報じた。


(1)政府が「共謀罪」と同じ趣旨で創設を目指す「テロ等準備罪」を巡り、三十日の参院予算委員会では、政府が現行法では対応できない事例として挙げているハイジャック目的の航空券予約について、野党側が「現行法の予備罪を適用できる」と追及した。「予備罪に当たらない可能性もある。テロの発生が防げない可能性があるなら、法整備が必要だ」と訴える安倍晋三首相の考えと真っ向から対立した。 (山田祐一郎)
(2)議論になったのは、テロ組織が複数の飛行機を乗っ取って高層ビルに突撃させるテロを計画し、搭乗予定の飛行機の航空券を予約した場合に、現行のハイジャック防止法の航空機強取等予備の対象となるか。民進党の福山哲郎氏が、「ミスター検察」と呼ばれた元検事総長の故伊藤栄樹氏や元東大学長の故平野龍一氏、元福岡高裁長官の故佐々木史朗氏らの三冊の著書で、ハイジャック防止法の予備に当たる行為として「航空券をハイジャックなどの目的で購入すること」が挙げられていると指摘、現行法で摘発可能だと主張した。
(3)政府は、過去の破壊活動防止法の判例から、現行法の予備罪での処罰には「犯罪の実現のために重要な、危険性がある段階まで準備が整えられたことが必要」と説明している。安倍首相は「(航空券の予約・購入が)危険性がある準備なのかどうか証明されなければいけない。当たらない場合がある以上、ただちに検挙できない」と指摘。一方で「この場合、間違いなく『テロ等準備罪』に当たる。その段階で躊躇(ちゅうちょ)することなく警察は検挙できる」と必要性を強調した。
(4)福山氏は、ハイジャック防止法の予備罪の成立が認められた裁判例を紹介し、「(テロ行為の)合意があって、計画があって、航空券を買った時に、わが国で検挙できない状況ではない」と批判した。


 「共謀罪」法案の問題点の一つに、国内法で本来対応(摘発)できるものなのに、「テロ等準備罪」として「意図的」に創設させようとしているということがある。
 政府が現行法では対応できない事例として挙げている「ハイジャック目的の航空券予約」について、国会で野党がその矛盾を指摘した。
 今回の指摘は、安倍晋三政権の「予備罪に当たらない可能性もある。テロの発生が防げない可能性があるなら、法整備が必要だ」、という欺瞞を突くものである。





by asyagi-df-2014 | 2017-03-23 11:48 | 共謀罪 | Comments(0)

「共謀罪」を考える。(4)-東京新聞20170126より-

 東京新聞は2017年1月6日、「安倍晋三首相は五日、犯罪計画を話し合うだけで処罰対象とする「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を二十日召集の通常国会に提出する方針を固めた。」、と報じた。
また、この背景を、「菅義偉(すがよしひで)官房長官は五日の記者会見で、『共謀罪』法案の通常国会への提出に関して、二〇二〇年の東京五輪・パラリンピックに向けテロ対策の強化が必要だと主張し『テロを含む組織犯罪を防ぐことは、国民も望んでいる。これまでの国会審議の意見を踏まえ、最終検討している』と述べた。」、とも伝えた。
 政府は2017年3月21日、「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案を閣議決定した。

 緊急かつ重大な課題である『共謀罪』について考える。


 東京新聞は2017年1月26日、「『テロ』等『共謀罪』法案 範囲拡大の恐れ 市民団体、労組、会社にも」と、次のように報じた。


(1)安倍晋三首相の施政方針演説などに対する参院の各党代表質問が二十五日行われた。首相は「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案について、共謀罪を言い換えた「テロ等準備罪」の「等」が示す犯罪の範囲を問われ「テロ組織をはじめとする組織犯罪集団に限定し、一般の方々が対象となることはあり得ないことがより明確になるよう検討している」と述べた。これに対し、渕野貴生・立命館大教授は「一般市民も対象になり得る」と懸念した。(山田祐一郎、横山大輔)
(2)自由党の山本太郎共同代表は「『等』とはどういう意味か。テロ以外にも適用される余地を残す理由を教えてほしい」と尋ねた。首相は、テロと関連が薄い犯罪も対象に含める意図があるかどうかは、明確にしなかった。
(3)首相は国連の国際組織犯罪防止条約の締結のために必要だと強調し、テロ対策を前面に押し出す。今後、対象犯罪を絞り込む方針だが、条約が共謀罪の対象に求める死刑や四年以上の禁錮・懲役に当たる犯罪は六百七十六。このうち政府が「テロに関する罪」と分類するのは百六十七(24・7%)にとどまり、大多数が「テロ以外」という矛盾をはらむ。
(3)組織的犯罪集団に限定しても、警察の恣意(しい)的な捜査で市民団体や労組、会社も対象になりかねない。
(4)政府は二〇一三年に成立した特定秘密保護法で「特定秘密の範囲を限定した」と説明したが、条文に三十六の「その他」を盛り込み、大幅な拡大解釈の余地を残した前例もある。
(5)刑事法が専門の渕野教授は「テロと無関係の犯罪も多く、名称と実体が一致していない。一般市民の犯罪も対象になり得るのに、あたかもテロだけを対象とするかのように説明するのは、国民を誤解させる表現だ」と指摘。「組織的な犯罪集団に限定しても、捜査機関による恣意的な解釈や適用を適切に規制できない」と危ぶむ。


