カテゴリ:ハンセン病( 15 )

ハンセン病療養所に入らなかった「非入所者」の元患者の和解が東京地裁で成立。

 ハンセン病療養所非入所者の遺族と国が和解したのは初めとなった和解が成立した。
 このことについて、毎日新聞は2017年2月21日、次のように報じた。


(1)国の強制隔離により差別が助長され被害を受けたとして、ハンセン病療養所に入所していなかった患者の遺族が国に賠償を求めた訴訟の原告弁護団は20日、東京地裁(佐久間健吉裁判長)で和解が成立したと発表した。国が謝罪し、遺族4人に1人350万~500万円を支払う内容。隔離政策を違憲とした2001年の熊本地裁判決後、国と患者本人や入所者遺族との和解が進められてきたが、非入所者遺族の和解は初めて。
(2)和解が成立したのは1997~99年に死亡した非入所者3人の遺族で、愛知、福島県の子供3人と沖縄県の母1人。非入所者3人の中には病歴を隠して結婚し、発覚を恐れて自殺した男性もいた。
(3)02年に国が患者側と交わした基本合意書では、非入所者遺族への賠償は明記されず、残された課題の一つだった。昨年3月に「らい予防法」廃止から20年がたち損害賠償請求権が消滅したため、新たな提訴は原則できない。遺族側の神谷誠人弁護士は新たな提訴希望者について「厳しいが、理解した上で手を挙げる方がいれば力を合わせたい」としている。                             【伊藤直孝】


 課題となるのは、「昨年3月に『らい予防法』廃止から20年がたち損害賠償請求権が消滅したため、新たな提訴は原則できない。遺族側の神谷誠人弁護士は新たな提訴希望者について『厳しいが、理解した上で手を挙げる方がいれば力を合わせたい』としている。」、ということである。
                             




by asyagi-df-2014 | 2017-02-21 12:05 | ハンセン病 | Comments(0)

ハンセン病-隔離された「特別法廷」について、最高裁の責任は果たされたのか。

 このことについて、2016年4月26日付けの社説から、事実を拾い出してみた。


①ハンセン病隔離政策は違憲として国に元患者への賠償を命じた2001年の熊本地裁判決を受けて政府は謝罪、国会も補償金を支給する法律を制定した。だが裁判所は動かず、元患者らの団体などは「司法は責任を明らかにしていない」と批判。13年に「特別法廷は裁判の公開を定めた憲法に違反している」とし、最高裁に検証を求めた。
②最高裁は一昨年5月、元患者らの強い要請を受け、特別法廷の調査を始めた。最高裁の外部有識者委員会は先月、特別法廷が「憲法に定められた法の下の平等・裁判公開の原則に反し違憲だった疑いがある」と指摘していた。 
③報告書は「病状や感染の可能性などを具体的に検討せず、ハンセン病に罹患(りかん)していることが確認できれば開廷の必要性を認定した」と指摘。「遅くとも1960年以降は合理性を欠く差別的な扱いであったことが強く疑われ、違法」とした。
④「ハンセン病患者の裁判がかつて、隔離された『特別法廷』で開かれていたことをめぐり、最高裁はきのう、元患者らに『患者の人格と尊厳を傷つけたことを深く反省し、お詫(わ)びする』と謝罪した。」
⑤「裁判を隔離した判断のあり方は差別的だった疑いが強く、裁判所法に違反すると認めた。最高裁が司法手続き上の判断の誤りを認めて謝罪するのは極めて異例であり、検証作業をしたこと自体は評価できるだろう。」
⑥「だが、注目された違憲性の判断に関しては、憲法上の『裁判の公開』の原則には反しない、と結論づけた。」


 2016年4月236日付けで確認した社説・論説は10社でであり、その見出しは次のようになっている。


(1)朝日新聞社説-ハンセン病 司法の差別、決着せぬ
(2)読売新聞社説-ハンセン病法廷 差別的運用が偏見を助長した
(3)東京新聞社説-ハンセン病 遅すぎた司法の反省
(4)北海道新聞社説-ハンセン病法廷 これで謝罪と言えるか
(5)信濃毎日新聞社説-ハンセン病法廷 司法の責任 なお検証を
(6)山陰中央新報論説-ハンセン病問題調査/真相の解明に期待したい
(7)徳島新聞社説-ハンセン病法廷 謝罪の言葉は届くのか
(8)高知新聞社説-【最高裁の謝罪】人権のとりでに値するか
(9)西日本新聞社説-ハンセン病差別 最高裁謝罪では終わらぬ
(10)沖縄タイムス社説-[ハンセン病特別法廷]違憲の疑いは拭えない

 これから推察すると、今回の最高裁による謝罪は、「『遅すぎた司法の反省』が『差別的運用が偏見を助長した』。『違憲の疑いは拭えない』ことから『 司法の差別、決着せぬ』し、『最高裁謝罪では終わらぬ』。最高裁が『人権のとりでに値する』ために、『真相の解明』につとめ、『司法の責任なお検証を』する必要がある。真の『謝罪の言葉』を届けるために。」、ということになる。

