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旧優生保護法下で、不妊手術を強制された宮城県の60代女性が、個人の尊厳や自己決定権を保障する憲法に違反するとして、国に1100万円の支払いを求める訴訟を起こした。(2)

 毎日新聞は2018年1月30日、「1948年から96年まで半世紀近く続いた旧優生保護法下で、不妊手術を強制された宮城県の60代女性が30日、個人の尊厳や自己決定権を保障する憲法に違反するとして、国に1100万円の支払いを求める訴訟を仙台地裁に起こした。同法に基づいて強制手術を受けた人は全国に1万6475人いるが、国家賠償請求訴訟は初めて。女性側は、被害者救済に必要な立法措置を怠った国の責任について追及する。」、と報じている。
 このことに関して、、毎日新聞は2018年2月20日、「57年、国が「優生手術」増要請 都道府県に、予算消化促す」、とこの問題への国の関与の実態を次のように指摘した。


(1)「国家予算で障害者への不妊手術を強制した旧優生保護法(1948~96年)をめぐる問題で、厚生省(当時)が57年、手術件数の少ない県を暗に批判した上で、手術実施に伴う費用が国の予算を下回っていることを理由に各都道府県に件数を増やすよう求める文書を送付していたことが判明した。前年の56年は、それまで増加傾向にあった全国の強制手術件数が初めて減少に転じていた。専門家は文書が送付された背景に『予算枠を減らしたくない役所の論理』があったと指摘している。」
(2)「文書は手書きの計2枚で、旧厚生省公衆衛生局精神衛生課が57年4月27日に作成。同課の課長名で差し出され『各都道府県衛生主管部(局)長』宛てになっている。同省と都道府県の担当者間で交わされた書簡の一つとみられ、京都府立京都学・歴彩館(公文書館)に保管されていた現物の写しを毎日新聞が入手した。」
(3)「文書はまず『例年優生手術の実施件数は逐年増加の途を辿(たど)っているとはいえ予算上の件数を下回っている』と懸念を示している。その上で、56年に各都道府県が同省に報告した強制手術件数をまとめた一覧表を添付し、『実施件数を比較してみますと別紙資料のとおり極めて不均衡である』と都道府県の件数格差を指摘。『手術対象者が存在しないということではなく、関係者に対する啓蒙(けいもう)活動と貴殿の御努力により相当程度成績を向上せしめ得られるものと存ずる次第』『本年度における優生手術の実施につきまして特段のご配意を賜りその実をあげられるよう御願い申し上げる』などとし、手術件数を増やすよう求める内容だ。」
(4)「旧厚生省の衛生年報などによると、強制手術を受けた数は全国で55年に1362件とピークを迎えた後、56年に1264件と減少に転じた。文書が送付された57年も全国的な減少傾向に歯止めはかからなかったが、山形▽宮城▽愛知▽長野▽徳島▽福岡▽鹿児島など10県以上は57~58年にかけて増加に転じていた。」
(5)「同法が改定された後の母体保護法を所管する厚生労働省の担当者は「原本が(手元に)なく、どういう経緯で出されたのか把握できないためコメントできない」と話している。」     
【遠藤大志】




by asyagi-df-2014 | 2018-02-20 12:05 | 人権・自由権 | Comments(0)

旧優生保護法による強制不妊手術に、自民党内に救済を検討する動き。

 共同通信は2018年2月15日、表題について次のように報じた。


(1)「旧優生保護法(1948~96年)の下で、知的障害などを理由に不妊手術が繰り返されていた問題で、自民党内に救済を検討する動きがあることが15日、分かった。国家賠償訴訟によって補償につながったハンセン病問題などを参考に、議員立法を通じた政治的解決を模索する。公明党にも呼び掛け、与党のプロジェクトチームを設置するなどし、具体策を議論していく方針。」
(2)「これとは別に、野党を中心に、救済金の支給や実態調査をすべきだとの意見が出ており、超党派の議員連盟が近く設立される見通し。今後、与野党双方で議論が活発化しそうだ。」




by asyagi-df-2014 | 2018-02-15 20:26 | 人権・自由権 | Comments(0)

旧優生保護法の下での重大な人権侵害を放置するのか。

 何が問題なのか。
 北海道新聞は、「1948年に施行された旧法の前身は、ナチス・ドイツの「断種法」の考えを採り入れた戦前の国民優生法だ。精神疾患やハンセン病などの男女に対し、強制不妊手術や人工妊娠中絶を認めた。96年、強制手術など障害者差別に当たる条文が削除され、母体保護法に改定された。この間、日本弁護士連合会などによると、手術を受けた人は2万4991人に上る。うち強制手術は1万6475人で、道内は最も多い2593人だった。こうして子どもを産み育てる権利を奪われた人たちの救済は、ほとんど手つかずと言えよう。」、という指摘についてである。
 このことに関する根本の問題の一つは、「被害者たちは差別を恐れ、つらい体験を話せなかったろう。社会も鈍感だったのではないか。」(北海道新聞)、ということにある。
もう一つの大きな問題は、「強制手術の7割が女性だったことを踏まえ、国連女性差別撤廃委員会は一昨年、調査と救済を行うよう日本政府に勧告している。日弁連も昨年、被害者への謝罪と補償を求める意見書を出した。けれども政府は、かたくなに拒む姿勢を変えない。当時は適法だったから補償の対象にはならない、という理由である。」(信濃毎日新聞)、との日本政府の対応の姿である。
 また、こうした日本政府の対応は、一方で、「ハンセン病が理由の被害者には謝罪と補償がなされたが、他の被害者は放置されたのが実態だ。同じ過ちを犯したスウェーデンとドイツは既に、国が被害者に正式に謝罪し、補償を行っている。」(北海道新聞)、という事実があるにもかかわらずである。


 さて、このことについて、信濃毎日新聞は「優生手術 重大な人権侵害 救済を」、北海道新聞は「不妊手術強制 国は謝罪し救済すべき」、秋田魁新報は「不妊手術問題 実態調査し救済措置を」、とその社説で論評する。
この三社の「事実経過」と「主張」は、次のものである。


Ⅰ.事実経過

(信濃毎日新聞)