 確かに言えることは、渕野教授の指摘する次のことである。


Ⅰ.テロと無関係の犯罪も多く、名称と実体が一致していない。一般市民の犯罪も対象になり得るのに、あたかもテロだけを対象とするかのように説明するのは、国民を誤解させる表現だ。
Ⅱ.組織的な犯罪集団に限定しても、捜査機関による恣意的な解釈や適用を適切に規制できない。




by asyagi-df-2014 | 2017-03-22 06:47 | 共謀罪 | Comments(0)

「共謀罪」を考える。(3)

 東京新聞は2017年1月6日、「安倍晋三首相は五日、犯罪計画を話し合うだけで処罰対象とする「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を二十日召集の通常国会に提出する方針を固めた。」、と報じた。
また、この背景を、「菅義偉(すがよしひで)官房長官は五日の記者会見で、『共謀罪』法案の通常国会への提出に関して、二〇二〇年の東京五輪・パラリンピックに向けテロ対策の強化が必要だと主張し『テロを含む組織犯罪を防ぐことは、国民も望んでいる。これまでの国会審議の意見を踏まえ、最終検討している』と述べた。」、とも伝えた。

 緊急かつ重大な課題である『共謀罪』について考える。


 しんぶん赤旗は2017年1月13日、「共謀罪新設法案 名前を変えても本質変わらぬ」、とする主張を掲載した。
 まず、しんぶん赤旗は、「安倍晋三政権が、国民の強い批判で3度も廃案となった共謀罪を導入する組織犯罪処罰法改定案を、今度は『テロ等準備罪』と名前を変え、20日召集の国会に提出することを表明しています。昨年の臨時国会でTPP協定、年金カット法、カジノ法などを次々強行したことに続き、人権を侵す危険な共謀罪法案の4度目となる国会提出を行い、なんとしても成立させようとする―。安倍政権の強権・暴走姿勢はあまりに異常です。」、と安倍晋三政権の異常さを指摘する。
 しんぶん赤旗の主張は、次のとおりです。


Ⅰ.主張
(1)共謀罪の本質は、「犯罪を行うことを相談、計画した」というだけで処罰をするところにあります。政府は、資金準備など「準備行為」をしたという要件を新たに付け加えるから「相談、計画」だけで処罰をされることはないと説明します。しかし準備行為は極めてあいまいで、相談参加者の1人が「準備」をすれば適用されるとしています。これでは、他の「参加者」にとっては「準備行為をしなくても犯罪とされる」ことには変わりありません。
(2)「組織的犯罪に限定されている」といいますが、その組織も既成の組織だけでなく、その犯罪のためにつくられた集団(2人以上)も該当するとされています。どうにでも拡大解釈することは可能で、なんの限定にもならないのは明白です。
(3)「戦争する国」づくりと一体で共謀罪導入を狙う安倍政権の暴走を許さないたたかいが、急務です。