 また、その主張を要約すると次のようになる。


(1)朝日新聞社説
①「人権の砦(とりで)」たる最高裁として、これで問題が決着したといえるのだろうか。
②今回の最高裁の検証では、「裁判官の独立」を理由に、個別の事件の判断は避けられた。だが、手続きに問題があれば、裁判そのものに疑いが生じかねない。本来なら個別事件も検証し、被害救済や名誉回復まで考慮すべきだろう。今後、再審請求があれば、裁判所は真剣に対応すべきだ。
③差別や偏見のない社会に少しでも近づけるために、今回の検証をどう役立てるのか。謝罪を超え、最高裁はさらにその責任を負い続けなくてはならない。
(2)読売新聞社説
①人権侵害を正すべき裁判所が、ハンセン病患者への差別を助長した。司法の汚点である。
②社会と隔絶された施設で開廷することが公開の要請を満たしていると言えるのか、疑問である。
③裁判官の独立を尊重するため、特別法廷で審理された判決内容の是非については、検証の対象外となった。それはやむを得ないとしても、特別法廷という異例の場で公正な裁判が行われたのか、元患者らの疑念は根強い。
④差別的運用により、裁判への信頼が損なわれた。そのことに対する最高裁の責任も重い
(3)東京新聞社説
①「人格と尊厳を傷つけ、お詫(わ)び申し上げる」。かつてハンセン病患者の裁判を隔離先の療養所などの「特別法廷」で開いた問題で、最高裁が謝罪した。あまりに遅い司法の反省と言わざるを得ない。
②公開の原則、平等の原則が貫かれていたか。最高裁には今後も徹底的な検証を求めたい。つまり、最高裁が誤りを認めているのは、六〇年以降も特別法廷を開き続けていたことだ。その時点では既に確実に治癒する病気であったし、国内外で強制隔離の必要性が否定されていた。だから、裁判所法に反するとしたのだ。
③だが六〇年以前の特別法廷に問題はなかったのだろうか。もっと早い時点で特別法廷の問題に気づけなかっただろうか。それが悔やまれる。何より謝罪まで時間がかかりすぎている。
④二〇〇一年には熊本地裁がハンセン病の強制隔離政策を違憲と判断し、首相や衆参両院も反省と責任を認めた。最高裁もその時点で調査を開始できたはずだ。司法は人権の砦(とりで)でなければならない。あらためて、自覚を促したい。
(4)北海道新聞社説
①ハンセン病隔離政策をめぐる政府と国会の謝罪から15年。最高裁が自ら検証し、誤りを認めたことは評価されるが、遅きに失した。一方、憲法が保障する「裁判の公開」には反していないとした。形式的には公開の要件が満たされていたと判断したためだ。
②元患者やその家族たちはこの結論に納得するだろうか。偏見と差別に満ちた特別法廷を認めてきた責任に正面から向き合うことこそ、「憲法の番人」である最高裁の責務のはずだ。
③最高裁は、特別法廷設置について「合理性を欠く差別的な取り扱いであったことが強く疑われる」として謝罪した。当然である。
④理解できないのは、開廷時に開廷の張り紙が正門に出されていたことなどから、裁判は公開されていたと判断したことだ。普段、人があまり訪れない療養所に張り紙をしただけで、公開されていたとするのは無理がある。
⑤この問題を調べてきた最高裁の有識者委員会も、一般法廷と比較し実質的に公開されていたかが重要だとして、違憲の疑いを指摘した。事実上の非公開とみるのが市民感覚だろう。
⑥形が整っているから良しとするのが、最も人権感覚に敏感なはずの司法の判断なのか。残念な結論と言わざるを得ない。
⑦国の隔離政策で患者らは長年、言葉に言い表せない苦しみを味わってきた。その人たちの名誉を回復するためにも、最高裁は真摯(しんし)な反省の姿勢を示すべきだ。それこそが、現在も根強い偏見を解消する方策の一つになる。
(5)信濃毎日新聞社説
①ハンセン病患者らを強制隔離し続けた差別政策に、「人権のとりで」であるべき司法までが加担した。その責任の重大さに正面から向き合った検証結果とは言いがたい。
②遅きに失した謝罪の言葉だけでは、不信感は拭いようもない。違憲性に関して、さらに徹底した検証が欠かせない。
③熊本の男性が無実を訴えながら殺人罪で死刑判決を受け、執行された「菊池事件」について、弁護団などが再審を求めている。個々の裁判のやり直しも、遺族らの要望に応じて認めるべきだ。
(6)山陰中央新報論説
①殺人罪で死刑判決が言い渡され、執行された「菊池事件」を巡っては再審請求の動きがあり、司法による過去の償いはまだ終わらない。
②報告書は特別法廷の問題点を一通り示し、裁判所の誤りも認めている。記者会見した最高裁事務総長は「法の下の平等に反していたと強く疑われる」と、報告書にはない違憲の疑いまで指摘した。しかし個別の事件の審理にどのような影響があったかは明らかにはなっていない。
③菊池事件では、被告が無罪を主張したのに弁護人は検察側提出の全証拠に同意したり、裁判官がゴム手袋をして調書をめくったりといった異様な裁判の光景が語り伝えられている。弁護団は刑事訴訟法に基づき検察に再審請求を求めるなど手を尽くしており、真相解明につながることを期待したい。
(7)徳島新聞社説
①憲法の番人が差別意識を持っていたのでは、公正な司法など期待できようか。最高裁は恥ずべき過ちを犯したことを重く受け止めるべきだ。
②ハンセン病患者への強い偏見があったのは明白である。報告書では「誤った運用が偏見と差別を助長した。深く反省し、おわびする」とした。謝罪は異例だが、それで済むものではない。
③今回の報告では、「司法が人権侵害を行った」との批判は収まらないだろう。検証も不十分だ。
④三権の一翼を担う最高裁が重い腰を上げて調査を始めたのは、入所者協などの要請を受けた後の一昨年5月だ。対応が遅きに失したのが極めて残念だ。亡くなった元患者に謝罪の言葉は届かない。最高裁には、さらに患者側の理解を得る努力を求めたい。
(8)高知新聞社説
①「謝罪になっていない」―。長年にわたっていわれのない差別、偏見を強いられてきた元患者や家族が憤るのも無理はないだろう。
②憲法が定める裁判の公開原則に関し、最高裁は療養所に開廷を知らせる「告示」を出していたことを挙げて、「公開されていなかったとは認定できない」と結論付けた。だとしても、実質的には「公開」とは程遠く、あまりに外形的な判断といわざるを得ない。
③社会の差別や偏見を助長した責任を直視しないままなら、「人権のとりで」という国民の信頼に自ら傷をつけたといわなければならない。
(9)西日本新聞社説
①最高裁はまず違法性について、特別法廷は災害など例外に限るとされる裁判所法に違反していたと認めた。一方で特別法廷は「傍聴を許していたと推認できる」などを理由に、憲法の「裁判の公開」には反しないと結論付けた。こうした判断は問題を矮小(わいしょう)化していると言わざるを得ない。
②最高裁は報告書の末尾で外部有識者委から「最高裁は人権のとりでたれ」と叱咤(しった)されたことを自ら記している。国民の人権を巡って司法までが厳しく指弾された意味は極めて重い。
③国の補償など元患者らの救済は進む一方、最近では耐え難い偏見から家族らが国を提訴するなどハンセン病問題は依然深刻だ。
④改めて私たち一人一人に問われる人権問題と捉えたい。
(10)沖縄タイムス社説
①今回の調査報告書は、療養所の正門に開廷を知らせる「告示」を出していたことをあげ、「公開されていなかったとは認定できない」と違憲性を否定する。違憲性を認めた場合の影響を懸念するあまり腰が引け、形式論をかざして逃げ込んだ印象が強い。実際のところはどうだったのか。
②熊本県の国立療養所「菊池恵楓園」入所者自治会の志村康会長(83)は指摘する。「告示に気付く人はおらず、知らない間に裁判は開かれていた」。50年代に「特別法廷」を目撃したという菊池恵楓園の入所者は「白黒の幕の中で裁判が開かれ、全然見えなかった」と証言する。
③最高裁が謝罪したことで行政・立法・司法の三権が隔離政策について謝罪したことになるが、ハンセン病に対する差別や偏見は解消されていない。司法による過去の償いも終わっていない。