(1)「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する〉―。障害者らへの差別意識に根差した旧優生保護法の下、戦後半世紀近くにわたって、多くの人が不妊手術や堕胎を強いられた。」
(2)「旧法により不妊手術を受けさせられた人は2万5千人近い。その1割余、およそ2700人の個人名を記した資料が19道県にあることが共同通信の調査で分かった。長野県は含まれていない。裏返せば、9割近くは被害を裏付ける資料が残っていない可能性がある。時間がたつほど、廃棄や散逸により実態の把握は困難になる。補償、救済の道が閉ざされることにもなりかねない。」
(3)「強制手術の7割が女性だったことを踏まえ、国連女性差別撤廃委員会は一昨年、調査と救済を行うよう日本政府に勧告している。日弁連も昨年、被害者への謝罪と補償を求める意見書を出した。けれども政府は、かたくなに拒む姿勢を変えない。当時は適法だったから補償の対象にはならない、という理由である。」
(4)「日本と同様に障害者の不妊手術を法律で認めていたスウェーデンは90年代、政府が委員会を設けて実態を調べ、補償制度を設けた。ドイツも戦後、ナチス体制下で手術を強制された被害者に補償金や年金を支給している。」


(北海道新聞)

(1)「『不良な子孫の出生防止』を掲げた旧優生保護法に基づいて、知的障害などを理由に、不妊手術を強いられた人たちの名前が載った資料が、19道県に2707人分現存していることが分かった。このうち1858人分は本人の同意がなく、道内の841人分は全員がこれに含まれる。」
(2)「1948年に施行された旧法の前身は、ナチス・ドイツの「断種法」の考えを採り入れた戦前の国民優生法だ。精神疾患やハンセン病などの男女に対し、強制不妊手術や人工妊娠中絶を認めた。96年、強制手術など障害者差別に当たる条文が削除され、母体保護法に改定された。この間、日本弁護士連合会などによると、手術を受けた人は2万4991人に上る。うち強制手術は1万6475人で、道内は最も多い2593人だった。
こうして子どもを産み育てる権利を奪われた人たちの救済は、ほとんど手つかずと言えよう。」
(3)「ハンセン病が理由の被害者には謝罪と補償がなされたが、他の被害者は放置されたのが実態だ。同じ過ちを犯したスウェーデンとドイツは既に、国が被害者に正式に謝罪し、補償を行っている。」
(4)「被害者の救済を求め、2016年に国連が政府に勧告し、17年には日弁連も意見書を提出した。これに対し、かたくなに拒む政府の人権感覚には憤りを覚える。政府の対応が鈍いのも、この問題があまり知られていないからだ。」
(5)「被害者たちは差別を恐れ、つらい体験を話せなかったろう。社会も鈍感だったのではないか。」


(秋田魁新報))

(1)「旧優生保護法の下で知的障害などを理由に不妊手術を施されたとみられる個人名が記された資料が全国に約2700人分、現存していることが共同通信の調査で確認された。手術を受けたのは約2万5千人とみられており、確認分はその1割にとどまるが、実態解明につながる重要な資料だ。国としても早急に調査を進める必要がある。」
(2)「優生保護法は『不良な子孫の出生を防止する』との優生思想に基づき1948年に施行された。ナチス・ドイツの『断種法』の考えを取り入れた国民優生法が前身で、知的障害や精神疾患などを理由に不妊手術や人工妊娠中絶を認める内容。53年の国の通知は身体拘束やだました上での手術も容認していた。」
(3)「『優生思想に基づく障害者差別だ』との批判が高まり、96年に障害者差別に該当する条文が削除され、名称が母体保護法に改定された。だが旧法に基づき不当に体を傷つけられ、子どもを産み育てる権利を奪われた人たちへの救済はその後も一向に進んでいない。」
(4)「この問題を巡っては、2016年に国連の女性差別撤廃委員会が、被害者が法的救済を受けられるよう日本政府に勧告。日本弁護士連合会も昨年、国に実態調査や謝罪を求める意見書を出したが、国は『当時は適法だった』と応じていない。」
(5)「そうした中、宮城県内の60代女性が近く、知的障害を理由に不妊手術を強いられたのは幸福追求権を保障する憲法に違反するとして国に損害賠償を求める初の訴訟を起こす。女性は重い知的障害があり10代で不妊手術を受けたが、事前に医師側から手術の説明はなかったという。加藤勝信厚生労働相はこうした動きを受け『まずは個々の方からいろいろな話を聞かせてほしい』と述べているが、同様の法律があったドイツやスウェーデンでは、既に国が正式に謝罪し補償を行っている。動きは鈍いと指摘せざるを得ない。」


Ⅱ.主張

(信濃毎日新聞)

(1)「1996年にようやく法は改められたが、補償や救済は一切なされていない。重大な人権侵害を放置できない。国は実態を調査し、救済を進める責任がある。
(2)「1948年に施行された優生保護法は、ナチスの断種法に倣った戦前の国民優生法が前身だ。知的障害者や精神疾患、ハンセン病の患者らへの不妊手術、人工妊娠中絶を認め、本人の同意を得ない強制手術も可能だった。さらに国は53年の通知で、身体の拘束や麻酔のほか、だまして手術をすることも容認した。法もその運用も、尊厳を踏みにじるものだったと言うほかない。」
(3)「憲法は個人の尊重を根幹に置き、人権の保障と法の下の平等を定めている。旧優生保護法はその精神と全く相反する。当時は適法という政府の強弁に理はない。命の選別につながる優生思想は社会になお深く根を張っている。不妊手術や堕胎を強いられた被害者の救済は、その克服に向け、欠くことのできない一歩である。宮城県の60代の女性は30日、国に損害賠償を求める裁判を起こす。被害者の訴えを正面から受け止め、政府は後ろ向きの姿勢を改めなければならない。」

(北海道新聞)

(1)「不妊手術について、政府は『「当時は適法』と主張する。しかし、そもそも命の選別が許されるはずがない。今回見つかった資料は全体の1割だが、被害の事実を裏づける重要な証拠だ。政府は、今回は資料が見つからず、破棄された可能性もある都府県を含め、あらためて徹底的な実態調査を急ぐ必要がある。」
(2)「被害者には高齢者も多い。政府は国家による人権侵害の事実を直視し、謝罪と救済を速やかに行わねばならない。」
(3)「30日には、中学3年のときに不妊手術を強制された宮城県の60代女性が、国に損害賠償請求を求める初の訴訟を仙台地裁に起こす。その背後には、人知れず苦しむ多くの被害者がいる。政府は誤りを認め、被害の全体像の解明に着手し、被害者一人一人と誠実に向き合うべきだ。」