Ⅱ.問題点及び反論
(1)政府は、共謀罪導入の理由に▽国際的なテロ犯罪の取り締まりの緊急性▽国際機関から法整備を求められている―ことを挙げます。しかし、もともと“国際的な取り締まり”というのは、麻薬取引など国境を越えた犯罪の取り締まりを目指したもので、テロを直接の対象にしていません。
(2)テロの取り締まりについても、日本にはテロ資金提供処罰法など対応できる法律はすでに複数あります。テロには、殺人罪など刑法規定も適用されます。それらの法律の多くには、計画・準備段階でも処罰対象にする規定もあり、共謀罪がないと対応できないことはありません。
(3)国際機関からの法整備の要請も、「共謀罪」にあたる規定を一律に設けよというのではなく、国際的組織犯罪防止条約に適合した法的対応を求められているもので、各国の実情に応じた立法をすればいいわけです。なにがなんでも共謀罪規定を設けるため「国際的要請」を持ち出すやり方は、ご都合主義以外の何物でもありません。
(4)政府は、一定の範囲の重い犯罪(4年以上の懲役または禁錮に該当する場合)の全てに「共謀を罰する」規定を入れることを検討しています。そうなれば676に及ぶ犯罪に適用され、不当な取り締まりや冤罪が引き起こされる危険が、いっそう大きくなります。
(5)近代の刑罰法は、単なる発言だけでは、犯罪を実行するかどうかは不明のまま思想・信条を処罰する危険があるので、刑罰は犯罪行為が実行された場合のみを対象とする原則を確立してきました。共謀罪はこの流れに逆行します。
(6)「共謀」を犯罪行為とし、実行行為でなく相談・準備を取り締まることは、捜査方法としても盗聴やGPS利用など事件に関係ない人の人権までも侵害されかねません。密告が奨励され、冤罪を多発させる恐れも増大します。


 ここでは、「テロ犯罪の取り締まり」の「名」を利用することで、「共謀罪」の暴力性を隠蔽しようとする方法の誤りについて確認します。
 しんぶん赤旗は明確にこのことを次のように否定しています。


Ⅰ.政府は、共謀罪導入の理由に▽国際的なテロ犯罪の取り締まりの緊急性▽国際機関から法整備を求められている―ことを挙げます。しかし、もともと“国際的な取り締まり”というのは、麻薬取引など国境を越えた犯罪の取り締まりを目指したもので、テロを直接の対象にしていません。
Ⅱ.テロの取り締まりについても、日本にはテロ資金提供処罰法など対応できる法律はすでに複数あります。テロには、殺人罪など刑法規定も適用されます。それらの法律の多くには、計画・準備段階でも処罰対象にする規定もあり、共謀罪がないと対応できないことはありません。





by asyagi-df-2014 | 2017-03-21 12:22 | 共謀罪 | Comments(0)

安倍晋三政権は、共謀罪」法案を閣議決定。

 朝日新聞は2017年3月21日、標題について次のように報じた。


(1)政府は21日、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法の改正案を閣議決定した。「組織的犯罪集団」が犯罪を計画し、実行に向けた「準備行為」があったときに処罰するという内容。目的について政府は「テロ対策」を強調しているが、野党や日本弁護士連合会は「捜査機関の解釈や裁量に委ねられ、一般市民が対象になる恐れがある」などと反対している。
(2)政府・与党は4月中に法案の審議に入り、通常国会の会期末(6月18日)までの成立を目指す。
(3)国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の締結に必要だとして、政府は2003~05年に計3回、「共謀罪」法案を国会に提出。「一般の市民団体や労働組合が対象となる」「思想や内心を理由に処罰される」といった批判が相次ぎ、いずれも廃案となった。
(4)今回は20年の東京五輪のテロ対策を前面に出し、対象を「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と規定。①2人以上で犯罪の実行を計画し、②そのうちの誰かが「物品や資金の手配」「関係場所の下見」といった「準備行為」をした場合――に適用する。「一般市民は対象にならない」と説明する一方、通常の団体が組織的犯罪集団に「一変」した場合には対象になるとしている。
(5)対象となる犯罪の数も、過去の法案より減らした。TOC条約は、4年以上の懲役・禁錮の処罰を受ける「重大な犯罪」を計画した場合に罪を設けるよう締結国に求めており、過去の法案では対象犯罪は約620にのぼっていた。今回も原案では676の罪を挙げていたが、公明党が絞り込みを求め、政府は減らすことを検討。「組織的犯罪集団の関与が現実的に想定される罪」を対象とし、「テロの実行」「薬物」「人身に関する搾取」「その他資金源」「司法取引」の5分類、計277罪とした。
(6)野党や日弁連、研究者からは、市民が対象になる恐れや監視社会につながる懸念のほか、「対象の罪が多すぎる」「現在の国内法でも条約締結は可能だ」「政府の説明は不十分だ」などの指摘が出ている。(金子元希)




by asyagi-df-2014 | 2017-03-21 10:34 | 共謀罪 | Comments(0)