 今、私たちにとって何よりにも増して必要なことは、「療養所で暮らす人の平均年齢は80歳を超す。尊厳が回復されたとはいえないまま年老いる元患者らの現状に向き合い、差別をどう克服していくか。司法の責任とともに、社会が問われていることもあらためて認識したい。」(信濃毎日新聞)、ということだ。
 それも緊急な具体的な対応の中で。


 以下、各社社説等の引用。(また、長くなります。)





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by asyagi-df-2014 | 2016-04-28 06:07 | ハンセン病 | Comments(0)

ハンセン病-元患者は「胸に響かぬ」、と。「司法の責任は不問にされたに等しく、到底受け入れられるものではない」。

 「特別法廷」について、最高裁報告は「違憲」とは認めなかった。
 このことについて、朝日新聞は2016年4月26日、「ハンセン病患者を隔離された特別法廷で裁いてきた過ちを、『憲法の番人』である最高裁は25日、『違法』だったと謝罪しながらも、『違憲』とは認めなかった。検証を求めてきた元患者たちは『間違いを真摯(しんし)に認めてほしかった』と悔しさと怒りを訴えた。」、と報じた。
 朝日新聞は、次の声を伝えた。


(志村康さん-83)
「違憲ではないが違法としたうえ、最高裁判所は責任を負わないなんて、理不尽な結果だ。これで謝罪になっているのでしょうか」

(長州次郎さん-88)
「我々の胸に響くような見解ではありませんでした。本当に残念。(調査で話した)真意が伝わらなかった」。
「(法廷は)黒幕で囲われ、中の様子を見ることは絶対にできなかった。公開の原則に反していないなんて、まやかしです」

(藤田三四郎会長-90)
「(20年前の)らい予防法の廃止の時に(司法も)謝罪すべきだった。今ごろ謝罪は遅すぎる。最高裁はハンセン病に無知だった」

(北原誠学芸員-61)
「検証を始めるまで随分時間がかかったという印象だ。特別法廷は当時、十分議論されずに設置が慣例化していたのでは」

(中尾伸治さん-81)
「政府や国会は誤りを認めているのに、憲法の番人であるはずの最高裁は遅すぎる」


 私たちが、聞かなければならないのは、まさにこの声ではないのか。


 以下、朝日新聞の引用。





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by asyagi-df-2014 | 2016-04-26 09:14 | ハンセン病 | Comments(0)

ハンセン病-最高裁は、「患者の人格と尊厳を傷つけたことを深く反省し、お詫(わ)びする」と謝罪。しかし、憲法の「裁判の公開」には違反しないと。

 ハンセン病患者の「特別法廷」問題について、朝日新聞は2016年4月25日、「ハンセン病患者の裁判を隔離された療養施設などに設けた「特別法廷」で開いていた問題で、最高裁の今崎幸彦事務総長は25日、調査報告書を公表し、『患者の人格と尊厳を傷つけたことを深く反省し、お詫(わ)びする』と謝罪した。」、と報じた。
 このことについて、「最高裁が司法手続き上の判断の誤りを認め、会見で謝罪するのは極めて異例。」、と伝えた。
 しかし、一方では、「特別法廷を開いたことは、憲法の『裁判の公開』には違反しないと結論づけた。」、と報じた。


 以下、朝日新聞の引用。





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by asyagi-df-2014 | 2016-04-25 19:32 | ハンセン病 | Comments(0)

ハンセン病-隔離された「特別法廷」を、岡山弁護士会会長声明と社説・論説で考える。

 「『憲法の番人』たる最高裁が違憲性を問われる異例の事態」(京都新聞)であるハンセン病患者の裁判がかつて隔離された「特別法廷」で開かれていた問題について、岡山弁護士会会長声明(以下、声明とする)及び各紙の社説・論説を基に考える。
 まず、この声明の中で、経過と隔離された「特別法廷」が日本国憲法違反であることを確認する。
 続いて、3月末から4月当初の各新聞社の社説・論説を拾い出してみて、要約する。