(秋田魁新報))


(1)「訴訟がそうした状況を打開する突破口になればと思う。声を上げたくても上げることができずにいる人は多いとみられるが、訴訟などで注目されることによって名乗りを上げる人が出てくる可能性がある。来月には仙台弁護士会が電話相談窓口を設置する予定だ。」
(2)「日弁連によると、手術を受けた約2万5千人のうち約1万6500人は本人の同意を得ずに行われた。本県でそうしたことを示す台帳などは見つかっておらず、個人名の記された資料が3人分残るのみだが、県衛生統計年鑑という資料に、本人の同意なく不妊手術を施されたのが、記録が残る1949年以降147人いたことが記載されている。」
(3)「障害者差別を正当化する法律の下で被害者が受けた苦痛は計り知れない。高齢の被害者は多いとみられ、国は法的救済に向けて対応を急がなければならない。」


 確かに、「障害者差別を正当化する法律の下で被害者が受けた苦痛は計り知れない。高齢の被害者は多いとみられ、国は法的救済に向けて対応を急がなければならない。」(秋田魁新報)、と言える。
 特に、「30日には、中学3年のときに不妊手術を強制された宮城県の60代女性が、国に損害賠償請求を求める初の訴訟を仙台地裁に起こす。」、と秋田魁新報は伝える。
 だとしたら、私たちは、何をしなければならないのか。




by asyagi-df-2014 | 2018-02-01 07:15 | 人権・自由権 | Comments(0)

旧優生保護法下で、不妊手術を強制された宮城県の60代女性が、個人の尊厳や自己決定権を保障する憲法に違反するとして、国に1100万円の支払いを求める訴訟を起こした。

 毎日新聞は2018年1月30日、「1948年から96年まで半世紀近く続いた旧優生保護法下で、不妊手術を強制された宮城県の60代女性が30日、個人の尊厳や自己決定権を保障する憲法に違反するとして、国に1100万円の支払いを求める訴訟を仙台地裁に起こした。同法に基づいて強制手術を受けた人は全国に1万6475人いるが、国家賠償請求訴訟は初めて。女性側は、被害者救済に必要な立法措置を怠った国の責任について追及する。」、と報じた。


 また、次のように続けた。



(1)「一方、国側は、同法が母体保護法に改定されてから20年以上経過したことなどから、損害賠償請求権がなくなる民法規定の『除斥期間』(20年)を理由に棄却を求める構えとみられる。」
(2)「訴状によると、女性は15歳だった72年12月、『遺伝性精神薄弱』を理由に卵管の峡部(きょうぶ)を縛る不妊手術を強制された。手術後はたびたび違和感や痛みを覚え、87年ごろに入院した。卵巣組織が癒着する卵巣嚢腫(のうしゅ)と診断され右卵巣の摘出を余儀なくされた。不妊手術を理由に地元の男性との縁談も破談となったとしている。女性側は『子どもを産み育てるという憲法13条で保障された自己決定権や幸福追求権を侵害された』などと訴えている。また、宮城県が女性側の情報公開請求に基づき昨年8月に開示した療育手帳交付に関する資料には、女性の成育歴に『遺伝負因無し』と記されていたことから、『手術の理由を【遺伝性精神薄弱】とした審査過程そのものも信用できない』と主張する。」
(3)「優生保護法は96年、障害者への不妊手術の項目を削除するなどした母体保護法に改定された。今年で22年が経過しており、除斥期間が大きな争点の一つになる見通しだ。これについて原告弁護団は『(旧優生保護法下で不妊手術を受けた人がいる)事実を今後どうしていくか考えていきたい』とした2004年3月の厚生労働相(当時)の国会答弁に着目。答弁から救済措置の立法までに必要な『合理的期間』を3年とみなし、それが経過した07年ごろから国の不法行為(立法不作為)が始まったとして除斥期間には該当しないと反論する構え。」
(4)「女性側はこれまで厚労省に対し、優生手術を受けた人たちへの救済措置などを求めたが、同省側は『当時は適法だった』と争う姿勢を見せている。」【遠藤大志】


 さらに、国側の対応について、「加藤勝信厚生労働相は30日午前の閣議後記者会見で『訴状が届いておらず、コメントは控えたい』と述べるにとどめた。原告らが求める全国的な実態調査については『当事者の話を直接聞いてきたので、引き続きそうした話があれば承りたい』と明言を避けた。」、と報じた。


 なお、毎日新聞は2018年1月30日、このことに関して、「強制不妊手術9歳にも 宮城、未成年半数超」、と次のように報じている。


(1)「『優生手術』と呼んで知的障害者や精神障害者らへの強制不妊手術を認めた旧優生保護法(1948~96年)の下、宮城県で63~81年度に手術を受けた記録が残る男女859人のうち、未成年者が半数超の52%を占めていたことが判明した。最年少は女児が9歳、男児が10歳で、多くの年度で11歳前後がいたことが確認され、妊娠の可能性が低い年齢の子どもにまで手術を強いていた実態が浮かび上がった。30日には15歳で強制手術を受けた同県の60代女性が、初の国家賠償請求訴訟を仙台地裁に起こす。」(2)「宮城県が毎日新聞の取材に対し、優生手術に関する現存記録の一部内容を明らかにした。それによると、同県で63年度から19年間に優生手術を受けたのは、男性320人、女性535人、年齢性別不明4人で、そのうち未成年者は、男性191人(59%)、女性257人(48%)。手術理由のうち最も多かったのは『遺伝性精神薄弱』の745人で全体の8割超を占め、『精神分裂病』39人▽『遺伝性精神薄弱+てんかん』26人▽『てんかん』15人--などと続いた。また、知的障害や精神障害がなくても生まれつき難聴などの身体障害のある14人が手術されていた。」
(3)「同法に手術対象者の年齢制限の規定はなく、宮城県で手術を受けた859人のうち最高齢は男性51歳、女性46歳で、最年少は男児が10歳、女児が9歳だった。9歳の女児は2人で、いずれも不妊手術の理由を『遺伝性精神薄弱』とされ、63年度と74年度にそれぞれ手術を受けていた。また、毎年のように11歳の男女が手術を受けていた。」(4)「年代別では、65年度の127人をピークに66年度108人、70年度94人、73年度33人などと減少傾向をたどっていった。」
(5)「旧厚生省の衛生年報や毎日新聞の調べによると、同意のないまま優生手術を受けた人は同法施行期間中、全国で1万6475人に上り、そのうち記録に残る最多は北海道の2593人で、宮城県の1406人▽岡山県845人▽大分県663人--などと続く。」
(6)「優生手術の執刀経験がある東京都の産婦人科医師、堀口貞夫さん(84)は、実名で取材に応じ、『現在の医学の見地からすれば、9歳の女児に不妊手術を施すのは非常識だ』としながらも、『当時は法律に基づいて手術をせざるをえなかった』と振り返った。」
【遠藤大志】




by asyagi-df-2014 | 2018-01-30 20:55 | 人権・自由権 | Comments(0)