日本弁護士連合会の「いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する意見書」を読む。

 日本弁護士連合会(以下、日弁連とする)は2017年2月17日、「いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する意見書」を発表した。
 また、「2017年2月17日付けで「いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する意見書」を取りまとめ、同年2月23日付けで法務大臣および外務大臣に提出しました。」、とホームページに掲載した。
 日弁連は、「日本弁護士連合会は、いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する。」、とこの意見書の趣旨を説明している。
 「いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する意見書」の要約は次のものである。


Ⅰ.共謀罪法案の概要
 現行の「組織的な犯罪の 処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(以下「組織的犯罪処罰法」という。) の第6条の2に「テロ等準備罪」を創設し、織的犯罪集団の活動として、組 織により行われる重大な犯罪の遂行を2名以上で計画した場合で、計画に係る 犯罪の実行のための資金又は物品の取得等の準備行為が行われたときに処罰するとされている。そして、共謀罪法案は、3つの厳しい要件(①犯罪主体を「組織的犯罪集団」 に限定、②「計画」の存在、「準備行為」を処罰条件とする)を規定してお り、人権の侵害や恣意的な取締りにはつながらず、これまでの批判は回避されているとしている。

Ⅱ.共謀罪法案の基本的な問題
 ⅰ.共謀罪法案は、現行刑法の体系を根底から変容させるものとなること
 ⅱ.共謀罪法案においても、犯罪を共同して実行しようとする意志を処罰の対象とする基本的性格は変わらないと見るべきこと
(理由)
   ①「組織的犯罪集団」と規定しても犯罪主体が適切に限定されないこと
   ②「計画」の要件が存在しても犯罪の成立が適切に限定されないこと
   ③「準備行為」の要件は適切に機能しないこと
   ④構成要件の人権保障機能が阻害される恐れがあること
   ⑤まとめ:共謀罪法案において3つの要件が付加されたとしても従前の共謀罪法案と同じく、犯罪を実行しようとする意志を処罰の対象とす
        る姿勢に変化はないものと見るべきである。
 ⅲ.罪名を「テロ等準備罪」と改めても、監視社会を招くおそれがあること
   ①共謀罪法案の構成要件は上述のとおりであるところ、この構成要件から、共謀罪法案がテロ等に対してのみ適用される犯罪類型であること
    は読み取れない
   ②犯罪の成否を明確にし、人権保障を担っている構成要件が機能せず、検挙しようとする捜査機関の恣意的な判断を入れる余地が出てくる
   ③市民団体や労働組合等の活動を警察が日常的に監視し、行き過ぎた行動に対して、共謀罪であるとして立件するおそれもあり、市民の人権に少なからぬ影響を及ぼしかねない
Ⅲ.国連越境組織犯罪防止条約との関係
   境組織犯罪防止条約の締結について反対するものではないが、我が国においては国連越境組織犯罪防止条約との関係でも当然に共謀罪の創設
   を必要とするものではない
(理由)
 ⅰ.「予備」、「陰謀」、「準備」の段階の処罰立法がすでになされていること  
 ⅱ.テロ対策のための立法がなされてきたこと
 ⅲ.条約の一部保留を行う余地があること
 ⅳ.テロ対策等の必要性があれば、個別具体的な立法で対応すべきことであること

Ⅳ.結論
 ⅰ.テロ対策自体についても既に十分国内法上の手当はなされており、テロ対策のために政府・与党が検討・提案していたような広範な共謀罪
   の新設が必要なわけではない。
 ⅱ.また、国内法の整備状況を踏まえると、共 謀罪法案を立法することなく、国連越境組織犯罪防止条約について一部留保し て締結することは
   可能である。
 ⅲ.もし、テロ対策や組織犯罪対策のために新たな立法が必要であるとしても、政府は個別の立法事実を明らかにした上で、個別に、未遂以前
   の行為の処罰をすることが必要なのかという点を踏まえて、それに対する個別立法の可否を検討すべきである、個別の立法事実を一切問わず
   に、法定刑で一律に多数の共謀罪を新設する共謀罪法案を立法すべきでない。
 ⅳ.いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する。



 日弁連の「いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する。」の意見書の論理は、明確である。
この意見書の指摘する「共謀罪法案の基本的な問題」と「結論」によって、いわゆる共謀罪法案の問題点の指摘は正鵠を射ている。
 もしかしたら、反対する側の本気度が問われているのかもしれない。




by asyagi-df-2014 | 2017-02-26 07:52 | 共謀罪 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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