 
 声明は、隔離された「特別法廷」の経過を、最高裁判所が開催した「ハンセン病を理由とする開廷場所指定の調査に関する有識者委員会」の資料から、次のように説明している。

「1948(昭和23)年から1972(昭和47)年までの間に、ハンセン病を理由とする特別法廷の上申は96件であり、そのうち95件が認可され(刑事事件94件、民事事件1件)、1件が撤回され、却下事例がなかった(認可率99%)。
 これに対し、1948(昭和23)年から1990(平成2)年までの間の、ハンセン病以外の病気及び老衰を理由とする開廷場所指定の上申は61件であり、そのうち9件が認可され、25件が撤回され、27件が却下された(認可率15%)。
 これらの統計からすれば、最高裁判所は、特別法廷の指定について、事件ごとに個別具体的な判断をすることなく、被告人がいわゆる「ハンセン病患者」であるという一事をもって、判断していたと推察される。」

 次に、声明は、次の二点の理由により、「こうしたハンセン病患者に対する差別・偏見に満ちた取扱いは、到底、公平な裁判所による裁判が確保されていたとはいえず、憲法第37条1項に違反する。」、と断定する。
 

(1)憲法は、裁判の公正を確保する趣旨から、「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行う」と規定し(第82条1項)、とりわけ刑事被告人に対しては、重ねて「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する」と規定し、公開裁判を受ける権利を保障している(第37条1項)。
 ここに「公開」とは、訴訟関係人に審理に立ち会う権利と機会を与えるといういわゆる当事者公開をいうのではなく、国民に公開されるという一般公開、具体的には国民一般の傍聴を許すこと(傍聴の自由)を意味する。
 特別法廷は、いずれも「らい予防法」施行下における隔離施設としてのハンセン病療養所、拘禁施設としての医療刑務支所・拘置所などで開廷されたものであって、いずれも一般人が立ち入ることのできない場所で実施されたものであるから、その「対審及び判決」には、国民一般の傍聴の自由が確保されていたとは認められず、憲法第37条1項、第82条1項に違反する。
(2)上記菊池事件の特別法廷においては、法曹三者がいずれも予防衣と呼ばれる白衣を着用し、長靴を履き、記録や証拠物等をゴム手袋をしたうえで火箸等で扱っていたことが判明している。


 続けて、3月末から4月当初にかけてのこの問題に関しての社説・論説を採り上げてみた。
 その見出しは、次のようになっている。

(1)朝日新聞社説-ハンセン病 違憲性を直視してこそ
(2)毎日新聞社説-ハンセン病法廷 最高裁は誠実に謝罪を
(3)京都新聞社説-ハンセン病法廷  最高裁は真摯に謝罪を
(4)南日本新社説-[ハンセン病法廷] 最高裁は十分な検証を
(5)新潟日報者越-ハンセン病法廷 差別や偏見のない社会を
(6)日本経済新聞社説-「特別法廷」最高裁が謝罪へ ハンセン病、手続き不適切
(7)琉球新報社説-ハンセン病謝罪 言葉だけでなく再審認めよ
(8)沖縄タイムス社説-[ハンセン病訴訟]家族の苦しみ直視せよ
(9)産経新聞主張-最高裁が謝罪へ 過ち認めるに躊躇するな-

 
 こうした主張を見た時、ハンセン病にかかる特別法廷の問題が、最高裁判所に責任があることは、一致している
ただ、「今まで腰が重かった経緯を考えれば、最高裁がどこまで問題を直視するかは見通せない。当時の手続きの違法性は認めても、違憲性にまで踏み込むかどうかは不透明だ。」(朝日新聞)という問題が、つまり、今回、最高裁判所が、憲法違反という領域まで踏み込んで判断できるかどうかが問題として残されている。
 私たちは、声明の指摘する次の主張を肝に命じるべきなのである。


「特別法廷の問題につき、弁護士の立場からその実施や実施方法に何ら異論を挟むことなく黙認してきたことにつき、痛切に反省の意を表明する。
 そのうえで、当会は、最高裁判所に対し、特別法廷の実態が明らかになるよう事実関係を詳細に公表し、特別法廷の指定行為が憲法に違反するものであることを真摯に受け止め、ハンセン病問題によって被害に遭われた方々の更なる名誉回復に努めることを求める。」