東京都知事及び墨田区長の追悼文拒否の中で開かれた関東大震災追悼式。(2)

 東京新聞は2017年9月2日、「墨田区の都立横網町(よこあみちょう)公園では同日午前、朝鮮人犠牲者の追悼式が開かれ、出席した約五百人が、不当に命を奪われた人たちを悼んだ。しかし、例年実施されてきた都知事と墨田区長の追悼文読み上げは行われなかった。」、と報じた。
 標題について、東京新聞は2017年9月6日、「朝鮮人虐殺 歴史は抹消できない」、と社説を論評した。
東京新聞は、「歴史の事実は消すことができない。当たり前のことに、小池百合子東京都知事は疑問符をつけるのだろうか。関東大震災での朝鮮人虐殺犠牲者を弔う追悼文を出さなかった。真意を語ってほしい。」、とその社説を始める。
また、萩原朔太郎の次の三行詩を掲げる。


  近日所感
 朝鮮人あまた殺され
 その血百里の間に連なれり
 われ怒りて視る、何の慘虐ぞ


 「朝鮮人虐殺は動かせない史実である。」、と。
 さらに、東京新聞は次のように続ける。


(1)大震災の発生直後に「朝鮮人が暴動を起こした」といったデマが瞬く間に広がった。あおられた民衆が組織した自警団や住民が、朝鮮人を見つけ出しては殺傷した。
(2)知事名の追悼文は、少なくとも石原慎太郎氏の時代から歴代知事は毎年送ってきた。小池氏も去年は送ったではないか。
(3)こうつづられている。「極度の混乱のなか、多くの在日朝鮮人の方々が、言われのない被害を受け、犠牲になられたという事件は、わが国の歴史の中でも稀(まれ)に見る、誠に痛ましい出来事でした」。知事として、負の歴史と正面から向き合う姿勢が伝わる。この追悼文が今年はなくなった。歴史に目をつぶり、学ぶべき教訓を無意味化するにも等しい。
(4)その理由を記者会見で問われると、小池氏は、大震災の遭難者を弔う都慰霊協会主催の大法要の場で「全ての方々へ哀悼の意を表している」と繰り返した。聞く限り、真意はよく分からない。災害による落命と、民族差別を背景にした虐殺とは性格が異なるのに、「不幸な出来事」とひとくくりにもした。虐殺の史実については「歴史家がひもとくものではないか」と述べるにとどまった。
(6)追悼式の会場に立つ慰霊碑には、六千人余という犠牲者数が刻まれている。それを疑う声はある。国の中央防災会議の報告書は、殺された朝鮮人らは震災全体の死者十万五千人余の「1~数%」と推計する。虐殺の事実は否定できない。


 東京新聞は、最後に、こう結ぶ。


 「首都直下地震をはじめ大災害時に、小池氏は人命救助を指揮する責任を負う。人心を惑わし、暴走を招きかねないデマの拡散を防ぐのも重要な任務である。過去の教訓を蔑(ないがし)ろにしてはならない。


 確かに、「過去の教訓を蔑(ないがし)ろにしてはならない。」。
もう一度繰り返す。
 今回のことは、「国際社会の原則」-「人類の普遍的価値と国民的合意に基づく被害者の名誉回復と補償、真実究明と再発防止の約束という国際社会の原則」-を踏みにじる行為でしかない。




by asyagi-df-2014 | 2017-09-15 14:52 | 人権・自由権 | Comments(0)

東京都知事及び墨田区長の追悼文拒否の中で開かれた関東大震災追悼式。

 東京新聞は2017年9月2日、「墨田区の都立横網町(よこあみちょう)公園では同日午前、朝鮮人犠牲者の追悼式が開かれ、出席した約五百人が、不当に命を奪われた人たちを悼んだ。しかし、例年実施されてきた都知事と墨田区長の追悼文読み上げは行われなかった。」、と報じた。
 このことについて、2017年9月2日付けの東京新聞「小池氏、虐殺の認識語らず 『歴史家がひもとくもの』」及びハンギョレ「追悼文拒否の中で開かれた関東大震災追悼式『忘却は再び悪夢を生む』」の記事で考える。


 この追悼式の模様とその問題点を、ハンギョレは、次のように伝えた。


(1)今年の追悼式は、例年以上に憂鬱な雰囲気の中で開かれた。小池百合子東京都知事側は「(朝鮮人らに向けた)特別な形での追悼文は控えた」と宣言した。2000年代以後、すべての東京都知事が毎年送ってきた追悼文を今年は送らなかった。
(2)変化した日本社会の雰囲気を反映する場面は追悼式場の目の前でも見られた。日本人20人あまりが集まって、朝鮮人追悼式と同じ時刻にすぐそばで日本人地震被害者慰霊式を開いた。彼らは「朝鮮人6000人虐殺は事実か?」「日本人の名誉を守ろう」などと書かれた大型横断幕を日章旗とともに掲げた。彼らは「朝鮮人6000人以上が虐殺されたというのは嘘だ。犠牲者は20分の1程度ではないだろうか」として「反対に日本人がやられた場合もないだろうか」とまで主張した。以前にも駅頭で追悼式反対パンフレットを配った人はいたが、追悼式場の目の前で反対行事が開かれたのは今年が初めてだ。市民団体の日朝親善協会会員シマオカ・マリ氏は「日本社会の右傾化が激しくなり、右派の力が一層強まっている。向かい側の反対集会がその例」と話した。朝鮮総連東京本部副委員長のホ・ジョンス氏は「以前にも過去を否定する人々はいたが、最近はきわめて露骨になった」と話した。
(3)日本の保守派も、関東大震災当時に朝鮮人が日本人に殺害された事実自体を完全には否定できない。関東大震災の後、日本では朝鮮人が毒を井戸に撒いたというデマが出回り、自警団が警察のほう助の下で朝鮮人数千名を虐殺した。日本の内閣府が作成した報告書にも、殺された場合があると書かれている。彼らは大震災後の混乱した状況で正確な統計がありえないという点を悪用している。内閣府の報告書には殺された朝鮮人と中国人の数について「殺傷事件による死亡者は正確には分からないが、地震による死亡者10万5000人の1~数%」と書いた。今年3月、古賀俊昭・東京都議会議員は「犠牲者数の6000人には根拠がない」という質問で追悼文の送付拒否を要請し、小池知事はこれに応じる形で朝鮮人虐殺隠蔽に加勢している。これは朝鮮人虐殺追悼碑撤去要求の動きにつながっていて、朝鮮人虐殺の事実全体を否定する動きにまで膨らむ可能性がある。