 声明の補足分として、各社の社説・論説の要約を載せる。


Ⅰ.問題点や指摘事項
①「人権の砦(とりで)」「憲法の番人」であるべき最高裁にとって、あまりに遅い対応だった。
②患者の隔離を定めた「らい予防法」の廃止から20年。すでに政府は01年、熊本地裁での国家賠償訴訟で敗れたのを機に隔離政策の過ちを謝罪した。その直後に国会も、全会一致で責任を認める決議をしている。特別法廷については05年、厚生労働省の第三者機関が「不当な対応だった」と指摘した。それでも最高裁は動かなかった。「裁判官の独立」に抵触する可能性があるとして、自ら調査に乗り出すことをタブー視していた背景があったようだ。
③95件の中には、ハンセン病患者とされた熊本県の男性が殺人罪に問われ、無実を訴えながら死刑執行された「菊池事件」もあった。事件の再審を求める弁護士や元患者らが「憲法の公開原則に反した裁判だった」と訴えたことが、最高裁が検証に動き出すきっかけになった
④ハンセン病患者に対する差別に司法も加担した責任を直視するなら、特別法廷の違憲性にもはっきり向き合うべきだ。
⑤いまなお、差別や偏見への恐怖心から解放されずにいる元患者は多い。その家族が受けた差別被害の裁判も始まる。
⑥元患者や家族が今後の人生を有意義に過ごすため、今回の検証を役立てなくてはならない。最高裁はその責任を担う覚悟を、ぜひ謝罪に込めてほしい。
(朝日新聞)
⑦世界保健機関(WHO)がハンセン病患者の隔離を否定する見解を示したのが60年だ。だが日本で、強制隔離を定めた「らい予防法」が廃止されたのは96年だった。
⑧ハンセン病をめぐっては、療養所に隔離された入所者らが「人権侵害を受けた」と起こした国家賠償訴訟で、熊本地裁が2001年、「60年には隔離の必要性が失われていた」と認定し、違憲の訴えを認めた。
⑨どういった判断で、一律の運用がなされたのか。社会に広がっていた差別が、なぜ裁判の場にまで持ち込まれてしまったのか。公表する検証では、その背景を掘り下げ、経緯をつまびらかにしてほしい。また、公正であるべき審理に与えた影響についても、最高裁には突き詰めた検証を求めたい。
⑩国内の新規患者はほとんどおらず、完治する病気になったにもかかわらず、ハンセン病に対する偏見は根強い。毎日新聞が療養所の入所者と退所者を対象に行ったアンケートでは、全体の77%が「病気への差別や偏見がいまだにある」と回答した。
 差別や偏見を受けたとして患者の家族らが今年、新たに集団で国賠訴訟を起こしてもいる。最高裁の検証にとどまらず、ハンセン病に対する差別や偏見の解消は、私たちの社会が向き合うべき課題である。
(毎日新聞)
⑪最高裁の対応の鈍さは非難されてしかるべきだ。熊本地裁は2001年、ハンセン病の強制隔離政策は、世界保健機関から廃止提言を受けていたことなどから少なくとも1960年以降は不当だったと国敗訴の違憲判決を出した。政府は元患者に謝罪、国会も責任を認めた。2005年に厚生労働省の第三者機関は特別法廷の「不当な対応」を問題視したが最高裁は動かず、元患者の要請で14年にようやく調査を始めた。「裁判判官の独立」に抵触する懸念があったというが不誠実に過ぎる。
⑫最高裁は、個別の裁判手続きの是非には踏み込まないとみられる。だが、重大な問題を放置してきたことが、関係者の高齢化などで検証を難しくしたことは否定できまい。特別法廷の問題点はもちろん、その後の不適切な対応も報告書に記録したうえで、真摯(しんし)に謝罪しなければならない。
(京都新聞)
⑬元患者らが特別法廷の検証を重視するのは、菊池事件の再審に関わるからだ。殺人罪に問われた元患者は無実を訴えたが、国選弁護人は検察側が請求したすべての証拠に同意し、特別法廷で死刑を宣告された。1962年に刑が執行されている。
 当時の書記官によると、療養施設の一室に設けられた特別法廷に傍聴者はなく、白衣を着た裁判官がゴム手袋をして調書をめくり、火箸で証拠品をつまみ上げたという。すべての特別法廷がこのように異様だったわけではないにしろ、当時の偏見や差別のすさまじさを物語るのは間違いない。
⑭患者の強制隔離を定めたらい予防法が廃止されてから20年になる。全国13の国立療養所で暮らす入所者の平均年齢は83歳を超え、介護が必要な人も増えている。
 埋め合わせようのない深刻な人権侵害の被害者に対して、最高裁は踏み込んだ検証結果を示し、真摯(しんし)に謝罪する必要がある。
(南日本新聞)
⑮政府と国会が隔離政策の過ちを認めてから15年近く過ぎている。最高裁が検証を始めたのは当事者側の要請がきっかけだった。「人権のとりで」としての意識が希薄だったと言わざるを得ない。
⑯国は判決を待つのではなく、救済に動くべきではないか。
(新潟日報)
⑰外部有識者委員会が「法の下の平等や裁判の公開を定めた憲法に違反する疑いがある」との意見を最高裁に伝えている。憲法の番人が憲法違反の疑いを指摘された。最高裁は深刻に受け止めるべきだ。
⑱今回も最高裁は元患者側の要請を受けて調査を開始しており、自発的ではない。隔離政策を続けた行政だけでなく、司法にまで不当な扱いを受けた元患者らの不信感は安易な謝罪の言葉だけでは拭えない。再審請求を認めるなど、個別の裁判手続きの是非にも踏み込むべきだ。
(琉球新報)
⑲特別法廷は非公開で、憲法が保障する「裁判の公開の原則」に反する。無実を訴えながら死刑判決が言い渡され、執行された被告がいる。人権の砦(とりで)の司法も差別と偏見に縛られ、公正な審理だったか、重大な疑問が生じている。
 療養所で暮らす元患者の平均年齢は83歳を超え、約4分の1が認知症であるとの調査がある。家族への賠償問題など積み残した課題は多い。
(沖縄タイムス)
⑳最高裁が謝罪に踏み切れば、三権の全てが責任を認めることになる。元患者らは、行政、立法、司法によっても醸成された社会の差別意識に苦しめられてきた。
 いや、報道がこれを助長することはなかったか。その反省と検証も欠かせない。
 ハンセン病はかつて「らい病」の名で呼ばれたが、差別感情を呼ぶなどとして、現在は新聞でも基本的に使わない。「業病」としてこれを扱う小説や映画もあったが、全くの誤りである。
 ハンセン病は、感染力が極めて弱く、治療法も確立している。この機に改めて、その認識の周知を徹底したい。
(産経新聞)


 以下、岡山県弁護士会会長声明及び各新聞社の社説・論説の引用。





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by asyagi-df-2014 | 2016-04-12 06:23 | ハンセン病 | Comments(0)