実は、東京新聞は、二つの日本の今を描き出していた。
それは、関東大震災当時に朝鮮人が日本人に殺害された事実自体を完全には否定できないにもかかわらず「過去を否定する人々」の姿であり、これに対抗するもう一つの姿である。


(1)追悼式実行委員長の宮川泰彦さん(76)は「歴史家の判断として逃げているだけで、虐殺否定論の上に立っているとしか思えない」と批判。「人の命を大事にせず、歴史的事実を自らの歴史観から否定するのなら知事としてふさわしくない。追悼文をやめたのもこれが本意だったと思う。学校現場など他分野にも影響が広がるのでは」と危惧した。
(2)一方、東京都と同様に当時朝鮮人虐殺があった埼玉県熊谷市では、市主催の朝鮮人犠牲者追悼式があり、富岡清市長が百五十人の参列者を前に追悼のことばを読み上げた。


 また、あわせて、ハンギョレは、「この日の追悼式には昨年の2倍ほどの500人余りが参加した。12時から始まった献花行列は40数分にわたり続いた。小池都知事の追悼文送付拒否が大きく報道されたので、逆に関心が高まって起きた苦々しい現象だった。この日、同じ横網町公園では、関東大震災と東京空襲の犠牲者を慰霊する行事が日本の皇太子が参加した中で開かれた。小池知事はこの行事には追悼文を送ったが、朝鮮人虐殺に対する言及はなかった。」、と伝えていた。


 このような状況をもたらした東京都知事と墨田区長に対して、ハンギョレは、関係者からの疑問の声を、次のように投げかける。


(1)「日本社会で関東大震災での朝鮮人虐殺の事実は歳月と共に風化し忘れられようとしている」。1日、関東大震災94周年朝鮮人虐殺犠牲者追悼式が開かれた東京墨田区の横網町公園で会った追悼式実行委員長の宮川泰彦氏は苦々しく話した。
(2)宮川委員長は「(保守的なことで有名だった)石原元東京都知事も虐殺を否定する雰囲気ではなかったので追悼文を送った。だが、小池知事は追悼文さえ送らない」と嘆いた。彼は追悼式で「自然災害で亡くなった人(日本人)と、人の手で殺された人とは違う。都知事が追悼文を送らないということは容認できない」として「忘却は再び悪夢を生む危険がある」とも話した。
(3)「関東大震災朝鮮人虐殺の国家責任を問う会」事務局長の田中正敬氏は、追悼式で「関東大震災当時、朝鮮人だけでなく中国人、そして(労働運動家などの)日本人も殺された」として「私たち皆が加害者であり被害者になりうる」と話した。


 東京新聞は「朝鮮人虐殺追悼碑撤去要求の動きにつながっていて、朝鮮人虐殺の事実全体を否定する動きにまで膨らむ可能性がある。」という中での、今回の都知事と区長の「拒否」に対して、「史実 戦前の公文書」として次のように説明する。
 都知事の「(朝鮮人らに向けた)特別な形での追悼文は控えた」との回答への反論でもある。


(1)一九二三(大正十二)年九月一日に関東大震災が発生すると、「朝鮮人が暴動を起こした」などのデマが広がった。あおられた民衆がつくった「自警団」などの手で、多数の朝鮮人や中国人らが虐殺された。
(2)政府中央防災会議の報告書によれば、朝鮮人虐殺は当時の行政などの公的記録から確認できる。司法省の「震災後に於ける刑事事犯及之に関連する事項調査書」では、二百三十三人が殺害されたことが分かる。起訴事件分だけで一部にとどまる。
(3)朝鮮総督府の東京出張員が調べたという文書「関東地方震災ノ朝鮮ニ及ホシタル影響」では、殺された「見込数」として、東京約三百、神奈川約百八十、埼玉百六十六など計約八百十三人を挙げている。
(4)東京都公文書館所蔵の「関東戒厳司令部詳報」中の「震災警備ノ為兵器ヲ使用セル一覧表」は、軍の記録だ。軍隊の歩哨や護送兵の任務遂行上のやむをえない処置として十一件五十三人の殺害が記録されている。


 今、宮川委員長の追悼式での、「自然災害で亡くなった人(日本人)と、人の手で殺された人とは違う。都知事が追悼文を送らないということは容認できない」「忘却は再び悪夢を生む危険がある」、との訴えをどのように捉え直すことができるのかが問われている。
 結局、東京都知事と墨田区長の追悼文の拒否は、関東大震災朝鮮人虐殺の国家責任に背を向けるものである。
 つまり、今回のことは、「国際社会の原則」-「人類の普遍的価値と国民的合意に基づく被害者の名誉回復と補償、真実究明と再発防止の約束という国際社会の原則」-を踏みにじる行為でしかない。




by asyagi-df-2014 | 2017-09-13 06:15 | 人権・自由権 | Comments(0)

国連人権理事会と日本、沖縄

 2017年6月6日からスイス・ジュネーブで国連人権理事会が開催された。
沖縄タイムスは、阿部岳記者による「国連と沖縄・上・中・下」を掲載した。また、琉球新報は「国連『指針』違反 人権理事国らしい対応を」(2017年6月22日)、沖縄タイムスは「[国連報告者指摘]懸念に正面から答えよ」(2017年6月14日)、とそれぞれが主張を展開した。
 国連人権理事会と日本、沖縄という問題が、特別報告者の報告と日本政府の反論及び人権侵害の当該者からの報告という中で、浮き彫りになった。
 これを基に、国連人権理事会と日本、沖縄という問題を考える。
 まず、阿部岳記者の「ジュネーブの国連機関でこの1週間、沖縄の基地反対運動に対する政府の圧力が何度も議論になった。今後の課題を探る。」、という記事を要約する、
なお、阿部岳記者は、山城博治さんの釈放に向けて、沖縄タイムスの社説で心情に深く届く訴えを書いた人でもある。