ハンセン病-ハンセン病「特別法廷」の問題で、有識者委員会は、最終的な意見をとりまとめ、最高裁が4月中にも出す調査報告書の中で、全文が公表される。

 ハンセン病患者の裁判を隔離された「特別法廷」で開いていた問題について、朝日新聞は2016年3月30日、「ハンセン病患者の裁判を隔離された『特別法廷』で開いていた問題で、最高裁の内部調査を検証する有識者委員会が29日、最終的な意見をとりまとめた。最高裁が4月中にも出す調査報告書の中で、全文が公表される。」、と報じた。
 この有識者委員会について、「特別法廷は1948年から72年にかけ、全国の国立療養所など21カ所で計95件開かれた。最高裁は元患者らの要請を受けて2014年に内部調査を開始。第三者に意見を聞くための有識者委を昨年7月に設けた。弁護士ら5人で構成する有識者委は、昨年9月から6回にわたって会合を開いた。今年1、2月には、群馬県や熊本県の国立療養所を訪ね、入所者らから聞き取り調査をした。」、と伝えた。
 また、有識者委員会の様子について、「特別法廷が憲法の保障する『裁判の公開』に反していないかなどについて議論。委員からは特別法廷の違憲性を指摘する意見も出たという。」、「この日は新たに『法の下の平等』について論点になった。有識者委で座長を務める井上英夫・金沢大名誉教授によると、『ハンセン病患者に対する差別意識が、特別法廷の開廷にどう反映しているのか、改めて議論した』という。」、と伝えた。


 最高裁の調査報告書を待ちたい。


 以下、朝日新聞の引用。





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by asyagi-df-2014 | 2016-04-06 06:09 | ハンセン病 | Comments(0)

ハンセン病-ハンセン病患者を強制隔離した国の政策で家族も差別などの被害を受けたとして、第2陣の原告509人が29日、熊本地裁に提訴。

 標題について、熊本日日新聞は2016年3月29日、「ハンセン病患者を強制隔離した国の政策で家族も差別などの被害を受けたとして、元患者の子どもやきょうだいらが国に対し、謝罪と1人当たり550万円の損害賠償を求めた訴訟で、第2陣の原告509人が29日、熊本地裁に提訴した。」、「第1陣と合わせた原告総数は568人。今後の追加提訴について原告弁護団は『未定』としている」、と報じた。
 また、「第2陣原告は23~96歳の男女で九州・沖縄地方を中心に居住。訴状によると、国は治療薬の普及などによって隔離の必要性が失われた後も差別や偏見をなくす措置を講じず、家族は地域や学校で差別され、婚約の破談や離婚、転職などを余儀なくされたと主張している。」、と伝えた。


 以下、熊本日日新聞の引用。





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by asyagi-df-2014 | 2016-04-02 17:28 | ハンセン病 | Comments(0)

ハンセン病-「らい予防法」廃止から3月末で20年。今なお家族やふるさとから分断され、尊厳の回復が困難な実態が浮かびあがる。

 「らい予防法」廃止から3月末で20年がたった今、今なお尊厳の回復が困難な実態について、朝日新聞は2016年3月28日。「ハンセン病患者の強制隔離を定めた『らい予防法』廃止から3月末で20年。朝日新聞が全国の国立ハンセン病療養所の入所者でつくる自治会にアンケートしたところ、現在も本名を伏せて園名(偽名・仮名)で日常生活を送る人が全入所者の38%に上ることがわかった。今なお家族やふるさとから分断され、尊厳の回復が困難な実態が浮かぶ。」、と報じた。
 朝日新聞は、「この20年、ハンセン病だった人たちは名誉回復を果たせたのか。入所者が用いる名前と遺骨の行方は、ハンセン病への偏見と差別をはかるバロメーターと考え、全国の療養所にアンケートした。全入所者の4割弱が本名を明かさず、物故者の過半数が分骨さえされていない現実は重い。」と、 このアンケートについて、次のように伝えた。


「アンケートは今月、全国13の全療養所に実施。在籍者1597人のうち620人が園名を使っていた。園名は患者が療養所に入所する際、差別が家族に及ばないよう園の職員や他の入所者の指示で、本名に代えて用いられた。園名の使用は各園によって差があり、本名で通してきた入所者もいる。
 名誉回復が図られてきた今も本名を使わない理由について、各自治会長は『差別を避けようと名前を変え、世の中に存在しない人間のように生きた。簡単には本名に戻せない』『親族への影響を考えると躊躇(ちゅうちょ)する』『何十年も偽名を使い定着してしまった』などと答えた。
 アンケートでは予防法廃止後の20年間に療養所で亡くなった人の納骨先も尋ねた。この間、3507人が亡くなり、国の強制隔離の違憲性を認めた2001年の熊本地裁判決を契機に、遺族の遺骨の引き取りが増えた。しかし今も55%の1940人の遺骨が分骨もされないまま園内の納骨堂に納められている。
 全国ハンセン病療養所入所者協議会の森和男会長は『家族内で入所者の存在が秘密にされたか、代替わりが進み存在が忘れられてしまったと考えられる』と言う。」


 まずは、次の「声」をじっくり心に刻みたい。


「差別を避けようと名前を変え、世の中に存在しない人間のように生きた。簡単には本名に戻せない」
「親族への影響を考えると躊躇(ちゅうちょ)する」
「何十年も偽名を使い定着してしまった」
「家族内で入所者の存在が秘密にされたか、代替わりが進み存在が忘れられてしまったと考えられる」
「自分は長くない。通帳を妹に送ってほしい。それで死んだとわかる」
「ここでのことは、絶対に子どもたちに言えない」
「あまりに名前を変えた人生が長すぎた。本名だけでなく、自分のルーツやふるさとを失った心境です」
「差別に巻き込みたくない、背負わせたくない一心だったと思うのです」
「あまりに名前を変えた人生が長すぎた。本名だけでなく、自分のルーツやふるさとを失った心境です」
「地域社会には古い価値観が染みついている。本名を名乗るのは難しい」
「偽名であっても、恥じる人生を送っていない。偽名で生きる決断も、自分でしたこと」