Ⅰ.人権の遵守ということの意味 

(1)沖縄平和運動センターの山城博治議長は16日、スイス・ジュネーブの市街地にある国連人権高等弁務官事務所を訪れた。一室に集まった国連職員は、特別報告者のアシスタントら。返事は明快だった。「山城議長は当然、人権の擁護者である」「私たちは引き続き状況を見守っていく」。山城議長は思わず立ち上がり、90度のお辞儀をして「うれしいです。ありがとう」と言った。
(2)「人権の擁護者」は他の人の権利も守るため、国際的には特別な保護の対象となる。一方、山城議長は国内では刑事被告人として罪に問われている。同行した金高望弁護士は「国内法の形式的な適用のおかしさを痛感している。改めて国際人権法の到達点に感動した」と語った。
(3)例えば、集会に関する政府向けのガイドラインがある。「集会による一定の交通阻害や経済的損失は許容されなければならない」「警察機関は地域の人口構成を反映しなければならない」といった内容だ。
(4)軽微な道交法違反で逮捕が続き、県外から500人もの機動隊が投入される沖縄の状況は違反だらけだ。日本政府はこのガイドライン策定を求める決議に賛成しておいて、順守していない。金高弁護士は「日本では裁判所も国際人権法に耳を傾けないことが多いが、ヘイトスピーチに適用した画期的な判例もある。私たちも諦めず、愚直に国際基準を訴えていきたい」と決意を新たにした。
(5)スイス公共放送国際部が運営するニュースサイト「スイスインフォ」は10カ国語で発信している。日本語版の上原亜紀子編集長が山城議長にインタビューした。「2年前にも知事が来た。地方の権限が強いスイスの人はなぜ民意が反映されないのか、と不思議に思うだろう」と指摘する。「国連でも関心は高まっていて、沖縄という言葉を出すだけで基地問題のことだとすぐ分かる。山城議長のスピーチは短時間だったが、国際社会に訴える意義は大きい」と評価した。
(6)16日の沖縄に関するシンポジウム会場には、米軍のコロンビア駐留に反対するアメリカ法学者協会のデービッド・ロペス氏がいた。登壇者の話に聞き入り、「地球の反対側同士でも関係ない。米軍という同じ根っこから問題が生まれている。沖縄の闘いは私たちの闘いだ」と語った。

Ⅱ.もう一方の動き、反論

(1)スイス・ジュネーブの高級ホテルで13日、市民団体「沖縄の真実を伝える会」がシンポジウムを開いた。メンバーらが参加者20人余りに「真実」を報告した。「日本の共産主義者が沖縄に結集し、琉球独立の名の下に革命を計画している」「加害者が被害者を装って国連を悪用しようとしている」。国連の特別報告者デービッド・ケイ氏や沖縄平和運動センターの山城博治議長が、沖縄における表現の自由の侵害を人権理事会に報告する。その打ち消しを狙っていた。一定の効果はあったようだ。地元に住む女性は「沖縄では米軍犯罪が深刻なのかと思っていた。中国軍の方が脅威だと分かった」と感想を話した。もっとも、別の地元女性は「何でも共産主義者のせいか」と首をかしげた。
(2)日本政府も反論に躍起になった。12日のケイ氏の報告には駐ジュネーブ国際機関政府代表部で人権を担当する次席大使ではなく、トップの伊原純一大使が反論した。会議の合間を縫って出席、「わが国の説明や立場に正確な理解がない点は遺憾」と声明を読み上げた。記者団に囲まれたが「政府として言うべきことは言った」とだけ話すと、足早に会場を後にした。関係者は「トップが出ろ、と東京から指示があった。声明も全て東京で書いているから、聞かれても答えようがない」と代弁した。
(3)政府が事前に書面で提出した反論はさらに激しい内容だった。「伝聞と推測に基づく」「人権理事会の権威を著しく損なう」。
(4)一部のメディアも政府と一体化し、「国連反日報告」などと攻撃を強める。

Ⅲ.こうした政府の反論への異論

(1)神奈川大法科大学院の阿部浩己教授は、政府が北朝鮮には特別報告者の勧告受け入れを迫っていることを挙げ「ダブルスタンダードだ」と指摘。「日本政府は人権分野で国際社会の潮流から大幅にずれ、敵対しているようにすら見える」と懸念した。
(2)NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子弁護士は「レッテル貼りで異論を排除する手法を国際社会でも使おうとしている。有効ではないし、日本のためにもならない」とみる。「どの国も完璧ではない。批判された内容を謙虚に、建設的に検討することで、国際社会での評価はかえって高まる」と提起した。

Ⅳ.山城博治議長からの発信

(1)沖縄平和運動センターの山城博治議長を国連に送る計画は、沖縄国際人権法研究会の中で昨年から持ち上がっていた。表現の自由に関する特別報告者、デービッド・ケイ氏がことし6月の国連人権理事会で対日調査報告書を発表することが分かっていた。それに合わせ、スイス・ジュネーブで沖縄代表として発信するのは誰がいいか。山城議長が最適任だと一致したものの、この時点ではまだ留置場にいた。
(2)ジュネーブでの全日程を終えた16日、研究会共同代表の星野英一琉球大教授は「最初は全く見通しが立たなかった。実現できて感無量です」と喜んだ。費用のカンパは、インターネットだけで127万円(18日時点)が集まった。
(3)基地建設反対運動のさなかに逮捕され、5カ月間拘束された山城議長の言葉に、国連で出会った人々は真剣に聞き入った。山城議長は「県民の思いを果たすために泥まみれで運動をしてきて、手錠や腰縄をかけられた。世界中の人が人権を語る場に参加できて光栄だ」と語った。
(4)ジュネーブに駐在し、沖縄からの訪問を支援した反差別国際運動(IMADR)の小松泰介事務局次長によると、当事者が人権理事会で「日本政府による弾圧」を訴えるのは初めてとみられる。「国連関係者に正確で重みのある情報を届けられて成功だった」と言う一方で、「今後のフォローが大切だ」と指摘する。

Ⅳ.今後のフォロー、取り組みということ

(1)「ここで終わったら自己満足になる。現実的に国内政治をどう変えるかを真剣に考えなければ」と話すのは、同行した研究会メンバーで沖縄大地域研究所特別研究員の親川裕子氏。琉球弧の先住民族会(AIPR)の活動で初めてジュネーブを訪れたのは約20年前。「当時は県民にも政府にも全く相手にされず、疎外感があった。今、沖縄で国際人権法が注目され、政府も理事会で山城議長に即座に反論するのを見ると、時代は変わったなと思う」と述懐する。「小さなことの積み重ねでここまで来た」。
(2)研究会は今後も国連に対する働き掛けを続ける。国連加盟国が互いに人権状況をチェックする「普遍的定期審査(UPR)」で、日本が11月に対象になることから、当面はその場で各国から日本政府に質問してもらうことを目指して活動する。


 次に、琉球新報は、「日本政府が、東村高江や名護市辺野古の新基地建設で行ってきた警備活動は国連のガイドライン(指針)に反していることが明らかになった。」、と社説の中で、指摘する。
その具体的な説明は次のものである。


(1)国連人権理事会へ国連特別報告者が提出した報告書に、市民の抗議活動を各国が制限する際のガイドラインが示されている。国連ビルで開かれたシンポジウムでは、国連特別報告者が日本政府に熟読するよう求めた。
(2)昨年2月に提言されたガイドラインは(1)長期的な座り込みや場所の占拠も「集会」に位置付ける(2)座り込みなどによる交通の阻害は、救急車の通行といった基本的サービスや経済が深刻に阻害される場合以外は許容されなければならない(3)集会参加者に対する撮影・録画行為は萎縮効果をもたらす(4)力の行使は例外的に(5)集会による渋滞や商業活動への損害も許容されなくてはならない-という内容だ。
(3)米軍北部訓練場のヘリパッド建設や、辺野古新基地建設に反対する抗議行動に対する警備は、国連ガイドラインを逸脱していることになる。国際基準と言わずとも、ビラやチラシ、集会やデモ行進、座り込みなどは憲法21条の「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由」として保障されている。
(4)ヘリパッド建設に対する抗議行動中に逮捕され、5カ月間勾留された山城博治沖縄平和運動センター議長について、国連特別報告者は「不均衡な重い罪を課している」としてガイドラインに反するとの認識を示した。
(5)米法学者も国際人権規約第9条違反と指摘し「山城さんのケースは明らかに微罪。米国の警察なら、仮に逮捕してもこの程度の微罪ならその日のうちに保釈している。これで長期勾留するなど民主国家としてあり得ない」と語っている。
(6)ガイドラインには「法執行者の構成は、そのコミュニティー(地域)を代表するものでなければならない」という規定もある。法執行機関と地域の「信頼」を重視したものだ。しかし、北部訓練場のヘリパッド建設で政府は、全国から500人以上の機動隊員を派遣し抗議する市民を排除し続けた。その過程で大阪府警の機動隊員が市民に「土人」と発言し、県民を深く傷つけ信頼が著しく損なわれた。


 琉球新報は次のように結論づける。


Ⅰ.政府は国連人権理事会の理事国として、あるいは国際社会の一員としてガイドラインに従わなければならない。
Ⅱ.日本は昨年、国連人権理事会の理事国選挙に、特別報告者との対話を重視すると共に「人権理事会の活動に積極的に貢献していく」と公約し当選したはずだ。山城さんに対する特別報告者の指摘に真摯(しんし)に向き合わなければならない。ところが「法に基づく適正なもので国際法違反はない」と開き直っている。理事国選挙の公約に反し、特別報告者を軽視する態度は許されない。


 さらに、沖縄タイムスは、国連人権理事会を受けて、「[国連報告者指摘]懸念に正面から答えよ」、と主張する。この中で、人権擁護の最前線に立つ2人の報告者の最近の日本政府の方針への強い懸念について、次のように報告する。


Ⅰ.特別報告者デービッド・ケイ氏報告

(1)言論と表現の自由に関する特別報告者のデービッド・ケイ氏が、ジュネーブで開催中の国連人権理事会に対日調査報告書を提出し、演説した。ケイ氏は昨年4月に訪日し調査した結果をもとに、放送局に電波停止を命じる根拠となる条項が盛り込まれた放送法見直しの勧告を検討するよう要請。報道の独立性確保を訴えた。
(2)基地を巡る沖縄の状況についても、抗議行動に加えられる圧力を指摘。活動への規制は「最小限で釣り合いの取れたものにとどめるべきだ」と慎重な対応を求めた。対日報告書では沖縄平和運動センターの山城博治議長の長期勾留について「抗議行動を萎縮させる懸念がある」ことにも言及している。
(3)これに対しジュネーブ国際機関政府代表部の伊原純一大使は「報道機関に違法・不当に圧力をかけた事実はない」「デモを含む表現の自由は最大限保障している」などと反論した。
(4)辺野古では今も新基地建設に反対する市民に対し、警察官や海上保安官らによる強制排除が続いている。政治的表現の自由が規制されているのである。政府の説明が説得力を持たないのは、ケイ氏が示した危惧を多くの県民が抱いているからにほかならない。


Ⅱ.特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏報告

(1) 国会で審議中の「共謀罪」法案について懸念を示す書簡を日本政府に送ったのは、プライバシーの権利に関する特別報告者のジョセフ・ケナタッチ氏。ケナタッチ氏は、対象となる犯罪が幅広くテロや組織犯罪と無関係なものも含まれる可能性があることなどを挙げ、「プライバシーや表現の自由を不当に制約する恐れがある」と指摘する。
(2)ところが安倍晋三首相は書簡を「著しくバランスを欠く不適切なもの」と批判。与党からは「国連の権威に名を借りた主張」という声まで飛び出している。ケナタッチ氏はプライバシー権の保護と救済を示してほしいと要請しているのであり、法案すべてを否定しているのではない。
(3)昨年、日本は人権理事会の理事国選挙に立候補した際「特別報告者との有意義かつ建設的な対話の実現に協力していく」と誓約している。異論は受け付けないというのは約束をほごにするものだ。


 琉球新報は、日本政府に対して、次のように危惧感を表明する。


(1)特別報告者に対する政府の反応に、1930年代のリットン調査団への抗議を彷彿(ほうふつ)させるという声が上がり始めている。日本の満州国建国を認めなかった調査団の報告に異議を唱え、国際連盟を脱退した時とよく似ているという。
(2)政府は国際世論に与える影響を心配し、特別報告者の指摘に神経をとがらせているようだが、国際社会から不誠実に映るのはどちらだろう。批判を正面から受け止める謙虚さと、指摘に対する丁寧な説明が必要である。