 この上で、朝日新聞の「90年に及ぶ隔離政策を許した背景には、私たちの無関心がある。入所者の高齢化が進むなか、ある入所者は『せめて教訓とならなければ、私たちの生きた意味がない』と言った。証言ビデオや資料館の整備などが各療養所で進む。彼らの痛みを想像し、共感し、後世に伝えていけるか。問われているのは、私たちだ。」、との出張を、私たち日本人一人一人が、受け取る必要がある。


 以下、朝日新聞の引用。





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by asyagi-df-2014 | 2016-03-30 12:35 | ハンセン病 | Comments(0)

ハンセン病-家族集団提訴を考える。

 毎日新聞は、2016年2月16日、家族集団訴訟について、「患者本人同様、深刻な差別を受け続けたことを知ってほしい−−。ハンセン病元患者の家族59人が15日、初の集団国家賠償訴訟を起こした。元患者への賠償を命じた熊本地裁判決(2001年確定)の後も顧みられることがなかった家族の被害。損害賠償請求期限の20年を目前にして、ようやく重い口を開き、尊厳の回復に向けて立ち上がった。」、と報じた。
 実名を公表した原告・原田信子さんの「ずっと小さくなって生きてきたが、これからは隠れず生きていきたい」という次の声を伝えた。まさに、この声がこの訴訟の意味なのである。


「『幸せだと思ったことはあまりなかった。泣いていることが多かったから』。72年間の人生を振り返る。あえて実名を出して臨んだ提訴後の記者会見。涙ぐみながらも、こう訴えた。『裁判を通じて小さい頃から差別と偏見を受けてきたことを知ってほしい。ずっと小さくなって生きてきたが、これからは隠れず生きていきたい』」


 また、毎日新聞は、提訴後の原告・弁護団の記者会見での弁護団の徳田靖之共同代表の訴えを次のように伝えた。


「被告は国だが、問われるべきは誰なのかを皆さんと一緒に考えたい」
「01年の熊本地裁判決で国は断罪されたが、裁かれていないのは私たちの社会。それは法律家、医学界、マスコミ、教育界、そして地域の人たち。この裁判で裁かれるべきは私たち一人一人ではないか」


 徳田弁護士は、「『産んでくれた親を憎んだり、疎ましいと思うほど深刻な被害はない。そういう被害を明らかにすることで家族が被害から解放され、乗り越えていけるように多くの方に裁判へ参加してほしい』と呼びかけた。」。

 この集団訴訟について、各地方紙が社説で取りあげた。
 その見出しは、次のものである。
1.南日本新聞社説-[ハンセン病訴訟] 社会の差別も問われる-
2.西日本新聞社説-ハンセン病救済 国の幕引きは許されない-
3.京都新聞社説-ハンセン病提訴  家族にも被害、救済急げ-
4.信濃毎日新聞社説-ハンセン病訴訟 家族の苦しみに向き合う-

 この集団訴訟について、この社説で考える。
(1)集団提訴の意味
1.南日本新聞社説
 国のハンセン病強制隔離政策によって患者本人だけでなく、家族も深刻な偏見や差別を受けたとして、鹿児島県などに住む元患者の家族59人が、国に謝罪と損害賠償を求め熊本地裁に提訴した。家族の集団訴訟は初めてである。
2.西日本新聞社説
①ハンセン病の隔離政策はまさに「誤った国策」だった。にもかかわらず、その救済はいまだ不十分と言わざるを得ない。積み残された重い課題に社会全体が向き合うことを求める提訴でもある。
②元患者の家族らが国に謝罪と損害賠償を求める初の集団訴訟を熊本地裁に起こした。隔離政策による差別や偏見の被害は患者本人だけでなく、子どもやきょうだい、配偶者にも及んだ-との主張だ。
③ハンセン病関連の被害は「人権を根こそぎ奪う」という言葉で表現されることがある。患者は強制的に療養所へ収容され、家族も日常生活に加えて教育、就職、結婚など人生のあらゆる場面で過酷な差別にさらされたからだ。
④さらに悲劇的なのは、患者となった肉親を憎んだり、恨んだりして家族そのものが崩壊に至ったケースも少なくないとされる点だ。基本的に元患者本人を補償対象としている現行制度は、被害の全面的な救済につながらないことは明らかだといえるだろう。
3.京都新聞社説                                
①国によるハンセン病強制隔離政策のため、患者本人だけでなく家族も深刻な偏見や差別を受けたとして、元患者の家族59人が国に謝罪と損害賠償を求める訴訟を熊本地裁に起こした。家族の被害をめぐる集団訴訟は初めてという。
②これまでの補償金はあくまで患者本人に対するもので、遺族に相続権はあるが、家族自身の被害に対するものではない。今回の提訴で、原告は隔離政策で助長された偏見、差別を受け、結婚や就職などの際、患者の家族であることを隠して生きざるをえなかったなどと訴えている。
4.信濃毎日新聞社説
①家族の被害をめぐっての集団訴訟は初めてである。弁護団が全国から原告を募り、今回の熊本地裁への提訴には59人が加わった。3月に予定する第2陣を含め原告は100人を超す見込みだ。
②戦前に始まった強制隔離政策は戦後も維持され、1996年に「らい予防法」が廃止されるまで続いた。元患者への賠償を国に命じる熊本地裁判決が2001年に確定し、元患者と遺族には一時金が支給されている。09年に施行されたハンセン病問題基本法は、元患者の生活保障や名誉回復措置を国に義務づけた。ただどちらも、家族の被害は救済の対象になっていない。
(2)主張
1.南日本新聞社説
①悲劇の背景にあったのが国の強制隔離政策である。
②原告59人は国に約3億5000万円の賠償を求めた。その大半は匿名で裁判に臨まなければならなかった。国は差別を恐れる現実に目を向け、救済を急ぐべきだ。
③問われているのは国だけではない。過酷な政策を許し、差別に加担してきた私たちの社会そのものでもあろう。
④国の政策とはいえ、強制隔離に関わった保健所を所管する都道府県や、警察などもあらためて反省する機会としたい。
⑤鹿児島県内では、星塚敬愛園と奄美和光園に計190人の元患者が暮らす。全国では計1622人で、平均年齢は84.3歳という。子どもやきょうだいらが救済されるのか。静かに見守っている。
2.西日本新聞社説
①今回の原告は37~92歳の59人で来月には第2陣が提訴し、全国から参加する原告総数は100人を超える見通しという。それでも事実を隠し、声を潜めて生きる人々の一部にすぎない。それだけ根の深い偏見が依然、この社会に残っていることを直視すべきだ。
②原告たちがこの時期に提訴へ踏み切った理由は何か。それは隔離政策の根拠だった「らい予防法」廃止から3月末で20年となり、民法の規定で損害賠償請求権が消滅するためだ。このままでは国にハンセン病問題の幕引きを許してしまいかねないとの危機感がある。
③厚生労働省は補償金を受け取れる元患者が期限内に手続きを行えるよう都道府県に周知徹底を要請した。元患者すらまだ受給していない人が多数いるという。とても幕引きなどできる状態ではない。
④国は今回の提訴による司法判断を待つまでもなく、ハンセン病被害救済を総合的に見直すべきだ。名乗り出ることすらできない被害者に救いの手が届くよう、社会全体の問題として考えていきたい。
3.京都新聞社説                                
①国の誤った政策が被害を拡大させた結果といえよう。早急に救済策を検討しなければならない。
②「らい予防法」廃止から今年3月末で20年となり、民法の規定で損害賠償請求権が消滅することから、厚生労働省は期限内に請求手続きをとるよう、対象者に呼びかけている。しかし、療養所への非入所者を中心にまだ請求していない人が多数いるとみられ、偏見や差別の根深さをうかがわせる。
③家族が、患者と同様に受けてきた長い苦しみを考えれば、国は補償に踏み切るべきだ。
④ハンセン病をめぐる人権問題は過去のものではない。今なお続く重い課題であることを、あらためて確認しておきたい。
4.信濃毎日新聞社説
①ハンセン病の元患者の家族たちが国に賠償と謝罪を求める訴訟を起こした。長年にわたる強制隔離政策などによって、患者本人だけでなく家族もまた、根深い差別や偏見にさらされてきた。その苦しみに正面から向き合う司法判断を求めたい。
②結婚、就職をはじめさまざまな面で、家族は理不尽な仕打ちを受けてきた。周囲の目を恐れて、今も名乗り出ることをためらう人は多い。原告になった人も、大半が名前や顔を出せずにいる。その現実を重く受け止めたい。
③予防法の廃止から20年になる。弁護団などの支援で声を上げることができた人たちの背後に、なお表に出られない多くの家族の存在がある。原告に限らず、家族の被害回復に向け、国は施策や制度の整備に踏み出すべきだ。
④国の責任とともに忘れてはならないことがある。かつて患者を療養所に送り込んだ「無らい県運動」は住民の協力なしには進まなかった。隔離政策が戦後も50年以上にわたって続いたのは、社会の大多数の人々の無関心や暗黙の了解があったからにほかならない。
⑤それをどう克服していくか。つらい体験を語る声に向き合い、社会全体で考える必要がある。それぞれが自らの問題と受け止め、少数者を排除しない地域、社会をつくるための行動につなげたい。


 この裁判の目的は、患者家族が、「産んでくれた親を憎んだり、疎ましいと思うほど深刻な被害はない。そういう被害を明らかにすることで家族が被害から解放され、乗り越えていける」ためであることを、まず最初に理解しなければならない。
 そして、このことを本当に意味で達成させるためには、「01年の熊本地裁判決で国は断罪されたが、裁かれていないのは私たちの社会。それは法律家、医学界、マスコミ、教育界、そして地域の人たち。この裁判で裁かれるべきは私たち一人一人ではないか」(徳田弁護士)、ということを私たち自身に、刻み込まなければならない。


 以下、毎日新聞、南日本新聞、西日本新聞、京都新聞、信濃毎日新聞の引用。






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by asyagi-df-2014 | 2016-02-24 06:30 | ハンセン病 | Comments(0)

ハンセン病-ハンセン病の元患者や遺族に支払われる補償金の申請期限が、2016年3月末に迫る。厚生労働省は早めの申請を呼びかけている。

 ハンセン病補償金の申請期限が2016年3月末になっていることを知らなかった。
 このことについて、朝日新聞は2016年1月28日、「ハンセン病の元患者や遺族に支払われる補償金の申請期限が、3月末に迫っている。患者の強制隔離などを定めた『らい予防法』が廃止されて4月1日で20年。権利がありながら申請していない人が推計で400人いるとみられ、厚生労働省は早めの申請を呼びかけている。」。と報じた。
 この補償金は、「ハンセン病の元患者や遺族に対し、療養所に入所した時期や発症した時期などによって500万~1400万円が支払われる。らい予防法の廃止前にハンセン病療養所に入所した人や、その遺族、入所歴のない元患者が対象になる。」。
 また、この申請期限については、「民法には不法行為から20年が過ぎると賠償請求権が消える『除斥期間』があり、厚労省は予防法の廃止から20年となる4月以降は請求できなくなるとしている。」、と伝えている。


 日本という国のハンセン病患者への隔離政策等のむごさを思いながらも、「隔離政策を違憲とした2001年の熊本地裁判決を受け、元患者らと国の間で交わした合意に基づく。裁判所へ提訴し、国と和解する手続きをとれば補償金を受け取れる。」とされる制度の申請を、考える。


 以下、朝日新聞の引用。





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by asyagi-df-2014 | 2016-01-31 05:51 | ハンセン病 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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