 最後に、沖縄タイムスと琉球新報の記事は、あらためて、国連人権理事会と日本、沖縄という問題を考えさせるものになった。
 少なくとも、次のことは言える。


Ⅰ.安倍晋三政権には、「批判を正面から受け止める謙虚さと、指摘に対する丁寧な説明」が必要である。
Ⅱ.安倍晋三政権は、「特別報告者に対する政府の反応に、1930年代のリットン調査団への抗議を彷彿(ほうふつ)させるという声が上がり始めている。」、という国際的な声を真摯に把握しなければならない。
Ⅲ.特に、安倍晋三政権は、国連人権理事会の理事国として、あるいは国際社会の一員としてガイドラインに従わなければならない。
Ⅳ.今後については、国連加盟国が互いに人権状況をチェックする「普遍的定期審査(UPR)」で、2017年11月に日本が対象になることに向けたとりくみが重要になる。



by asyagi-df-2014 | 2017-07-03 05:54 | 人権・自由権 | Comments(0)

国連人権理事会は、ハンセン病に関わる偏見や差別の撤廃に取り組む「特別報告者」を新たに任命することを決定。

 NHKは、国連人権理事会のハンセン病に関わる「特別報告者」の任命について、次のように報じた。


(1)国連人権理事会はハンセン病に関わる偏見や差別の撤廃に取り組む「特別報告者」を新たに任命することを決め、今後、理事会が任命する独立した専門家が世界各国の現状を調査して、改善に向けた勧告などを行うことになりました。
(2)スイスのジュネーブで開かれている国連人権理事会の会合で22日、日本が中心となり43か国が共同で提案した「ハンセン病差別撤廃決議」が採択されました。決議では「ハンセン病の患者やその家族に対して、根拠のない偏見や差別が世界の各地で今も根強くある」と指摘していて、偏見や差別の撤廃に取り組む「特別報告者」が新たに設けられることになりました。
(3)ハンセン病を専門に扱う特別報告者の設置は初めてで、今後、人権理事会が任命する独立した専門家が世界各国の現状を調査して、改善に向けた勧告などを行うことになります。
(4)ジュネーブ国際機関日本政府代表部の志野大使は「日本が中心となって設置できたことを誇りに思う。根拠のない差別を世界からなくすためにも、日本としても新たな特別報告者を最大限支援していきたい」と話しています。





by asyagi-df-2014 | 2017-06-24 12:34 | 人権・自由権 | Comments(0)

国連人権理事会で2017年6月12日、デービッド・ケイ特別報告者が日本政府がメディアに対して圧力を行使できる状況に懸念を表明。

 東京新聞は、標題について次のように報じた。


(1)「スイスのジュネーブで開かれている国連人権理事会で十二日、言論と表現の自由に関するデービッド・ケイ特別報告者が報告し、日本政府がメディアに対して圧力を行使できる状況に懸念を表明した上で、報道の独立確保のため放送法の改善などを提案した。ケイ氏の報告に対し、日本の駐ジュネーブ国際機関政府代表部の伊原純一大使は「わが国の立場に正確な理解がなく、遺憾だ」と反論した。ケイ氏は昨年四月に訪日して政府職員や報道関係者、人権活動家らと面会し、報告書をまとめた。
(2)ケイ氏は十二日、放送事業者に政治的公平を求め、違反した場合に総務省が免許の一時停止を命じることができる放送法の見直しを提案。報道規制につながることに懸念を示した。一方で、報道機関の側にもプロフェッショナルな立場で、社を超えた連帯を強めるよう求めた。
(3)ケイ氏は報告書で、二〇一四年に施行された特定秘密保護法に関し、秘密の漏洩(ろうえい)に対する罰則によってジャーナリストや通報者を萎縮させかねないとの指摘があることを紹介し、萎縮させないことを保障するための法改正を求めていた。
(4)日本の歴史教育をめぐっては、慰安婦問題など教科書に記載される歴史解釈に、政府が介入することを慎むよう求めた。米軍普天間飛行場移設に対する抗議活動をした沖縄平和運動センターの山城博治議長の長期勾留も不適切と指摘した。
(5)ケイ氏は、カリフォルニア大アーバイン校の法学教授。一四年八月に言論と表現の自由に関する特別報告者に任命された。





by asyagi-df-2014 | 2017-06-13 12:30 | 人権・自由権 | Comments(0)

言論と表現の自由に関する特別報告者デービッド・ケイ氏による対日調査報告書が公開された。

 国連人権高等弁務官事務所は2017年5月30日、言論と表現の自由に関する特別報告者デービッド・ケイ氏による対日調査報告書を公開した。
 この報告書は、「政府が過度な権力を行使している」との指摘及び日本政府への懸念を表明している。
 琉球新報派、2017年5月31日、この報告書の指摘内容について次のように報じた。


(1)沖縄平和運動センターの山城博治議長が抗議行動を巡って逮捕され、長期勾留されたことに対して
①「抗議行動に不釣り合いな制限が加えられている」
②「裁判なしに5カ月間拘束したのは不適切で、表現の自由に対する萎縮効果を懸念する」
(3)記者の取材警を察が妨害したことに対して
①「過度の制限を回避するため(規制の適用に至る)経緯を慎重に見直さなければならない」
(4)沖縄の状況について
①「表現と抗議に対し、継続的に規制が加えられている」
②「全国の人々が反対意見や沖縄に関する情報に接する機会を確保することについて、懸念を表明する」
(5)自民党の改憲草案に対して
①「日本の人権保護を弱体化する恐れがある」
②女性差別を含めた広範な差別禁止法の制定も求めた。


 世界の目から見える日本の様子は、政府が過度な権力を行使しているために、日本の人権保護が侵されているということなのである。
 特に、沖縄は、「表現と抗議に対し、継続的に規制が加えられている」ために、危うい状況に追い込まれている。 
 はっきりしていることは、安部晋三政権の強権政治手法の行き着く先は、「日本の人権保護を弱体化する恐れ」にあるということであり、これをを阻止するためには日本人がこのことに覚醒するこことができるのかということにある。




by asyagi-df-2014 | 2017-06-02 05:47 | 人権・自由権 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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